GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

79 / 126
第二のノヴァを追う中、神機の破損に不具合が起こったユウキ…そして第二のノヴァ討伐に焦りを覚えるソーマ…2人の選択は…?


mission76 新星再臨

 -ラボラトリ-

 

「成る程、非常に攻撃的なハンニバルか…何にしても、君たちが無事に帰ってきてくれて本当に良かったよ。さらにはコクーンメイデンの分と共にサンプルも回収出来た上に、彼らが侵攻するまでの時間稼ぎも出来た。ここまで出来れば上出来だよ。本当にご苦労様。」

 

「いえ…」

 

 コクーンメイデンの調査任務のはずがとんでもない化け物に遭遇した後、命からがら第一部隊全員が撤退した。極東支部に戻ると、件のハンニバルについての報告もかねて、ユウキはラボラトリに訪れていた。

 しかしユウキは報告の時から何処か沈んだ様子を見せていた。

 

「…浮かない顔だね?」

 

「いえ、大した事じゃないですよ…ただ…敵わなかったなって…だけです。」

 

 『解析の結果が出たら教えてください。』と最後に伝えると、ユウキはラボラトリを出ていった。

 

 -???-

 

「ま、また…」

 

 ついこの間見た夢と同じ様に、真っ暗な場所で立っていた。あの時との違いは既にユーリやエリック、そして知らない人達が血塗れで立っていた事くらいだろう。

 まるであの時の続きだと言いたげな状況にユウキは思わず身構えてユーリとエリックを見る。

 

「…先輩、負けちゃいましたね…?」

 

「ま…け…?」

 

 ユーリの言葉に何の事だと言いたげに、ユウキは困惑した。だがすぐに何の事を言っているのか理解した。ついさっきまで勝てないアラガミを相手にしていたのだから。

 

「そう、負けたんですよ…貴方の戦いは…アラガミを殺せなければ負けなんですよ…なのにそんな程度の力で虐げられる人達を助けるなんて言うんですから…笑っちゃいますよ…」

 

「残念だよ…僕たちを死なせてまで生き残った奴の力がこんな程度だなんて…」

 

「そ、それ…は…」

 

 ユーリとエリックの言い分にユウキは反論出来なかった。アラガミに人が蹂躙される世界ではアラガミを殺せなければ誰も守れない。そう言った現実を何度も見てきた。

 そのせいかユウキはリンドウ達から『生き残れば勝ち』と言う戦い方を学んだはずなのにいつの間にか『殺せなければ負け』と言う考え方にすり替わっていた。

 

「これじゃあ何も守れませんよ…?」

 

「誰も守れずにひとりずつ死んでいって…最後にはまた独りだ…」

 

 エリックの死ぬと言う言葉に反応したのか、周りの知らない人達がざわめき出す。

 

『イヤだ…死にたくない…!!』

 

『アーク計画を止めなければ…』

 

『こんな偽善者のために…!!』

 

『何で私たちは守ってくれないんだ!!』

 

 辺りの人間全てから聞こえてくる誹謗中傷に耐えられずに、またユウキは思わず耳を塞ぐ。

 

  『ひとりはイヤだよっ!!!!ねぇ、開けてよぉ!!!!』

 

「ッ?!?!」

 

 朝6時頃、ユウキが夢から覚めて辺りを見回すと、自室の中に居た。起き上がってから気が付いたが、嫌な夢を見たせいで背中までぐっしょりと汗で濡れ、言い様のない不快感を感じていた。

 

(…クソッ…またか…)

 

 以前と同じ様な夢を見て、ユウキは寝起きから最悪な気分となっていた。

 

(…嫌な事思い出したな…)

 

 そんな事を考えながら、ユウキはシャワーを浴びにいく。その後、リッカと神機の強化についての打ち合わせのため、技術班の会議室に向かった。

 

 -神機保管庫-

 

 シャワーも浴び、朝食も済ませた。準備が出来たので神機保管庫に入ると誰もいなかった。リッカが居ないとなると筋トレでもして時間を潰そうかと考えていると、準備を済ませたリッカが現れた。

 リッカは『ちょっと待ってて』と言うと1度会議室に入る。そして資料をいくつか持ってすぐに出てきたところで打ち合わせが始まった。

 

「さて、神機の変形機構…そろそろ手を付けたいところだね。」

 

「そうだね。」

 

「とは言ったものの…どうしようかな?」

 

 前回は改修方針を提案出来ずに取り敢えず終わろうと言って終わっている。あれから数日経ってはいるものの、結局改修案は思い付かないままだった。そのまましばらくお互いに考えては見たがいい案は出なかった。

 そんな中実物の神機が目の前にあるのだから、実際に触ったり変形させながら考えようと言う事になった。変形させながら『最後にはこうなれば良いんだよなぁ…』と思いながら触っていると、ふとユウキの頭の中である方法が閃いた。

 

「…ねえ、ポール型神機への改修みたいに、神機の変形はある程度は変えられるんだよね?」

 

「え…?う、うん。そうだけど?」

 

 唐突にユウキが変形機構は変更が可能なのかと確認してくる。そんな事を今さら聞いてくるユウキの意図が読めなくてリッカは戸惑いながらも答える。

 

「じゃあ、既存の動作に別の動作を追加する事は出来る?」

 

「大丈夫…だと思うよ?要はポール型神機への改修の応用みたいなものだから。」

 

 今度は別の動作を追加する事は可能か聞いてきた。リッカの予想ではユウキの言う変形は問題ないはずと見てそう答える。

 

「だったら…変形動作そのものは変えずに、グリップ部に変形を機構を追加する方法なら、多分いけると思うんだ。」

 

「前に言った中折れグリップでしょ?あれだと強度が…」

 

「いや、変形時にグリップを拡張して引き抜くんだ。」

 

 ユウキの提案した変形にリッカは首を傾げる。何となくイメージは出来るが何となく分からない。そんな顔をしていると、ユウキが何処からか紙を取り出して拙い図で説明する。

 

「グリップを芯となる内側と変形時に拡張して引き抜く事の出来る外側の二重構造にするんだ。外側のグリップを引き抜いた後は外のグリップだけを折り畳んで、銃の様な持ち方になるように拡張グリップを持っていけば…」

 

「成る程、これなら神機フレームを応用出来そう…いけるかも!!」

 

 ユウキの図で何とか理解したリッカが、頭の中で完成品をイメージして強度的にも問題ないだろうと判断した。方針が見えてきた事でリッカの表情が明るくなった。

 

「よし、早速取り掛かろう。」

 

「あ、でも良いの?今は第二のノヴァを追ってるんでしょ?しばらくは神機が使えないよ?」

 

「うん、前にリッカも言ってたけど、咄嗟に出てくる動きは銃形態ありきの動きだから…危険な奴を相手にするには、全力を出せる状態にしておきたい。」

 

 しかし第二のノヴァを追っている現状で神機が使えなくなる事には問題はないのかと、当然の疑問をリッカは投げ掛ける。

 

「…分かった。早速取りかかるね。」

 

「あ、刀身の改修は?必要なものとか…?」

 

「ああ、それは大丈夫。ダミーで上手く行ったからこれから本番。素材もユウの持ってる物で大丈夫だから、同時進行するよ。」

 

 リッカは神機の調整用マニピュレータに向かいながら刀身の強化結果を報告する。

 ちなみにリッカがユウキの刀身強化に使った方法は至ってシンプルで、オラクル細胞の塊に2つの刀身を喰わせて双方の特性を引き継がせると言うものだった。ただ、2つの刀身を喰わせるにしても喰われる側同士の親和性の問題があったのだが、喰わせる側の偏食傾向を調整して、双方を捕食し繋ぎとしての機能を持たせた事で刀身同士の合成を成功させた。

 

「…リッカ、手伝わせてくれないか?」

 

「え?」

 

 調整用マニピュレータを操作しようとしていたリッカは思いもよらぬユウキの頼みに少し驚いて作業をしようとした手を止める。

 

「自分の神機だ。命を預ける相棒の事は…知っておいた方が良いだろ?」

 

 ユウキの言うことも一理ある。自身の神機が他の神機と違うものになっていくのなら、構造くらいは知っておけば何かあった時自分でも何処が悪いのか検討をつける事が出来るだろう。そうなればただでさえ変わった神機を整備するリッカの負担は多少なりとも減るだろうと思っての事だった。

 

「…分かった。じゃあ、グリップ部の分解作業お願い。マニピュレータの操作は分かる?」

 

「うん。大体だけど、いつもリッカが操作してるの見てたから。」

 

「そ、そっか…」

 

 リッカは照れ臭くなってほんのりと頬を赤らめる。好意を向ける相手から『いつも見ている』と言われて嬉し恥ずかしい感覚になったがそう言う状況ではない事は分かっている。リッカはマニピュレータを操作するユウキを見た後、雑念を払う様に頭左右に振り刀身の強化作業を始めた。

 

 -数日後、贖罪の街-

 

 ユウキの神機の強化が始まってから数日後、ソーマは単独で旧市街地に来ていた。目的は勿論第二のノヴァの捜索と撃破だ。

 

「チッ…!!何かが居る気配はするんだが…何処にいやがる?」

 

 しかし何かが近くに居るのは分かっても、一向に遭遇する気配は無い。さらにソーマが感じている気配が本当に第二のノヴァなのかも分からない。

 そんな状況でしばらく旧市街地を捜索していると、教会の裏手に回り込んだところで遂に気配の正体と遭遇する。

 

(居た…!!)

 

 白い身体に赤紫の刺繍のアラガミ…ずっと探していた第二のノヴァをようやく見つけた。第二のノヴァは食事に夢中なのか、ソーマに気付く事なくアラガミの死体を捕食し続けている。

 その隙にソーマは気配と足音を殺しながらゆっくりと近づいていき、間を詰めると力強く地面を蹴る。飛び上がりつつ一気に加速していく中で神機を振り上げる。

 

(一撃で…仕止めるッ!!)

 

 敵が気付いていない今がチャンスだ。不意討ちで大ダメージを狙い、神機を振り上げた時点でチャージクラッシュを発動して、間合いに入ると全力で振り下ろす。

 

  『ズガァァァァン!!』

 

 神機を振り下ろした一帯がチャージクラッシュ+ソーマの異常な腕力で破壊されて土煙を巻き上げる。

 手応えらしいものは感じなかった。次の手に移ろうと神機を握る手に力を入れると、その瞬間に土煙から第二のノヴァ飛びかかってきた。

 

「何ッ?!」

 

 あまりに早すぎる対応にソーマは動揺するが、咄嗟にしゃがんで第二のノヴァの下を潜る。

 そして振り向きながら体勢を直して神機を左から右へと横凪ぎに振る。しかし第二のノヴァは前足を着地させると同時に前足をバネにして素早く真上に跳び上がってソーマの一撃を回避する。そして空中で身体を捻り、ソーマと向き合うと雷球を3発ソーマに向かって投げつける。

 

「チィッ!!」

 

 1発目の雷球を右に避け、追尾してくる2発目を左前に跳んで紙一重で躱す。そして3発目が間髪入れずに正面から飛んでくる。ソーマは神機を右手のみの片手持ちに変えて装甲を展開する。装甲に雷球が当たると、受け流しつつも足に力を入れて一気に前に出る。すると雷球が当たった装甲を中心にソーマは回転し、さらに加速した勢いのまま第二のノヴァとの距離を詰めていく。

 間合いに入ると片手持ちにした神機を両手持ちに持ち直して、回転の勢いを乗せた袈裟斬りを繰り出す。土煙をあげ、地面を砕く程の威力だったのだが、それを第二のノヴァは後ろに跳んで回避する。ソーマにもそれは見えていたので、手応えがないことを感じとるとすぐに前に出て神機を横凪ぎに振って追撃するが、第二のノヴァは上に大きくジャンプしてソーマの一撃を躱す。

 

「クッ!!」

 

 しかしソーマの攻撃を躱されると同時に、ソーマの足元からバチバチと放電する音が聞こえてくる。咄嗟に後ろに跳ぶと、足元から電撃が来た。それを避けている隙に第二のノヴァは着地して体勢を立て直し、自身の周りに雷球を設置して飛ばしてきた。

 ソーマは自身に向かってくる雷球を右に避けるが、別の雷球が迫って来た。

 

「チッ!!追尾してきやがるっ!!」

 

 追尾性能は高くはないが、避けた方向から攻撃が来るため、ソーマは第二のノヴァに向かって走る事で雷球の追尾範囲から逃れる。第二のノヴァもまた迎撃のため、ソーマに向かって走って飛びかかる。

 

「おぉぉぉおあああっ!!!!」

 

 第二のノヴァは飛びかかると同時に右の前足でソーマを切り裂こうと振り下ろす。そしてソーマも対抗して神機を右下から振り上げる。

 そして甲高い金属音と共に、白く染まったイーブルワンが第二のノヴァの爪を受け止めた。

 

 -極東支部-

 

『緊急連絡!!旧市街地にて、第二のノヴァを捕捉しました!!第一部隊は至急旧市街地に向かって下さい!!繰り返します!!旧市街地にて第二のノヴァを捕捉!!第一部隊は直ちに急行してください!!』

 

「っ!!」

 

 ソーマが第二のノヴァと戦闘を開始した頃、極東支部内に第二のノヴァが現れたと言う放送が鳴り響く。それを神機保管庫で聞いたユウキは勢いよく振り返り、表情が強張る。

 

「ユウ…」

 

 ユウキの表情を見たリッカは、戦えない状況なのにまた戦いに行くのではないか?そんな考えが過ってしまい、不安そうな表情になる。

 

「分かってる…もう、他人の神機を使ってまで出ようとは思ってない。皆を信じて待ってるよ…」

 

「…うん。なら、いい…」

 

 苦虫を潰したような顔をしたユウキを見て、リッカは少し心苦しく思いながらも、無理矢理にでも出撃する事に取り敢えず安心した。

 しかしユウキの方は肝心な時に戦えない無力感を再び味わい、悔しさから爪が食い込んで血が流れる程に拳が固く握られていた。

 

 -贖罪の街-

 

 爪と神機がぶつかり合った後、第二のノヴァが自身の周囲に放電してきたので、後ろに下がって避けてすかさず追撃する。そんな一進一退の攻防を繰り広げ、既に30分程の時間が経っていた。

 

(クソッ!!何なんだこいつは?!)

 

 しかし、自身の攻撃が当たる度にソーマは言い様のない違和感を覚えて苛ついていた。

 

(さっきから攻撃が効いているのか分からねぇ!!)

 

 何度も攻撃を当て、第二のノヴァに傷もつけているのだがどうにも浅い。しかも攻撃されても平然と突っ込んで来る事もあり、今までのアラガミの様に攻撃して怯ませ、その隙に大技を叩き込むと言った事が出来なくなっている。

 

「いい加減…」

 

 ソーマが第二のノヴァが飛びかかって来たのを右に避ける。勢いを殺しきれずに踏ん張りながら少しずり下がる。そして止まると同時に前に飛び込み、神機を振り上げて第二のノヴァを捉える。

 

「くたばれぇえッ!!」

 

 ソーマが間合いに入り、全力で神機を振り下ろす。

 

  『グシュッ!!』

 

 振り下ろした神機が第二のノヴァの左肩に食い込んで血が吹き出る。しかし傷は浅いうえに、第二のノヴァは攻撃されてもお構い無しに突っ込んできた。

 

「グハッ!!」

 

 体当たりを受けたソーマはそのまま吹っ飛ばされ、受け身を取ることが出来ずに倒れてしまった。

 ソーマが起き上がろうと、吹っ飛ばされた勢いを殺した頃には既に距離を詰めてきた第二のノヴァが、ソーマを喰い殺そうと口を開けて迫ってくる。

 

  『ズガガガガッ!!』

 

 突然第二のノヴァに無数の弾丸が撃ち込まれる。予想外の攻撃に思わず第二のノヴァは怯み、銃弾から逃れる様に一旦後ろにさがる。何事かと思い、ソーマが呆けていると、銃口から煙を上げている神機を握ったコウタがソーマと第二のノヴァの間に割って入る。

 

「大丈夫ソーマ?!」

 

「ソーマ!!立てますか?!」

 

 今度はアリサが第二のノヴァにオラクル弾を撃ち込んでいく。またもや奇襲をかけられ、第二のノヴァは1度怯むが、すぐに体勢を立て直して、銃弾を受けながらもソーマに向かっていく。

 

「行かせない!!」

 

 アリサがオラクル弾を撃ちながら第二のノヴァを追撃し、コウタもソーマの壁になるように立ってオラクル弾を発射する。

 しかし第二のノヴァはダメージを受けている様子もなくソーマに飛びかかろうと姿勢を落とす。その瞬間第二のノヴァの眼前をサクヤが放った狙撃弾が横切り、第二のノヴァは反射的に後ろに大きく跳んで1度距離をとる。

 だが今度は回避先を読んでいたリンドウが何処からともなく現れて、第二のノヴァの右側から右手をかつての相棒ブラッドサージに似た状態に変えて切りかかり奇襲する。

 

「どうしたソーマ?もうへばったか?」

 

「チッ!!うるせえ!!」

 

 リンドウの攻撃で第二のノヴァは左に避けるが、右肩に傷を作る。それを見たリンドウは余裕そうにソーマを茶化す。対するソーマは不機嫌そうな顔をして立ち上がり、第二のノヴァに向かっていく。

 そしてリンドウの攻撃を受けて怯んだ第二のノヴァの顔面に横凪ぎに神機を振るが、薄く傷が着く程度のダメージしか受けていない様だった。そして第二のノヴァはバチバチと放電し始め、周囲に居るリンドウとソーマが離れると同時に電撃を放つ。さらにはその電撃で遠距離でサポートしていたサクヤ、アリサ、コウタの銃撃を焼き切る。

 

「ソーマ!!使え!!」

 

 リンドウはソーマにインカムを投げ渡す。ソーマはインカムを左手で受け取ると即座に装着する。

 

『皆さん合流したようですね。ここからは私もサポートします!!』

 

 ソーマがインカムを装着すると、ヒバリの声が聞こえてきた。第二のノヴァ討伐に力を貸してくれるようだ。戦闘中の解析はヒバリに任せるとして、第一部隊は戦闘に集中する。

 

「サクヤはノヴァから離れて遠距離支援!!コウタ!!中距離から爆破弾を撃ちまくれ!!アリサは前衛!!隙を見てリンクバーストだ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 第二のノヴァからの電撃を躱したリンドウが第一部隊に指示を出すと同時に第二のノヴァに接近する。

 

「こっちも行くぞソーマ!!遅れんなよ?!」

 

「分かってる!!」

 

 いつものリンドウの軽口が飛び出すが、ソーマはそんなことに付き合っている余裕はないと言った様子だった。

 そして飛び出したリンドウは袈裟斬りを繰り出すが、第二のノヴァは一気に前に出てリンドウの攻撃を避けると、ソーマに向かっていく。

 

「ソーマ!!」

 

「やらせない!!」

 

 コウタが爆破弾を連射して、サクヤが狙撃弾を撃ち込む。しかし2人の攻撃を受けても気にする事なく第二のノヴァはソーマに飛びかかる。

 

「クソッたれ!!」

 

 寸でのところでソーマは左に避け、すれ違いざまに第二のノヴァの胴体に一撃入れる。しかし、今まで通り薄く傷を着ける程度で大したダメージにはなっていない様だった。

 

「敵はソーマだけではありませんよ!!」

 

 ソーマの攻撃を受けても平然としている第二のノヴァが左に振り向き、引っ掻いてきたが、ソーマは後ろに下がって避ける。その隙にアリサが鮫牙を展開して捕食する。

 

(っ?!)

 

 捕食に成功したが薄く傷を着けた程度だった事もあり、アリサは捕食した時の感触に何か違和感を感じていた。

 しかも第二のノヴァはまたもやソーマを喰おうと前に出る。サクヤとコウタ、そして銃形態に変形したアリサが第二のノヴァに銃弾を撃ち込むが、今までと変わらず、第二のノヴァには大したダメージにはなっていない様だった。

 

「させるかよ!!」

 

 しかし今度はリンドウが第二のノヴァの後ろから攻撃する。第二のノヴァはその気配を察知してソーマの上を飛び越える。そして空中で向きを変えて、雷球を広範囲に放って第一部隊を撹乱する。

 

『一部解析終わりました!!この反応が何を示しているのかはまだ分かりませんが、かなり特異な反応を示しているようです!!長期戦は危険かも知れません!!力業になりますけど…リンクバーストで強力な一撃で攻撃してみてください!!』

 

 ヒバリの通信から対策を伝えられると、リンドウは即座に指令を出す。

 

「全員アリサのサポートだ!!アリサ!!前に出ろ!!」

 

「了解!!」

 

 第二のノヴァを倒すにはリンクバーストによる限界を超える一撃を加える必要がある。ならば剣形態、銃形態の両方を扱い慣れているアリサがリンクバーストをさせるのが最も効率が良いと考え、リンドウはアリサを前に出す。

 リンドウがとソーマが真っ先に前に出て、リンドウが第二のノヴァに右から攻撃を仕掛ける。しかし第二のノヴァは1度左に避け、ソーマに向かって飛びかかる。ソーマは咄嗟に第二のノヴァの真下を潜って避けると、急ブレーキをかけ、振り向きながら神機を横凪ぎに振って攻撃するが、やはりダメージを受けているのか分からない状態だった。

 そして第二のノヴァは追撃を警戒したのか、一気に後ろに後退して1度ソーマから距離をとる。

 

「クソッ何なんだ?!さっきからソーマばかり狙って!!」

 

「それにリンドウの事は異様に警戒しているわ!!一体どうなってるの?!」

 

 リンドウとソーマが攻撃している間もコウタとサクヤが第二のノヴァへの攻撃を続けていたが、ダメージどころか怯む様子すらない。

 しかしコウタとサクヤの話を聞いてリンドウはある作戦を思い付く。

 

「ソーマ!!」

 

 リンドウの声を聞いたソーマは、リンドウが何を考えているのか粗方察してリンドウから離れつつ第二のノヴァに接近する。そしてアリサはリンドウの方に行き、コウタ、サクヤはソーマと共に第二のノヴァに向かっていく。

 そして第二のノヴァは案の定ソーマに向かって走り出す。コウタとサクヤは

少しでも第二のノヴァの攻撃の勢いを殺す目的で、ソーマの後ろから銃撃する。

 銃撃も気にする事なく第二のノヴァは走ってソーマに向かってくるが、サクヤとコウタの爆破弾を受け続けて遂にふらついた。その隙にソーマが神機を横凪ぎに振って第二のノヴァに強烈な一撃を叩き込む。

 体勢が崩れた隙にソーマが追撃を加えようと、今度は逆向きに神機を振る。さらにリンドウも攻撃に加わり、第二のノヴァに向かって右腕で切りかかる。

 しかし第二のノヴァは崩れた体勢のままリンドウとソーマから離れる。だがその先にはチャージ捕食の準備を終えたアリサが居た。

 

「今です!!」

 

 体勢が崩れたまま無理に動いてリンドウとソーマの攻撃を避けたので、回避した先でも体勢を立て直す事ができずに、アリサの捕食攻撃を許してしまう。第二のノヴァの右肩に着いている傷付近を喰い、アリサはバーストする。

 

「アリサァ!!」

 

 アリサが捕食に成功したのを確認すると、リンドウの声が聞こえてきた。それだけでリンドウが何を言いたいのか了解して、アリサは銃形態に変形しつつも第二のノヴァから大きく離れる。

 

「渡します!!」

 

 そして受け渡し弾を3発全てリンドウに渡して、リンドウをリンクバーストLv.3にまで引き上げる。

 

「うおぉぉぉおっ!!」

 

 リンドウが咆哮と共に体勢を立て直せていない第二のノヴァに横から袈裟斬りを繰り出す。すると第二のノヴァの胴体を切り裂いて大量の血が吹き出た。

 ようやくダメージらしいダメージを与えられたのも束の間、第二のノヴァは力なく倒れ込んだ。

 

「倒した…のか?」

 

『今スキャンしてみます。第一部隊は警戒体勢のまま待機してください。』

 

 状況的には倒したと思えるが、以前のハンニバルの様な例もある。ヒバリが第二のノヴァの活動が停止したことを確認するまで、指示通り第一部隊は待機する事にした。

 

「それにしても…何か妙な感じがするわね…」

 

「はい。何と言うか…何度攻撃しても手応えが無かった…ですよね?リンドウさんの最後の攻撃は効いたみたいですけど、こんなあっさり…」

 

 戦闘に出ていた者の大半が感じていた事だが、攻撃の度にどうにも妙な違和感がしていた。さらにはリンクバーストのレベルをLv.3まで引き上げていたとは言え、リンドウのからのたった一撃でここまで脅威として認識していた第二のノヴァが倒されると言うのは何かおかしい様な気がしていた。

 

『…ッ?!まだです!!標的のオラクル反応、未だ健在!!』

 

 ヒバリからの通信が入ると同時に第二のノヴァ周辺の空中に赤紫色のオラクル細胞の結晶が展開される。それを見た瞬間、第一部隊は回避行動に移り、ほぼ同時にオラクル結晶を第一部隊に投げ飛ばす。

 

「クッ!!」

 

「グエッ!!」

 

 即反応出来たアリサがコウタのマフラーを掴んで後ろを向いて第二のノヴァから離れる。首根っこを引っ張られたコウタは変な声を上げたが、アリサのお陰で何ともなく回避出来た。

 サクヤとソーマも横に跳び結晶を避け、最も中心に近いところに居たリンドウは後ろに下がるようにバク転しながら体を捻り途中で側転するような動きに変えて第二のノヴァから距離をとる。

 しかし第一部隊が結晶を避けきった時には、第二のノヴァは逃走し、旧市街地の周囲にある、陥没して底が見えなくなる程の高さの崖から飛び下りていた。

 

「クソッ!!待ちやがれッ!!!!」

 

 それを見ていたソーマは迷いなく自分も飛び込もうと走り出したので、リンドウが焦りながらそれを止める。

 

「落ち着けソーマ!!もう追い付けない!!手遅れだ!!」

 

「…クソッ!!」

 

 リンドウの言葉を聞いたソーマが苛立ちを隠すことなく悪態をつき、神機を地面に突き刺そうとする。しかし突き刺す直前に思い止まり、ゆっくりと神機を下ろす。その様子は察するまでもなく苛立ちを覚えているのだとハッキリと分かるものだった。

 

「…どうしたんだよソーマ?何か第二のノヴァが現れてから変だぜ?何か焦ってるみたいだし…」

 

 そんなソーマの様子を見かねたコウタが、前々から疑問に思っていた事をソーマに聞く。

 

「これは俺が決着を着けるべき問題だ!!お前たちには関係ない!!」

 

 しかしソーマは苛立ちを抑えられないのか、声を荒らげて第一部隊に第二のノヴァの件には関わるなと怒鳴り散らす。

 しかしそんな事を言われても、現在の状況を考えれば納得出来る様な言い分ではない。流石にこの言い分には第一部隊も反発する。

 

「何言ってるの?!第二のノヴァ討伐は貴方一人の問題じゃないわ!!強力な相手だからこそ、全員の連携が必要なんじゃない!!」

 

「そうですよ!!何にしたって、今回の敵は1人じゃ分が悪いのは確実なんです!!ここは皆で戦うべきだと思います。」

 

「お前たちには関係ないと言ってるだろ!!これ以上この件には関わるな!!」

 

 サクヤとアリサは全員で力を合わせるべきだと言うのだが、何故かソーマは頑なに自分1人で対処すると言って聞かないのだ。一見するとワガママにしか思えない主張に、流石にコウタも業を煮やしたのか、声を大にしてソーマに反発する。

 

「何意固地になってんだよ!!第二のノヴァの件は俺たちや周りの人たちの命に関わる事なんだからソーマ1人の問題じゃないだろ!!」

 

「「…」」

 

 ソーマとコウタが睨み合っていると、見かねたリンドウが右腕を元に戻しつつ頭を掻きながら口を挟む。

 

「まあ、落ち着けよ。ソーマ…お前が何を考えているかは何となく分かるさ。第二のノヴァが現れたのは自分のせいだって思ってんだろ…違うか?」

 

「…」

 

 リンドウの問いに対してソーマは黙りを貫く。それは端から見ればリンドウの言葉を肯定している様なものだった。

 

「起こっちまった事はもうしょうがない。今はヤツを倒すために最善を尽くし、全員で力を合わせるべきじゃないのか?」

 

 リンドウの言い分はもっともだ。今大事なのは『誰の責任』かと言う事ではなく、『どうやって現状を打開するか』だ。しかしソーマもそれは分かっているのだが、自分が起こしてしまった危険な戦いに仲間を巻き込めないと言う感情の方が強くなってしまい、結局最初の言い分に行き着いてしまう。

 

「…いや、この件にお前たちを巻き込む訳にはいかない。第二のノヴァは…俺の手で…」

 

「「「…」」」

 

 この戦いは自分1人で戦うべきだと伝えようとするも、第一部隊の面々が自身に向けてくる威圧的な視線を感じるとソーマは『もう何を言っても一緒に戦う気だ』と分かってしまいった。

 

「…はぁ…お前らには敵わないな…」

 

 ソーマはため息混じりに遂に1人で戦う事を諦めた様子で、何故1人で戦う事を選んだのかを語りだす。

 

「あれは…第二のノヴァは俺と…親父とお袋が残した罪だ。俺は心の内で…その罪が、再び白日のもとにさらされるのを恐れていたのかも知れない…」

 

 第二のノヴァが産まれたきっかけはヨハネス前支部長が進めたアーク計画、そしてアーク計画を発案、実行に移すきっかけとなったのは死のビジネスを始めた者に対する絶望、その根幹をなしていたのはマーナガルム計画による偏食因子の発見…あらゆるものが連鎖して今の状況が出来上がったが、その根幹にはシックザールの一族が絡んでいる。そう思ったからソーマは自らの手でこの状況を終わらせ、両親の罪を精算する事こそがこの状況を防ぐことが出来なかった事に対する償いなのだと考えていた。

 それを聞いた第一部隊はソーマが誰にも知られないうちに事態を収束させようとする様は、まるで両親の罪を外に知られない様にしている様にも思えた。

 

「フ…もう手遅れなのにな…」

 

「けどさ…」

 

 ソーマが自虐的に笑うと、不意にコウタが話しかける。

 

「その、第二のノヴァが現れたのは…まあ、アーク計画が大元の原因かも知れないけど、それを見逃したのは実際に回収した俺たちだろ?確かに指揮はソーマが執ってたけど、それを理由にソーマ1人で決着を着けなきゃいけないってのは、何か違うと思う。」

 

「ええ、誰かに責任があるとしても、それをソーマ1人で背負う事はないわ。」

 

「私たちは『仲間』でしょう?1人で対処出来ないなら、私たちだっていくらでも力を貸します。だから1人で何でも背負わないでください。」

 

 仲間が困ってるから力を貸す。第一部隊の言い分は至極シンプルなものだった。何かを成すとき、1人じゃできないなら仲間とやる。そんな普通の事を今まで忘れる程に周りが見えていなかったのだと認識すると、不思議とソーマは落ち着きを取り戻した。

 

「…分かった。」

 

 冷静になったところで、ソーマは目的のために今後自分がどうするべきなのかを考える。

 

「今回戦って分かった。確かにヤツを倒すのは俺1人では難しいみたいだ。」

 

 現状と自身の能力、現時点での情報を照らし合わせて、ソーマが第一部隊のメンバーに答えを出す。

 

「こんな事言えた義理じゃないが…頼む。第二のノヴァ討伐に力を貸してほしい。」

 

 ソーマは仲間を頼る事を選び、頭を下げて共に戦って欲しいと言った。

 

「そんなの聞くまでもないって!!ねっ?」

 

「当然です!!」

 

「ええ!!皆で第二のノヴァを討ちましょう!!」

 

 第一部隊の答えは聞くまでもなく肯定だった。ソーマも1人で何もかも背負う必要がなくなったためか、少し落ち着いた様な表情になっていた。

 

(ったく…ソーマと言いユウと言い…もうちょい肩の力を抜いて欲しいんだがなぁ…ソーマは素直に頼ってくれただけ良いんだが…)

 

 リンドウは常々ソーマもユウキも何処か肩筋を張りすぎている節がある事を気にしていた。今回の件でソーマは仲間を頼る事を意識するようになるだろうと安心したが、ユウキはまだ仲間を頼る事に意識を割ききれてない様な印象を受けていた。まだまだ前途多難だと感じながら、リンドウは背伸びをしながら歩いて待機ポイントに向かう。

 

「さぁて。今回の戦闘でサンプルも手に入った。まずはこいつを支部長代理に届けて解析してもらうとするか。」

 

 今後の対策のため、サンプルをペイラーに渡す様に言って第一部隊に帰投するように促した。

 

To be continued




後書き
 第二のノヴァとの戦闘第一回戦でした。事態を招いた事を気にしたソーマの焦りを上手いこと書けていると良いのですが…
 この小説では早い段階でソーマが冷静になった事もあり第一部隊が負ける事なく先に進みます。(と言うより原作通りに行くと無駄に捜索ばかりで長くなっちゃう)結果途中であの娘に会うこともなく最終決戦に行きます。さらには今回を含めてリンドウさんの活躍も少し増えます。
 そしてリンドウさんの腕が神機みたいになる事を前の戦闘で書いてなかった事に今更気が付いたぜorz
 ※次の更新は遅れそうです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。