-ラボラトリ-
「うーん…これは…」
第一部隊が帰還し、ウロヴォロス堕天種のコアを受け取ったペイラーは寝る間も惜しんでコアの解析と、偵察班から得られたアリウス・ノーヴァの情報を分析していた。
(原種のウロヴォロスとは大きな差はない…か…)
ウロヴォロス堕天種のコアを回収した結果、他の超弩級アラガミとは違い、原種とは大きな差はないと分かった。その結果、今回倒したのは本当に堕天種と言う結論になったが、それでもノヴァの残滓の影響を受けて発生したアラガミであり、れっきとした超弩級アラガミである事に間違いはない。
しかしペイラーはそれよりも別の事が気になっていた。
(それに…昨日今日でアリウス・ノーヴァがリンドウ君に釣られなくなってくるなんて…厄介な事になってきたね…)
昨日はリンドウを餌に気を引く事が出来た。しかし今日は他のものに気を取られたりする等、リンドウ以外のものに気を取られて何度か誘導し直している。アリウス・ノーヴァがリンドウを喰う必要がないと言う結論に至ったのか、あるいはこちらの思惑に気が付いたのか、はたまたリンドウより優先すべき捕食対象が現れたのか…いずれにしろ、このままアリウス・ノーヴァの気を引き続けるのは難しい事には間違いはないだろう。
(ただ、お陰で外部の偏食因子を取り込む際に偏食傾向が一定時間固定される事も分かった…)
しかしリンドウが気を引き付けた期間、それから戦闘以外の時には偵察班が解析機器を使い集めた情報、そして以前第一部隊が回収したアリウス・ノーヴァのオラクル細胞から得られた情報を整理する。その結果、アリウス・ノーヴァは捕食によって偏食因子を取り込む際、取り込みやすい様に偏食傾向を調整する特性がある事が分かった。
これを利用すれば一時的にアリウス・ノーヴァの防御性能を下げる事が出来る。討伐隊の攻撃も通常通りに通るはずだ。
(まさかあの論文に頼る事になるとはね…)
解析を続けながら、ペイラーはある人物が書いた論文を思い出していた。今から行う予定の作戦がまさに論文道りの内容だったからだ。しかし論文を書いた人物とは折が合わず、あまり親しくはなかった。
「少々準備不足ではあるが、もう仕掛けた方が良いかも知れないね…」
これから先、時間を稼ぐ事も難しくなるかも知れない。手札は少ないが倒せる可能性はある。ここで仕掛けなければもう手が出せなくなる事を考えると、準備を前倒しにする方が良いかも知れないとペイラーは考えていた。
-嘆きの平原-
ナーガ、ウロヴォロス堕天種と立て続けに超弩級アラガミを倒してきた第一部隊は次なる超弩級アラガミを倒すべく旧ビル街に来ていた。現在コウタとアリサが待機ポイントに居て、ユウキとソーマは少し離れた場所で準備をしていた。
「おい、ユウ。」
「何?」
そんな中、ソーマがユウキに話しかける。何事かと思い、ユウキはキョトンとした表情になって返事をする。
「お前…何を迷ってやがる?」
「っ?!な、何で…そんなことを?」
両目を見開きながら言葉を詰まらせる。あからさまに動揺を見せたユウキは何とか誤魔化そうとするも、先の対応で隠せるはずもなくソーマには一瞬でバレていた。
「ナーガを倒した時から思ってた。お前、アラガミを倒す事を躊躇ってないか?」
「凄いな。まるでエスパーだ。」
「茶化すな。」
『HA☆HA☆HA☆』と冗談めかして笑って誤魔化したが、ソーマは声を低くして返す。それを聞いたユウキもふざけた雰囲気を止めて大人しくする。
「俺達がアラガミを倒さなければ人類が滅ぶ。それは分かってんだろ?」
「…うん。」
「なら何で躊躇う。やつらを倒す。そう言ったのはお前だろ。」
「…」
第二のノヴァを倒さなければ人類はいずれ滅ぶ。それを防ぐ為に超弩級アラガミを倒している。結果的にそれが第二のノヴァを倒す事になる。それにアリウス・ノーヴァの存在を確認したとき、倒すと言っていたのはユウキ自身だった。何故今さら迷う必要があるのか分からず、ソーマは少し強くユウキに問いただす。
「…この間の…喋るヴァジュラ…いただろ?あの時、何度か俺達を罠に嵌めたから…ちょっと警戒しちゃってるかも…とどめの時も…もしかしたら攻撃を誘われてるのかも…って考えちゃってさ…」
少しの沈黙の後、ユウキが迷う理由を話始める。しかしアラガミを倒す事が本当に目指す未来に繋がるのか疑問を持った。それでアラガミを倒せなくなったなどと言ったら自分の存在理由を否定しているようでどうしても本当の理由を話す事が出来なかった。その為咄嗟に出てきた嘘の理由を話した。
「それでもとどめのチャンスとなれば行くしかないだろ。今までだってそうして来たんだ。もし反撃の可能性があるのなら、それを考慮して動けばいいだろ。」
「…そうだね。」
『おーいソーマー!!ユーウ!!早く来いよー!!』とコウタの呼ぶ声が聞こえる。話を切り上げてソーマはコウタとアリサの元に向かう。
「とにかく、戦いの最中は迷うな。でなければお前が死ぬぞ。」
「…分かってる。」
ソーマに続きユウキも移動を始める。
(分かってる…けど…)
第一部隊が待機ポイントから飛び降りるのを後ろから見ていたユウキは、どうにも煮え切らないまま自身も待機ポイントから飛び降りる。
「ユウッ!!」
「ッ!!」
アリサの呼び掛けで我に帰ると、右側から巨大なレーザーが発射された。轟音と共に地面を砕きながら迫ってくるレーザーを、ユウキは前に飛び出して紙一重で躱す。
『フフフッ…』
レーザーが飛んできた方を見ると、不敵な笑みを浮かべながら今回のターゲット、全身の配色が青系の色になった『アルダ・ノーヴァ堕天種』が手招きをして挑発する。
「行くぞソーマ!!」
「了解!!」
アルダ・ノーヴァ堕天種が手招きしている間にユウキとソーマは走り出し、一気にアルダ・ノーヴァ堕天種との距離を縮める。
「アリサとコウタは後衛!!アリサ!!隙を見て捕食だ!!」
「オッケー!!」
「はい!!」
コウタとアリサを後方支援に就くよう指示を出すと、2人は互いに離れる方向に動いて、銃口をアルダ・ノーヴァ堕天種に向ける。
「当たれぇ!!」
「当たって!!」
アリサとコウタがアルダ・ノーヴァ堕天種にオラクル弾を撃つ。しかし男神の両腕によって弾かれる。
「ゼアッ!!」
その間に接近したユウキが間髪入れずに両手の神機を振り下ろして追撃する。しかしアルダ・ノーヴァ堕天種は後ろスライドするように下がって躱す。
「ハァッ!!」
今度はソーマがユウキの後ろから飛び出して袈裟斬りを繰り出すが、男神が左手で神機を掴んで止めてしまう。
「シッ!!」
次は間髪入れずにユウキが左下から近づいて逆袈裟斬りで斬りかかるが、それも男神が右手で掴んで受け止めてしまう。だがユウキも即座に左手の神機で女神に向かって突きを繰り出す。
しかし女神は右腕をムチの様にしながら、向かってくる神機の刀身に巻き付けると、自身の眼前で止めてしまった。
「今だっ!!」
「当てる!!」
今度はコウタとアリサが爆破弾を撃つと、それぞれ男神と女神に直撃する。爆破の衝撃で女神、男神それぞれ掴んでいた神機を離してしまう。その間にユウキとソーマは一旦下がる。
その途中、ユウキとソーマには女神と男神両方に爆破の衝撃で鎧にヒビが入っているのが見えた。
「っ!?こいつには攻撃が通る!!全員攻撃の手を緩めるな!!」
「「了解!!」」
ユウキの指示でコウタとアリサは中断しようとしていた攻撃を続行する。対して男神が両手で女神を庇い、女神が両手足を伸ばして腹這いになる。すると女神は髪を振り乱してオラクルの刃を四方八方に飛ばしてきた。
それをコウタとアリサはジャンプして避けつつ男神にオラクル弾を撃ち込む。そしてユウキとソーマも着地と同時に横に避け、アルダ・ノーヴァ堕天種に向かって行く。ユウキは左、ソーマは右から女神を挟み撃ちにする。
「ガッ!!」
「グッ!!」
飛び上がり、両手の神機を振り上げて女神の頭から斬りかかるユウキには男神がユウキの腹に裏拳を当てて迎撃する。さらに神機を構えたソーマには正拳突きを繰り出す。ユウキはモロに攻撃を受けて突き飛ばされてしまったが、ソーマは装甲の展開がギリギリ間に合い、直撃は回避出来たがアルダ・ノーヴァ堕天種から離される。
ユウキとソーマが離れた間に女神が男神の頭に乗る。すると男神は両手を広げてコウタとアリサに向かって突進してきた。
「うわっ!!」
「くっ!!」
コウタとアリサは互いに離れる様に動いて突進を難なく回避したが、その後に女神が2人を突き刺そうと両手を伸ばしてきた。予想外の事にコウタとアリサは反応が遅れたが何とか避ける。しかし咄嗟の回避のせいで体勢を崩し、アルダ・ノーヴァ堕天種の追撃を許してしまう。
「アリサ!!」
女神が男神の下を掴むと、ハンマーの様に使いアリサに向かって振り下ろす。ユウキが咄嗟に間に割って入り、装甲を展開する。
すると男神が手を翳しつつユウキに迫ってくるが、装甲で防御する。次は反対側のコウタを狙って女神が男神を振り下ろす。アリサも体勢を立て直し、チャンスと思い装甲を閉じると、ユウキの足元が光だす。
「があぁあ?!」
「ユウ!!」
突如ユウキの足元から光の柱が吹き出し、ユウキがダメージを受けつつ跳ね上げられる。その間に男神がコウタに迫ってくる。しかしソーマが装甲を展開して攻撃を肩代わりする。ユウキの時と同じく男神が手を翳しながら迫って来たのを装甲で防ぐと、即座にコウタと共にその場を離れる。
案の定ソーマが居た場所には光の柱が立ち上がった。ソーマとコウタがその柱を回避した間に、女神は再度中に浮いているユウキに男神を叩き付ける。
「お…らぁあ!!」
しかしユウキは男神の手に全力の回し蹴りを叩き込み、辛うじて軌道を逸らす。男神の手は空を切って地面に叩き付けられ、そして叩き付けた場所から光の柱が立ち上がる。
その間にソーマが神機を構えながらアルダ・ノーヴァ堕天種に飛びかかる。対して女神がソーマに向かって横凪ぎに男神を振る。
「そこだぁ!!」
コウタが男神の肩を爆破弾で撃ち込むと、その衝撃で男神がソーマの下へと軌道を変える。
「くたばれっ!!」
ソーマが男神を踏み台にして女神に近付くと神機を横に振る。すると神機が女神の頭の上を通り天地輪を破壊する。回避しようと大きく下がったアルダ・ノーヴァ堕天種だったが間に合わなかったが、結合崩壊を起こした事で活性化する。
「今です!!」
活性化の最中にアリサが鮫牙を展開して女神の髪を捕食する。
『フフフフ…』
しかしその攻撃も気にした様子も無く、女神が男神の腕の上に座る。女神が不敵な笑みを浮かべながら男神の顎を一撫ですると、男神の中心と女神の右腕からオラクル弾をばら蒔いてきた。
「チッ!!」
「クソッ!!」
「うわっ?!」
ばら蒔かれたオラクル弾を避けていると、後ろからアリサが男神に爆弾を撃つ。
「そんな?!効いてない?!」
さっきまで効果のあった爆破弾がまともにダメージを与えられなくなっていた。活性化のせいだろうかと考えていると、ユウキとソーマがオラクル弾の間を縫ってアルダ・ノーヴァ堕天種に近付いてきていた。
「ソーマ!!」
「おう!!」
ユウキが上から、ソーマが少し遅れて下から飛びかかる。すると女神の髪が逆立ち、装甲が展開されて剣の形に変形する。男神がそれを掴むと左へ剣を振ってユウキを斬りかかる。
「グッ!!」
「チィッ!!」
左に居るユウキは装甲で防ぐが凪ぎ払わた。その後に男神は右に剣を振る。ソーマもそれを防御するが、剣に凪ぎ払われる。そして次の一撃でコウタを狙って左に剣を振る。
「コウタ!!」
アリサが後ろから爆破弾を撃つがやはり効果が無い。結局男神の攻撃を止める事が出来ず、剣がコウタを狙って振り下ろされる。
「あっぶねっ!!」
前の攻撃の間に少し離れた事もあり何とか躱す事が出来た。しかし男神はコウタに狙いを定めて続けて攻撃する。そしてその間にユウキが再度アルダ・ノーヴァ堕天種の左側から向かって行く。
「させるかぁあ!!」
ユウキが右手の神機を振り上げる。すると右手の神機の刀身から紅いオーラが吹き出してきた。ユウキの声に反応して振り向くと、ユウキが神機を振り下ろす。
『ズガァァァン!!』
神機を振り下ろすとと同時に紅い斬撃が飛び出し、男神を巻き込んでさらに後ろのビルを真っ二つに斬り裂き、辺りに土埃が舞い上がった。
「なっ!?」
『倒してしまった』そう考えた瞬間、ユウキに隙が出来る。
「ユウッ!!」
アリサの声に意識を戻すが、土埃から左半身が吹き飛んだ男神が外に女神剣を振る。ユウキは左手の神機で防御出来たが、吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
「アリサッ!!コウタッ!!総攻撃だ!!」
「「了解っ!!」」
戦線に復帰したソーマが男神に神機を下から振り上げる。しかし男神も女神剣を横に振って受け止める。
「当たれぇ!!」
「援護します!!」
コウタが男神の手元に、アリサが右肩に爆破弾を撃ち込む。その衝撃で男神は剣を握る手を緩めてしまう。その瞬間を見逃さず、ソーマは神機を握る両手に力を込めると、男神は女神剣を弾かれてしまう。
「アリサ!!リンクバーストだ!!」
空中で剣から人形に戻ると、ソーマが男神を足場にして飛び上がる。ソーマが受けたし弾を渡してバーストさせる。人形に戻ったばかりで身動きの取れない女神にソーマが袈裟斬りを叩き込む。
『ブシャァアッ!!』
女神が切り裂かれて血が吹き出すと、そのまま力無く地上に落ちていく。すると男神も動きを止め、その場で崩れ落ちた。
「終わったか…」
ソーマが着地したのを確認すると、コウタとアリサは立ち上がったユウキの様子を見に行った。
そしてその間にソーマがアルダ・ノーヴァ堕天種のコアを回収して任務を終了した。
-訓練室-
第一部隊が任務から帰るやいなや、神機使い達に召集がかかり、訓練室に集められた。とは言え第二のノヴァ討伐作戦を展開している現状では、神機使い全員が呼び出される理由は大方察しはついている。
「さて、諸君らも知っての通り、第二のノヴァ討伐のため、全部隊に動いてもらっている。しかし、アリウス・ノーヴァの進化の早さは我々の予測を遥かに越えていた。事実、たった1日で雨宮リンドウ少尉がアリウス・ノーヴァを引き付けられなくなってきている。」
ツバキからの報告に神機使い達がザワつく。リンドウを囮にし始めたのが昨日のはず、なのにもうそれが通用しないと言った事実を聞かされて神機使い達が動揺する。
しかしツバキが一喝すると辺りは静まり帰り、ツバキが話を進める。
「そこで支部代理は早急な決着が必要だと判断し、そのための作戦も用意してある。」
相手の強化が異様な程に早いならば、対策を講じられる前に決着をつける。当然と言えば当然の決断でもある。少ないが切り札もある。本音を言えばもう少し切り札を揃えたいところだが、その間に揃えた切り札への対策をされては元も子もない。その為にペイラーは短期決戦に踏み込む決断をしたのだ。
「アリウス・ノーヴァは類い稀な捕食力と学習能力がある。故に、偏食因子をも取り込み、自らの守りに使ってくる。」
ツバキは以前にも全員に伝えたアリウス・ノーヴァの特性を再確認させる。それを聞くと延々と強化され続けるアリウス・ノーヴァの特徴を再確認した神機使いの一部は軽く絶望すら覚える。
「しかしこの特性にも穴はある。捕食したものを取り込む際に最も効率よく取り込む為、偏食傾向を固定する作用がある事が分かった。そこで今回は超弩級アラガミのコアを直接アリウス・ノーヴァに撃ち込み、偏食傾向が固定されている間に倒す…これが今回の任務だ。」
ツバキが言う穴とは、アリウス・ノーヴァの貪欲に全てを喰らい、学習しようとするが故の弱点でもあった。喰ったものを最も効率良く取り込み、学習するにはどうすれば良いのかを考えた結果、自身の偏食傾向を変えれば良いと言うのを強制的に実行しているためなのだ。
その特徴を利用して、偏食傾向を固定すれば最低限の攻撃は通る。その間に決着を着けるのが今回の作戦だ。
「アリウス・ノーヴァ討伐には第一部隊、他の部隊は第一部隊が戦いに集中出来るように露払いをしてもらう。では部隊の配置だが…」
(…やるしか…ないのか…?)
ツバキが作戦中の部隊の配置と役割を説明していく。しかしそんな中、ユウキは説明を聞きながらもアリウス・ノーヴァを倒していいのか迷っていた。
-支部長室-
全体への作戦説明が終わり、第一部隊は支部長室に招集され、ペイラーとツバキから作戦の詳細を告げられる。
「さて、皆も知っての通り、今からアリウス・ノーヴァ討伐に向けて神機の更新を始めとした準備に入ってもらいたい。その為にも作戦内容の詳細を話しておくよ。」
ペイラーから促され、ツバキが作戦の詳細を伝える。
「まず、アリウス・ノーヴァの現在地だが…諸君らが初めて目標と出会ったあの山岳地帯だ。」
「あそこか…」
ツバキからアリウス・ノーヴァの潜伏場所を聞いたソーマが皆で遊びに行った場所を思い出しながらポツリと呟く。
「現状、アリウス・ノーヴァは何かを探している様に山岳地帯を彷徨いている。この状態がいつまで続くかは分からないが、このままであれば少なくとも山岳地帯の外に出る事はないだろう。」
スクリーンを下ろすとツバキが周辺の地図を表示する。地図にはアリウス・ノーヴァの足跡が線で表示されていて、確かに山岳地帯の外には出ていなかった。
「加えて先も言った通り、周囲のものを捕食して恐るべき早さで進化している。その為、超弩級アラガミのコアをバレットに加工し、目標に撃ち込む…狙撃を担当するのはサクヤ、お前だ。」
「はい。」
ツバキはアリウス・ノーヴァの防壁を崩す重要な役割にサクヤを指名する。確かにサクヤの狙撃能力なら問題なく当てるだろう。
「幸い山岳地帯と言う事もあり狙撃ポイントは多いが、基本的に迎撃ポイントは山岳地帯に広がる平地地点だ。目標が近くに居ない場合は最悪ここまで誘き出す。」
地図上で迎撃ポイントを丸で囲む。山岳地帯にも関わらず、多少開けている場所なので、戦い難い事はないだろう。
「相手は以前よりも強力な体に進化しているだろう。それから、決して誰も欠けることなく帰ってこい。いいな。」
「「「「「了解!!」」」」」
「…了解。」
全員が揃って返事をする中、ユウキだけが一瞬の迷いを見せた後、返事をする。
「強敵になりそうね…気を引き締めなきゃ。」
「大丈夫ですよサクヤさん!!今までだって危険な敵を何体も倒してきたじゃないですか。俺達ならやれますよ。」
気負いすぎている様にも感じるサクヤにコウタがいつもと変わらない、明るい様子で大丈夫だと言う。少々楽観視し過ぎにも感じるが、こう言うときのコウタの明るさは堅くなりすぎた緊張感を解し不安を忘れさせてくれる。そんなムードメーカーが居るのはありがたい事だ。
「それにユウのあの必殺技みたいな攻撃!!ウロヴォロス堕天種を一撃でふっ飛ばした蒼いバレットにアルダ・ノーヴァ堕天種戦でビルを真っ二つにした紅い斬擊!!あれがあればアリウス・ノーヴァも倒せるって!!いつも通りやればきっと大丈夫!!」
「い、いや…あれは…」
『まだ使いこなせていない』とユウキは伝えるが、コウタには届いておらず、蒼いバレットと紅い斬擊について、必殺技とは云々、必殺技はロマンだと何やら語り始めた。
ちなみにそれを聞いたペイラーは案の定『興味深い』と呟いていた。
「そんな力が発現したとは報告を受けていないんだがな。」
「ごめんなさい…アリウス・ノーヴァの解析の邪魔になると思って…報告しませんでした。」
ユウキとしては変な力が発現したが、戦えない訳でもない。アリウス・ノーヴァの対策のために急ピッチで研究を進める中、余計な事で時間を取らせない様に配慮したつもりだったが逆効果だったようだ。
「今度からは報告だけでも入れておけ。いいな。」
「はい。」
ツバキから報告は徹底するように注意を受ける。すると、突然コウタが何やら興奮冷めやらぬ様子でユウキの視界に入ってきた。
「なぁ?!あの必殺技の名前何にする?!」
「い、いや…今はそんなこと…」
『言ってる場合じゃない』と続けようとしたが、コウタは腕を組んで考え込んでいたため、聞いていないようだった。
少し考えていると名前を思い付いたのか顔を上げる。
「蒼い銃弾に紅い斬擊だろ…?じゃあ『コバルトマグナム』に『クリムゾンソニック』ってのはどう?!」
「まったく…今はそんなこと気にしている場合じゃ…」
非常時に必殺技(?)の名前を考えるのに必死になっているのはどうかとアリサが苦言を呈するが、コウタはあまり気にした様子はなく、寧ろ少し驚いている様な様子を見せた。
「え~でも名前あった方がイメージしやすそうだし、俺達も何をするのか分かりやすいじゃん?」
「それは…まぁ…」
コウタの正論とも言えなくもない言い分を聞いたアリサが悔しそうに言葉を濁す。
「ほらお前ら、名前は取り敢えずそれにしといて早く準備進めるぞ。」
ここまでのやり取りを見ているだけだったリンドウが、コウタとアリサの肩に手を置いてそのまま出撃準備をさせるために、そのまま3人で支部長室から出ていく。サクヤとユウキもそれに続き、ソーマは最後に部屋を出ようとする。
「ソーマ、ちょっと残ってくれるかな?」
「…?あぁ…」
しかしペイラーに呼び止められた。ソーマは一瞬歩いていく仲間たちの背中を見たが、すぐにペイラーの方を向いて支部長室に残った。
To be continued
遅れぎみでしたがどうにか投稿出来ました。アルダ・ノーヴァ堕天種と戦闘し、次にはアリウス・ノーヴァ討伐戦です。
戦闘でもユウキが迷ったせいで殆ど役に立たなくなってきてポンコツ化が進んできた気が…神機との適合率が上がって新しい力を発現出来ても全く使いこなせない状況…この先どうしようか…?
この先コバルトマグナムとクリムゾンソニックの設定です。(相変わらずのネーミングセンス…)
マグナムとソニック…やだ、世代がバレる…?
コバルトマグナム
ウロヴォロス堕天種討伐時に新たに発現した力。貫通力が非常に高い極太のレーザーを発射する。さらに貫通後に貫通した場所を周辺を砕き破壊していく蒼い破砕レーザー。多少であれば出力を調整することが可能。
クリムゾンソニック
月牙天衝(紅い)