GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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中二全開!!
アリウス・ノーヴァ後半戦です。それからシオファンの皆様、ごめんなさい。

今回グロ描写?があります。グロ描写は※で挟んでありますので、苦手な方はページを飛ばしてください


mission81 暴走

 -月影の霊峰-

 

  『バギィッ!!』

 

「なっ?!」

 

 アリウス・ノーヴァから硬い殻を割るかの様な音と共に、顔面が殴られる。

殴られたアリウス・ノーヴァはそのまま距離を取り、構えたまま様子を見る。

 すると殴った側のユウキがゆっくり立ち上がると体勢を変えて戦闘が出来る状態になり、ユウキの顔がアリウス・ノーヴァと第一部隊の目に映る。

 

「「「「っ?!」」」」

 

 その時彼らの目にはいつもとは違う瞳孔が縦に割れた右目、獣が相手を威嚇する表情をしたユウキが映った。それを見た時、アリウス・ノーヴァを含めてその場に居た者が獰猛な獣を前にしたような悪寒が背筋に走った。

 

「グルルル…」

 

 ユウキが低く唸ると、それに負けじとアリウス・ノーヴァが飛び掛かる。それをユウキは姿勢を低くして一気に前に出て、アリウス・ノーヴァの下を潜る。その先にはユウキが頭を抱えたときに落とした2つの神機があった。それを飛び掛かる様な動作で掴むと両手を軸にして反転する。

 そのままユウキはアリウス・ノーヴァに突っ込んでいき、アリウス・ノーヴァもまた反転してユウキに向かっていく。アリウス・ノーヴァが先手を取り、右翼でユウキに斬りかかる。それをユウキは左の神機を振り下ろして翼を受け止める。

 今度は左翼でユウキに攻撃する。しかしユウキは一気に身を屈めて両翼の下を潜る。そのままアリウス・ノーヴァの眼前に接近すると、ボディブローに似た要領でアリウス・ノーヴァの顎に右フックをお見舞いする。

 アリウス・ノーヴァは頭を左に向けさせられ、さらには衝撃に負けて身体ごと向きを変えさせられた。しかしユウキの追撃は止まることはなく、ブローの後に左足を右足に寄せ軸足を作ると、がら空きになった横腹にヤクザキックの様な蹴りを右足で叩き込む。

 衝撃を受け止めきれずにアリウス・ノーヴァは蹴り飛ばされる。その結果ユウキとアリウス・ノーヴァの間に適度な間合いが空いた。

 

「ガラァア!!」

 

 右足を地に着けるとユウキが吼えながら右の神機を振り下ろす。するとアリウス・ノーヴァの左肩を斬り裂く。そしてユウキはさらに前に出て、今度は左の神機を横凪ぎに振る。しかしアリウス・ノーヴァは咄嗟に上に飛び上がり、そのままユウキの頭上を飛び越えて、空中で体勢を変えると後ろを取る。

 

「ガルァアッ!!」

 

 対してユウキはその場で回転して振り向き様に両手の神機でアリウス・ノーヴァに斬りかかるが、アリウス・ノーヴァが後ろに下がる事で空振りに終わる。

 

「なんだ…あれは…?」

 

「ど、どうしちゃったんだよ…ユウ…?」

 

 しかしその様子を見ていた第一部隊は状況を飲み込む事が出来ず、討伐の時間切れとなったアリウス・ノーヴァがユウキに蹂躙されている様を見ているしか出来なかった。特にユウキの暴走を初めて見たリンドウとコウタは尚更何が起きているのか理解出来なかった。

 

(あの目…ディアウス・ピターの時と同じ…)

 

 そんな中でもアリサは何とか過去に見た『あの目』の状態について思考する。ディアウス・ピターと初めて戦った時に見た目と同じ『獣の目』だった。あの時と同じ状況ならばユウキに命の危険が迫っている可能性がある。しかしどうすれば良いのか分からず、アリサ達は放心しながら高速で動き回るユウキとアリウス・ノーヴァを眺めているしかなかった。

 

「グルァアアア!!」

 

 攻撃が空振りしたユウキは再度アリウス・ノーヴァに接近して両手の神機を振り下ろす。

 

  『ギィンッ!!』

 

 甲高い音と共にアリウス・ノーヴァはそれを両翼で受け止める。だがユウキは神機で両翼を抑えたまま翼の間からさらに前進すると、アリウス・ノーヴァの眼前に迫る。すると右足でアリウス・ノーヴァの眉間に膝蹴りを入れる。アリウス・ノーヴァは大きく身体を仰け反らせつつ後ろに飛ばされる。そんな状態でも右翼で蹴りの後で隙の出来たユウキの身体を斬り付ける。

 

  『ブジャッ!!』

 

 胴体に斜めの裂傷を入れられ、血を撒き散らしながらユウキは後ろに飛ばされる。

 

「ヴぅ"ゥ"ゥ"…イ"、い"ダァ"ィ"…イ"ダぁ"イ"…イ"だイ"イ"ダィ"ノ"…」

 

 体勢を整えながら地に足を着けると、ユウキは不気味な声でしゃべりながらヨロヨロと身体を起こす。

 

「どォ"ン"デェげぇ"ぇ"ェ"え"!!」

 

 ユウキが叫ぶと大きく両手の神機を振って構える。すると右手の、雷炎刀の刀身がバチバチと紫電を纏う炎へ変わり、左手の氷神刀は赤紫の光を放つ氷の刀身に変わる。

 そして次の瞬間、ユウキはアリウス・ノーヴァに一瞬で接近して、両手を外から内に振り、属性解放した神機ですれ違い様にアリウス・ノーヴァに攻撃する。するとアリウス・ノーヴァの足は光を放つ氷に閉じ込められ、少しずつ結合が弱まり、上半身は電撃で自由を奪われ、炎で焼かれていった。

 

「グルァァァアッ!!」

 

 ユウキは反転して身動き出来ないアリウス・ノーヴァの臀部に回し蹴りを叩き込む。すると蹴った衝撃でアリウス・ノーヴァは尻を振る事となり後足の氷が砕ける。それを期にアリウス・ノーヴァは身体を全力で振り前足の氷を砕くと、そのまま回転してユウキに斬りかかる。ユウキはジャンプで避けると、アリウス・ノーヴァは勢いで上半身の火を消しつつ、ユウキとは反対方向に向かって逃げ始めた。

 しかしユウキは着地と同時に、地を砕きながら一気に加速してアリウス・ノーヴァを追いかける。

 

「な、なんだよ…あれ…ホントに…ユウなの?」

 

 豹変したユウキを見ていたコウタは理解が追い付かず、信じられないと言った様子で心の内を呟いた。だがそんな心配を他所に、ユウキとアリウス・ノーヴァの戦闘は今なお続いている。

 

「お"に"ザン"ゴヂら"、ア"ん"よ"ガじョ"ヴず?イ"な"いい"ナ"い"」

 

 意味不明な事を言いながら、ユウキがアリウス・ノーヴァに追い付く。すゆと属性解放を解除してアリウス・ノーヴァを飛び越え、空中で体勢を変えてアリウス・ノーヴァと向き合うように前に出る

 

「バぁ"♡」

 

 狂気的な笑顔を浮かべたユウキが両手の神機を振り下ろし、アリウス・ノーヴァの右翼斬り落とし、顔の左側を縦に斬りる。

 

  『キュリャァア?!』

 

 予想もしない攻撃にアリウス・ノーヴァは思わず怯みそうになるが、そこはどうにか堪え、反撃のために左翼でユウキを斬る。

 しかしユウキは後ろに下がって躱し、右の神機を銃形態に変形してアリウス・ノーヴァに銃口を向ける。

 

「PON☆」

 

 奇妙な掛け声と共にコバルトマグナムが発射される。アリウス・ノーヴァは避けようとするも、間に合わずにレーザーが左翼を貫く。すると貫いた場所から辺りから左翼が弾け飛んで、アリウス・ノーヴァは両翼を失った。

 しかしアリウス・ノーヴァも両翼を失ったからと言って攻撃手段が無いわけではない。せめてもの抵抗に、頭上に結晶を作るとユウキに向かって撃ってきた。それをユウキは右手の神機を剣形態に変形させつつ再度後ろに下がって避ける。

 

「…クヒッ♪」

 

 不気味に笑うと両手の神機の刀身から紅いオーラが吹き出てきた。さらにしっかりと足を着け、自身の身体を捻る体勢で構える。

 

「ッ!!全員伏せろぉお!!」

 

 リンドウの声と共に第一部隊はその場に伏せる。するとユウキはその場で1回転する。

 

  『ズガァァァン!!』

 

「うわぁぁあっ?!」

 

「きゃああああ!!」

 

 伏せた第一部隊の頭上をクリムゾンソニックが走るとコウタとアリサの叫び声が響く。少しの間伏せたままだったが、通り過ぎたのを関知すると第一部隊は起き上がる。しかしその時目についた景色を見た時、想像もしなかった光景を見て絶句する。

 

「な、なに…これ…」

 

「あ、あの斬撃一発で…」

 

「辺り一面…ぶった斬りやがった…」

 

 第一部隊の目に映ったのは、ユウキの腕の位置より上にある近場の斜面や岩等に巨大な裂け目が出来た、あるいは消失した光景だった。先のクリムゾンソニックを放ちながらの回転斬りで辺り一帯の景色を変えてしまったのを見て、サクヤ、リンドウ、ソーマは、こんなことをやった事に対する驚きと、一歩間違えば自分達が巻き込まれていた事に対する恐怖を口にするだけで精一杯だった。

 

「…ッ!!アリウス・ノーヴァは?!」

 

 ソーマがアリウス・ノーヴァがどうなったのかと意識を向ける。するとそこには上半分が消し飛び、コアが剥き出しになったアリウス・ノーヴァだったものがあった。

 

「…たお…した?」

 

「そう…だと思います。でも、コアが…まだ…」

 

 現状、アリウス・ノーヴァはもう戦える状態ではないが、コアは無事に残っている。倒しきれたなら何の問題もないのだが、足だけになっても逃げる可能性もある。迅速に回収したいところだが、暴走しているユウキに近付いても良いのか分からず戸惑っていると、ユウキがアリウス・ノーヴァに向かって歩き始める。すると突然アリウス・ノーヴァは霧散した。

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

 何事かと思い、第一部隊は戦闘体勢になる。そしてユウキも何が起こっているのか分からないのか、首を『コテンッ』と傾けてその場に突っ立っている。

 少し待っていると、コアを中心に霧散したオラクル細胞が集まり、丁度人と同じ姿形になるように新たなアラガミを形成した。

 

「え…?」

 

「何で…どうして…?」

 

「え?ちょっ…?何でここに…?」

 

 現れたアラガミを見た第一部隊は混乱する。何故なら新たな姿へと変化したアラガミはよく見知った姿をしていたのだから。

 あまりにも予測不能な姿にアリサ、サクヤ、コウタは『何故?どうして?』と頭に浮かんだ疑問をそのまま口にする事しか出来なかった。

 

「アイツは…」

 

「…シオ…」

 

 新たに現れたアラガミは、リンドウの恩人であり、ソーマにとっては大切な者、そして末捕食を地球から遠ざける為、1人月へと飛び立った時の愛らしいシオの姿を映し取っていた。

 

「…」

 

 ソーマがシオの名を呟くが、シオは第一部隊を前にしても終始無言で無言で、目付きも鋭いものになっていた。

 

「グルァアア!!」

 

 第一部隊が困惑している中、ユウキがシオに飛び掛かる。

 

「ッ?!待ってユウ!!」

 

 アリサがユウキを止まるように呼び掛けるが、構わずにユウキは両手の神機を外から横に振る。対してシオは右手を神機にしつつ下がって避けると前に出て反撃に出る。

 シオはユウキの神機の上を取ると、右足でユウキの顔面に蹴りを入れる。ししユウキは身体ごと右に傾けて蹴りを避ける。

 

「シオもやめろよ!!俺たちが分かんないのか?!」

 

 コウタの声に耳を傾ける事なく、シオはユウキの頭の逃げ道を塞ぐ様に左足を前に出すと、そのまま両股でユウキの頭を固定する。

 

「いや、恐らくあれはシオじゃない。」

 

「え?!」

 

 ソーマが目の前居るのはシオではないと言う中、当のシオは右手の切っ先をユウキに向けら、そのままのユウキ頭を串刺しにしようと振り下ろす。だがユウキは振りかぶった両腕のうち、右腕をさらに内側に巻き込み、神機の刀身をシオの右手と身体の間に入れ、シオの右手の軌道を逸らせる。

 

「あれは…ノヴァが特異点であるシオを読み取った脱け殻…アリウス・ノーヴァがシオの姿を模しただけ…だ…」

 

「そう…なの?」

 

 ソーマがアリウス・ノーヴァの正体とシオとなった経緯から、あれはシオではないと言うが、そんな事に目もくれずにユウキとシオは戦っている。ユウキはシオの右腕の攻撃を自身から逸らせると、そのまま右腕の神機に滑らせる様に神機を振り上げて右腕ごと斬り落としにかかる。しかしシオが腕を霧散させつつ元に戻した事で、寸でのところで斬り落とされる事は回避した。

 

(しかし…出来るのか…?シオと同じ姿の敵を…この手で…)

 

 ここに来てソーマも今の姿をしたアリウス・ノーヴァを倒せるか自信がなくなってきていた。見知った者を傷付け、殺す事は『普通であれば』抵抗を覚えるだろう。

 しかしユウキはそんな素振りも見せずに左手の神機を自身に刺す様な軌道で、肩に乗っているシオを攻撃する。しかしシオは飛び上がる事で突きを躱す。

 

「とは言え…こんだけ互いが近くにいて、ましてやユウは暴走…下手すりゃ止めるどころかこっちが襲われそうだ…」

 

 状況が飲み込めないままだったが、リンドウがなんとか状況を整理する。援護しようにもシオとそっくりの相手では引き金も引けないし剣も鈍る。ユウキに至っては動き回るせいで支援の為の攻撃に当たる可能性がある。

 リンドウ達が攻めあぐねていてもユウキとシオは止まらない。シオは空中で再び右手を神機に変え、着地までの隙を潰すために神機にした右手からオラクル弾をばら蒔く。しかしユウキはオラクル弾の中を両手の神機で弾を斬り捨てながらシオを追う。

 対してシオは着地するとオラクル弾を撃ちながらユウキに向かっていく。ユウキは剣、シオは銃で応戦しつつ2人が接近する。ある程度近付くと、シオは撃つのを止め、右手を剣形態でユウキに向かって行く。

 

「…」

 

「グル"ァ"ア"!!」

 

 先に動いたのはシオだった。シオは右手を外から内に振り、少し遅れてユウキが左の神機を内から外へ振って攻撃する。その結果シオの攻撃を左手の神機で受け止めた状態となった。 

 一瞬の膠着の後、ユウキの反撃よりも先にシオの頭突きがユウキの額に決まる。後ろへと体勢を崩して隙が出来たユウキにシオの右足が突き出される。

 

「ごベゥ"ッ?!」

 

 ユウキの喉元に蹴りが入り、アラガミの力で蹴られたユウキ身体を反らせながら後ろへと飛ばされる。

 そして間髪入れずにシオが追撃する。蹴飛ばされたユウキに向かって神機で突き刺そうと右手を突き出す。しかしユウキは両足を外から回し、足の裏でシオの神機の刀身に当たる部分を挟み、身体を『くの字』に曲げながら両足で無理矢理左に剃らせる。

 

「グル"あ"ッ!!」

 

 シオの右手を逸らせた時、丁度身体の左側がシオに向いている状態になった。その瞬間、ユウキは左手を横に振り、左の神機で斬りかかるが、シオはそれをしゃがんで避ける。

 するとユウキは追撃に左手を振った勢いを殺さずにそのまま流し、身体ごと捻りを入れて左足でシオの顔に蹴りを入れると、今度はシオが後ろに飛んだ。

 

「ゴべッぼぉ"ォ"お"!!」

 

 ユウキは奇声を上げながらそのまま身体を回転させ、シオと向き合う状態になると、ユウキは一気に前に出て追撃する。シオは後ろに飛ばされつつも体勢を直し、地に足を着ける。

 ユウキはシオが間合いに入ると、右手の神機を振り下ろす。するとシオは後ろに下がってそれを避ける。

 

「ガァ"ラ"ァ"ア"!!」

 

 しかしユウキは逃がさないと言わんばかりに全力で左手の神機を横に振って追撃する。しかしこれもシオがジャンプする事ヒラリと躱す。

 

「…」

 

 ユウキの攻撃を避けたシオが空中で右腕で突きを放ちユウキの左目を狙うが、ユウキは頭を右に傾けて避ける。

 

  『ビッ!!』

 

 しかし神機に変形した右手の切っ先がユウキの眼帯の端を僅かに捉える。すると布が裂ける短い音がするとハラリと眼帯が落ちていく。

 

「「「「「ッ?!」」」」」

 

 眼帯を失った事でユウキの左目が露になり、その目を見た第一部隊は驚きを隠せなかった。何故ならユウキの顔の左側に微かに残っていたはずの傷は綺麗に消え、本来茶色のはずの瞳の色は左目だけ鮮血を思わせる深紅に染まり、右目と同様に瞳孔が縦に割れていたのだ。

 宙に浮いたままのシオが追撃に右足でユウキの顔に蹴りを入れる。蹴りを諸に受けたユウキは後ろに飛ばされるが、ユウキ蹴られてすぐに右腕を振り上げる。

 

  『ブシャァッ!!』

 

 ユウキの反撃でシオは血を撒き散らしながら胴体を右上がりの斜めに斬られ追撃を防がれた。

 

(シオを…斬った?何の…躊躇いもなく…?)

 

 斬られた時にシオは後ろに飛ばされた。両者とも宙に浮いている状態で、突如ユウキが振り上げた右手の神機が紅いオーラを纏う。 

 

「マ"だあ"ジダ。」

 

 不気味なユウキの声が響いた後、ユウキは神機を振り下ろす。

 

  『ズシャアァ…』

 

 先にシオを斬った場所と同じところにクリムゾンソニックを放ち、シオを右上がりに上半身と下半身に別れるように両断する。

 そのまま抵抗する事もなくシオは地に落ち、ユウキは体勢を整えながら着地する。

 

「「「「…」」」」

 

 一応はシオではないと考えられたが、友であり、仲間であり、恩人でもあるシオと瓜二つ敵を、ユウキは何の迷いもなく手に掛けた事実を目の当たりにして、その場に居た誰もが目を疑った。

 第一部隊の皆が放心している中、ユウキは歩いてゆっくりとシオだったものに近づき、シオの側まで来るとその場にしゃがみ込む。

 するとユウキは両手の神機を振り上げる。

 

 

 

  『ドスッ!!』『クジュッ!!』

 

 まずは右の神機を勢い良く振り下ろす。神機を振り下ろしてシオだったものの足先を斬り落とす。その時に神機地面に当たる音と血が吹き出る音がほぼ同時に聞こえてきた。

 

  『ブスッ!!』『ブシャッ!!』

 

 今度は左手を振り下ろしながら右手を上げる。左手の神機は上半身の斬り口辺りを斬り落とし、再び血が吹き出る。

 

  『ドンッ!!』『グシャッ!!』

 

 次は左手を上げて再度右の神機を振り下ろす。今度は少し斬り落とす所をずらして足首から斬る。

 

 『ドンッ!!ドドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドドンッ!!ドドドンッ!!ドンッ!!ドドンッ!!ドッ!!ドッ!!ドッ!!ドンッ!!』

 

 今のユウキはまるで子供が太鼓バチを与えられ、面白おかしく規則性のないデタラメなリズムで辺りを叩きまくって遊んでいる様だった。ただし、両手に持っているのはアラガミを倒せる武器で、ユウキの足元にはシオと同じ姿のアラガミがいる。振り下ろされる神機はシオの身体を次々とバラバラに斬り刻んでいく。

 

「…」

 

「ぁ…ぇ…?」

 

「…ユウ…」

 

「なに…やってんだよ…」

 

 アラガミとは言え、もはや人と変わらぬシオと同じ姿をしたアラガミに対して死体を斬り刻むと言う、人道から外れた行為を平然とやっているユウキを見て第一部隊は言葉を失う。

 リンドウはあまりに異常な光景に絶句し、サクヤは小さな声を溢すだけで精一杯、アリサは何が起こっているのか理解が追い付かず、ユウキの名を呟く事しか出来ず、コウタは震える小さな声でユウキに呼びかける。

 第一部隊がユウキの異常な行動に恐怖すら覚えているにも関わらず、ユウキが神機を振り下ろす度に足を、腕を、胴を、頭を細切れに斬り刻み、その度に血が飛び散り、シオだったものはもはや原型をとどめない程にグチャグチャにされていた。

 

 

「…何やってんだよユウ!!」

 

「やめろ!!ユウ!!」

 

 コウタとソーマが怒気を孕んだ声でユウキを呼び、シオへの攻撃を止めさせようとする。するとユウキの動きが止まり、両手を下ろした。

 ようやく止まったかと思い少し安心した第一部隊だったが、ユウキは右手の神機を足元に置くと、おもむろにグチャグチャにしたシオの亡骸に右手を伸ばすと、淡い青色に発光する手のひらサイズの球体を取り出した。

 それを見た第一部隊はシオ…否、アリウス・ノーヴァのコアだと直感で理解がした。何をするつもりだろうかと思いながら、第一部隊はユウキが数秒それを眺めているのを見ていた。するとユウキは徐にコアを口元に運ぶ。

 

  『ベギッ!!バギッバキッ!!グヂュッ!!』

 

 硬い殻でも噛み砕くかの様な音を出してユウキがコアを喰い始めた。2、3回咀嚼すると、硬い部分を砕き終わったのか、今度は血を抜いてない肉を喰うかの様な粘り気のある水音を発てながら、アリウス・ノーヴァのコアを喰っていく。

 

「…は?」

 

「…うそ…そんな事が…?」

 

「どう…なってる…」

 

「マジ…かよ…」 

 

「…ぁ…ぇ…?」

 

 第一部隊はユウキがコアを喰っている様を何が起こっているのか分からないと言った様子で、唖然としながら眺めていた。人間がオラクル細胞の塊であるアラガミを喰っているのだから当然と言えば当然の反応だろう。

 ユウキはしばらくコアを咀嚼していたが、やがて『ゴクン』と喉を鳴らして飲み込んだ。その後、ユウキは足元に置いた神機を掴むとゆっくり立ち上がる。

 そして第一部隊、特にコウタの方へと向きを変えるとユウキは姿勢を落とす。

 

「ガルァアッ!!」

 

 ユウキが吼えると一気にコウタの元へと距離を詰めるべく飛びかかる。間合いに入ると、ユウキは両手の神機を振り下ろして襲いかかる。

 

「うわっ?!」

 

 コウタ反射的に右に跳んで神機の攻撃を避ける。

 

「ユウ!!やめッ??!!」

 

 コウタがやめろと言おうとするが、唐突に腹に強烈な痛みを覚えて最後まで言うことは出来なかった。それも当然だろう。ユウキの左膝がコウタの鳩尾に入っていたのだから。予想してなかった膝蹴りを食らったコウタは、そのままユウキの膝蹴りで飛ばされ、ユウキが足を着けたのと同じような場所まで転がされた。

 

「あっはっ!!ヴっっっ!!ぎっ!!ぃぃぁ!!」

 

「…ぷヒッ♪」

 

 腹に走る激痛で起き上がる事も出来ず、腹を押さえながら吐き気必死に抑え

辛うじて短く息をして悶えるコウタに、ユウキは容赦なく左の神機を振り上げて追撃しようとする。

 

  『バンッ!!』

 

 短い炸裂音が響くと、ユウキは身体ごと勢い良く振り替えって右手の神機を横凪ぎに振る。すると『バチンッ!!』と乾いた音と共に、横に振った神機の切っ先が狙撃弾を弾いた。

 

「やめなさいユウ!!それ以上続けるなら当てるわよ!!」

 

 サクヤがユウキに警告し、銃口を少しずらしてユウキの身体を捉える。その口振りからは先の発砲はわざと外す軌道で撃ったと思われるが、今は銃口がユウキに向いている。サクヤの技術があれば当てる事自体は難しくないだろう。

 ただし実際に撃てるかはまた別の話だ。このまま止まらなければ仲間を撃つ事になる事実に、銃口を向けている筈のサクヤの表情は強張り、逆に追い詰められている様だった。

 

「じイ"血"ャ"ん…ア"素ボッ?!」

 

 もはや目の前に居るのが誰なのかも認識出来ないのか、サクヤの脅しも通じずにユウキはサクヤに向かっていく。

 

「止まれユウ!!」

 

「ユウ!!落ち着け!!」

 

 サクヤとユウキの間にリンドウとソーマが割って入る。ユウキに止まるように呼びかけるがそれでも止まる様子は見せない。

 ユウキは両手の神機を振り下ろすと、リンドウとソーマも神機でそれぞれ受け止める。

 

「阿"ッぢム"イ"い手"…」

 

 攻撃を止められたユウキは、神機はそのままにして突然小さくジャンプして両足を身体に寄せ、抱え込むような体勢になる。

 

「保"異"ッ!!」

 

「「ッ?!!?」」

 

 次の瞬間、ユウキはリンドウの顎を蹴り上げ、ソーマの腹に蹴りを入れる。リンドウは上に、ソーマは後ろに蹴り飛ばされる。

 しかし攻撃を止められた隙にサクヤがユウキを撃ち抜くタイミングがあったのにサクヤはそれが出来なかった。そのためユウキはサクヤに再度向かおうとするも、先に更に少し離れた所に居るアリサが目に入る。

 ターゲットを変更したユウキはアリサに向かって突っ込む。サクヤが再度ユウキに銃口を向けるが、それを見ずに察知したユウキがサクヤに向かって左の神機を投げる。

 

「くぅっ?!」

 

 サクヤは一直線に自身に飛んで来る神機を横に跳んで躱す。その間もユウキは止まらず、右の神機を両手で持ち直してアリサに襲いかかる。

 

「ッ?!」

 

 アリサは銃口をユウキに向けるが、かつて自身が撃った弾丸で仲間を苦しめた事と、銃口を向けた相手が仲間をであり想い人である事から撃つことが出来ずにただその場で立ち尽くす。

 ユウキが神機を振り上げたのが見えた瞬間、アリサは大切な人の手で自分の人生は終わるのだろうかと言う思いが過り、怖くなって思わず『ギュッ』と目を瞑る。

 

「正気に戻って!!ユウ!!」

 

 ユウキを撃つ事も出来ず、どう対応していいかもわからない。アリサはただユウキが止まる事を願って必死に叫んだ。

 

「…?」

 

 いつまで経っても来るはずの痛みがこない。何があったのかと恐る恐る目を開けると、自身の首元に触れる手前で神機が止まっているのが目に映る。

 

「亜"…り"…サ?」

 

「ユウ…?」

 

 ユウキの声が聞こえてきた。アリサは声のする方を見るとユウキと目が合った。すると縦に割れていたユウキの瞳孔が丸に戻り、深紅に染まっていた左目の瞳はいつもの茶色に戻っていった。

 少しの間のあと、突然ユウキは糸が切れた人形の様に力が抜け、神機をアリサの首元から離すと、そのまま意識を失ってアリサの方へと倒れ込んだ。

 

「あっ…」

 

 放心していた所に突然人一人と神機の重量を支える事になったため、少し体勢を崩したが、アリサは何とか倒れてきたユウキを抱え、そのままその場に座り込む。

 その間に、ユウキに襲われた第一部隊の面々がアリサの元に集まってきた。

 

「いってて…は、腹痛てぇ…何だったんだ…?」

 

「まさか…アラガミ化が一気に進行したのか?」

 

「そう…としか考えられないわね。でも、何で急に…?」

 

 コウタ、ソーマ、サクヤはヨロヨロと歩いてきてユウキが暴走した理由を考える。

 

「考えるのは後だ。まずは引き上げよう。何にしても、後の事は博士に報告して調べてもらうしかないだろうしな。」

 

 終末捕食を引き起こす強敵を倒したにも関わらず、終わったと言う安心感も、人々を守りきったと言う達成感もなく、どうにもスッキリしない。いや、何故かは分かっている。ユウキが暴走した挙げ句、自分達を襲ったからだ。

 しかし今この場でどうこう言っても出来る事など何もない。予想通りに暴走がアラガミ化に起因するものならば極東支部に戻らなければ調べる事も出来ない。ソーマ達と同様、動きの鈍いリンドウから撤収の合図が出ると、ユウキが持っている神機をリンドウが、投げた神機をソーマが回収して、各々帰還の準備を始める。

 

「…ユウ…」

 

 撤収準備が進む中、アリサは自分の腕の中で目覚めぬユウキの名を呟く。しかしアリサの声は届く事なく、ユウキの意識は目覚める事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小さな綻びを見逃してしまう…そう言ったちょっとした不注意が積み重なり、時には取り返しのつかない事態を招いてしまう事がある。例えば…人の人生を大きく■わせる、そんな事さえも■■に起こり得る。

 あと少し、ほんの少し、事態を重く受け止めていれば…俺達はこのまま…皆と■わらぬ日■を過ごせたかもしれなかった。仮定の話など無意味だとは分かっている。たが、どうしてもその未来を考えてしまう。何故なら…そんな未来を■り零したのは…他でもない、俺達自身なのだから…

 

極東支部第一部隊活動記録 

著:ソーマ・シックザール

 

 

 

 『カチッ』

 

 ■〇の■車が噛み合った。

 

To be continued

 




後書き
 アリウス・ノーヴァ討伐完了ですが…全国1500万のシオファンの皆様、本当にごめんなさい。シオをトレースしたアリウス・ノーヴァをボコボコにしてしまいました。い、一応同じ容姿の別人?なのでどうかご容赦いただきたく思います。
 次のページでクリムゾンソニックの設定もうちょっとちゃんと書きます。流石に前回の設定では雑過ぎました。


クリムゾンソニック
 アルダ・ノーヴァ堕天種討伐時に発現した力。刀身が紅いオーラを纏う。この状態で神機を振ると斬撃を飛ばす事が出来る。オーラの正体は銃身に使う神機内のオラクル細胞で、刀身の接続部から細胞を放出し、刀身全体に纏わせている。オーラを纏うと神機内のオラクル細胞を消費する。多少出力の調整が可能。
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