GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

92 / 126
 後れ馳せながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 前回ズタボロにされて死にかけたユウキ…何やら諦めたようですが…?


mission89 壊れた心

(俺は…どうなった…?)

 

 クロウの攻撃で瀕死になり、気が付いたら何も無い空間で動けないまま倒れていた。

 

(生きてる…?いや…ほとんど死んだ様なものか…)

 

 直前に自分がどんな目にあったか思い出し、自身の最期を察した。

 

(全身深く切り刻まれて…手足ももう動かない…血を流し過ぎた…)

 

 背中や剥き出しの腕と足にヌルヌルとした感触がしてて鉄臭い。

 

(…寒いなぁ…)

 

 ここに来てようやく寒気を感じる事に気が付いた。

 

(近づいてる…)

 

 目は見えなくなってしまったがクロウがゆっくりと歩いてくる足音は聞こえてきた。

 

(このまま…死ぬのか…)

 

 敵がこっちに来るのは分かるがもう動けない。ユウキは死を覚悟する。

 

(…)

 

 死を覚悟したとたん、急に今までの事を昨日の事の様に思い出した。

 

(何だったんだろうな…俺の人生…)

 

 自分の人生を振り返ったユウキは自身の人生に何の意味があったのか疑問に思う。

 

(人間らしい生活もできずに…いや、神機使いなってからは良くなったけど…)

 

 神機使いなる前と後、生活のレベルは天と地ほどの差があるくらいに良くなった。だが、それは人としてほ最低限の生活を確保しただけで、それに何か意味があったとは思えない。

 

(アラガミ化が進んで…俺が皆を殺しかねないし…もう帰れない…)

 

 結局自分には誰かを危険に晒す様な事しか出来なかった。

 

(結局あの頃に逆戻りか…)

 

 神機使いになっても最後は獣以下の生活をする事になってしまった。自分には人らしい生活は送れない運命なのだと絶望する。

 

(良いこともあったけど…イヤなことの方が多かったな…)

 

 過去の出来事を思い出し、思いの外ネガティブな人生だったと思った。

 

(仲間には…恵まれたけど…)

 

 神機使いになってから出会った仲間達…バケモノの化した自分に殺意を向ける者も居たが、それも仕方ない事だと思う。むしろ身を案じてくれた人が居る事に驚いたくらいだ。

 

(…)

 

 そうやって共に戦ってきた者達の事を思い出すうちに、ある人達の事も思い出す。

 

(…あの世でエリックやユーリ、ヤナギさんとカオルさんに会ったら…色々と言われるかな…?)

 

 自分が未熟だった、あるいは迷いを見せたせいで死なせてしまった…いや、自分が殺した人達の事を思い出す。

 

(また一人か…)

 

 しかし、身を案じてくれた仲間も自分から拒絶してもう居ない。

 

(…一人で死ぬのって…寂しいな…)

 

 誰にも知られる事もなくひっそりと死ぬ…誰も傍に居ない事に寂しさや虚しさを覚える。

 

(タツミさん、ブレンダンさん、カノン、アネット…)

 

 第二部隊のメンバー…

 

(ジーナさん、シュン、カレル、フェデリコ…)

 

 第三部隊のメンバー…

 

(博士、ゲンさん、ツバキさん、ヒバリさん、リッカ…)

 

 自分が戦う時にサポートをしてくれる人達…

 

(エドワードさん、エリナちゃん、カエデさん、ノゾミちゃん、居住区の皆…)

 

 戦いとは関係のないところで出会った人達…

 

(エリックさん、ユーリ、ヤナギさん、カオルさん…)

 

 自分のせいで死んでいった人達…

 

(シオ、レン…)

 

 未来を託し、助けてくれた仲間達…

 

(リンドウさん、サクヤさん、ソーマ、コウタ…)

 

 第一部隊の仲間達…今までに出会ってきたたくさんの人達…多くの仲間の事を思い出す。そして最後に思い出したのは、銀色の髪を靡かせて振り返る、綺麗な笑顔を向けてくれる少女…

 

(アリサ)

 

 これが最期になるならば、最も強く会いたいと思ったのは、こんな自分の身を案じ、いつだって味方してくれると言ってくれた少女…いつだって笑っていて欲しいと思える少女だった。

 

(死ぬ前に…もう一度だけ…会いたかったな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ブザゲル"ナ"』

 

(一人で死ぬのは…イヤだ…)

 

 『ギザマ"ノ"ゼイ"ジヌ"ナ"ン"デジョウ"ダン"ジャナ"イ"』

 

(道連れに…違う…生き残るんだ…でも、どうやって…?)

 

 『オ"デバマ"ダダダガエ"ル"』

 

(この状況から敵を滅ぼす…そのためには…?)

 

 『ズベデヲ"グイ"ヅグジデデモ"イ"ギノ"ゴル"』

 

(…)

 

 頭の中で声が響いた気がした。その声に従い、どうやったら生き残れるか思考する。

 

(反応しきれない…思考が追い付いてないせいか…?そのラグを無くすには…?)

 

 そもそも何故こうも一方的に攻撃されて瀕死に追い込まれたのか?クロウとの戦いを振り返ると敵の攻撃に反応は出来たが、自分の思考がクロウに着いていけてないから、ことごとく攻撃を読まれて攻撃を受け続けたのだろうと結論付けた。

 

(生きることから逃げるな…か…)

 

 かつて自分が出した命令を思い出す。

 

(我ながらとんでもなく難しい命令を出したものだな…)

 

 こんな死の縁どころか死が確定した様な状況からでも生き残れとは酷な命令を出したものだと自嘲する。そして同じような状況でこの命令を守りきったリンドウはやっはすごい男だと改めて感じた。

 

(…)

 

 ほんの2、3秒…ユウキは自分がどうしたいのか考え答えを出す。

 

(帰るんだ…)

 

 もう死を覚悟するつもりはない。是が非でも生き残る。

 

(居場所なんか無くてもいい…ただ生きて帰ってきたと実感出来ればそれでいい…!!)

 

 生きて帰る、でもそこには居場所はない。仲間の元に帰りたい、そんな特別でも何でもない願いさえも自分には過ぎたものだと思いつつも帰りたい。そう強く思った瞬間、ユウキの中でタガが外れた。

 

(帰るんだ…もう一度…(アリサ)に会うんだ…!!)

 

 無様でも、カッコ悪くても…生きて帰る。その為なら後の事などどうでもいい。その覚悟でユウキはある決意をする。

 

(その為なら…鬼にでも…悪魔にでも…!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アラガミにだってなってやる!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒとのウツわ(スガた)ニこダワるノハ…モウ、イイヤ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『ブジャッ!!』

 

「っ?!」

 

 鮮血が宙を舞う。クロウは驚いて後ろに跳ぶ。だが後ろに跳んだ後に、再びクロウは驚愕して両目を見開いた。何故ならユウキにとどめを刺そうと振り上げた右腕をユウキの左足が撥ね飛ばしたのだから。

 もはや虫の息だったはずのユウキを見ると、左足を振り上げてそのままバックフリップの様に身体を跳ね起こしてクロウと向き合う。

 クロウは警戒しながらユウキを見てみると、身体の至るところから黒い煙を噴き出していた。そして深く切り裂いたところも黒い煙を噴き出しつつも傷を塞がりつつあった。更には自分の右腕を撥ね飛ばしたと思わしき左足は獣脚へと変わり、鋭い鉤爪になっていた。

 クロウは本能的に『今仕留めなければいけない』と、そう思った時には頭や背中から白い歪な角が生えたユウキに向かって突っ込んできた。対してユウキも一気に前に出て左手の神機を内側に構える。

 クロウは咄嗟に間合いで負けていると思い、一旦止まって後ろに下がる。するとユウキが内から外へと左の神機を振るが空を斬る。続いてユウキはもう一度前に出て、右の神機を外から内に振って追撃する。

 クロウはさらに後ろに跳び右の神機を避ける。攻撃後、ユウキの両腕は左側に振られ隙が出来た。クロウはその隙に前に出て距離を一瞬で詰める。既に神機の間合いの更に内へと入っている。左足での反撃の可能性もあるが、足での反撃よりも左手の爪で引き裂く方が早い。確実に攻撃出来る。そう確信してクロウは左手を振りかぶる。

 

「ッ?!?!」

 

 しかし攻撃を受け、胴体を切り裂かれて後ろに飛ばされたのはクロウだった。一瞬何が起こっているか理解出来なかったが、左腰に神機を収納し、代わりに黒く鋭い鉤爪がになっていたユウキの右腕が振り上げられていたのを見て、この爪に切り裂かれたのだと理解した。

 近距離では左の神機、肉弾戦では右手の爪に攻撃される。ならば中、遠距離からの攻撃がベストだと考えてクロウは再び距離を取る。しかし、ユウキはクロウの動きに着いていき、再度距離を詰める。そしてユウキは左手の神機を内から外に振って追撃する。

 クロウは上に飛び上がり前転して神機を躱す。頭が下になり、ユウキの頭上に来たタイミングで左手を突き出してオラクル弾の発射準備に入る。

 

「ッ?!」

 

 しかし突然左手首を捕まれる。何事かと思っていると、左足一本で立ち、大きく身体を前に倒した状態で、いつの間にか獣脚へと変わっていた右足で掴まれていた。そしてそのまま勢いよく身体を回して右足ごとクロウをを地面に叩き付ける。

 クロウもようやく理解した。目の前の敵は理性を捨て去り、本能と反射のみで戦う事で人間の動きを超えているのだと。

 

「…」

 

 叩き付けたクロウに追撃すべく、ユウキは無言のまま右足を軸に身体の向きをクロウと向き合う様に回転させ、その過程で右腕を振り抜いて再度クロウの胴体を切り裂く。

 

「グッ?!」

 

 今までと違い思考から身体を動かすまでの僅かな時間を無くす事で、かなり強引にクロウの動きに着いてきていると分かると、ここまで優勢だったクロウが初めて顔を顰める。

 クロウを切り裂いた後、ユウキは左手の神機でも斬ろうと振りかぶるが、それよりも先にクロウの右足の蹴りがユウキの顔面に入り、大きく真上に飛ばされる。その瞬間、クロウは跳ね起きの様な動きで飛び上がり、ユウキに近づくとユウキの胴体を蹴り飛ばす。

 

「…」

 

 しかし蹴り飛ばされてもユウキは無言のままだった。蹴り飛ばされたユウキは空中で体勢を整え、後ろに飛ばされつつも踏ん張って止まる。空かさずクロウは左手からオラクル弾を発射する。

 

  『バァンッ!!』

 

 オラクル弾がユウキに当たり爆発する。しかしユウキは左手の神機で装甲を展開してオラクル弾を防ぐ。そして爆煙が晴れると、ユウキの腰周りから白いコートの様なものが生えて、身体も同じ色素が抜けた様に白い色に変わっていた。

 

「ッ?!」

 

 目の前の光景にクロウは驚愕し、一瞬動きが止まる。クロウの目には顔は真っ白になり、センター分けでボリュームのある白い長髪…そして縦に割れた瞳孔、時間が経ち錆び付いた血の様な赤銅の瞳…そして何より、クロウと同じ顔をした、ほとんどアラガミ化が完成したユウキが映っていたのだ。

 

「…!!」

 

 一瞬の間にユウキが距離を詰める。まずは左の神機を内から外横薙ぎに振る。それをクロウはジャンプして躱す。

 

「グルァアッ!!」

 

 唸りながら間髪いれずにユウキは右の爪で追撃する。クロウは左の爪でユウキの爪を受け止め、そのまま左手を軸に前転してユウキと背中合わせになるように後ろに着地する。そして左回りに回転して、左手の爪でユウキを切り裂こうとする。

 

  『ズリュッ…バサァッ!!』

 

 汚い水音が鳴ったと思ったら背中の棘と頭の角に肉が着き初め、その後勢いよく黒い翼が生えてきた。突然視界が遮られてクロウの動きが止まる。

 

「ガァラッ!!」

 

 その間にユウキはハンドスプリングの様な体勢になり、右足で後ろへと蹴り上げてクロウを蹴り飛ばす。そして両腕でユウキはクロウを追うように飛び上がる。

 片腕を失った状態のクロウでは空中での姿勢制御が上手く出来ず、大きな隙となった。その間にユウキは体勢を変えて接近し、右手でクロウの頭を掴む。

 

「ガァァァアアッ!!」

 

 ユウキは吼えならがらクロウを地面に投げつける。

 

  『ズガァァァンッ!!』

 

 轟音と共にクロウは地面に叩き付けられ、土煙が舞い上がる。数秒後、土煙が晴れると右手を上に掲げて、掌にはオラクル弾が作られていた。

 

「グゥルァアッ!!」

 

 ユウキがオラク ル弾を投げる。対抗してクロウも左手からオラクル弾を撃つ。

 

  『バァンッ!!』

 

 爆発と共に2つのオラクル弾が消滅する。そして爆煙で2人の視界が遮られる。その瞬間、爆煙を切り裂いて神機が飛んできた。続いてユウキもそれを追うようにクロウに迫ってくる。

 

  『ブジュッ!!』

 

 神機はクロウの左腕を切り落として地面に突き刺さる。続いてユウキが右手の爪でクロウの左足を切り落として勢いよく着地する。

 その後ユウキはゆっくりと立ち上がると、右足でクロウの右足を抑え、左足でクロウの首を抑える。そして左手で神機を掴むとプレデターフォームを展開して、捕食口をクロウの胸部に突き付ける。

 

「レ、イ…ヴン…」

 

「…」

 

 クロウがユウキを睨む。しかしユウキは無言のまま冷めた目でクロウを睨み返す。

 

  『グジュッ!!』

 

 粘着質な水音と共に神機でクロウのコアを捕食する。ユウキはコアを摘出され、死体となったクロウをしばらく眺めていたが、そのうちに黒い霧となって消えていった。

 左手の神機を腰に収納すると、次第にユウキの左腕も右腕同様に、黒く鋭い鉤爪が着いた腕に変わっていった。

 完全にアラガミ化したユウキはしばらく辺りを見回していた。するとエイジスで見た光の柱と同じようなものが立ち上がる。ユウキは迷いを見せる様子もなく、その光の柱に自ら入り込んでいった。

 

To be continued




後書き
 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 ユウキが頭のネジを全部外して遂に完成にアラガミ化しました。結局クロウとユウキの因縁は明かされませんでした(ゴメンナサイ
 ただそれらしいセリフとかは何度か出しているので分かる…かなぁ?描写力が欲しい。
 次回でリザレクション編は終わります。その次からは完全にオリジナルになることも多くなるのでご注意ください。
 あ、GE3のストーリークリアしました。灰域の設定からIFルートでうちの小説と繋げられそうだと思ったのですが…書こうか迷い中です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。