GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

98 / 126
ここ最近とても眠いです


mission94 不安

  -食堂-

 

 ユウキが帰ってきてからしばらく経った。しかし、あまりにも弱くなってしまったにも関わらず、大飯食らいなのは相変わらずだった。それどころか今までよりも食事量は増えていた。その為、あまり周りから良い印象は受けなかった。

 

(チッ…今度はリンドウさんと一緒か…)

 

(昨日はサクヤさん、その前はソーマとだったな…)

 

(そうでなくてもアリサがずっと一緒だしな。中々隙がねぇ。)

 

 只でさえ少ない食料を1人でバカみたいに食べる事もそうだが、アラガミ化の件でユウキの事を良く思わない者も未だに多い。ペイラーからアラガミ化は問題ないと言われても、今までの常識からかけはなられていた見解だったので、未だに信じられていなかった。

 そんな者達がユウキを排除しようと独りの時を狙っていたが、ユウキは帰って来てから必ず極東支部の実力者と共に行動していたので、襲い掛かる隙もなく今日まで無事に過ごしてきていた。

 そんな中、ユウキはアリサと食堂で昼食を摂っていた。しばらく2人で食べていると、ユウキは昼食を乗せたお盆を持ったリッカを見つけた。

 

「あっ!!リッカさん!!」

 

 ユウキはリッカを見つけると手を振ってリッカを呼ぶ。リッカはユウキに誘われてユウキの元に行くと、近くにアリサが居るのに気が付いた。アリサと目が合うと、喧嘩した事を思い出して気まずい空気になる。

 

「や、やぁ…」

 

「ど、どうも…」

 

 アリサもまたユウキの記憶の事で喧嘩した事を思い出し、リッカと同様にぎこちなく挨拶する。

 

「リッカさんも一緒にお昼食べましょうよ。」

 

「う、うん。そうだね…」

 

 しかしユウキはその空気を感じ取れなくリッカを食事に誘う。しかしリッカは相変わらずぎこちなく笑いながら返事をする。

 

「一緒に…良いかな?」

 

「あ、はい。どうぞ…」

 

 リッカはユウキと一緒に食事しているアリサに一言言ってから席につく。

 

「…」

 

「…」

 

 席についたリッカは『いただきます』と言って食べ始める。しかしその間、3人の間には会話はなかった。

 

(あ、あれぇ…何か気まずい空気になっちゃったよ…)

 

 この状態になってようやくぎこちない空気に気付いたユウキは居心地の悪さに気が付いて、何やら箸が進まなくなってしまった。

 どうしたのかと考えていると、不意にリッカが話しかける。

 

「ねえアリサ…」

 

「はい!?」

 

 突然話しかけられたアリサは少し驚いた様子でリッカの方を向いた。

 

「その、この間は怒ってごめんね。」

 

「あ、いえ…私の方こそ、ごめんなさい。」

 

 頬をポリポリと掻きながら突然リッカ謝ってきた。おそらくユウキの記憶を取り戻すべきだと口論になった時の話だろう。半ば八つ当たりでリッカに怒鳴ったのは事実なので、アリサも素直に謝った。

 

「でも、やっぱり前に言った私の考え方は間違ってないと思う…無理させるのは、本人に大きな負担になると思うから。」

 

「…そうですね。サクヤさんにも言われました。ただ、本人が望むのなら私はどんな事でも手を貸します。」

 

 謝りはしたものの自分の意見は間違ってないと主張する。アリサもサクヤに言われて自身も辛い過去を洗脳により封じ込めて忘れた事を思い出した。

 しかしあくまでもユウキ本人が記憶を取り戻す覚悟が出来たならその時は惜しみ無く手を貸すつもりのようだ。

 

「うん。本人が望むなら、私も力を貸すよ。どうしたいか分かったら教えて。私が先に聞いたら教えるから。」

 

「はい。」

 

 本人が望むなら手を貸すのはリッカも同じらしい。アリサもリッカも取り敢えずユウキの意見を尊重する事にした。お互い怒鳴りあった事を謝ったこともあり、最初の様な険悪な雰囲気はなくなっていた。

 

「…何の話をしてるんですか?」

 

「フフッ内緒だよ。ね?アリサ?」

 

「そうですね。」

 

 しかし話の内容を理解出来ないユウキは怪訝そうに、何を話したのかアリサとリッカに聞いてみたがはぐらかされたため、余計にわからなくなり、不思議な表情で悩む事になった。

 そしてそんな中、1人の男が3人に向かって歩いて来る。

 

「よぉ、神裂。アリサにリッカも一緒か。」

 

「あ、こんにちはハルオミさん。」

 

 声をかけてきたのはハルオミだった。ユウキが返事をするが、ハルオミは顎に手を添えて考える様な仕草でユウキ達を見ていた。

 

「あの…何か?」

 

「ん?いや、美少女3人が女子会してるように見えたんでな。」

 

 『つい見とれてしまったのさ』とハルオミは続けるとユウキはキョトンとした表情になる。

 

「え?この間アリサさんから僕は男性だと…」

 

「おいおい、この間教えただろう?お前さんは悪い魔女に男に変えられた女子だって…」

 

「嘘言わないでください!!ユウは正真正銘の男性です!!」

 

 性懲りもなくハルオミはユウキが女だと嘘を吹き込むので、アリサはハルオミの話を遮り立ち上がる。

 

「さあ、お昼も食べた事ですし、任務に行きますよ!!」

 

 『リッカさん、後で神機の調整お願いします。』と言ってユウキの手を引いてその場を立ち去り任務に向かう。その様子を見ていたリッカは羨ましく思いながらも『オッケー、任せて』と返して2人を見送る。

 

 -支部長室-

 

 ユウキ達が昼食を食べているのと同時刻、ペイラーがデスクに座り、ツバキ、リンドウがその前に立っていた。

 

「彼が帰ってきてからしばらく経ったが…どうたい?彼の様子は?」

 

「以前と比べると、やはり戦力としては心許ない…と言った具合でしょうか。取り敢えず動ける様にはしましたが…」

 

 ペイラーがユウキの近況を聞くと、ツバキが戦える様に鍛えはしたが、戦力としては不十分である事を伝える。それを聞いたペイラーは小さくため息をついてリンドウの方へと向く。

 

「そうか…現地ではどんな様子だい?」

 

「元から戦いに向いている性格じゃなかったが、今は不必要な程に戦う事を恐れている…って印象ですかね。任務に出る度に大なり小なり怯えて錯乱してるみたいですから。」

 

 どうやらリンドウ曰く、実戦で戦える様な状態ではないらしい。戦闘の度に精神を乱し、冷静な判断どころか戦闘が終わった事に気付かない事さえある。そんな状態では戦場に出すのは不安が残るというものだ。

 

「成る程。それを聞く限り、彼を出すのは危険な気はするけど…さてどうしようか。」

 

「ただ飯食らいって訳にもいきませんからねぇ。俺達はともかく、ユウをよく思わない連中から何を言われるか…」

 

「アナグラの戦力も依然として増強される気配はありません。戦い方を忘れたとは言え、神機を握れるのであれば戦力となって欲しいところですね。」

 

 ならばユウキを戦場に出さなければ良いのだが、支部の戦力と周囲の目を考えると、お荷物のままでは周囲からの扱いが悪化するのは目に見えている。

 

「そうか…なら、アナグラ内での彼の立場と戦力の維持の観点からも、何とか彼には頑張ってもらうしかないか…」

 

 ツバキとリンドウの話を聞いて、現状ではユウキには戦場にでもらうしかないという結論なり、何処と無く不安を覚える事となった。

 

 -贖罪の街-

 

 食事のあとしばらくしてから、サクヤ、ソーマ、アリサ、ユウキで旧市街地へと任務に来ていた。ターゲットはヴァジュラ。普通に考えるとヴァジュラごときでは敵ではないが、ユウキが戦い方を忘れている現状では些か不安が残る。

 

「ソーマ、今回の任務の目的…分かってるわね?」

 

「ああ。ユウとアリサが実戦で戦える様にするんだろ。危なくなったら手を出すが、それまではアイツらに任せる。」

 

 『フッ…』とソーマが笑う。

 

「ソーマ?」

 

「前にもこんな話をしたと思ってな…」

 

「…そうね。」

 

 本来ならもうこんな話などする事はないはずだった。しかしユウキが記憶喪失になり、自分たちの知っている神裂ユウキとは違うのだと否応なしに理解してしまう。サクヤとソーマが感傷に浸っていると、教会横の広場でヴァジュラが現れた。

 

  『ガァァアッ!!』

 

「ッ?!あれが…ヴァジュラ…」

 

「ユウ、アリサ!!予定通り2人で討伐して!!」

 

「了解!!」

 

「は、はい!!」

 

 第一舞台は戦闘体勢に入るが、ソーマとサクヤはヴァジュラから離れ、ユウキは前衛、アリサは後衛に別れて2人で戦闘を開始する。

 アリサが後ろに下がりつつ銃形態に変形し、ヴァジュラの真正面にオラクル弾を発射して動きを止める。その間にユウキがヴァジュラに向かって走る。間合いに入ると、ユウキは右の神機を外から内に振って攻撃する。

 

「ッ?!」

 

 しかしヴァジュラは左へユウキとすれ違う様に避け、アリサの銃弾から逃れると同時にユウキの神機を避けた。だが咄嗟に左の神機でヴァジュラを斬りつけ、左の前足に傷を入れる。

 

「ユウ!!一旦後ろに!!」

 

 アリサの声が聞こえてくると、ユウキは即座に後ろに飛んでヴァジュラから離れるつつ、両手の神機を銃形態に変形する。そして入れ違いでアリサが前に出る。剣形態に変形してヴァジュラに切りかかるが、ヴァジュラは後ろに飛んでアリサの攻撃を避ける。だがその間にユウキが両手の神機をさっき傷を着けた所に狙いを合わせる。

 

  『『バンッ!!』』

 

 短い破裂音が2つ響くと、ヴァジュラの斬り傷に狙撃弾が吸い込まれる。傷を抉られた事でヴァジュラは一瞬怯んで動きを止める。その間にアリサが弐式をクイック捕食で展開してヴァジュラを捕食してバーストする。

 

  『ガァァアッ!!』

 

 しかし捕食されるとすぐにヴァジュラは後ろに飛び上がり、着地の瞬間にアリサに飛び掛かる。ユウキが神機で狙撃弾を撃つが、ヴァジュラはものともせずにアリサに飛び掛かる。アリサがその下を潜ってヴァジュラの後ろを取る。

 

「今です!!」

 

 隙だらけになったヴァジュラの尻尾をアリサが後ろから切り落とす。怒りで活性化したヴァジュラが反撃に出る。ヴァジュラが周囲に雷球を展開して周りに雷球を飛ばす。

 後ろにいたアリサは銃形態に変形しつつ後ろに下がってからジャンプして雷球を避ける。ソーマとサクヤは雷球の間を抜けて避け、ユウキはジャンプしつつ剣形態に変形して雷球を避ける。

 

  『ガァァアッ!!』

 

「ッ?!」

 

 ユウキと目が合ったヴァジュラが吠える。その瞬間、ユウキの脳裏には赤いキャスケットを被った銀髪の少女が黒い服に黒髪を切り揃えた女性に泣き付いている風景が映し出される。

 

(女の子…?泣いてる…『アリサ』が…泣いてる…!!)

 

 その直後、ユウキの目は鋭くなってヴァジュラを睨み付けると、ユウキは両手を後ろに突き出すと、インパルスエッジを発射する。空中で2つのインパルスエッジを撃った時の衝撃でユウキは高速でヴァジュラへと接近する。しかしヴァジュラも反撃に出て、ユウキへと飛び掛かる。

 ユウキはヴァジュラの眼前までに来ると、右の神機でヴァジュラの左の首もとを突き刺し、右腕の腕力で無理やりヴァジュラの横に逸れる。そしてすれ違いに左の神機でヴァジュラの顔面に横一閃の傷を入れる。

 

「なっ?!」

 

「速い!?」

 

(今の動き…記憶をなくす前のユウみたいだ…まさか?)

 

 アリサとサクヤはユウキの一撃が明らかに今までよりも速く、鋭いものになった事に驚いていた。そしてソーマはそんなユウキを見て記憶が戻ってきたのかと考えていた。

 

「グッ…ウ…」

 

「ユウ!!」

 

 しかし、ユウキが攻撃のあと着地すると突然頭を抱えて踞る。ユウキは頭の中でその時ユウキの脳裏には教会の出入口が崩れている場面が再生され、正常な思考が出来ない状態だった。

 

 『ガァァアッ!!』

 

「ッ?!」

 

 しかしユウキの事情など知らずにヴァジュラは吠えると、ユウキに迫ってくるが、ユウキはヴァジュラを睨み返す事しかしなかった。

 

「チッ!!」

 

 今まで離れていたソーマが飛び出し、ヴァジュラよりも先にユウキの前に割って入る。そして神機を両手で握り直し、下から上へと振り上げる。地面を削りながら振り上げられた神機はヴァジュラの顎を捉えてヴァジュラの巨体を跳ね上げる。

 しかしヴァジュラは空中で体勢を変え、ソーマに雷球を投げつける。

 

「チィッ!!」

 

 ソーマは装甲を展開して雷球を防ぐが、すぐに追撃しようと思っていたのにヴァジュラの反撃で装甲を展開せざるを得ない状況になり追撃は失敗に終わる。

 そしてヴァジュラはうまく着地すると、その直後にソーマに向かって駆け出した。しかしソーマの後ろには動きの鈍ったユウキが居る。避ければユウキに直撃する。ソーマは装甲の展開を維持したまま受け止めようと両手両足に力を入れる。

 

「ソーマ!!反撃して!!」

 

 防御の姿勢をとったソーマにサクヤは反撃を指示する。するとサクヤは狙撃弾をヴァジュラの前足に撃ち込む。撃ち込まれた狙撃弾は右足を貫通し、そのまま左足も貫通した。前足は結合崩壊を起こし、バランスを崩したヴァジュラは咄嗟に後足で地を蹴り、ソーマに向かって飛び掛かる。

 

「させません!!」

 

 しかし、アリサがヴァジュラの後ろから爆破弾を撃った事で、ヴァジュラは後ろ足のバランスも崩し、ソーマに飛び掛かるのは失敗に終わった。

 

「今です!!」

 

「ソーマ!!」

 

 即座にソーマは装甲を収納して前に出ると、ヴァジュラの眼前で神機を横凪ぎに振る。『ズガンッ!!』と鈍い音と共に神機を振り抜き、ユウキがヴァジュラの顔面に着けた横に伸びた斬り傷に沿って攻撃すると、ヴァジュラの顔面が上下に割れる。

 続けざまにソーマはその場で1回転して勢いをつける。そしてもう1回転してから、最初と同じように神機をヴァジュラの顔面に叩き付ける。遠心力で強化されたソーマの一撃でヴァジュラは完全に上下に裂け、コアも破壊されて吹き飛んでいった。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「は、はい…」

 

 戦いが終わると、ソーマは座り込んでいたユウキに手を差しのべる。ユウキはその手を取り、ソーマの手を借りて立ち上がった。

 

「ユウ!!」

 

 ユウキが立ち上がったところで、アリサがユウキの元に飛んで来るや否や、やや強引にユウキに掴みかかり、ユウキの身体を一通りみて回る。

 

「だ、大丈夫ですか?!怪我してないですか?!」

 

「う、うん。大丈夫です。」

 

「どうやら、そうみたいね。何ともなくて良かったわ。」

 

 怪我がないか聞いてくるアリサの剣幕に圧されつつもユウキは何ともないと答える。サクヤも簡単にユウキの様子を見て、何ともないのを確認した。

 

「ユウ、戦ってる最中に動きを止めるなとツバキにも言われただろう?何があった?」

 

 ソーマはユウキが何故戦いの最中に不自然な行動をしたのか聞いてみる。それに対してユウキは良いよどんでいたが、少しの間の後、何故動きを止めたのかを話始める。

 

「戦かっていると、頭の中で知らない筈の状況や景色が流れる事がよくあるんです。ただ、その景色はどれもハッキリしなくて、結局何なのか良く分からないんです。」

 

 ユウキは戦いの度に知らない情景がフラッシュバックする事を話始める。それを聞いたソーマは顎に手を当てて考える仕草をする。

 

「戦いの中で、記憶が刺激されているのか?」

 

「まあ、そんなところでしょうね。」

 

 ソーマの考察にサクヤが迷わずに同意する。ユウキが記憶をなくす前の生活を考えればソーマの言った事も然程的外れではない事はすぐに分かるからだ。

 

「前は戦い続ける毎日だったからな。このまま続ければ、記憶を取り戻すのも近いかもな。」

 

「…そう、ですね…」

 

「ユウ…?」

 

 毎日命掛けで戦い続ける。記憶をなくす前はそんな生活だったので、最も日常的に行っていた『戦闘行動』で記憶が刺激されるのは分からないでもない。ユウキは記憶を取り戻すヒントとなりそうな意見を貰うが、あまり喜ぶ様子もなかった。そんなユウキを見たアリサは怪訝そうな顔でユウキの顔を覗きこむ。

 戦い続ける度に記憶の断片をボンヤリとは思い出すのだが、それと同時に恐怖心も呼び覚まされてく様な感覚に陥り、不快感を覚えていた。

 そんなユウキの心情が分かる筈もなく、周りは『戦える』神裂ユウキを求めている。そう信じて疑わないユウキは、早く記憶を取り戻さなければと思う反面、恐怖心から戦いたくないにも関わらず、戦い続けなければ記憶が戻らない現状に嫌気が差していた。 

 

To be continued




あとがき
 こんにちは、最近何に対してもモチベが上がらない私です。ずっと寝ていたいです。
 小説の方は…どうなんでしょ?なんか完成して読み返してみると周りの登場人物の言動に違和感があるようなないような…何度直しても後から違和感を感じる気が…
 リンドウさんの行動をとっても仲間が戦えないなら戦場に出ないで済む様にしそうだけど周りがそれで文句を言うなら黙らせるなんて事をしそうもないし…オリジナルの展開だとこう言うところでキャラ崩壊してないかが難しいですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。