GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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今回は他部隊との交流がメインで戦闘成分ははかなり薄いです。


mission95 前兆

 -極東支部-

 

 ユウキが帰ってきてしばらくたったある日、ユウキはアリサと一緒にエレベーターに乗ってエントランスに向かっていた。

 

「確かユウは今日オフでしたよね?」

 

「うん。今日は任務に出なくてもいいはずです。」

 

 ユウキは今日の予定を思い浮かべながらアリサと一緒にエレベーターを降りる。取り敢えずミッションカウンターで雑談していたヒバリとリッカに一言言うと、そのまま共用ベンチに座って雑談を再開する。そんな中、エントランスに入ってきた人物が2人いた。

 

「あ、カレルさんとシュンさんだ。」

 

 カレルとシュンを見かけたユウキは手を振った。2人は一度ユウキと目が合ったが、その場に居づらそうな雰囲気を出した後、すぐに目を逸らしてエレベーターに乗って何処かに行ってしまった。

 

「あ、行っちゃった…」

 

 目は合ったのに何のアクションもないままその場を離れられたが、『何か急ぎの用事があるんだろう』と考え、特に気にした様子もなくアリサとの雑談を再開した。

 

(やること無くて平和だなぁ…)

 

 雑談の最中、ユウキはゆったりとした時間を過ごせる幸せを噛み締めていると、不意に後ろから声をかけられる。

 

「よっ!!」

 

「あ、タツミさん。第二部隊の皆さんも一緒でしたか。」

 

 片手を軽く上げたタツミがにこやかに笑って話しかけてきた。その横にはブレンダンやカノン、アネットと第二部隊が全員揃っていた。

 

「っと、そろそろ私は任務ですね。それじゃあユウ、任務から帰ったら一緒に夕飯にしましょうか。」

 

「分かりました、待ってますね。」

 

「気を付けてな。」

 

 そう言うとアリサは立ち上がった。直に任務に出る時間になるので、ユウキの事をヒバリに任せようかと思っていたが、その直前にタツミ達が来てくれた。アリサは内心タツミ達が来てくれて助かったと思い、ユウキの事を任せて出撃ゲートへと向かっていった。皆がアリサを見送ると、ユウキはタツミ達と雑談を再会する。

 

「こんな事聞くのも変かもしれないが、どうだ?少しは慣れたか?」

 

「普段支部に居る分にはだいぶ。皆さんが気にかけてくれてるので。ただ、戦場には…いつまで経っても慣れませんね…」

 

「まあ、それが普通だろう。誰だっていつ死ぬかも分からないと環境は恐ろしいと思うんじゃないか?」

 

「そうですよ。私だって時折アラガミとの戦いが怖いと思う事はありますし、先輩だけが戦場に出るのを特別怖がってる訳でもないと思います。」

 

「…」

 

 いつまでも戦場に慣れないと愚痴るユウキに対してブレンダンとアネットがフォローを入れる。しかし、現実には『戦える神裂ユウキ』を求められているせいか、どこか釈然としない様子で黙ってしまった。

 

「あ、そうだ。ユウキさん、クッキー焼いたんですけど食べますか?」

 

「やった!!いただきます!!」

 

 少し沈んだ空気の中、カノンが話題を変えようと持参したクッキーを取り出した。大きいバスケットに山盛りになったクッキーを見たユウキは目を輝かせてクッキーを一口齧った。

 

「ん~美味しい。」

 

「いっぱいあるので、どんどん食べてくださいね。」

 

 そう言ってカノンはニコニコ笑いながらユウキを見る。そのあとタツミ達もクッキーを食べ始め、本格的に雑談会が始まった。

 

「ヒバリさんとリッカさんもどうですか?」

 

「じゃあ、厄介になろうかな?」

 

「そうですね。折角ですから、いただきましょう。」

 

「カノンナイス!!」

 

 そんな中、カノンがカウンターで雑談していたヒバリとリッカにお手製のクッキーを勧めると、2人も雑談会に参加する事になった。当然ヒバリが参加するとなると、タツミはガッツポーズをしてヒバリの隣を陣取った。

 

「あら、楽しそうね。」

 

「こんにちは。」

 

 その後ジーナとフェデリコもエントランスにやって来た。当然雑談しながらお菓子を食べる防衛班+ユウキに気が付いて声をかける。

 

「あ、ジーナさんにフェデリコさん。お2人も一緒にクッキー食べませんか?」

 

「そうね、頂こうかしら?」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。あ、俺コーヒー入れますね。エスプレッソで良いですか?」

 

 カノンがジーナとフェデリコを雑談会に誘うと、ジーナとフェデリコも加わる事になった。フェデリコはすぐにコーヒーを人数分用意すると雑談会、もといお茶会が本格的に始まった。

 

「なんやかんや、防衛班の大半が揃ったな。」

 

「ですね。」

 

 元々は第二部隊でやろうと思った雑談も、ユウキが加わり、ヒバリとリッカが参加し、次いでジーナとフェデリコも加わった。いつ世間にか防衛班のほとんどが集まり、大所帯となったお茶会で各々好きな様にクッキーを食べ、コーヒーを飲みながら雑談に興じていた。

 

「ん~…甘いクッキーを食べた後のエスプレッソ…強い苦味がマイルドになっていい感じだぁ…」

 

「だね。このクッキーとコーヒーの組み合わせならいくらでも食べられるよ。」

 

「はい。カノンさんの作ったクッキーとフェデリコのコーヒー、良く合いますね。」

 

 カノンが作ったクッキーを食べた後にフェデリコが入れたコーヒーを飲んだユウキは幸せそうな顔で舌鼓を打っている。リッカ、アネットもユウキと同じような反応で食べていく。

 

「にしても、相変わらず旨そうに喰うよなお前。」

 

「だって美味しいんですからしょうがないですよ。」

 

「ふふ、ありがとうございます。」

 

 次々とクッキーを食べるユウキを見てタツミは、思わず記憶を無くす以前のユウキと重なり思わず『相変わらず』と言ったが、ユウキはそれに気が付かずに純粋にクッキーとコーヒーの感想を言った。カノンもそれを聞いてどこか嬉しそうに礼を言う。

 

「このエスプレッソ、お菓子との相性バッチリですね。美味しいコーヒー入れるのは自信があったのですが…今度入れ方教えてください。」

 

「ヒバリさんのコーヒーだって美味しいですよ。薄すぎずに濃すぎない…豆本来の味を引き出してるんですから。入れ方ならむしろ教わりたいくらいですよ。」

 

 ヒバリがクッキーを食べた後、エスプレッソを飲むと想像以上にクッキーと相性が良く驚いていた。美味しいコーヒーを入れる自信があったヒバリだが、ここまでお菓子と相性の良いコーヒーは入れられない。

 是非入れ方を教えて欲しいと言うが、フェデリコはヒバリのコーヒーの方が美味しいとむしろ教わりたいと言う。

 

「私はヒバリのコーヒーの方が好きね。調度いい苦味だもの。」

 

「俺はこのエスプレッソ、苦味が強くてかなり気に入ってるんだがな。また入れてくれないか?」

 

「はい。喜んで。」

 

 ジーナはヒバリのコーヒー、ブレンダンはフェデリコのコーヒーが好みだそうだ。ブレンダンがまた入れて欲しいと頼むと、フェデリコは快諾する。

 

  『ビー!!ビー!!』

 

 しかし、突然極東支部内に警報が鳴り響く。

 

「楽しい時間ってのは続かないもんだな。ヒバリちゃん、状況は?!」

 

 警報が鳴り響く中、タツミは楽しい時間を邪魔されて思わず愚痴る。しかし、すぐにカウンターに戻った始めたヒバリに状況を確認する。

 

「待ってください。今…出ました!!敵は全て小型種で3箇所に展開しています!!数はおおよそ5体、避難の事も考えて最低でも3人で3組に別れる必要があります!!」

 

「部隊の内訳は?」

 

 どうやら小型種が居住区の3箇所に現れたようだ。現れた場所が離れている以上、3箇所に分散する必要がある。その事をすぐに察したタツミは部隊配置の指示を仰ぐ。

 

「戦力を分散、避難活動を行う点から、ブレンダンさん、ジーナさん、カノンさんのチームとフェデリコさん、アネットさん、タツミさんのチームに分けるのがベストですが…」

 

「でもこれだと2部隊しか作れないですよ!!」

 

 戦力を均等に分散、避難活動の間の時間稼ぎ、避難完了までの避難場所の防衛を考えると、どうしても1チームに3人は欲しい所だ。しかし現状ではどうしても十分な戦力の2チーム、あるいは戦力が圧倒的に足りない3チームしか作れない。思わずアネットがその事を指摘する。

 

「…ユウキ、今回の防衛戦に出てくれないか?居住区の皆を守るために、お前の力を貸してくれ!!」

 

 現状、どうしても戦力が欲しいところだ。追加できる戦力…その事を考えた時、タツミはユウキの方を見て戦って欲しいと頼み込む。

 

「…これは、守るための戦いなんですよね…こんな僕でも、戦えば…誰かを守れるかも知れないんですね…?」

 

「ああ、そうだ。ただ自分のために戦うんじゃない。俺達が戦う…それが居住区の人達を助ける事に繋がるんだ。」

 

「…分かりました。」

 

 戦場に出てくれと言われたが、本音を言えば戦いたくない。しかし、自分自分が戦う事で誰かが助かる。決して自分の為だけの戦いではない。その事をタツミに聞き、ユウキの心は決まった。

 

「僕も…戦います。」

 

 自分が戦う事で誰かを助けられる。その為の戦いならばと、ユウキは戦場に出る事を決めた。

 

「メンバーを再編成します。ブレンダンさんとフェデリコさん、ジーナさんととカノンさんとアネットさん、最後はタツミさんユウキさんのチームで出撃してください。」

 

 ユウキが参戦した事で3チームに編成しなおす。ブレンダンとフェデリコは2人チームになり、大きな負担になるものの、何とか3チームを作る事ができた。現状最も戦力として不安のあるユウキはタツミが面倒を見る事となった。

 

「リッカさん、神機の用意をお願いします。」

 

「オッケー!!すぐに出せる様準備しとく!!」

 

「よし、防衛班出動だ!!」

 

 リッカに神機の準備をしてもらうと、ユウキ達は戦場に向かった。

 

 -外部居住区-

 

  タツミと一緒に外に通じるゲートがあるエリアE35に来ていた。既に侵入を許している事もあり、防壁には小さな穴が空いていた。その穴の周囲は荒らされて、近くの建物の壁が壊され、瓦礫が散らばっていたりした。そしてタツミとユウキは空いた穴の周囲で2体のオウガテイルを視認する。

 

「いた!!オウガテイル!!」

 

「俺は住民を避難させる!!それまでヤツらの相手を頼む!!」

 

「はい!!」

 

「幸いゲート前のこのエリアは人が少ない。これ以上アラガミが居住区に行かないよう止めてくれ!!」

 

「了解!!」

 

 タツミの指示でユウキは正面に2体いるオウガテイルに向かって走る。2体のオウガテイルもユウキを喰うために走ってきた。ユウキは両手の神機を連結し、両刃剣にして右上から神機を振り下ろす。

 

「1体!!」

 

 『スパッ』と綺麗にオウガテイルを両断する。次に神機を横に振って反対側の刃で2体目のオウガテイルを斬り倒す。

 

「2体目!!」

 

 2体目のオウガテイルを倒すと、構えたまま視線だけを動かして次の敵を探す。

 

  『ーーー!!』

 

「え?!後ろ…?」

 

 突然何処からか後ろから敵が来ていると声が聞こえた気がした。脳裏に浮かんだ声に従い振り向くとオウガテイルが口を開けてすぐ近くまで迫っていた。

 

「うわっ!!」

 

 ユウキが気付くとオウガテイルはすぐに飛びかかってきた。それを咄嗟に装甲を展開して防ぐと衝撃で後ろにずり下がる。そして神機の連結を解除して、逆手に持った左の神機を振り上げて、攻撃してきたオウガテイルを斬り裂いた。

 

「3体!!」

 

  『ーー!!』

 

「右!!」

 

 また誰かの声が聞こえた気がした。今度は右を向くとオウガテイルが2体ユウキに向かって来ている。

 

「4体!!」

 

 ユウキはまず右の神機を横凪ぎに振って近い方のオウガテイルを斬って倒す。そして次のオウガテイルに向かって走りながら、再度神機を連結する。

 

「最後!!」

 

 先にオウガテイルが前に出て噛みついてきた。ユウキはそれを右に跳んで避ける。右足を後ろにした状態で両足を着けると、右足を前に出しながら神機を振り上げる。

 

「5体目!!」

 

 1歩前に出て両手で掴んだ神機を振り下ろす。神機の刃がスッとオウガテイルを通る。オウガテイルは斬られた後、少しの間静止すると、斬り口から血が吹き出して、ゆっくりと左右に分かれた。

 

「…よし。ヒバリさん、5体って言ってたし…もういないよね。」

 

 予め聞いていた数のオウガテイルを倒した事で、ユウキは戦いが終わったと思って構えを解いた。

 

  『ーーー!!』

 

「え?!」

 

 また脳裏で声が聞こえた。後ろを向くとさっきのとは別のオウガテイルが口を開けてユウキに飛びかかってきた。

 

「斬ッ!!」

 

 しかし赤い影がオウガテイルに素早く近づくと、小さな掛け声と共にオウガテイルは斬られ、オウガテイルと赤い影はほぼ同時に着地する。その赤い影を見てみると、一緒にここまで来た人物だった。

 

「タ、タツミさん!!」

 

「よ、危なかったな。」

 

 タツミは神機を振ってオウガテイルを斬った時に神機に付いた血を振り払いつつユウキの方を見る。

 

「ありがとうございます。」

 

「ヒバリちゃんの情報で数を聞いても、任務の最中に新たな敵が乱入してくるなんて珍しくないぞ。全部倒しても警戒は緩めるなよ。」

 

「はい。気を付けます。」

 

(本当に…全部忘れちまったんだな…)

 

 今まで普通にやって来ていた戦いの基本とも言える部分であり、自分の命に関わる事まで忘れていた。ユウキが帰ってきてから一緒に実戦に出た事なかったため、ユウキが記憶を全てなくした事が未だに信じられなかったが、今のやり取りで嫌でも現実を突きつけられてしまった。

 

「タツミさん?」

 

「いや、何でもない。っと、ちょっと待った。」

 

 急にタツミの反応がなくなった事を不思議に思ったユウキがタツミに話しかける。話しかけられた事で現実に意識を戻す。そのタイミングでタツミの端末に連絡が入る。言葉少なく話した後、通話を切った。

 

「どうやらブレンダン達も既に終わってるらしい。一通り巡回したら合流しよう。」

 

「分かりました。」

 

 タツミは端末をしまうと他の場所の戦闘も終わっていると連絡を受けた事を伝えると、先に辺りの警戒を始める。ユウキもそれに続こうとすると…

 

  『ー…ー…ーー…』

 

「…ッ?!」

 

 ユウキは何かを訴えかける様な、見えない何かが自分に語りかける感覚を覚え、勢いよく振り向むいて辺りを見回す。

 

(何だ…?この感じ…)

 

 しかし近くにアラガミに荒らされた居住区以外、特に変わったものは見受けられなかった。しかし確実に誰かの気配は感じる。

 

(近くに…何かいるのか?)

 

 消える事のない気配で背中がゾワゾワする不快な感覚を感じながら辺りをもう一度見回す。『やっぱり何もいない』そう思った時、後ろから声をかけられた。

 

「おーいユウキー!!どうかしたかー?」

 

「あ、何でもないです。今行きます。」

 

 タツミに呼ばれて気配を探るのを中断するが、タツミの元に行く直前にもう一度だけ辺りを見回す。しかし今度は何も変わったものが見つからないどころか、さっきまで感じていた気配さえ感じられなくなっていた。

 

(何だったんだろう…?)

 

 結局、気配の正体が分からないままユウキはタツミの元へと歩いていき、そのままこの場を後にした。

 だが、この時の気配の主との出会いがユウキにとっても大きな転機になるとは、この時誰も思わなかった。そんな気配の主が現れるのはすぐ先の事。

 

To be continued




あとがき
 1日12時間は寝たい私です。そんなこんなでユウキと第二、第三部隊との交流回でした。もっとも割かしユウキに好意的に接してくれる人達との交流なのでボロカスに言われる事はありませんでしたが。
 他にもちょいちょいと断片的に記憶を取り戻す傾向はあっても殆ど何も思い出せていないので色んなところの言動でホントに記憶がないと実感するも、できるだけ今までと変わらぬ態度で接するタツミ達の心境をもう少し掘り下げた方がよかったかも…?
 それでは感想等々、あればお待ちしています。
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