今、この世界には攻略組と呼ばれる者たちが存在していた。最前線で戦い着々と新しい層を解放してくその姿は、今や囚われの人となったプレイヤーの希望となっているだろう。
そんな、攻略組すらもはや気にすることのないだろうこの第1層の始まりの街で----
暗闇の中から鉄と鉄がぶつかり合う音が響いている。それは決して重い音などではなく、まるで風を切っているような軽やかで鋭い音だった。
一線、青色のライトエフェクトが光った後、またあたりは静寂に包まれていった。
「モンスターの規定数討伐完了っと、ちと時間が掛かったな」
そう言いながら男が1人、暗闇の中から歩いてくる。その黒髪の男にはとくに特徴がなく、しいていえば長身の男だった。周囲を警戒しているのか、周りを見渡しながら歩くその姿は良く言えば熟練された、悪く言えば少し怯えているような、そんな雰囲気を醸し出していた。
「索敵にはモンスターは映っていない………帰るか」
迷宮と街を行き来するための階段に足をかけ、男は上へと歩みを進めた………自らの住まう街、始まりの街へと。
☆ ☆ ☆
--------半年前
茅場からデスゲームという真実を伝えられて、すでに1年が過ぎようとしていた。当初2/3のプレイヤーが始まりの街を旅立ちフロアの解放、または自分達が生きるために戦っていたが、わずか1ヶ月というとても短い期間で3000人のプレイヤーが死んでいった。その中には元ベータテスターのプレイヤーも多く含まれていたという。
同時に、1ヶ月という期間を経てようやく第1層の攻略成功の報告が伝えられることなる。
始まりの街にてカイリがその報告を聞いた時、彼は宿屋[蓋付きの鶏亭]にて次に向かうフィールドの情報を整理している時だった。
第1層の攻略成功の情報にはただ喜べる情報のみが載っていたわけではない。
名前は明かされなかったが、攻略途中にボスの情報を秘匿し、さらにはLA(ラストアタックボーナス)を横取りしたベータテスター、もといビーターと呼ばれる片手剣使いのプレイヤーについても記載されていたのだ。
カイリにとって、それは衝撃と共に失望をも感じさせる出来事だった。
「ちくしょう、キリトのやつなんでこんな事をしたんだ……」
そのプレイヤーについての情報は多くは述べられていなかったが、カイリには直感でそのプレイヤーがキリトであると悟った。そして、それはカイリの中で、今まで築き上げてきたキリトの像が崩れる瞬間でもあった。
☆ ☆ ☆
〜現在第50層〜
「これから、第50層の攻略会議を始めます」
凛とした佇まいでそう口を開いたのは、血盟騎士団副団長、<閃光のアスナ>だった。
「今回は第25層に続きクォーターポイントとなる層です、私達はもうあのような被害を出さないためにも、みな気を引き締めて討伐にあたってください」
「第25層か、あれは確かに大変な事だったな………」
「あぁ、あんな事もう起こしてはならねえな」
攻略組のプレイヤー達の顔は、アスナの言葉を聞くとさらに強張った表情になっていた。
--------第25層フロアボス攻略
「うわああぁぁぁっ」
「隊列を乱すなぁっ、我々アインクラッド解放軍に敗北の2文字はない!!」
悲鳴と怒号がフロア内に交差し響く。第25層のフロアボス攻略は熾烈を極めていた………
当初、攻略会議は普段通り行われていた。ボス情報の報告と共にプレイヤーの配置や班決めを行う、そんないつもと変わらないまま会議が終わろうとしていたのだが、
「我々アインクラッド解放軍はこの第25層という大きな節目と共に、我々の勝利を待つプレイヤー達へ、攻略にどれほどの貢献をこのアインクラッド解放軍が成しているのか、それを示さねばならない!!」
突然そう口を開いたのは、アインクラッド解放軍、通称[軍]ののコーバッツだった。当時、軍には頭1つ抜けたプレイヤーは居なかった。しかし、軍メンバーは誰もが平均的なレベルを持ち、なによりも攻略組に人数として貢献してきていたため、攻略への発言権が強かった。
「今回のアタッカーは、全てこの軍のプレイヤーに努めさせてもらう!」
当然反対しようとするプレイヤーも多かったが、当時の攻略組とは結局の所ギルドと一部のソロプレイヤー達の寄せ集め集団であり、会議を率先してまとめようとしなかった者が居なかったため、そのまま軍に配置と班決めをを任せる事となった。
--------結果は目に見えていた。軍は壊滅状態となり、かろうじて攻略は成功したもののその戦いは攻略組に大きな傷を残した。
そんな中どこから集めたのだろうか、一時期諦められたと思われた攻略だったが、第26層から高レベルプレイヤー達の集まるトップギルドとして今まで攻略組をまとめてきた存在がいる、それが今の血盟騎士団である。
〜現在第50層〜
「今回のボスは頭が2つあり手が4本ある、巨人タイプのボスという情報があります」
攻略会議は進められていく、ボスの特徴はその他にも鎖での攻撃や咆哮によるスタン攻撃などが挙げられていた。
「では副団長、配置と班決めをお願いします」
そう団員はアスナに言った。アスナはどこか渋い顔をしながら口を開いた。
「先程も言った通り、今回は第50層でありこのソードアートオンラインの折り返し地点ともなっているため、第25層よりもより大変になると思います。私は、攻略組のメンバーは確かに強いと思います。しかし、この層を死者なく攻略するためには少し火力が足りないとも感じています」
攻略組の面々に騒めきが起こった。確かにアスナのように思う所は他の攻略組のプレイヤーもなかったわけではない。しかし、この最前線で戦っているプレイヤーは誰もが、ここにいるメンバーが今この世界においてまさしくトップの実力を持っていると信じて疑わなかった。
「火力が足りないっていったって………ここにいるメンバー以外に誰がいるって言うんだ」
「まさか、軍のメンバーでも連れてくる気じゃあないよな」
プレイヤー達が口々に言い合っている中、ある1人のプレイヤーが口を開いた。
「あの、発言良いか……?」
「………どうぞ」
口を開いたのはギルド風林火山のギルドマスター、クラインだった。
「今話に出ていた火力の話なんだが、1人だけ心当たりがある」
再び騒めきが起こる。半分はまだ自分達と同じくらい強いプレイヤーがいたことへの驚き、あとの半分はそんなプレイヤーはいるはずがないという馬鹿にした声だった。
「静かにしてくださいっ………クラインさん、どういう意味ですか?」
少し語気を強く放った後、アスナは問いかける。
クラインは少しの迷いを含んだ後話し始めた。
「あ、あぁ………始まりの槍使いって知ってるか?」
なんだか良い所で切りました。今回は会議の模様と第25層の内容を少し書きました。次回は、多分始まりの槍使い笑とその勧誘?になるのではないかと思います。では、次の話でまた会いましょう。
文章へのご指摘お待ちしております。