白龍皇の尻尾 ―VANISHING TAIL―   作:鍋やん!

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転機

数日前

 

とある古城の中。

 

「あの役立たずどもめ!」

 

そう怒鳴るのは仮面を付けた男。

 

「これではいつまで経ってもあの方は復活なされぬ……。」

 

男はある塔の建設が進んでいないことに苛立っていた。各地から人を攫って来て奴隷として働かせているが、それでもなかなか進んでいなかった。

 

「ですが奴隷の補充にも限りがあります。やりすぎれば政府に気付かれかねません。それに、完成予定は10年先ではありませんか。奴隷達に喝を入れれば間に合うでしょう。」

 

赤紫色のローブを来た男が宥めるも、あまり効果はなさそうだ。彼らはある黒魔導士を復活させようとしているのだ。そのためには、その塔の完成が必要不可欠なのである。しかし、完成予定を早めるには、あまりにも無理があった。

 

ローブの男は何かを思い出したのか、唐突に話題を変えた。

 

「そういえば、フィオーレ王国の南部にセレドットと言う山があるのをご存知ですか?」

 

「それがなんだと言うのだ!」

 

男はまだ苛ついているようだ。だが、次の言葉でそれは消え失せた。

 

「そこに流れる光の河ですが、どうやら高密度のエーテルナノ、つまり大量の魔力で出来ているようなのです。それを奪うというのはいかがでしょう?」

 

「我々の悲願を達成するために大量の魔力は必要になるが、それは塔が完成した後の話ではないか。今その光の河とやらを奪ってどうする?」

 

「塔の完成後に魔力を集めれば、さらに多くの時間が必要になります。ですから今の内に魔力を集めておけば、より早く悲願が成就するでしょう。塔の完成を早めることは難しいですが、悲願の成就を早めることは可能だと私は考えているのです。」

 

「……うむ、そうであったな!我は目先の事に囚われていたようだ。では直ちにセレドットに向かえ!そこに住む者等は全て浄化してしまえ!」

 

「ほっほっほっほ。かしこまりました。」

 

「「全てはゼレフの為に。」」

 

 

 

 

 

 

そして現在

 

壺や何かわからない薬品の入った瓶が、そこら中に置いてあるという、調合に使う部屋としては典型的な部屋の中で、ヴァーリは目の前に置かれた壺と、手に持った分厚い本を何度も交互に睨んでいた。

 

「えーっと?この葉っぱが3枚と、これとこれでいいんですか?」

 

「そうじゃ!そうじゃ!あとは磨り潰すだけでええぞい。」

 

馬鹿デカイ帽子をかぶった老婆がその質問に答えた。こちらもまた調合師として典型的だった。

 

この世界では、道具を使う調合の他に、己の魔力を使う調合(又の名を錬金)も存在している。彼はその前者に挑んでいるのだ。

 

ヴァーリは知識が増えることが好きなのか、物覚えが非常に早い。8歳でありながら、大抵のことはできるようになった。老婆が彼の成長の早さに感心していると

 

「出来たー!」

 

ヴァーリの作業が完了した。

 

「うむうむ、どくけし草の作り方も覚えられたようじゃの。」

 

「やったー!やくそうの作り方もまんげつ草の作り方も覚えたし、どくけし草の作り方も覚えた!これなら旅に出ても大丈夫だな!」

 

ヴァーリの夢は冒険に出ることだ。セレドの町も好きだが、広い世界を見てみたいのだ。

 

「そうじゃの。薬の作り方を覚えておけば旅もだいぶ楽になるじゃろう。」

 

「あとは魔法が覚えられたらなぁ……。(エーラ)だけじゃ不安だし……。」

 

外には猛獣や盗賊など危険なものが数多くある。それには戦う術が必要になるだろう。だが、ヴァーリは武器を作ることはできても、その使い方までは習っていないのだ。それに魔法も(エーラ)しか使うことができない。

 

「ふぉっふぉっふぉっ!それなら立ち寄った町で覚えればよい。お前は物覚えが早いからのぅ。」

 

「うん、ありがとう!気が楽になったよ!それに薬の作り方もお婆さんに教えてもらったしね!」

 

「そうじゃな。……お前には必要なくなるかもしれぬが……。」

 

「え?何か言った?」

 

「いや、なんでもないわい。儂ぁ寝るぞ。少しばかり疲れた。その辺の道具は好きに使ってよいぞ。いろいろ試してみなさい。何か新しい薬が生まれるかもしれん。」

 

「わかった!おやすみなさい!」

 

老婆は寝室に向かい、ヴァーリは鞄から一冊の本を取り出しパラパラとめくり始めた。その本には「錬金」と書いてあった。彼は独学で勉強していたのだ。

 

「今日は何を作ってみようかなぁー……。魔法の小瓶かぁ。これにしよ!」

 

そう言い、彼は作業に取り掛かかろうとした途端……

 

ドォォォォン!!!

 

身体の芯にまで響く程の爆音が外から聞こえてきた。窓から覗いてみると、町の入り口付近の建物に火の手が上がっていた。その近くには赤紫色のローブを着た人、その両隣には人型の馬のような生物と、剣と盾をもった獣人がいた。さらにその後ろには、20体の魔導兵士がいた。彼らが犯人であるということは、爆発の瞬間を見ていないヴァーリにもすぐに検討がついた。

 

あまりの出来事に動けないでいると、調合師の老婆がその見かけからは想像もできない程の早さで起きてきた。そして、先ほどのヴァーリと同じように窓の外を見て、目を見開いていた。

 

「まさか、ありえん!結界が破壊されたというのか?」

 

この町の周囲には、賊の浸入を防ぐ結界がある。並大抵の魔導士には壊せない程の強度を誇っていたが、どうやら奴らは並大抵の魔導士ではないらしい。そう悟った老婆は

 

「こうしてはおれん!ヴァーリよ、今すぐダーマ神殿に向かうのじゃ!神官様にこのことを伝えてくれい!」

 

その指示にヴァーリはすぐに頷いた。

 

「わかった!お婆さん、気をつけて!」

 

そう言うや否や、彼は裏口から出て、建物の影から影へ渡りながら、ダーマ神殿に向かった。

 




自分なりの解釈がありますが、不自然な所があればご意見ください。
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