サーモン海域……もとい、バイモン海域の哨戒を行うにあたって、編成した艦娘からは疑問の声が上がった。
「そりゃあ、僕達航空巡洋艦は索敵には必須だよね」
航空巡洋艦の筆頭にして、航空戦艦『日向』の一番弟子たる『最上』は、首をひねった。
「艦載機を扱う以上、ウチ等軽空母も重要やね」
龍驤も怪訝な表情を見せる。
「道中で艦載機に狙われた場合を想定しての私の配属は、特に問題ないと思われます」
乙型駆逐艦の『秋月』は、事態の異様さに気付いていないようだ。
「潜水艦対策に私を入れるのも、まぁ当然といえば当然ね」
三式ソナー、三式爆雷を装備した軽巡洋艦『五十鈴』も、久々の登用に舞い上がっているのか、気付いていない。
「問題は、これだけ高速の艦を揃えておいて……」
電探マシマシに熟練見張り員まで積んだ重巡洋艦『鳥海』が、眼鏡を中指でクイッと持ち上げる。
レンズに光が反射して、目が隠れてるのが地味に怖い。
「……なんで私が組み込まれてるんでしょうか?」
最後に困惑の一言をくれたのは、扶桑型航空戦艦の一番艦『扶桑』だ。
確かに、扶桑以外の艦娘は移動力分類が「高速」だが、扶桑だけは「低速」だ。
すなわち、艦隊の移動速度は自ずと低速に制限される事になる。
「索敵に必要なのは、速度じゃないからだよ」
努めて当然のように、扶桑編入の理由を答える僕。
だが、この場にいる全員が“真の理由”を理解しているのだ。
口にしないだけで。
「あ、そうか!扶桑さん不幸だから、敵に鉢合わせる可能性が高まるってワケだ!」
誰もが言わずにおいた事を大声で晒したのは、第二艦隊として最上達とは別の海域を偵察に行く航空巡洋艦『鈴谷』だ。
「やっぱり、そういう意図なんですね……」
鈴谷の僚艦となる扶桑の妹『山城』が、瘴気でも吐きそうな様子で呟く。
「まぁ、予想はついてたけどね」
苦笑するのは第三艦隊に編入されている陸奥だ。
扶桑、山城、陸奥ーーーー
鎮守府における「不幸の代名詞三巨頭」は、実際戦闘力もかなりの物なのだ。
深海棲艦に襲われたりした際には、必ず活躍してくれると信じるから編入したんだ。
と、力説して誤魔化しはしたが、鈴谷の指摘は図星だったりする。
本音を言えば、深海棲艦になんぞ会いたくはない。
特にあの、鹵獲した艦載機。
アレの使い手は、全ユーザーにとっては悪夢そのものだったのだ。
だが、いずれ会わなくてはならないなら、遭遇は早い方が良い……と思う。
僕は『不幸艦』達のジンクスが的中すれば良いのか、外れれば良いのか判然としないまま、哨戒艦隊を送り出した。