とりあえず順番にツッコミ入れねばなるまい。
「今、『通信機がホントに壊れた』って言ったな?さっき命令違反した時に言ってた『壊れた』はやっぱり嘘か」
「あ⁉︎……いや……そんな事言ったっけ?記憶にないなぁ」
「お前は汚職政治家か。というか……なんで深海棲艦が
「だってしょうがないじゃん!独りで海の上で泣いてたんだよ?近寄ったら捨てられた子犬みたいな眼で上目遣いだよ?振り払えるワケないじゃん!」
「逆ギレすんな」
やれやれ。
僕はレ級の前に立った。
小さい。
ほぼ駆逐艦娘程度、小学生高学年程度だ。
これがゲームで僕を震え上がらせた悪魔とは、俄かには信じがたい。
しゃがんで目線の高さを合わせると、レ級も僕の視線に気付いて顔を上げた。
澄んだ目をしている。
ゲームの時の、あの人を見下す様な、嘲笑する様な、侮蔑する様な笑みは無い。
不安…….なのかな?
「日本語……というか人間の言葉は理解出来るのか?」
グウウゥゥゥゥゥ!
返事は、盛大な腹の虫の声だった。
背後で鈴谷が吹き出す。
「ガス欠に弾薬切れ、か。そういや艦載機もそうだったな」
「だから鈴谷さん達が近付いても攻撃しなかった……いえ、出来なかったんでしょうか?」
『本日の秘書艦』妙高の推測は至極当然、一般論で言えば誰もがそう考えるだろう。
だが……
案の定、鈴谷が突っかかって来た。
「そんなんじゃないって!この娘は鈴谷達が戦ってた深海棲艦とは違う感じがするもん!」
「その根拠は?」
「女の勘!」
「お前なぁ……」
僕は嘆息する。
が、実は僕も鈴谷と同感だった。
このレ級は、僕がゲームで知ってるレ級ではない……気がする。
根拠は?ーーーー男の勘。
…………………………
我ながらバカバカしい。
それでも、僕は自分の直感を信じた。
「妙高さん、間宮さんに連絡して。この娘に補給をするから」
「提督、正気ですか⁈」
さしもの妙高も冷静ではいられないか。
温和で知られる妙高が声を荒らげるのを見て、しかし僕は逆に意志を固めた。
「当直以外の全艦娘を艤装着装の上で食堂前に集めて。もし何かあったら総攻撃で」
「……かしこまりました」
僕の目を覗き込んだ妙高が、半ば諦めたかのように承服する。
妙高が鎮守府内に放送を流して十分足らずで、今夜の哨戒任務を控える者を除いた全艦娘が食堂に集まった。
自由闊達な雰囲気の佐世保鎮守府にしては驚異的なスピードは、やはり皆鈴谷が連れて来た深海棲艦を警戒していたのだろう。
かくして、佐世保鎮守府の食堂において、前代未聞・空前絶後のイベント『深海棲艦への補給』が始まるのであった。