オーバー艦これ   作:ウェステール

20 / 54
鈴谷とレ級

とりあえず順番にツッコミ入れねばなるまい。

 

「今、『通信機がホントに壊れた』って言ったな?さっき命令違反した時に言ってた『壊れた』はやっぱり嘘か」

「あ⁉︎……いや……そんな事言ったっけ?記憶にないなぁ」

「お前は汚職政治家か。というか……なんで深海棲艦が鎮守府(ここ)に居るんだ!」

「だってしょうがないじゃん!独りで海の上で泣いてたんだよ?近寄ったら捨てられた子犬みたいな眼で上目遣いだよ?振り払えるワケないじゃん!」

「逆ギレすんな」

 

やれやれ。

僕はレ級の前に立った。

小さい。

ほぼ駆逐艦娘程度、小学生高学年程度だ。

これがゲームで僕を震え上がらせた悪魔とは、俄かには信じがたい。

しゃがんで目線の高さを合わせると、レ級も僕の視線に気付いて顔を上げた。

澄んだ目をしている。

ゲームの時の、あの人を見下す様な、嘲笑する様な、侮蔑する様な笑みは無い。

不安…….なのかな?

 

「日本語……というか人間の言葉は理解出来るのか?」

 

グウウゥゥゥゥゥ!

 

返事は、盛大な腹の虫の声だった。

背後で鈴谷が吹き出す。

 

「ガス欠に弾薬切れ、か。そういや艦載機もそうだったな」

「だから鈴谷さん達が近付いても攻撃しなかった……いえ、出来なかったんでしょうか?」

 

『本日の秘書艦』妙高の推測は至極当然、一般論で言えば誰もがそう考えるだろう。

 

だが……

案の定、鈴谷が突っかかって来た。

 

「そんなんじゃないって!この娘は鈴谷達が戦ってた深海棲艦とは違う感じがするもん!」

「その根拠は?」

「女の勘!」

「お前なぁ……」

 

僕は嘆息する。

が、実は僕も鈴谷と同感だった。

このレ級は、僕がゲームで知ってるレ級ではない……気がする。

 

根拠は?ーーーー男の勘。

 

…………………………

 

我ながらバカバカしい。

それでも、僕は自分の直感を信じた。

 

「妙高さん、間宮さんに連絡して。この娘に補給をするから」

「提督、正気ですか⁈」

 

さしもの妙高も冷静ではいられないか。

温和で知られる妙高が声を荒らげるのを見て、しかし僕は逆に意志を固めた。

 

「当直以外の全艦娘を艤装着装の上で食堂前に集めて。もし何かあったら総攻撃で」

「……かしこまりました」

 

僕の目を覗き込んだ妙高が、半ば諦めたかのように承服する。

 

 

妙高が鎮守府内に放送を流して十分足らずで、今夜の哨戒任務を控える者を除いた全艦娘が食堂に集まった。

自由闊達な雰囲気の佐世保鎮守府にしては驚異的なスピードは、やはり皆鈴谷が連れて来た深海棲艦を警戒していたのだろう。

 

 

かくして、佐世保鎮守府の食堂において、前代未聞・空前絶後のイベント『深海棲艦への補給』が始まるのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。