カッカッカッカッカッカッ……
箸が茶碗を擦る。
バリバリボリボリ……
歯が弾薬を噛み砕く。
ズズズズズ……
味噌汁を啜る。
ゴッゴッゴッゴッゴッ……
重油を飲み干す。
レ級の食欲は、凄まじかった。
いや、レ級“達”とでも言うべきか。
レ級は尻尾を有しており、その先端には鉄塊に口を付けた様な“目鼻の無い歪な顔”が付いているのだが……
本体は御飯と味噌汁を、尻尾の口は弾薬と重油をそれぞれ貪り食っていた。
その食いっぷりは、大食いで鳴らした赤城や大和すら鼻白む程だった。
「ン!」
レ級本体が空になった茶碗を鳳翔に突き出す。
顔のあちこちに飯粒を付けて笑う様は、まるっきり「育ち盛りのお子様」だ。
最初は気味悪がっていた鳳翔も、元気に食って勢いよく茶碗を出すレ級に、次第に愛着を感じてきたらしい。
強張っていた顔が、今や鎮守府の駆逐艦達を眺める表情になっている。
「「ゲプ」」
結局、二人(?)が満足のゲップを吐いたのは、赤城と大和を合わせた程に食いまくってからだった。
艦載機は然程落ちなかったのか、ボーキサイトの消費が少なかったのは僥倖か。
これでボーキまで食われてたら、赤城が血涙でも流しかねん。
「『ご馳走様でした』は?」
食うだけ食って脱力するレ級に、無謀にも食って掛かったのは暁型駆逐艦のネームシップ『暁』だった。
「一人前のレディなら、挨拶はちゃんとするものよ!」
いや暁、レ級はレディとかいう以前にルールだのモラルだのを説いてもだなーーーー
「ゴチ……シタ?」
反応した!
「『ご馳走様でした』よ」
「ゴチ、ソマ、デシタ?」
「ご・ち・そ・う・さ・ま・で・し・た」
「ゴチソー、サマ、デシタ」
「はい、お粗末様でした」
たどたどしくも「ご馳走様でした」をこなしたレ級に感動したのか、鳳翔は反射的にレ級の頭を撫でた。
よく考えれば、暁以上に無茶な行動だ。
だが、当のレ級は最初こそくすぐったがっていたが、直ぐに目を細めてされるがままになる。
今なら尋問も出来るかな?
「なぁ、お前はどこから来たか覚えてるか?」
「ン!」
レ級が指差したのは、南。
ここから更に南……僕の世界で言うオーストラリアか?
……いや待てよ。
オーストラリアに深海棲艦が現れたなら、もっと騒動になっていそうなものだ。
まさか……南極か?
南極までは龍脈が繋がっておらず、鎮守府ごと行く事は出来ない。
(調べに行くなら、艦隊を出さなきゃ、か……しかし、艦娘は南極まで行けるのか?)
色々と考えていると、食堂の扉が開け放たれた。
今夜の当直の筈の軽巡洋艦『長良』だった。
「提督、緋乃本から緊急入電だよ!」