機関室(?)から地上に出るとーーーー
そこは入渠棟だった。
入渠棟とは、艦娘の修理施設だ。
戦闘で傷を負った艦娘は、ここで修理される……のだが、どう見てもただの『お風呂』だ。
そして、ここにも先客が。
壁から現れた僕と目が合ったのは、鈴谷の妹艦である航空巡洋艦『熊野』だった。
当然、入浴中なので一糸纏わぬ姿である。
「な⁉︎……な……な……」
咄嗟のことに声も出ない熊野。
っていうか、
「なんでダメージも受けてないのに入渠してるんだよ!」
声に出てた。
熊野はというと、見る見る内に真っ赤に染まっていく。
のぼせた……んじゃないよな。
僕は熊野が暴発する前に、脱兎の如く脱衣所へ。
ガラッ
僕よりも早く脱衣所の扉を開けたのは、鈴谷だった。
これから風呂に入ろうというのだから、言うまでもなくスッポンポンだ。
ーーーーしばし沈黙。
「え゛?提督⁉︎ナニしてんのこんなトコで⁉︎」
「お前はもう少し恥じらえ!」
全く動じない鈴谷に、捨て台詞を吐いて逃亡する。
「ぅえぇ〜ん鈴谷ぁ〜!
僕の背中を、鈴谷に泣きつく熊野の慟哭が叩いた。
入浴剤で濁ってたからセーフだ。
セーフという事にしておこう。
「
「あぁ、だから僕の居場所はみんなには内緒な?」
訝る雪風を追い払い、僕は駆逐艦寮の階段裏で呼吸を整える。
駆逐艦は殆どがケッコンカッコカリに興味もない娘ばかりだ。
とりあえずここなら時間を稼げるだろう。
ーーーー甘かった。
大淀からの追い討ちは、苛烈の一言に尽きた。
『提督は嫌がる熊野を手篭めにして逃走中。捕獲者には間宮と伊良湖の新作スイーツ試食権を贈呈します。……提督をふん捕まえなさい!』
誤解だ!捏造だ!冤罪だぁぁぁぁ!
叫ぶと同時に、駆逐艦寮の扉が一斉に開いた。
マズい!
駆逐艦達はケッコンカッコカリに興味が無くても、間宮のスイーツが絡むとなると話は別だ。
ここは最早安寧の地ではない、死地だ。
「一番最初に提督はっけ〜ん♪」
早速白露型駆逐艦のネームシップ『白露』に見つかった僕は、駆逐艦寮の廊下を駆ける。
それを追おうとする駆逐艦達。
……だったのだが……
「止まりなさぁぁぁぁい!」
号令一下、全ての駆逐艦が直立不動の姿勢を取った。
駆逐艦寮の寮長を勤める朝潮だ。
「寮内は駆け足厳禁です!規則破りは『一週間オカズ一品抜きとトイレ掃除』ですよ!」
「司令官だって走ってるじゃない!」
「司令官は寮生ではないので、寮規則は適用外です」
駆逐艦達の大ブーイングの中でも、自信満々に胸を張る朝潮。
これは流石に僕もどうかと思う。
でもGJだ!
僕は朝潮にサムズアップをすると、必死に“歩いて”包囲網を作ろうとする駆逐艦達を尻目に、悠々と駆逐艦寮を後にした。