その後ーーーー
夕方までは何とか逃げ回っていた僕だったが、流石に多勢に無勢。
僕は一般船舶停泊用の港に追い詰められていた。
鎮守府中の艦娘に半包囲され、背後の海にも潜水艦娘が詰めている。
正に絶体絶命の大ピンチだ。
「さぁ、これでもう逃げられないデ〜ス」
金剛がドヤ顔で歩み出る。
それに呼応するように、加賀や夕雲、ビスマルクといった面々も一歩前へ……って、ビスマルク、お前もか。
「いい加減誰か一人選ばれた方が良いのではないかと思いますが……」
大和の進言は分かる。
「今更、誰が選ばれたからといって不平不満は言わんぞ」
武蔵の言も分かる。
でもーーーー
「やっぱり、誰か一人なんて選べないよ。僕に甘い娘、厳しい娘、勤勉な娘、ちょっとぐうたらな娘、真面目な娘、お転婆な娘、頼りになる娘、見てて危なっかしい娘、可愛い娘、綺麗な娘、カッコイイ娘……みんなみんな素敵で、みんなみんな大好きなんだ。だから……」
僕は工廠に入り込んだ時に失敬した
そう、最初からこうしておけば良かったんだ。
みんなのどよめきを聞きながらーーーー
ーーーー僕は指輪を
間宮と伊良湖の新作スイーツは公平にクジで決めるとして、今回の騒動に参加した艦娘全員に間宮のアイスを奢る事にした。
熊野には「見えてなかった」事をキチンと説明し、伊良湖の最中を追加。
依怙贔屓だと抗議する娘には、「じゃあ脱いでもらおうか」と脅して納得してもらった(?)
なんやかんやで、今日も無意味にハードな一日だった。
間宮のアイスに舌鼓を打つ艦娘達の歓声を背に受けて、僕は執務室に戻る。
「良かったんですか?あれで」
一人追いかけて来たのは、大淀だった。
「良いんだよ。欲しがってる娘と欲しがってない娘との温度差もあるんだから、“誰かにあげる”なんて不和の元さ」
「そんなもの、ですか……」
眼鏡の奥で、大淀の目が光ったような気がした。
「いつか鎮守府の艦娘全員が提督とのケッコンカッコカリを望むようになると良いですね……ところで、提督は手妻の練習をどちらで?」
「手妻?何それ美味しいの?」
「……そういう事にしておきますね」
それだけ言うと、大淀は食堂へと戻って行った。
……流石は大淀、鋭いな。
僕は袖口に隠した指輪を取り出してポケットに仕舞った。
あの時、
燃やす直前に入れ替えたのだが、大淀には気付かれていたか……
僕は提督だけが入室を許される倉庫『アイテム庫』に入った。
高速建造材や開発資材、高速修復材や応急修理女神といったアイテムをよそに、部屋を圧迫しているのは……
艦娘全員分のケッコンカッコカリ指輪だった。
いやぁ、前に数を確認したら一個足りなくて焦ったんだよね。
まさか執務室にあるとは。
所属の艦娘全員が『提督LOVE勢』になったら配ろうと思ってるんだけど、『姉様LOVE勢』とか引き込めそうな気配もないもんなぁ。
ま、いつかは、いつかは、ね。
僕は自分で自分に言い聞かせるように呟きつつ、アイテム庫の扉を閉めた。