途中、猛吹雪に遭って立ち往生したり、クレバスに落ちそうになって艦娘の馬力で引き上げたりと、まぁよくあるトラブルに見舞われつつ、僕等は南極点に到達。
そこで予想通りの物を見付けた。
氷山から削り出した、白亜の砦。
明らかに人の手が加えられたソレは、まず間違いなく……
と、正面の扉を開けて人影が一つ、現れ出でた。
白い肌、白い髪、真紅の瞳ーーーー
深海棲艦だ。
しかも駆逐艦娘よりも幼く見える、その容姿は……『北方棲姫』か。
(
などと下らない思考も束の間。
北方棲姫の出現は予測済みなのだ。
「龍驤!」
「はいはい。いくら余ってるからって、大盤振る舞い過ぎやろ……」
ぶつくさ言いつつ龍驤が取り出したのは……ゲーム中で開発に夢中になった末、全空母の全スロットにぶち込んでも余る程に成り果てた最新鋭艦載機『烈風』だ。
僕は烈風を龍驤から受け取ると、北方棲姫に歩み寄った。
あきつ丸が目を剥く。
「提督殿、危険であります!」
「攻撃する気なら、もう攻撃されてるよ。大丈夫」
僕はゲーム中の北方棲姫の眼にあった憎悪や狂気といった物を見出せなかった。
レ級と同じだ。
同じなら、コミュニケーションが可能かも知れない。
いや、きっと出来る。
「カエ……⁉︎」
ゲームでお馴染みの台詞を言おうとして、僕が龍驤から受け取った烈風に釘付けになる北方棲姫。
「レップウ、オイテケ!♪」
決め台詞にも、迫力は皆無。
まるでオモチャをねだる幼女だ。
僕はしゃがんで北方棲姫と目線の高さを合わせると、烈風を差し出した。
「代わりと言っちゃ何なんだけど、君の仲間に会わせてもらえるかい?」
暫くは目を輝かせて烈風を弄くり回していた北方棲姫だが、ひとしきり観察し終えると、僕に向き直った。
一所懸命にしかつめらしい顔をしようとしているのだろうが、目の輝きが機嫌の良し悪しを物語っている。
「ツイテ……コイ」
北方棲姫は扉を開けると、僕に手招きする。
「みんなは内火艇で待機しててくれ」
「な⁉︎そればかりは無茶であります!」
「北方棲姫の様子を見ただろ?大丈夫」
「…………了解であります」
自分は北方棲姫を信頼するのではなく、僕の命令だから従うのだといった様子で、あきつ丸が不承不承敬礼する。
さて……鬼が出るか、蛇が出るか。
あきつ丸には自信満々を装ってああ言ったものの、深海棲艦の本拠地とも思しき場所に一人で乗り込む緊張と恐怖に、僕の足は意思を無視して震え上がっていた。