「あ、上手くいったんやね」
深海棲艦達を引き連れて内火艇に戻った僕に龍驤がくれたリアクションは、これだけだった。
「それだけ!? 深海棲艦だよ!? みんな味方になったんだよ!?」
「だって……そうする為に行ったんだろ?」
隼鷹の反応も薄い。
「そうなんだけどさ! もっとこう……驚いてくれても良いじゃないか」
「うん、驚いた」
ヴェールヌイは本気で驚いているのかも知れないが、普段から感情の起伏が乏しい彼女に棒読みで驚かれると、馬鹿にされてるようにすら感じられる。
「どーでもいいから、とっとと帰るニャ」
多摩は、全くの興味ゼロ。
内火艇から出迎える事もせず、ハッチから顔だけ出して主張する。
一刻も早く南極から離れたくて仕方ないらしい。
お前、ホントにアリューシャンで活躍したのか?
あきつ丸に至っては内火艇から出てくる事さえなかった。
いや、運転手だし仕方ないんだけどさ……
ガックリと項垂れる僕の肩を優しく叩いて労ってくれたのは、阿武隈ただ一人だった。
「内火艇の後を、犬ゾリならぬ『深海駆逐ゾリ』で移動する棲姫達」という光景は、なんというか異世界感に溢れていた。
僕は何故か「今後の事について話しておきたいから」と深海勢のソリに乗せられたのだが、彼女等の狙いは別にあったようだ。
“男”という存在が珍しいのは分かるが、乗り込んだ僕に対して寄ってたかって押し付けるわ揉ませるわ舐めるわ摩るわで、散々な目にあった。
ただ、寒さは感じなかった。
あんだけ揉みくちゃにされれば、当然ではあるが。
内火艇から見えないように一部の深海棲艦が視線を遮るように立つなど、ヤケに手慣れた逆痴漢だ。
いきなり元気になり過ぎな上にチームワーク発揮し過ぎだろ、コイツ等。
とりあえず、北方棲姫だけはワケが分からないといった様子で参加しなかったのは救いだ。
君はこんな大人になっちゃダメだぞ。
「そうですか。お疲れ様でした」
鎮守府に戻った僕への“今日の秘書艦”加賀の態度は、龍驤よりも更に素っ気なかった。
「いや、あのですね。深海棲艦と和解したんだよ! パニック起こせとは言わないけどさ、もうちょっと驚いてくれてもーーーー」
「提督なら、これくらいはすると思ってましたので」
「ぅ……あ、そう……」
何やら信頼されてたらしい。
戻って来た時点で深海棲艦への補給計画も準備万端出来上がっていた事からも、それは分かるのだが……
鎮守府の全員がノーリアクションというのは、やはり寂しい。
といった具合で執務室で悶々としていると、大淀が血相を変えて飛び込んで来た。
驚く間も無く、とんでもない報告を上げてくる。
「提督! 緋乃本が同盟を破棄、ベイ帝とオロ社に同調して対鎮守府非難の声明を発表しました!」
驚かすつもりが誰も驚かず、逆にこちらが驚かされる事になるとは……
「完全に想定外」ではないものの意外な展開に、僕は暫く動けなかった。