さて、計画を進めるに当たって、目下解決しなければならない問題。
それはーーーー
「食糧問題です!」
代返ありがとう、赤城。
そう、食糧備蓄が心許ないのだ。
深海棲艦達への補給によって、鎮守府の資源は大幅に減ってしまった。
とはいえ、サービス終了前に限界まで貯めた資源には、まだ余裕がある。
出撃も軽目の編成で十分なようだし、今日明日にもピンチになるという程ではない。
だが、食糧はそうはいかない。
出撃が無くとも腹は減る。
食わねば生きて行けない。
資源が減らない日はあっても、食糧が減らない日は無いのだ。
間宮達の陳情を受けて、鎮守府は節約モードに入る事にした。
翌日ーーーー
食堂に立つ僕の隣には、“特別秘書艦”に就任した正規空母『雲龍』がいた。
彼女の前身である空母雲龍が大戦末期に造られたせいか、彼女は何と言うか……倹約家なのだ。
「暫くは、雲龍指導の下で節約生活を送る事とする」
噛み付いて来たのは、やはりというか……赤城だった。
「なんなんですか、この朝食は? おにぎり一個に味噌汁と沢庵二切れって……私に死ねとでも?」
「資源はあります。艦娘は腹一杯でなくとも戦えます。むしろ“腹一杯”は戦いの邪魔です」
普段は温厚な雲龍の返しには容赦というモノが無かった。
こと倹約の話になると、本気度が違う。
赤城の目に涙が浮かんだ。
え? 涙?
「あ、あんまりですぅぅぅぅ!」
マジ泣きだ。
駆逐艦や軽巡に比べて大人っぽい印象のある正規空母が、マジ泣きしとる。
だがーーーー
「見て見て、照月。私の味噌汁、豆腐が三切れも入ってるわ♪」
「今日はいい事ありそうね、秋月」
「僕の沢庵なんか、みんなのより厚めに切ってあるぞ」
「陸では味噌汁や沢庵なんて付かなかったであります。これでも陸からしたらご馳走なのであります」
雲龍と同じく、元となった艦が物資に乏しい時代を生きた乙型駆逐艦や陸軍艦であるあきつ丸などは、こんな粗食にも耐え得る……というか、粗食と感じてない節がある。
駆逐艦にこうも歓迎されては、お姉さんたる空母も自重せざるを得ない。
赤城は泣き腫らした目で僕を睨むと、スゴスゴと引き下がった。
「物資ガ無ケレバ、有ル所カラ奪エバイイデハナイカ」
僕等のやり取りを外野から眺めていた南方棲戦姫が、呆れた顔で指摘する。
だが、それは僕のプライドと計画が許さない。
「現地の人にお願いして、分けて貰えるならそうしよう。略奪、ダメ、ゼッタイ」
「フン、艦娘トハ面倒ナモノダナ」
一言漏らすと、南方棲戦姫も素直に引き下がる。
強硬に自論を通したり、勝手に実行に移さないでくれるのは有難い。
ここで略奪なんぞしようものなら、ベイ帝ら『こちら側世界』の連中の思う壺だ。
しかしまぁ、当然というか『世界の敵』と成り下がった鎮守府に補給してくれる地域など無く……
ほどなく鎮守府はピンチを迎えた。
赤城や大和は部屋から出て来なくなった。
「部屋を出て歩くと腹が減るから」だそうな。
駆逐艦達にも心なしか元気がない。
これはヤバいかも……と覚悟を決めたその日。
ーーーー救世主が現れた。
「Hey提督! 鎮守府に近付いて来る船団を探知したネ!」
「船団?」
「偵察機から入電! ……Mr.財前の輸送船団デ〜ス!」
地獄に仏とは、正にこの事だった。