「やぁ、どうやら良いタイミングで駆けつけられたみたいだな」
財前さんは、赤城と大和を両手の花にして上機嫌だ。
彼が運んで来てくれたのが、資源より食糧が殆どだったのだから、彼女等がべったりになるのも無理はない。
まぁ赤城はともかく、大和に腕を取られても胸の
てっきり横菅で虐殺の被害者になってたかと思ってた財前さんが生きていたのは、堂豪元帥のお陰なんだそうだ。
いや、今はもう“元”元帥か。
堂豪元帥は、僕等が緋乃本を離れて南極を探索している間に暗殺されていた。
犯人は、緋乃本による西方大陸侵略に反対する反政府組織の末端。
そいつは堂豪元帥が大陸侵略を目論む悪の親玉だと思い込んでいたらしい。
ーーーー実際には挙兵に反対する立場だったのに。
何から何まで胡散臭い話だ。
裏で糸を引いてるのは、やはり鎮守府を貶めた“虐殺者”の一味だろう。
邪魔な元帥を排除して、喜び勇んで鎮守府に喧嘩を売った、と。
そんなところか。
元帥は僕等が樺宇土で寒中行動訓練をしている間に、財前さんに鎮守府への協力を要請していた。
私財を投げ打って資金を作り、それで補給物資を賄うようにと送り出されたのだ。
彼が難を逃れ得たのは、横菅を出て補給物資の買い付けや鎮守府の行方を捜していたからだった。
この時点で、元帥の軍内での発言力は皆無だったのだろう。
本来なら補給物資は軍の備蓄でも回せばいいところなのだから。
しかし、堂豪元帥の権力をどうこうするとなると、志摩田司令には荷が勝ち過ぎる気がする。
すると、志摩田の裏には……ベイ帝かオロ社、またはその両方が付いている可能性が高いな。
世界の大国が手を組んで、“厄介な怪物”たる僕等を退治したい、退治した後に改めて覇権を競う……
ありそうな話だ。
「うぇ〜、卑怯で姑息でunfairデ〜ス。軍人の風上にも風下にも置けないデ〜ス!」
僕の考えを金剛に話すと、露骨に嫌な顔をした。
艦娘としては、正々堂々と武力を競う戦いを好むのは当然か。
「でも、正々堂々では逆立ちしても勝てない相手だったらどうする? 卑怯だろうが姑息だろうが、形振り構っちゃいられないだろ?」
「う〜ん……」
考え込む金剛。
熟考の末、彼女が導き出した答えはーーーー
「やっぱり私にはそういう戦い方は無理デ〜ス」
まぁ、らしい答えだ。
僕が彼等だったとしても、敵対するなら同じ様な手を採っただろう。
敵対するなら、ね。
僕なら先方の機嫌を取りつつ、上手く敵対勢力にぶつけようとするだろうけど。
彼等の気持ちは分からなくもない。
けど、だからと言って彼等を赦すつもりはない。
財前さんの情報によると、マスコミの政府に対する不信感はかなりのものらしい。
横菅の件に関しても、資料映像と原稿を渡されて読んだだけ、局では検閲の兵も配置されていたそうだ。
裏を探ろうとしても憲兵に邪魔され、下手すると罪状を捏造されて投獄とか、抵抗を理由に殺されたりもするとか。
これは使える要素かも知れない。
それと、妙な情報も。
「なぁ、あんた等北極海に行ったか?」
唐突に妙な質問を。
「南極には行きましたけどね」
「南極!? するとあの話はガセか……」
なんでも財前さんの商売仲間が、北で『動く島』を目撃したらしい。
その特徴が鎮守府に似ていた為、財前さんは僕等が北極海にも足を伸ばしていたと思っていたのだ。
まさかーーーー
だが、有り得る。
僕は補給を終えると、鎮守府の航路を北に取った。