さて、仕上げだ。
僕は青葉とバトンタッチ、壇上に立った。
「我々『鎮守府』は、本日をもって全世界に宣戦布告する。これより我々は、ありとあらゆる海洋戦力を破壊し、全ての海洋を支配地域とする」
議場はショックを通り越して静まり返った。
「我々に降伏し、全ての海洋戦力を破棄した国にはシーレーンと現在の政体の維持を認めます。抵抗する国に対しては……」
ここで議場を睥睨する。
皆、固唾を飲んでこちらを見つめている。
「我々に同調する政体が現れるまで、何度でも攻撃します。あ、首都や重要施設が内陸にあるからって油断しないで下さいね?艦娘は地上を征く事も出来ますので」
ここで笑顔。
「領海問題もこちらが裁定します。我々は、こことは異なる世界からやって来た『異邦人』だ。くだらないしがらみや脅迫に踊らされない、中立的立場での裁定をお約束しますよ」
再び議場がざわめき出す。
大国との領海問題を抱える国だろうか?
歴史的経緯を無視した俺様外交とか、日常茶飯事なんだろうな。
さて、後は適当に示威行為でも……と思っていたら、衛兵の増援が議場に乱入して来た。
グッドタイミングだ。
「殺せ!この男を殺せ!」
志摩田が口角から泡を飛ばして叫ぶ。
不様だなぁ。
緋乃本と日本は違うけど、こんなザマを日本軍人や自衛官が見たら、どう思うやら。
衛兵がこちらを狙って小銃を撃つ。
が、その弾は僕を護る金剛の肌に跳ね返された。
「蚊に刺された程にも感じないデ〜ス」
さすが戦艦。
衛兵達は動揺を抑えて次々に撃って来るが、金剛の肌はおろか衣服にすら傷をつけられない有様だ。
「提督、そろそろおいとましますか?」
こちらも衛兵の銃撃を受けながら、青葉は平然とした顔で僕に聞いてくる。
僕はこのシュールな光景に思わず苦笑した。
「そうだね。帰ろうか」
僕の言葉に呼応して、議場に乱入した衛兵に襲い掛かる影。
議場に詰めていた衛兵を制圧した、正規空母『翔鶴』『瑞鶴』、重巡洋艦『古鷹』『加古』、軽巡洋艦『川内』『神通』、駆逐艦『叢雲』『初霜』だ。
「提督、何人か通してあげたけど、これくらいで良かった?」
瑞鶴が議場の扉を引き剥がして衛兵に投げながら、聞いてくる。
「もっと通してもノープロブレムだったネ」
「いや、あれくらいで丁度でしたよ。あんまり増えると、流れ弾で提督が怪我した可能性もありますし」
金剛と青葉が、議場の長机を振り回しつつ応じる。
まぁこんなもんだろ。
僕等は合流し、僕を中心とした輪形陣で議場を出た。
議場を出た瞬間、僕等の眼前の地面が爆ぜた。
おぉ、なかなか素早い対応。
僕等の前に現れたのは、戦車だ。
「翔鶴、瑞鶴。頼む」
「分かりました」
「提督……もしかして上陸組に私と翔鶴姉を選んだのって……」
僕の指示で、翔鶴と瑞鶴が前に出る。
戦車の砲撃!
翔鶴と瑞鶴は、砲弾を素手で弾いた。
議場から尚も中継を飛ばすマスコミから感嘆の声が上がる。
装甲の正面から食らえば多少の傷もつくだろうが、角度を付ければ弾くのは容易だ。
「さ、行きましょう、瑞鶴」
「はしたない真似はしたくないのになぁ」
ダッシュで一気に間合いを詰める二人。
公式記録ではないが、島風に迫る速度を出したと云われる二人なら、百数十メートルの距離など一瞬だ。
二人は戦車の端に手を掛けると……
「えいっ♪」
「よいしょ」
気合いとは無縁な掛け声と共に、戦車をひっくり返した。
翔鶴・瑞鶴の出力は、リミッターが掛けられていた大和・武蔵の十五万馬力を超える、十六万馬力だ。
艤装を付けなくても、戦車をひっくり返すくらいは簡単だ。