襲撃者の頭目は艦長席に身を預け、悠々と葉巻をふかしていた。
でっぷりと太った体躯の上で、“海の男”というよりは“山賊”という表現が似合いそうな厳つい顔が紫煙を吐き出す。
獲物の護衛は貧弱で、敵は補給の重要性を認識する能が無いようだ。
相手の民族に嫌悪感を抱いている頭目は、輸送船団をすぐには破壊せず、ジワジワと嬲り殺す事にした。
「サルめ。せいぜい泣き喚くがいい」
わざと弾を当てず、至近弾を連発する。
獲物は慌てふためき、悲鳴を上げているだろう。
つまらない任務に華を添える、これは痛快極まる遊戯だった。
昏い情熱に浮かされた宴は、僚艦が
「そろそろいいだろう。薄汚いサル共に引導を渡してやれ」
各艦が獲物に照準を合わせる。
一斉射の号令を下す、まさにその時ーーーー
艦橋の目前を、小さな飛行機が横切った。
「何だーーーー」
あれは?と続ける前に、轟音を伴って衝撃が来た。
座席から放り出され、床に接吻する羽目になった頭目は、部下の「魚雷だ!」という叫びを朦朧とした意識の中で聞いた。
更に衝撃。
二発、三発。
襲撃者達の旗艦である軽巡洋艦は、一分保たずに轟沈した。
「……やりました」
「轟沈二、中破三!後はよろしくお願いします」
加賀と大鳳の報告が長門の闘志を後押しする。
「砲雷撃戦、用意!蹴散らすぞ、陸奥」
「そんなに熱くならなくても大丈夫よ」
長門と陸奥の41cm連装砲が、仰角を取る。
艦娘たる二人の傍に鎮座する主砲は言うまでもなくミニチュアサイズであり、実際に41cmの砲口を持っている訳ではない。
しかし、それは見た目の問題でしかない。
「全主砲、斉射!
海面を抉る衝撃波は、紛れもなく史実の中の41cm砲のそれだった。
当然、威力もまた。
長門と陸奥の一斉射は航空攻撃で痛手を被った襲撃者達に降り注ぎ、中破艦一隻を轟沈、二隻を大破に追い込み、無傷だった一隻を中破させた。
長門と陸奥の砲撃の下を、北上と大井が駆ける。
逃走を図る襲撃者達の側方を位置取り、魚雷発射管を向ける。
「片舷二十門……も必要ないかね、これは」
「私達の手を煩わす輩に、情けも遠慮も無用!全門斉射します」
「おぉ〜大井っち張り切ってるねぇ」
結局は北上も全門斉射し、都合八十発の魚雷が襲撃者達を襲った。
その戦果は言うまでもあるまい。
「当方に損害無し、完全勝利です」
大淀の報告に、僕は満足して椅子に身を預けた。
手探り状態での初戦闘だったが、ゲームの時と遜色なく戦えそうだという感触は収穫だ。
……っていうか、なんで僕、普通に指揮出来てるんだろう?
僕は実戦よりも、異常な環境に早々に慣れつつある自分の適応力に戦慄した。