オーバー艦これ   作:ウェステール

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ベイ帝、陥落

文月の記事が新聞に載る事で、潮目が変わった。

 

新聞はベイ帝全土に留まらず、欧州まで席巻。

睦月と文月は一躍スターダムにのし上がる事となった。

呉鎮守府には取材依頼が殺到し、そこから波及して他の鎮守府にも一般大衆の目が向けられた。

広報を担当する事になった艦娘は悉く人気を博し、終いには「グッズを作りませんか?」というオファーまで来だした。

 

関連グッズ、漫画化、アニメ化、実写(!?)劇場版、TVドラマ……

 

こちらが想定していたパターンの斜め上を行く形で、鎮守府の財政は潤っていった。

 

 

しかしまぁ、艦娘なら分からなくもないんだが……なんで深海駆逐が人気になるんだ?

なんでも、艦船の護衛で併走する様が「イルカみたいで可愛い」らしい。

 

この世界の人間のセンスって……

 

波に隠れて殆ど見えない状態から「これはイ級、これはハ級」と見分ける強者(つわもの)まで現れ、世界はちょっとした『艦娘&深海棲艦フィーバー』に沸いた。

 

 

 

一方、ベイ帝はその威信を失った。

不倶戴天の敵と喧伝していた“艦娘”の正体が“敵国をも助ける少女”だと知られた事、自国の船を自国で守れなかった事、バイモン海域での大敗……

 

市民達は皇帝への不信を募らせ、度々デモが行われるようになった。

 

これは、チャンスかな?

 

今は警官隊でなんとか押さえ込んでるけど、不満が消えたワケじゃない。

デモが暴動を呼び、暴動が軍の出動を呼べば、そのタイミングで艦娘を市民の援護に向かわせるのも手だ。

「悪の皇帝vs正義の市民&艦娘」という形を作れば、友好的な新政体を生み出せるかも知れない。

 

 

そして、そのチャンスは間も無く訪れた。

首都『エバーグリーン』にて発生したデモは「皇帝誅すべし」という暴動に発展し、皇帝の居城に迫る勢いにまでなった。

暴徒鎮圧の為に戦車が出され、見せしめの一撃が火を噴ーーーー

 

 

ーーーーく直前に、戦車の装甲を火花が走った。

火を噴いたのは、砲ではなく車体と相成った。

市民の頭上を、模型サイズの戦闘機が飛び去る。

烈風の機銃掃射が戦車を貫いたのだ。

更に、他の鎮圧部隊を球状の飛行物体が爆撃/銃撃して排除する。

 

 

 

艦載機達によって破壊された城門に殺到する市民達を遠くから見守るのは、正規空母『赤城』『加賀』と深海棲艦『空母棲姫』だ。

赤城は感無量といった風情で残心していた弓を降ろす。

 

「……とうとう本土爆撃の夢が叶いましたね」

「異世界の、だけれどね」

「勝ッタト思ウノハ、マダ早イゾ」

 

空母棲姫の言葉に、ハッと我に帰る赤城。

その顔は、いつもの“柔らかながらも油断ない”表情に戻っていた。

 

「そうですね。索敵を大事にしないと」

「そう、慎重に攻めたいところだわ」

「マァ、他ノ奴等ニ暴レル機会ナド、与エテヤル気ハナイガナ!」

 

結局、三人は首都防衛の任に当たっていたベイ帝軍を根こそぎ叩き潰した。

もっとも、大半の兵士は攻撃を受ける前に降伏したため、彼女等が破壊したのは“ほぼ兵器のみ”であったが。

兵士の間にも厭戦感が蔓延っていたらしい。

相手が艦娘と気付いた時点で、兵士達の士気は無いも同然だった。

 

 

 

この暴動は最終的にクーデターに繋がり、皇帝は失脚。

民主共和政権が発足する事となった。

新政府は皇帝の首を鎮守府に献上しようとしたが、「そんな真似したら軽蔑するけど、いいの?」と一蹴、無様な保身を図る卑劣漢達を震え上がらせた。

大体、首なんか貰ったってどうしろと言うのか。

 

皇帝は一市民に身を落としたが、本人のプライドが許さなかったのか、その後間もなく自害した。

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