ベイ帝がその名を失って一週間後ーーーー
僕の世界での小笠原近海、現地人勢力と艦娘との初の交戦が行われた海域で、佐世保鎮守府は緋乃本/オロ社軍と対峙した。
緋乃本では軍部を批判するデモが過熱、オロ社の地方は既にクーデター派に占拠されていた。
此の期に及んで尚、彼等が鎮守府への抵抗を止めないのは、軍事的勝利を掴めば状況を引っくり返せると思っているからか。
大海原にひしめく魚雷艇の群れからは、両国軍人の妄執が見える気がした。
「いかに艦娘とて、これ程の数には対抗出来まい!」
降伏勧告用の回線からは、ヒステリックな志摩田司令の声が聞こえて来る。
……この人、まだ軍に居たんだ。
確かに、馬鹿みたいな物量だ。
火薬を満載した魚雷艇は、誘爆しない程度の間隔を開けて、どこまでも続いているかの様に見える。
物量で圧倒した上で、体当たりによる鎮守府攻撃を画策した、か。
ーーーー愚かな。
自分の見聞きした物が全てだと思ってるのか、あのオッサンは。
出陣した第一艦隊旗艦は航空戦艦『扶桑』。
彼女も、また同じ艦隊に配属された妹艦の『山城』も、状況をよそに
「あぁ、伊勢でも日向でも長門でも陸奥でも大和でも武蔵でもなく、私が第一艦隊の旗艦だなんて……」
「おめでとうございます!姉様!」
などと浮かれている。
「提督、緋乃本の司令に『バカめ』と言ってやって下さい」
「まぁ、この程度の数で勝てると思ってるんだから、言われてもしょうがないわよね〜♪」
高雄の対応は冷淡だが、事実だからしょうがない。
愛宕は平常運転。
変わらないなぁ、この娘は。
「あの野郎、たっぷり後悔させてやるぜ!」
「天龍ちゃんは入れ込むと失敗するから、落ち着かなきゃダメよ〜♪」
天龍は志摩田の声を聞いただけで怒髪天だ。
龍田は志摩田の声にもショックは無いようだ。
良かった……
横菅虐殺を思い出してパニック起こされたらどうしようかと思ったが、この分なら大丈夫かな?
そして開戦。
魚雷艇群が近付く遥か前、遠距離で扶桑と山城の主砲が火を噴いた。
「いい?山城。砲撃戦よ」
「はい!姉様♡主砲、よく狙って、
二人の撃った砲弾はーーーー
空中で四散し、燃え盛る無数の流星となって魚雷艇群に降り注いだ。
『三式弾』こと三式焼霰弾は本来、空襲に来る敵機を迎撃する為の対空兵器だが、対地攻撃にも使われた榴散弾だ。
三千度に達する高温を発する弾子は魚雷艇に積まれた爆薬を起爆させ、盛大な爆発を発生させる。
横菅やアニシナでは通常弾しか使わなかったから、志摩田の知識に三式弾は無かっただろう。
確かに通常弾頭であの大群を相手取るのは厄介だ。
だが、三式弾を使えば、一発で多数の魚雷艇を破壊出来る。
第一艦隊を抜かれても手はあるが、扶桑・山城・高雄・愛宕が居れば、この程度の艦艇群は屁でもない。
「
「攻撃開始ね♪撃てぇ〜い♡」
扶桑・山城の討ち漏らした敵を、高雄と愛宕が落とす。
ぱんぱか言わない愛宕は本気の証しだ。
「天龍様の攻撃だ!うっしゃあっ!」
「攻撃、開始します。死にたい船はどこかしら?」
高雄・愛宕でも討ち漏らした敵は、天龍と龍田が処理する。
三段構えの陣を抜ける強者は、結局最後まで現れる事はなかった。