「こ、降伏だ!降伏する!だから助けてくれぇ!」
無線から、志摩田の情けない泣き声が聞こえてくる。
僕は応答しようとーーーー
ブツッ。
あれ?
突然、通信が途絶えーーーー
「電波の状態が良くないようです」
“今日の秘書艦”鳥海が、サラッと嘯く。
その手は通信機に……ってオイオイ、それは流石にどうかと……
そういえば、この世界にハーグ条約とかジュネーヴ条約とかあるのか?
まぁ、白旗掲げれば、出撃してる連中も、無碍にはしないでしょ。
無碍にされても自業自得だし。
「僕は何も見なかった事にするよ。ケリが着いたら起こして」
僕は鳥海に言い残すと、寝室に向かった。
結果ーーーー
予想通りと言うべきか。
志摩田司令は星になった。
なんでも……
志摩田司令が掲げた白旗を、龍田が砲撃で粉砕。
本人曰く、「たまたま掲揚竿に砲撃が当たったかも知れないわね〜♪」との事だ。
で、天龍が敵旗艦に乗り込んで志摩田司令を拉致。
非道の報いとして、山城と愛宕からシッペを、天龍からデコピンを受ける羽目になったそうな。
たかがシッペ/デコピンと侮るなかれ。
パワーは艦娘のソレなのだ。
多分ゴアでスラッシャーな目に遭って亡くなったんだろうなぁと、心の中で合掌しておく。
ともあれ、抵抗勢力も粗方叩き潰し、世界の海には平和が訪れた。
というか、陸の方でも露骨な侵略は無くなった……と思う。
侵略上等だった大国が完膚なきまでに潰されたせいで、各国から領土的野心が消え失せた……と推測される。
我ながら、いささか歯切れの悪い表現だとは思う。
でも、僕としては地上のイザコザなんか知ったこっちゃないのだ。
艦娘と深海棲艦の生きる場所が、生きる価値が出来上がったのだから、これでいいのだ。
艦娘と深海棲艦は、この世界において『海の守り神』となった。
航海の安全を司る神。
貨客船に乗る人々は、航海中に艦娘や深海棲艦に遭遇すると手を振って歓迎した。
たまに約束を破って荷に兵器を隠したりする輩もいたけど、艦娘が臨検して“妖精さん”を解放すると、“妖精さん”が船中を探し回って兵器を『廃棄』してくれるという万全っぷり。
現在では、徐々に地上のゴタゴタの仲裁を依頼されるようにすらなってきていた。
もう安心、かな。
運営に見限られ、捨てられた艦娘と深海棲艦。
新たな世界で、彼女等に新たな生き方を提示出来た。
うん。
これでいい。
サービス終了だからとデリートされていモノではないんだ、彼女等は。
執務室で、忙しく立ち回る艦娘と深海棲艦達を眺めながら、僕は満足感に包まれていた。
もうーーーー
思い残す事はーーーー
ーーーーない。