移動要塞である『鎮守府』だが、自由自在に、というわけには行かない。
“龍脈”とか“レイライン”とでも言うようなモノが海洋にはあり、それに沿ってしか移動は出来ない。
要は「レールに乗ってる」様なものだ。
艦娘は出撃時、出撃用ドックにおいて“海洋の神”の加護を受ける。
これをしないと艦娘は海に浮けず、潜水艦娘は武器を召喚出来なくなる。
また出撃用ドックと出撃中の艦娘は霊的に繋がっていて、一度艦隊を出したドックは、その艦隊が帰ってくるか全滅するかしないと別の艦隊が使う事は出来ない。
…………………………
ゲームでは漫然と「そういうもの」としてプレイしていた部分を大淀から教わり、とりあえずゲームとの相違点・共通点については把握出来た……と思う。
しかし大淀に「一部の記憶を失った」と自白した時は、大変だった。
パニクるわ卒倒するわで、正気を取り戻させるのに一苦労だったのだ。
まぁそれでも「ゲームしてたらゲームの世界に入り込みました」と言うよりはマシだろう。
「頭の壊れた可哀想な提督」扱いされるのは、メンタル的に非常に厳しい。
で、僕等の『佐世保鎮守府』は、現在『横菅(よこすが)』なる地に向けて針路を取っていた。
救出した輸送船団の団長に護衛を依頼されたからだ。
運良く龍脈もそちらに繋がっている。
(ここは恩を売っておいて損はないな)
そう判断して、僕は財前団長の提案を受けることにした。
この『艦これ世界のようでちょっと違う世界』の情報を知りたかったし、こちらの通貨を確保しておく事も重要だ。
資源はサービス終了の“あの日”に限界まで貯めていたが、それでも無尽蔵な訳ではない。
横菅港(財前団長から仕入れた海図によると、現実世界の横須賀に当たるようだ)で僕等を待っていたのはーーーー
ーーーー重厚な布陣の『普通の軍艦』の一群だった。
「ま、警戒するのは当たり前だよな」
軽巡洋艦『天龍』が、頭の後ろで手を組んで伸びをした。
ショートカットに眼帯、一人称は「俺」という漢らしさ溢れる艦娘ながら、軽巡としては破格の“胸部装甲”に思わず目を奪われる。
「私達は彼等からしたら“正体不明の怪しげな戦力群”ですものね〜♪」
のんびりとした口調とは裏腹に、電光石火の勢いで天龍の胸に向いていた僕の目を潰しにくるのは、天龍の姉妹艦『龍田』だ。
天龍とは真逆の“物静かなお嬢様”っぽい風貌でありながら、イザという時には天龍以上に頼りになる艦娘だ。
「オラ、じゃれ合ってないでとっとと行くぞ!ったく、何で俺がこんなつまんねー役を……」
「天龍ちゃん、じゃんけん弱いものね〜♪」
「うっせぇ!」
武闘派で実戦大好きな天龍には悪いが、彼女と龍田、駆逐艦の『島風』には、僕と一緒に現地の軍指揮官と面会してもらう。
僕の読みが当たっていたら、この三人なら過不足なく役に立ってくれるはずだ。
僕は僕の予想が外れることを祈りながら、横菅の地に降り立った。