「さて、では君の『艦娘』とやらをこちらに引き渡して貰おうか」
僕は、僕等に向けられた銃口を無感動に眺めた。
予想通りの展開に、若干の失望を感じつつ。
横菅港に着いた僕等を待っていたのは、歓待だった。
財前団長は敵を撃退して任務を遂行した英雄として、僕等は彼を助けた勇者として讃えられた。
賞賛の海の中で小島のように浮かぶ悲しげな顔は、護衛艦の乗組員遺族か。
「護衛艦隊の全滅を覆い隠す必要があるんでしょうね〜」
龍田が楽しげに耳打ちしてくる。
なるほど、是が非にも『目くらましになる英雄』が欲しいって事か。
僕等が面会した横菅の軍司令官志摩田は、縁なしの眼鏡を掛けた痩せぎすの男で、神経質な官僚タイプの人物に見えた。
彼は当初、僕と一対一での対談を希望して来た。
もちろん、突っぱねたが。
島風には建物前で連装砲ちゃんと遊んでてもらい、天龍龍田を引き連れて会談の場に入室した。
会談場には志摩田司令の他に衛兵が二人。
と、天龍の獣耳に似た艤装と、龍田の天使の輪を思わせる艤装が作動した。
二人は左右から囁いてくる。
「左の部屋に三人ほど詰めてるぜ」
「右にも同じだけ居るわね〜♪」
想定内だ。
僕は可能な限り笑顔を作って志摩田司令の手を握った。
志摩田司令は美辞麗句を並べ立ててこちらを立てると、艦娘について聞いてきた。
根掘り葉掘り。
まぁ、彼等の敵を叩きのめしてくれた存在に興味を持つのは当然だ。
その後、こう言ってくるのも。
「我が軍に協力してはくれまいか?」
「『貴様の様な若造が所有するには、過ぎた戦力だ。我々が有効に活用してやろう』ですか?」
腹芸は苦手だ。
人は図星を突かれると逆上するというが、温厚そうだった志摩田司令の顔が見る間に凶相に染まっていくのは、見ものと言えば見ものだった。
「そうか……なら仕方あるまい」
志摩田司令が指を鳴らすと、左右の部屋から衛兵が駆け付け、小銃を向けた。
かくして冒頭のやり取りになる、というわけだ。
衛兵の装備はボルトアクションのライフル。
太平洋戦争時から見ても旧式な装備だ。
これがこの世界の科学水準なんだろう。
天龍も龍田も、ライフルを前に慌てた風もない。
二人は僕を背後に庇い、前に出る。
「女の影に隠れるのか?大した勇者様だなぁ!」
哄笑する志摩田司令。
状況が理解出来ていないようだ。
衛兵達は、落ち着き払った天龍龍田を前に、言い知れぬ不安を抱いて互いに顔を見合わせている。
その判断が正しいんだけど……激情した司令の前じゃ、正しい行動はとれないんだろうね。
「構わん!撃ち殺せ!!」
やっぱり。
そしてーーーー
ダァァァァァン!
部屋に銃声が轟いた。