オーバー艦これ   作:ウェステール

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横菅上陸戦2

 

どよめきが起こった。

 

衛兵の一人が撃った弾は、天龍が眼前に翳した左手の掌に収まっていたからだ。

 

「ん?どうした?こんなもんでビビってんのか?」

 

天龍は最寄りの衛兵に無造作に近寄ると、腰に挿していた拳銃を奪い取った。

ありふれた回転式拳銃だ。

天龍は輪胴を外して残弾を確認すると、おもむろに自分のコメカミに銃を当てた。

 

バンバンバンバンバンバン!

 

一気に全弾撃ち尽くす。

潰れ、ひしゃげた銃弾は、床にポロポロと溢れ落ちた。

当然というか、天龍は無傷だ。

 

目の前の信じられない光景に息を呑む衛兵達に、天龍は弾切れになった拳銃を投げ捨ててニヤリと笑った。

 

「フフ……怖いか?拳銃弾なんぞで軽巡が沈むかよ、バーカ」

 

天龍の雰囲気に呑まれた衛兵達の包囲が緩むと、僕の身体が宙に浮いた。

 

「じゃあ提督、おいとましましょうね♡」

 

僕の襟首を掴んだ龍田は近接戦闘用艤装の薙刀を召喚すると、その柄で会見場のドアを突き破った。

ドア前に待ち構えていた衛兵を吹き飛ばし、廊下の窓をも破壊する。

 

「島風ちゃ〜ん♪いくわよ〜」

 

一声上げると、龍田は僕を投げ飛ばした。

部屋を飛び出し、廊下を抜け、一気に外へ。

成す術なく落下する僕を受け止めたのは、島風型駆逐艦『島風』だ。

 

「おかえりなさい、提督」

 

ウサギの耳を思わせるリボンの下で、悪戯っぽい笑顔が弾けていた。

 

「島風、提督を鎮守府まで頼んだぞ!」

「警備兵!そいつを捕まえろ!」

 

天龍と志摩田司令の怒声が交錯する。

 

「急いで帰れば良いの?」

 

僕をおんぶした島風が、聞いてくる。

 

「うん。“全速力”で、ね」

 

速度に関わるワードは、彼女を奮起させる魔法の言葉だ。

島風の顔が歓喜に輝いた。

 

「提督、ちゃんと捕まっててね♡」

 

ローライズのミニスカートの下で、紅白縞柄のニーソックスが躍動する。

 

「島風、行っきま〜す♪」

 

島風が土煙を巻き上げて走る。

駆逐艦島風の最高速度は40ノット。

時速78km超だ。

艦娘は陸上においてもそのスペックを発揮し、しかも人一人乗ったくらいで、その速度が落ちることはない。

見た目は少女ながら大の大人の警備兵達を翻弄して、島風は名前通り風となって疾走した。

 

 

 

鎮守府に着くと、大淀と警戒任務に就かせていた艦娘達が出迎えてくれた。

 

「天龍と龍田が戻ったら抜錨、ここを離脱する」

「了解しました」

 

会談の内容について詮索もせず、即応してくれる大淀。

交渉下手を責められないのは、有難い限りだ。

 

「よぉ提督。港の軍艦が動き出してるけど、どうするよ?」

 

はすっぱな物言いで聞いてくるのは、重巡洋艦『摩耶』だ。

天龍をして「姐さん」と言わしめるほどの傑物は、この状況を愉しんでいる風にも見える。

 

「撃ってきたら、反撃。ただし人的被害を出さない方向で」

「あいよ。“極力”出さない方向で、な」

 

不敵な笑みで応答する摩耶。

ふ、不安だ。

天龍、龍田、早く帰って来てくれ。

 

「よっしゃ!摩耶艦隊、出撃するぜ!」

「ちょっと!いつ『摩耶艦隊』になったのよ!」

「行くクマ〜」

「にゃあ」

「こらあかん、ウチがしっかりせな……」

 

勇んで出撃する摩耶に続き、重巡洋艦『足柄』、軽巡洋艦『球磨』、軽巡洋艦『多摩』、軽空母『龍驤』が迎撃に出る。

 

僕としては、無用な人死にが出ないことを祈るばかりだ。

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