戦闘は一方的だった。
小銃が効かない。
しかも高速(33ノット=62km/h超)で動き回る上に標的が等身大となると、当てることすらままならない。
天龍と龍田は、横菅の兵士達にとっては悪夢そのものだった。
「オラオラァ!天龍様のお通りだぁ!」
天龍の背中の艤装にマウントされた14cm単装砲が吼える。
玩具にしか見えない砲は、しかし砲声も威力も本物だ。
横菅の兵達は、“艦船が地上を行く”恐怖を思い知った。
「天龍ちゃん、弱い者をイジメて粋がるとカッコ悪いわよ〜♪」
龍田が薙刀の峰で兵士を吹き飛ばしながら、天龍を揶揄する。
二人とも好きに暴れている様に見えて、相手に致命的な傷を与える事を避けつつ確実に鎮守府に向かっているのは、見事と言う他ない。
「摩耶様の攻撃、喰らえぇぇっ!」
摩耶の艤装の20.3cm連装砲が火を噴いた。
横菅に駐留している戦艦の砲身が次々と被弾し、使用不能に追い込まれる。
「この距離なら外しようがないわよね」
「入れ食いクマ」
「楽勝にゃ」
足柄、球磨、多摩も摩耶に負けじと勇躍して踊る。
艦娘と同じく等身大の敵『深海棲艦』と撃ち合っていた時に比べれば、数十〜数百メートルの距離の戦艦の砲身など、目を瞑っていても当てられる程の容易さだ。
「艦載機のみんな、お仕事お仕事♪」
厚底ブーツ型の推進艤装を持つ軽空母『龍驤』が、懐から呪符を取り出して印を結ぶ。
と、その呪符が次々と『九九式艦上爆撃機』に姿を変え、大空へと飛び立った。
親指サイズの“妖精さん”が乗り込んだ艦載機は、ラジコン飛行機程度の大きさしかない。
それでいて実機と同じスピードで飛ぶのだ。
撃ち落とせるワケがない。
龍驤麾下の艦爆隊は、あるいは機銃で、あるいは急降下爆撃でピンポイントに武装を潰し、思うさま横菅艦隊を蹂躙した。
摩耶艦隊は艦隊としての陣形も何もない、各々好き勝手に動いての戦闘だった。
でありながら、それでもなお趨勢は最初からこちらに傾きっ放し。
さすが全員レベル99で戦意高揚状態なだけの事はある。
自慢の艦娘達の活躍に、僕は思わず見惚れてしまっていた。
天龍と龍田が帰投すると同時に、鎮守府の機関を起動、抜錨する。
摩耶達警戒艦隊には出港後暫く鎮守府周辺を回ってもらい、遠海に出てから回収した。
僕等が逃げ出した跡には、島風を追い掛けて精魂尽き果てた兵士と、天龍龍田に翻弄されて疲労困憊の兵士、摩耶達に全武装を潰されて丸裸にされた駐留艦隊、それと想定外の事態に放心状態に陥った志摩田司令が残されたのだった。