提督夫妻が鎮守府に着任しました。   作:珈琲と紅茶

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お久し振りです。
三ヶ月ぶりですかね~

実は続きが詰まっていたり、就活でも中々結果が出なかったりで病み掛けてました(笑)
この続きは活動報告にて。

短めですが少しでも楽しんでいってくださいね~


18 秘書艦天津風 ~朝~

0530。

今日の天候は晴れであり、潮風が気持ちよく感じられるような…そんな日である。

 

朝食の準備をする間宮さん以外は起きてないはずの時間。

…私自身、秘書艦は生まれて初めての経験だから緊張しているのかもしれない。

まだ眠気が残っている中、私はベッドの上で自分の頬を両手で叩く。

「!」

感覚はある。

けど、やっぱり顔を洗った方が冴えるのかもしれない。

()

そう思った私はいつもの洗顔セットにフェイスタオルを持って部屋をこっそり出た。

…まぁ、どうせ勘の良い雪風とかが起きて付いてくるかもしれないけどそれはそれで良いのよ。

 

 

で、当の雪風はというと未だ夢の中。

見えそうで見えないアレは彼女お気に入りのパジャマによってしっかりとガードされている。(…コラ!勝手に妄想を膨らませないで下さい。…憲兵さん呼んじゃいますよ。…私?しっぽり搾り取られてしまって今では真人間の様な記者ですから…ホントですよ)

同室である時津風・浦風についてもまだ寝ており、天津風の心配?は杞憂だった。

ちなみに時津風は上に茶色いパーカー(フードの上部分に犬の垂れ耳の様なものが付いている)を羽織るだけ。

浦風は浴衣(白×藍色で、紫陽花の模様に染物特有の味のある落ち着いた物)を着ており、帯を緩めてあるであろう部分にはタオルケットが掛かってある。

 

 

ふらふらと覚束無い歩きにまともに働かない頭を何とかして洗面所に到着。

途中、食堂を通り過ぎたんだけど今日も中々に美味しそうな匂いがしていて楽しみだわ!

 

…っと、うっかりしてたわ。私、今日の秘書艦なのよ。

物思いに更けるのは今じゃないわ。

その思いを断ち切るかの様に洗顔を始めた。

 

 

「ふ~」

中々キリッとしない表情と格闘してはみたものの今日はこれで良いのかもしれない。

…下手に格好を付けても私らしくないだろうし。

洗い終わって顔から湿り気が僅かに残る位にタオルで拭く。

その後、保湿液やらを使い肌のケアに勤しむこと五分。

 

 

(さて、準備も出来たことだし部屋にセットを置いてきて着替えてから今日の分を取りに行ってこなきゃ)

私はそう思い部屋に戻ろうとして、

ドン!

誰かとぶつかった。

「っ!」

「?、済まない。」

そう言ってわたしを慎重且つ丁寧に立たせた。

「いえ!私も寝起きだっt…悠さん!?」

「おはよう、確か…今日の秘書艦だったよね。天津風」

「そ、そうね。初めてだから拙いかもしれないけど宜しく」

私はお辞儀をする。

「…ところでさっき起きたのか。まだ制服ではないからそう思ったんだけど」彼は私が頭を下げて切った時に言う。

私は思った…悪戯な笑みを浮かべているに違いない。

 

姿勢を戻し、顔には出さないようにしつつも私は返す

「!そ、それは今から向かおうとしていたんです!…私、気になったんですが悠さんは何故もう起床しているんですか?」

「ん?…いつもの日課みたいなものだからかな。後は業務前に君と少し話をしてみたいと思ったから…ではダメかな?」

彼はそう言って最後には首をかしげた。

…拒否出来なくなりそうな位に似合っていたけれど、私は何とか理性が勝った。

「…着替えてからではダメですか。」

否、先延ばしにしただけ。

…私もまだまだね。

 

 

「そうか、ならその後真っ直ぐ提督室に来てくれ。」

一応、私の気持ちを汲んでくれた彼はそう言って向かおうとしていた方向に進んでいった。

「ふ~」

一息ついて…

そして、私は部屋に戻った。

 

 

着いてから壁時計を見ると「0550」。

つまりあれから二十分経ったことになる。

で、あの同居人達を確認すると

「(そろそろ総員起こしのはずなんだけど…)」

相変わらずぐっすり。

雪風に至ってはベットから落ちそうで落ちないギリギリで寝ており、本当に自分の姉妹なのか不安になったりする天津風。

ちなみに、そういう天津風も実は逆立ちしていたり等の奇妙な寝相が青葉によってしっかり撮られたりしているのは秘密である。

裏では言い値で取引されているとか…

 

 

0555。

私はいつもの制服に着替え終わり、提督室に向かった。

 

 

提督室前

コンコンコン。

一般では「入室の時のノックの回数は三回」とされるけど、人によっては二回の場合もあったりする。

まあ…此処ではノックをしない人の方が圧倒的に多いので実は今更しなくても良いんじゃないかと私は思ってたりする。

 

「悠さん、天津風よ。入るわね」

「…」

そして、ドアを開けた。

まず目に入ったのは書類の束と格闘する悠。

天井に届き掛けるほど高く積み上がっており、今にも崩れそうになっている。

…いつものとは桁違いに多い。大規模作戦前でもこんなことは片手で足りるほどの数しかないのに。

よく見ると三ヶ月先までの予定が置いてあり、月の行事まで細かく纏めてある。

 

次に目についたのはソファで横たわる佳夜。

…着任の時には想像できない色々な部分が乱れており、他の鎮守府の青葉なら「青葉、見ちゃいました( ☆∀☆)」と言わんばかり。

その日の内には鎮守府全員に広まり、当分は赤面しながら生活しなければならない。

 

その点、ウチの鎮守府は心配がいらない。

私達が青葉さんと『お話と準備』をしっかりしたおかげで、(表面上は)何も無くなったわ。

 

「お、天津風か。おはよう」

気づいた彼は右手にペン、左手に判を持ったままこちらを向き返事をした。

「悠さん、これはどういう事ですか」

私はそう言いつつ机に寄った。

パッと見で分かったのは彼の目元には僅かだけれど隈があった。

「…。つい、やってみたくなったから。…後、二時間あれば半分終わるから、そっちで気になる所が無ければ各所に届けに行ってくれるかい?」

「はぁ!?…悠さん、一応お訊きしますが貴方は執務をいつ開始されましたか」

「う~ん、運び入れが0400位から始めて…大体二五分かな」

そう言いつつも両手は阿修羅の様な動きをしており、私は拝みそうになった。

 

…間違いない。悠さんは人外だ。

演習先や遠征中の他の鎮守府の娘達とたまに話をしたりして知った事がある。

勿論、それはあくまでも噂程度のものも混じることがあるから信用しきってはいないけど。

 

提督にも何種類か居ると聞いた事があるけれど、一番扱いが難しいタイプ。

もう一人の佳夜さんは逆のタイプである為に二人の仲も私達の相性も良い。

…実務以外は。

 

「…悠さん、後一時間で朝食なのでその頃には一旦切り上げてくださいね。」

「ああ、それだけは忘れないよ。あんなに美味しい食事を一食足りとも抜きたくないから!」

それを最後に言ってから彼は書類にだけ視線を落とした。

その間は笑みを浮かべつつ。

「あ、そうそう、佳夜を起こす時間も要るから五分前に声を掛けて」

…結婚しているって良いな~

 

 

そして私は仕上がっている書類に目を通す。

私は思わず声をあげそうになった。

 

…今まで提督不在の中、代理としてやっていた艦娘(龍田)に艦娘がやるところの仕方を一度紙に書いてもらった事があるけれど、その時の記憶と此処の書類を照らし合わせても矛盾や引っ掛かる点も無いし、とても綺麗に纏められていてスゴイと思った。

 

「ん?どうした天津風?」

彼は私の反応に気付いたのかまた此方を向く。

…相変わらず両手は止まらずに。

「な、何でも無いわよ」

「そうか…問題無いのなら良いが」

 

 

私は書類を手直しすること無く各所に渡しにいくことで時間は過ぎていくが、この後提督室にやって来る遠征組(今回はボーキ集めがメインなので四班就くが少数精鋭。旗艦は)や出撃組(潜水艦娘達が一班、他三班は早期警戒組として行動。旗艦は)を納得させるには十全な説明と理由が書き揃えてあり、後で彼女達に驚かれる事になる。

 

 

0655

「悠さん、五分前ですよ」

壁時計を見ていた私は約束の時間になった事を彼に伝えた。

「そうか…フフフ!ハッハハハハ!!」

!?

思わず私はひっくり返った。

「済まないな、『佳夜をどう起こす』のが毎朝の楽しみの一つなんだ。」

彼は表情こそ申し訳なさ十分なのに口調は悪びれる事無くはっきり言う。

…「天才」ではなく「天災」の方がしっくりくると思うわ。

たった数十分程でわかるほど「人外」と呼びたくなる位に色々とレベルがおかしいのよ。

 

私は思考を維持しつつ、起き上がった。

「…では天津風、君ならどうやって佳夜を起こすか」

タイミングを図ったかの様に彼から質問された。

「…そうね、私だったら…曲を流すわ。寝起きならヘビメタ…かしらね」

以前、私が寝起きドッキリでやられたものを今回は私の手でやってみたいのよね。

…私も毒されたかしら

「ん…それならやってみるか!」

 

~準備中~

 

ソファで横たわる佳夜の目の前のテーブルには雪風も使った某スピーカー、タイマー付プレーヤー。

…あと二分で時間なのだけれど、こんな事していて良いのかしら。

 

置いてから離れて十秒後

「Z…!!!!!」

あの様子だと起きたようね。

 

そう確認してから私と悠さんは佳夜さんに近づき、

「佳夜さん、おはようございます!」

「文句の一つでも言いたいと思うが…時間だぞ」

「!?」

佳夜さんは声には出さないものの驚愕していますが、何とか着替えようと起き上がろうとしてソファから

 

ズドン!

「うっ!」

転げ落ちました。

 

「しょうがないな~着替えは後で良いから…ちょっと我慢しろよ」

悠はニヤニヤとした口許で音も無く屈み佳夜を片手で抱き抱え、

「急ぐぞ、天津風!」

言うが早いかそこから消えた。

「は、!?ま、待ってください!!」

 

 

食堂前

「到着!…あれ、天津風は?」

佳夜をお姫様抱っこで連れてきていた悠は下ろした後に話しかけようとした。

だが、肝心の天津風がいない。

悠は、「普通」に走っただけだ。

廊下から

…ドッドッドッド~

近づいてくる音。

どうやら天津風だ。

「はぁ、はぁ、悠さん、はぁ、突然消えないで、はぁ、ください」

天津風は息も絶え絶えに紡ぐ。

「ん?済まない。…でもただ走っただけだよ。」

「走っただけで私が追い付かないのは可笑しいですよ!」

 

本来、艦娘は艤装を使うことで「船としての」全力が出せる。また、使わなくても駆逐艦娘でも一般男性の同等以上はある。

因みに此処の娘達はオリンピックの金メダリストを軽々超える。

 

しかし、見た目は「一般的な体格と身長」の悠に追い付けないのは確かに変な話である。

事情を知らない彼女にとってはこの状況が未知な訳だから怒気が含まれていたとしても不思議ではない。

 

「…そう言うのなら加賀に訊いて無かったという事か。説明は後でするから今は朝食にするぞ。(…後で加賀に理由を聞いてみて、場合によっては軽くお仕置きかな。)」

彼はそう言って食堂に入る。

佳夜は…とっくに入って朝食を受け取り席に着いており、

「やっと、悠ちゃん来た~」

…此処が鎮守府で無ければこんな場面も自然なのだが。

 

「お、置いてかないで!」

天津風も入った。

 

 

「おはようございます。悠さん、今日は少し遅かったですね。…一応戦艦盛りまでなら直ぐに出せますが、どうしますか?」

間宮さんは念のための準備をしながら聞いてくる。

「ん~じゃあ戦艦盛りにするよ。足りなかったらまた来るから」

悠の口調そのものは至って普通だが、用意をする側の間宮さんを見てあげて欲しい。

ホッと一息入れてから前もって用意していた中身に仕上げをして、一生懸命に炊飯用の鍋からご飯を器に寄そう。

額に汗が一筋。

 

 

「…お待たせしました。どうぞ」

ッズン

「お!今日は鯵の開き定食か。」

スゥ

「…悠さん、毎回思うんですけど重くないんですか?」

「やっぱり…変かな?」

 

…自覚が無いのは色々と不味い。

だが、学生の時はこれが当たり前なのだから。

彼の周りには『飛んできた砲弾を投げ返す』や『刃物を防具無しの状態でメッタ刺しさせた筈なのに血が一滴も落ちずに刃先が潰れていた』、『素手で新海域を突破した』。

他にも挙げられるが挙げれば人外の集まり。

 

「だが…これを日常として慣れて欲しい。他の提督が来て、俺と同世代だと思ったら皆こんなもんだから。・・・佳夜(嫁さん)を除いて」

苦笑にしか見えない表情をしているが右手に持っているものは微動だにしておらず、左手で天津風の背中を押して前に進ませようとする。

 

だが、彼女は動かない。

何故なら彼女は悠が放った衝撃発言によって立ったまま気絶してしまったからだ。

「…マジか。少しは肝が据わっているかなと思っていたんだけど」

そう言いつつ目の前で手を翳してみたりしてみる。

「反応が無い。只の屍の様だ…なんてな」

「悠さん、私が貴方の分と天津風さんの分を運んでおきますから彼女のことはお任せしますね。…伊良湖ちゃん、私運んでくるから少しの間任せるわね」

間宮さんはそう言うが早いか割烹着を脱ぎ俺が持っていたプレートを取り上げ、もう片手には天津風の分(駆逐艦盛り)を持つ。

 

「では、先に向かってますね」

二つのプレートの重量の差がかなり違う筈なのに器用にバランスを取ったまま進んでいく。

 

 

「っと見とれている場合じゃない。…よっと」

両手で天津風を抱える。

所謂『お姫様抱っこ』だ。

 

(…思った以上に軽いモンだな。普通ならこんな娘達が深海棲艦(奴等)と戦っているとは思えないよな。しかも見た目、何処に出しても恥ずかしくない位に整っているんだから外部の奴等の一部じゃ提督達(俺達)の事をあるお話の人物の『プ●デュー●ー』かなんかと勘違いするらしい。お陰で横須賀等の憲兵達は特殊手当を出されてる。此れが軍の予算が増える要因の一つなんだから何とも言えなかったり。)

色々と考えつつも席に到着。

 

「よっと」

スッ

両手で抱えていた彼女を椅子に座らせる。

 

「!?…あれ…私、なんでもう座っているのよ?」

どうやら天津風は気がついたようだ。

「気が付いたか、天津風。…ところで、朝食はこれで良いか?間宮さんに任せていたから」

「え?あ、ありがと。ってさっきの話の理由を聞かせなさいよ!気になって仕方がないじゃない!」

…心なしか顔が赤い。

それに煙突?みたいなところから湯気のようなものが。

頭に叩き込んでおいた資料によると、どうやら感情が高ぶるとそうなるらしい。

…やっばり艦娘は面白いな。

 

食事中

 

 

「ふ~。予定より早く食べ終えたことだし、続きをしに行くかね~」

そう言いつつ椅子を後ろに下げようとした。

「!?ちょっと!私、まだだから待っててよ」

「うん?」

見ると天津風はまだの様だ。

佳夜()に至っては一、二口しか進んでない。

起こし方間違えたか…

「わらしおおひへひへいはなひへ~(私を置いていかないで~)」

…ならペース上げといてよ。

「…分かったから。後十分だけ待つよ」

 

 

結局食堂から出たのは二十分位経ってからだった。

 




次は未定です。
…出来るだけ纏められる様には善処します。
ではでは(^_^)/

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