私あおかなゲームをしまして、もう虜になってしまった訳です。
なのでまた性懲りもなく小説にしてみました!
こっちもちょくちょく投稿していくので、読んでもらえると嬉しいです!
ではどうぞ!
第1話 まだ物語は始まらない
空を見上げる。
そこには雲一つない快晴の空。どこかの少年はオールドブルーと呼んでいた空がある。
空気も澄み渡り、飛行機やビルのような余計なものも一切ない、人の目を奪い、釘付けにする空。
ーーこの空を見た人は、何を連想するのだろうか?
やはり、美しいと感じるのだろうか? 新たな希望に心を踊らせるのだろうか? それとも、鳥のようにこの空を飛び回りたいと思うのだろうか?
そのどの気持ちも間違ってはいないと思う。
美しい空があって、新しい可能性を秘めているグラシューーアンチグラビトンシューズーーがあればそのように考えるのが普通だろう。
だが、少年は違う。
少年はその美しい空を見上げてこう考える
ーーそこは、大切なものを奪い合う、戦場なんだ、と。
もう何度目かも分からないその考えを再確認した少年ーー
その目には空への希望も夢も映っていなくて、ただ敵意だけが映っていた。
ここ四島列島は、日本の南洋にある島の連なりで、グラシュの普及率が高いことで全国的に有名な土地だ。
グラシュは正式名称アンチグラビトンシューズと言って、少し昔、外国で見つかった反重力粒子を自在に操ることができるシューズのことだ。
反重力粒子は重力に反発する物質だ。
そしてグラシュから放出される反重力粒子の膜、通称メンブレンを姿勢制御などで操って空を自由に飛ぶことができるのだ。
本当はもっと線密な方法でグラシュは飛んでいるのだが......それはまた追々説明すればいいだろう。
空を飛ぶ高瀬悠はどこかつまらなそうにあくびをする。
髪はさらさらのショート。顔立ちもそこそこ整ったつり目気味で、男にしては少し華奢、纏っている雰囲気がのんびりとしたものである悠がつまらなそうにボーッと飛んでいると、その回りの空間すらも少し時間の流れが遅く感じてしまう。
悠も別に眠くてボーッとしているわけではないので回りの人たちも文句は言えないが、なんとも眠気を誘う空間になるのだ。悠が飛んでいる回りは。
そんな風に朝っぱらから同じ学園の生徒に睡魔を与えながらゆったりと飛んでいた悠の目に、目的地が見えてきた。
悠や回りの生徒の目的地。悠が通う学校上通社学園だ。
時間的にも余裕で学園につき自分の教室の1年B組にに到着した悠が教室に入ろうとすると、誰かが同じタイミングで教室から出てきた。
危うく正面衝突しそうになるのを悠が一歩引くことで勢いを殺して受け止める。
むぅ、誰だ。朝のゆったりとした時間に教室から飛び出てくる輩は、と相手の顔を確認すると、
「っと、大丈夫......って、みなも?」
「あっ、悠くん......お、はよ......」
突然教室から出てきたのは、綺麗な髪を腰まで伸ばして、いつもびくびくと不安げに震えている少女ーー白瀬みなもだ。
悠はみなもとは幼馴染みの関係で、昔から仲良くしている間柄だ。といってもさすがに朝からこんな公衆の面前で抱きつき体当たりをされるような関係ではないのだが。
クラスメイトがくっついている悠たちを見て黄色い歓声を上げるが悠は意図的に無視。みなもはどういう状況か分かっていないようだが。
さて、この反応からみなもが悠に対して突然愛に目覚めたとかそういう話ではないらしい。となるとこの少女が朝から教室を飛び出すような理由は悠の中にはあまり選択肢が存在しない。
「みなも、何か忘れ物でもしたの?」
「う、ん......今日、体育あるって......金木さんが......体操、服......忘れちゃって......」
「......うん、みなも落ち着こう? 今日は水曜だから体育はないよ? 体育があるのは月曜と金曜でしょ?」
悠の話を聞いて少しずつみなもが状況を理解していき、表情が安心したものに変わっていく。
みなもはなんというか......小動物っぽいところがあるのだ。いつも震えているが中身はすごく女の子らしい子で、一生懸命で。
そういう子はいつどんな時代でも、弄られの対象になる。もちろんいじめまではいかないものだが。
悠が小さくため息をつきながら件の金木に視線を向けると、「ごめーん。あはは」と悪気はなかったという風な謝罪と笑いが返ってきた。
高校生活が始まって1週間。その短時間でみなもはクラスでの立場を自動的に確立していた。
まぁ、つまるところ。
「......?」
悠と肌が触れあうほどの距離で首を傾げているこの幼馴染みは、このクラスの癒しキャラなのだ。
そもそも。
みなもがこういった弄られ癒しキャラを確立したのにはもちろん理由がある。
それはちょうど1週間前。入学式の日、クラスでの自己紹介の時間のことだ。
一人ずつクラスメイトが自己紹介をしていくなか、悠は自分の番までにある程度自己紹介の内容を考えておこうと思って頭を回転させていた。
前の人たちと同じように名前、出身中学校、好きなもの、嫌いなもの、あと何か一つぐらい適当に言えば滑ることはないだろう、と考えていると、聞き慣れた声で聞き慣れた名前が悠の耳に届いた。
「あ、あの......私......白瀬、みなも......です......」
悠の同級生であり幼馴染みでもあるみなものものだ。
みなもは極度の人見知りで、相当仲良くなった相手でもない限り声が震えてしまって怯えてしまう、ということは幼馴染みである悠も当然知っていた。
何かフォローを入れた方がいいかとも思ったが、悠が尊敬するとあるスポーツ店のお兄さんにそれは止められている。みなものためにならないから、と。
だがこのままみなも一人に頑張らせても、あまりいい結果にはなりそうにない。どこかの誰かは頑張ることが大切だとか言うが、頑張ってどうにもならないことの方が残酷なこともある。
(なにより......みなもが泣きそうなあの表情は見ていて辛い)
悠は大きく息を吸って、何度か咳をした。
教室で咳をするぐらいは誰だってするからそこまで注目を集める行動ではないが、みなもからすれば知り合いである悠の行動だから悠に注目する。
「.......?」
(よし、みなもがこっち見た)
みなもが自分のことを見ていることを確認し、悠は口パクでみなもに向かって言葉を投げ掛けた。
が・ん・ば・れ、と。
それを見たみなもは最初キョトンとしていたが、悠の行動を理解すると先ほどまでよりも少し頬から力が抜けた。どうやら少しは緊張が和らいだらしい。
隼人さん、これぐらいは許してくださいよー。と悠が頭の中で憧れの人に謝っていると、みなもの自己紹介が再開された。
それは他の人に比べればとてもたどたどしいものであったが、それでも「あぁ、緊張してるんだな」と普通に思える程度だ。
そうしてみなもの自己紹介が一通り終わり。最後に一言どうぞ、とみなもが担任に促された。
一瞬悩んだ末、みなもは口を開いた。
「わ、私、昔から......好きなものが、あって......私、フライングサーカスがしゅきでしゅっ......っ!?」
あ、最後噛んだ。
教室の中が、その一言で埋まった。
......まぁ、自己紹介の場で噛むことぐらいは誰にだってある。恥ずかしいがそれまでの話だ。
ただ、みなもの雰囲気がとても一生懸命で、子供が好きなものを友達に自慢するような健気さがあって。
そして......噛んだ本人がこれでもかとばかりに顔を真っ赤にしてしまっていた。
ーーそんな感じで、みなもの弄られポジションが確立してしまったのだった。
「みなもー。もうちょっと弄られ耐性つけた方がいいよ。いつか本当に騙されそう」
「ご、めん......」
下校中。
悠とみなもは並んで飛びながら今日の反省会をしていた。
この光景も幼馴染みなだけあって過去にも何度もある。
肩を落として落ち込んでいるみなもを見て悠もバレないよう小さく息をついた。
(みなもって、このままでいいのかな......いや、本人が変わろうとしていることは知ってるけど......)
この考えがみなもに対しての過保護であることは悠自身も分かっていた。
分かってはいるのだが......それでも悠には、この可愛い幼馴染みのことを考えないということはできない。
ふーっと、息を吐いて眼下の光景をボーッと見ると、家や木やなんやらが次々と前から後ろへと通りすぎていく。
(それでも、強く変わろうとするもっと違う強い力じゃないと、みなもは動けなくなってるんじゃないかな)
これまで培ってきた考えや経験のせいで、変わろうにも動けなくなってしまっている、そんな状態。
だから何か、大きな流れみたいなものに乗ることができたら。例えばーー
「あ.......」
「ん? どうしたのみなも......っ」
みなもが見ていた方を見ると、そこにはある男が飛んでいた。
どこか冷めきった雰囲気を纏いつつも物腰が柔らかそうな男だ。
身長はそこまで高くはないが、顔はかなり整っている。
なにより......飛行姿勢が驚くほど安定している。
その男を見て、悠は眉間にシワを寄せた。逆光で眩しいだとか目にごみが入ったとかそういう理由ではなく、単純に視線の先の男のことが苦手だからだ。
その男も悠たちに気づき、声をかけてくる。
「みなもちゃんと......悠か。久しぶり」
「あ......はい、お久し、ぶりです......」
「どうも、晶也さん」
みなもは顔を赤くしながらもどこか嬉しそうに、悠は不機嫌なのを隠すこともなく挨拶した。
ーー日向晶也。目の前の男の名前だ。
悠やみなもの一つ上であり、二人の昔馴染みであり。悠にとっては......
正直、晶也のことが苦手な悠は、幼馴染みの女の子に話を任せようとしたのだが、その彼女は晶也と目が合った瞬間から顔を真っ赤にして軽い混乱状態になっているので助力は望めなかった。
なので仕方なく、悠自身が晶也に応じることにする。
「今日は晶也さん、一人なんですね。鳶沢さんはいないんですか?」
「いないけど......そもそもなんで俺とみさきがセット扱いなんだ?」
「よく一緒にいるところを見たからですよ」
鳶沢ーー本名鳶沢みさき。いつ頃からだったか晶也と一緒にいるのをよく見るようになった女性だ。
髪が黒髪ロングの綺麗な人で、すごいマイペース、というのが悠の鳶沢に対するイメージだ。
だから今日この場に彼女がいないことはなんら不思議ではないのだが、悠にとってはいささか不都合ではあるのだ。
ちらり、と悠は自分の隣にいる幼馴染みの顔を見る。
......気に食わない。
悠は口を開けて、
「飛んでるなんて珍しいですね。晶也さん、もうFCはしないんですか?」
唐突に言った。
晶也はいつからか急に空を飛ぶことを嫌いになった。
元々晶也が世界にも通用するようなスカイウォーカーーーFCの選手だったこともあって、晶也が急に飛びたくないと言った時は悠もみなもの心底驚いた。
この話はこうも簡単に触れていいことではない。それは悠も知っている。
現にみなもは、悠の言葉を聞いてから悠のとなりで慌てている。
それでも......気に食わないじゃないか。
こうもあっさり、取られるというのは。
悠は自分がしていることは子供の八つ当たりのようなものだと分かりつつも見ていると、晶也は諦めを含むような笑みを浮かべ、
「あぁ、しないよ。前にも言っただろ? FCはやめたんだ」
「......っ」
「......そうですか」
悠はなんとも思っていないような適当な返事を返したが、内心は穏やかではなかった。
ーーこの人は気づいているのだろうか? 自分が言った言葉で自分が傷ついていることを。
ーーこの人は気づいているのだろうか? 自分が言った言葉で俺の幼馴染みが人知れず泣きそうになっていることを。
ーーこの人は気づいているのだろうか? 自分が言った言葉で俺のかけがえのないものが二つも傷ついていることを。
今すぐにでも相手に殴りかかりたくなったが、それは拳を強く握ることで堪える。
悠は、暴力や腕力で晶也に勝ちたいわけではないから。
悠の目には、教室で穏やかと言われている彼からはまったく想像もできないような色が浮かんでいた。
その後、晶也は何か急ぎの用事があって仕方なく飛んでいたことを聞いて別れた。
それからみなもの様子がかなり落ち込んでいるのを見て、悠は心配になったがかけるべき言葉なんて存在しないのだから無言のまま帰路を辿った。
10分ほど飛び、二人は商店街に降りた。そして少し歩いて見えたのは『スカイスポーツ白瀬』というスポーツ店。
中に入ると店の中には多くのシューズが並んでいた。
そうとだけ言えば普通のスポーツ店とあまり変わらないが、並んでいるシューズはほぼ全てがただ一つのスポーツのシューズだ。
そのスポーツとは、FCーーフライングサーカスだ。
FCとは、簡単に言えばグラシュを用いたスポーツだ。
空中にグラシュと同じ原理で浮かんでいるブイと呼ばれる円柱のようなものがあり、それを頂点においた正方形のフィールドの中で一対一で行われる。
基本的にポイントをどちらが多く取れるかというルールで、競技者は正方形の1辺300メートルある辺をなぞるようにぐるぐると回る。
各頂点にあるブイに相手よりも先にタッチすれば1点。もしくは相手の背中にタッチしても1点だ。
そうやって点を10分間取り合うスポーツ......つまりは空を駆るスポーツだ。
そしてこのスポーツは、かつて悠たちの同年代では、晶也が最強であったスポーツでもある。
(......はぁ、あの人がいないのに、わざわざあの人のこと考えたくないなー)
グラシュを見て一瞬先ほど出会ったいけすかない年上のことを思い出したが、すぐに首を振って脳内から追い出す。
そんなことをしていると、二人の姿を見つけた一人の男性店員が声をかけてきた。
「おかえり、みなも、悠」
「ただ、いま......お兄ちゃん.....」
「ただいまです、隼人さん」
二人の反応に男性店員は軽い感じの笑顔を返してくる。
白瀬隼人。この店『スカイスポーツ白瀬』の店長であり、みなもの実の兄であり、そして悠にとっても兄のような存在であり、尊敬する人だ。
身長が高く筋肉質な体、長めの髪が特徴的な人だ。
そして、元プロのスカイウォーカーでもある。
みなもはたまに隼人の手伝いとしてこの店で働くことがあり、今日がその日であり、悠も隼人に用事があったのでこうして下校デートよろしく一緒に帰ってきたのだ。
そのおかげで悠は会いたくもない人に会ってしまった訳だが。
隼人は申し訳なさそうにみなもに話しかけ
「みなも、今日もごめんな? 服はまた更衣室に置いてあるからーーあれ、みなも?」
「......」
が、みなもは隼人の声など聞こえていないかのようにつかつかと店の奥へと歩いていってしまった。
向かった先は店員の更衣室の方だったので一応大丈夫かと悠は判断したが、妹大好きなお兄さんはそうではなかった。
「悠、みなもに何かしただろ?」
「そうやって面白がって俺のこといじるのやめてくださいよー」
「ちぇっ、ちょっとぐらい乗ってくれてもいいだろ......」
まぁいいか、と隼人は呟くと、今度は真面目なテンションで悠に話しかけた。
「それで、本当に何があったの? あんなみなも見るの俺でも始めてなんだけど」
「......」
一瞬、言うかどうか悠は迷った。
理由はもちろん説明できるが、それを言うと自分の惨めな感情も話さないといけなくなるからだ。
だがみなものことはやはり隼人が一番理解しているのも確かだ。どうするべきか、と悠が迷っていると、その様子を見た隼人は苦笑いした。
「お前のその反応だけでなんとなく予想がついたよ......なるほどねぇ」
「......そこでどうして俺のことをにやにや見てくるんですか?」
「いやいや? ただうちの妹も結構モテるなーって思って」
「なんの話ですか......」
中学のときもそうだったが、悠はよくみなもと一緒にいることもあって付き合っているんじゃないか、という噂がたつことがしばしばある。
だがそんなことは一切ない。悠とみなもの間にそういった恋愛関係は微塵もない。
はぁ、と悠はため息をついて、話を切り替えることにした。
「隼人さん。対戦相手見つかりました?」
「ん? あぁそうだそうだ、見つかったよ......でもお前もなんでFCの対戦相手なんか探すんだ? 公式戦出られないだろ?」
悠は公式戦、大会には出られない。
単純な話、神通社学園にはFC部がないからだ。そのせいで公式戦への正式な参加手続きができない。
だが悠はスポーツ店ということで多くの学校のFC部にパイプを持っている隼人にFCの対戦相手を探してくれるよう頼んでいた。
最初に頼んだのは悠が小学4年のときだった。
それが、悠が、スカイウォーカーとして多くのものを失った年だったから。
「お前は正直言ってスカイウォーカーとして強いよ? 俺も認める。でも公式戦には積極的に出ようとしない。悠は何がしたいんだ?」
「......別に、俺は大会で優勝して表彰されたい、とかそういうことは考えてないですからね。強くなれればそれでいいです」
「はぁ......お前がそれでいいならいいけどな」
「いつもすいません.......それで、今回はどこの学校ですか?」
あぁ、そう返事した隼人は返答をもったいつけるようにニヤニヤと笑う。
どういうことだ? と悠が首をかしげると、隼人はばばーん!と効果音が聞こえてきそうな雰囲気で言った。
「なんと! あの高ふーーーー」
「お兄ちゃん!!」
「ーーみ、みなも、どうしたんだい......?」
(わー、隼人さん優しい......)
最高の見せ場を潰された隼人を見て苦笑いする悠。
それでも悠も隼人の話よりもみなもの話を優先する気でいた。なんだかんだいってこの二人はみなもが思考の中心だったりするのだ。
そして珍しく大声をあげたみなもは、どこか覚悟めいたものを瞳に宿して二人に言い放った。
「わ、私、FC部......作るっ!」
「「......え?」」
一瞬の間があり。
「「ええぇぇぇぇぇえええ!!!???」」
『スカイスポーツ白瀬』に、男二人の大声が響き渡った。
......これが、一人の少年が、失ったものを取り戻す物語の始まり。
久しぶりすぎてむずい......
感想くれるとやる気むきむきです!