超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
「いや、あの、コンパ…これ包帯の巻き方合ってる…?」
「勿論ですよ〜」
コンパのアパートの部屋の一室。そこで私は半裸にひん剥かれ包帯と絆創膏漬けにされていた。…ほんとに合ってるの?リボン風の結び方してある包帯とかあるよ?
「うーん…エロいね、イリゼ」
「まじまじと見るのは止めて欲しいんだけど!?」
ネプテューヌが親指を突き立て、所謂サムズアップをしながら見てくる。一応ネプテューヌも怪我はしたものの壁に打ち付けられた私よりはずっと軽傷だったからか絆創膏だけで済んでいた。
「案外元気ねイリゼ、魔窟ではへなへなだったのに」
「そりゃそんな状況なら元気も出るよ!勿論悪い意味で…って痛い痛い!傷に食い込んでる気がする位痛いよコンパっ!?」
「ちょっと位痛いのは我慢するです!」
「あー…わたしも前にその経験したよ。あれは辛かった…」
そんなこんなでコンパの手当ては続き…
「はぁ、はぁ…死ぬかと思った…」
「お手当てで死ぬ訳ないです」
「いやあれはほんとに痛いんだって…」
手当てが終了した時には私は再びへなへなになっていた。手当てしてくれたのは嬉しいけど…荒療治ってこういう事なのかな…。
「さて、と…じゃあそろそろ本題に入って良いかしら?」
アイエフがそう切り出す。荒療治(?)から数十分後、四人で一息つく為にプリンを食べていた所だった。
「うん、やっぱ一人はガンナーがいた方が効率良く狩れるよね」
「…イリゼ、まずはこっちから質問して良い?」
「スルー!?あいちゃんスルーは酷いよ!」
華麗にボケをスルーして私に問いかけてきたアイエフにネプテューヌが抗議する。やっぱりボケキャラにとってボケスルーは辛いみたい。
「うん、魔窟での戦闘の時の事だよね?」
「ええ、単刀直入に言うわ…あの力は何?」
アイエフのその問いを聞いたネプテューヌとコンパも興味深そうな顔をして私を見つめる。
そう、あの時私は確かに『変身』していた。それは事実だし、私自身もその事について深く考えて一つの回答を見つけた。だからそれを口にする。
「……さぁ?」
『……さ、さぁ?』
怪訝な顔をする三人。まあ気持ちは分かるけど実際『さぁ?』としか言えないんだからしょうがない。
「ええっと…分からない、って事です?」
「うん、分からない」
「全然?」
「全然」
「ちっとも?」
「ちっとも」
『…えー……』
いやそんな反応しないでよ…と言いたい所だけどやっぱり気持ちは分かるから口へと運んだプリンと共に飲み込む。
「うーん…本人が分からないんじゃ話の進めようがないわね…」
「だね、取り敢えずイリゼは魔法少女だったって事にしとく?」
「いやそんなキュートでふりっふりの格好じゃなかったから…」
「じゃあ魔装少女?」
「だから私はラブリーでチャーミングだけど死を呼ぶ様な格好じゃなかったでしょ!?」
「格好と言えば…ねぷねぷに似てた気がするです」
そう言われてネプテューヌとアイエフがそう言えば確かに…みたいな顔して頷く。私としても同意だけど…その前に確認したい事がある。
「私も似てるとは思ったけど…ネプテューヌは変身についてちゃんと知ってるの?」
「ううん、何かいーすんがメガ身化とか言ってた気がするけど変身出来る事位しか知らないよ?だから知ってそうなおばさんに聞いたんだし」
そう言えばそうだった。じゃあ、あの人なら私の事も知ってるのかな…私とネプテューヌで反応が違った事は引っかかるけど…。
「じゃあ、も一つ質問。いーすんさんって?」
「わたし達に鍵の欠片を探してほしいって頼んできた人ですよ」
「こう、天の声みたいな…あ、プロローグからずっと出てる地の文じゃないよ?」
「凄くメタい補足ありがと…」
「次の鍵の欠片を見つけたらイリゼも分かると思うわ。見つける事で一時的に話せるみたいだし」
「そっか、その人は私の事知ってると良いけど…」
記憶と変身能力、謎の女性といーすんさん…って本名なのかな?愛称っぽいけど…、私にとって気になる事は多過ぎて頭がパンクしそうになる。特に前者二つはそのまんま私の事だから一刻も早く知りたい。
でもそれはこの場で分かる事でもないから話は次の話題へとシフトしていく。
「しかし…まさかモンスターがディスクから出てくるなんて思いもしなかったわ」
「ですね。けど、これでモンスターさんが出てくる事は無くなったです」
「他にあのディスク…のままだと言い辛いわね。一先ずエネミーディスクと呼ぶ事にしましょ…で、そのエネミーディスクが他になければの話だけどね」
「モンスターはゲイムギョウ界全体にいるんでしょ?なら氷山の一角の可能性も高いよね…更に言えばエネミーディスクはモンスターの転移装置でしかないかもだし」
「そんなぁ…」
しまった、コンパを落ち込ませちゃった…。
どうしようとアイエフの方を見るとアイエフもそれを気にしていたのがすぐにフォローを入れてくれる。
「落ち込まないでコンパ。どっちにしろモンスター発生の原因が分かった以上、今までよりは対策が立てられる様になった筈よ」
「そ、そうそうアイエフの言う通りだよ。それに一つは破壊出来たんだからモンスターの数は減少してる筈だし」
「…そう、ですね…ふふっ、二人共ありがとうです」
笑顔でお礼を言ってくれるコンパ。それを見て私とアイエフは安堵すると同時に、先程から会話に参加してないネプテューヌの方を見てみる。
「いやぁ、ほんと働いた後のプリンは格別だね!」
幸せそうな顔をしながらプリンを頬張るのに勤しんでいた。
『はぁ……』
「…ん?三人共ため息なんかついてどうしたの?」
「あんたねぇ…」
「まあまああいちゃん、変身すると凄く疲れるみたいですから大目に見てあげて欲しいです」
「同じく変身したイリゼはちゃんと話してたじゃない…まあ、コンパが言うなら今回だけは大目に見てあげるわ」
「私も疲れてると言えば疲れてるけどね。で、ええと…エネミーディスクもだけどあのおばさ…女性の方も気になるよね」
刃を交えたからこそ分かる。あの人はエネミーディスク以上に謎で、モンスター以上に危険な人だ。放っておくのは不味いと思う。
「ええ、ねぷ子の事を知ってるみたいだったし…何者かしら…」
「鍵の欠片を知っていたです。そして集めているようだったです」
「なら先を越されない為にも早く出発した方が良いかもしれないね」
「そうですね、すぐに出発するです」
…え、どこへ?もしや私が知らないうちにそういう計画は進んでたの?私知らないよ?
「ところで…あいちゃん、イリゼ。わたしとこんぱは鍵の欠片探しの旅に出るんだけど二人も一緒にどうかな?初めての旅だから皆がついてきてくれると心強いんだ」
「私は別に良いわよ?」
「わーい、やたー!」
「あいちゃん、本当に良いんですか?」
「特にプラネテューヌに留まらなきゃいけない理由もないしここまで巻き込まれて今更抜けるのもね…それに二人だけじゃ何かと危なっかしいもの、私が面倒見てあげるわ」
嬉々として喜ぶネプテューヌと同じく微笑むコンパ。続いて私にも同じ問いを向ける。
「じゃ、イリゼは?イリゼもどうかな?」
「うん、私も良いよ。私はそもそも留まる場所が無いし、皆の旅の中で私の記憶についても何か分かるかもしれないからね、それに…」
「それに?」
「前に言ったじゃん、皆に助けて貰ったお返ししたいって」
「あー…そう言えばそうだったね」
「え…忘れてたの……?」
正直ショックだった。私は本気で言ってたのに…もしかしてネプテューヌはほんとは冷たいのかな…?
「うん、だってイリゼとは友達でしょ?なら助けるのは当然だしいちいちその見返りなんか求めないよ?」
「……っ…!」
「助けた時点じゃ誰なのかも知らなかったけどね…でもねぷ子の言う通りよ、それに既に助けられてるし」
「イリゼちゃん、お返しって気持ちは嬉しいですけどそれよりイリゼちゃんに友達として来て欲しいです」
「…皆…ありがとう……」
不意打ちの様な皆の言葉で心が温かくなる様な感覚を覚える。その感覚を言葉にするならそれは勿論…幸せ、だ。
プラネテューヌの街中、その一角にてわたしは…迷子になっていた。うん、まあ記憶喪失だし仕方ないよね?
「はぁ、誰に聞こうかなぁ…あ」
「今日もぽかぽかあったかいにゅ」
「こんにちはー。ねね、ちょっとお話いいかな?」
ぬいぐるみみたいなのに乗っかったちっちゃな女の子発生。どうみてもモブキャラじゃないし同じ事しか言わないタイプのNPCでもないよね。
「何だにゅ?ブロッコリーに用かにゅ?」
「へぇ、ブロッコリーって言う名前なんだ。思わず『ぷちこ』って呼びたくなるね」
「ぷちこじゃないにゅ、ブロッコリーだにゅ」
「そんな細かい事気にしない気にしなーい」
「細かくないにゅ」
やっぱりちゃんと会話になった。わたしの目に狂いはなかったね。
「それでぷちこに訊きたいんだけど、プラネタワーってどうやって行けばいいのかな?恥ずかしながら待ち合わせの場所が分からなくって…」
「それなら、この道を真ーっ直ぐ行くにゅ。そうすると看板が出ている筈にゅ」
「おおっ!親切にありがとう!それじゃあね!」
真っ直ぐなんてシンプルで分かりやすいね、いやー旅に出る事になったねぷ子さん一行のメインのわたしが遅れちゃ話にならないし急がないと!
「……そう言えば、今の人何処かで会った様な気がするにゅ…」
「……そうだにゅ、ねぷ子にゅ!」
「おおーっ!何か大地が割れているよっ!?まさかこれが、古の戦いの傷跡!?きっと遥か昔に、ここで女神と邪神が互いを無数の剣で封印し合ったと言われている戦いがあったに違いないよ!」
「…何言ってんのあの子」
「さぁ……取り敢えず珍しい光景にテンション上がってるんだよ、気持ちは分からないでもないし」
「すみませんてす、ねぷねぷは少し記憶が抜け落ちちゃってるですから根気強く、付き合ってあげて欲しいです」
プラネテューヌの端、接岸場。私達は大陸移動に必要な渡航手続きを教会で済ませた後に来たのだった。
「ねぷねぷ、この辺りは接岸場と言って大陸と大陸の陸地が時々くっ付く場所なんです。別に1つの大陸が割れてる訳じゃないてすよ?」
「へーそうなんだ。でもまだ繋がってないよ?やっぱイヤッフー!とか言ってジャンプするの?」
「オーバーオールに赤い帽子でも被ればねぷ子なら渡れるかもね」
「何なら用意しよっか?可愛らしいロリっ娘さん」
「む、どうして教会のお兄さんの真似してるのさ」
ネプテューヌの言う通り、可愛らしいロリっ娘とは渡航手続きの為に寄った教会にいた職員さんの言った言葉だった。本人の前でそれを言った職員さんはある意味凄い。
「別にー。…しかしパープルハート…様?…に
「だよねー。何せわたし達記憶喪失だし」
「イリゼはともかくねぷ子は女神様相手に失礼な事しちゃ駄目よ?」
「何でわたしだけ?」
「イリゼはそこら辺弁えてそうだからよ」
どうやらアイエフの中ではネプテューヌより私の方がしっかりしてると言う評価らしい。まあ、ネプテューヌには悪いけど当然だよね。
「…あ、大陸が近付いて来たですよ」
『おぉー!』
私とネプテューヌは近付く大陸同士に揃って声をあげる。初見ならきっと誰でもこんな反応するんじゃないかな、だってほんとに凄い光景だもん。
「じゃ、そろそろ移動になるわね。皆忘れ物はないかしら?渡ってから気付いても取りに行くのは大変よ?」
「だいじょーぶ、忘れ物は無いし宿題もやったし歯も磨いたよ?」
「それだとまた来週〜…になっちゃうんじゃないかなぁ…」
「あはは…あ、イリゼちゃんここに来るまでに傷が痛んだりしなかったですか?」
「あ、それは大丈夫だよ?…若干締め付けられてる感があるのは否めないけど」
そんな感じの雑談をしてるうちに二つの大陸は接触し、移動出来る様になった。私達と同じく大陸移動の為に来ていた人達が動き始める。
「よーし、それじゃあ皆誰が一番速く着けるか競争だよ!よーいどん!」
「ちょ、提案と同時にスタートなんてズルいわよねぷ子!」
「わわっ、待って欲しいですぅ!」
「あ、皆競争に乗るんだ…って思ってるうちに置いてかれた!?わ、私も負けないからね!」
そう言って走り出す私達。いざ、ラステイションへ!
「…ま、実際には移動シーンはカットで次わたし達に焦点が当たる時はもう到着してる、ってパターン何だろうけどね」
「だからメタ発言止めようよ!?」
本日のパロディ解説(原作未プレイの方の事を考慮し原作でのパロディも解説しております)
・ガンナーがいた方が効率良く狩れる
モンスターハンターにおける多人数プレイでのネタ。別に剣士オンリーでも問題ないのかもしれませんが、ガンナーも結構良いですよ?勿論持論ですが。
・魔装少女
これはゾンビですか?に登場する魔法少女っぽい能力者。作中でも言った通り変身イリゼはフリフリの衣装ではありませんし逆から読むと意味が分かる詠唱もしません。
・メガ身化
ポケモンシリーズの一つ、ポケットモンスターXとY、Zとそれ以降のネタ。文字が分からなかったとはいえ、どうして『めがみ』を『メガ身』と思ったのでしょう…。
・女神と邪神が互いを無数の剣で封印し合った
原作と同じ会社から発売されたフェアリーフェンサーエフのパロディ。原作からあるネタですが、同じ会社とはいえこんながっつりパロるとはびっくりです。
・イヤッフー、オーバーオールに赤い帽子
マリオシリーズの主人公、マリオの事です。原作からのネタな上今のご時世でこれを解説する必要は無い様な気がしないでもないネタですね。
・「〜〜宿題もやったし歯も磨いたよ?」「それだとまた来週〜…に〜〜」
ザ・ドリフターズのEDでのフレーズの一部。こちらも時々スペシャルとしてTVで放送されていますしメンバーの有名さ的にも解説は不要かもしれませんね。