超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第八話 新たな仲間と鍋パーティー

「ラステイションよ!わたしは帰ってきたどー!」

 

ネプテューヌが某宇宙要塞の悪夢みたいな事を言いながら街中には入る。当然街中で大声をあげれば変な注目を受ける訳で……

 

「恥ずかしいから突然街中で叫ばないでくれる…?」

 

すかさずアイエフがネプテューヌを窘めていた。多分アイエフがスルーしてたら私が窘めていたと思う。

 

「いやーちょっと出かけてただけなのに、なんか懐かしさを感じちゃってさー」

「まぁ…結構色々あったもんね」

「でしょ?…あ、そうだ。ノワールはこの街に見覚えない?」

 

私の同意を得たネプテューヌは満足げな顔をした後振り返り…私達パーティーの新たな同行者、ノワールさんに声をかける。

黒髪をリボンで左右に括った、所謂ツインテールの少女、ノワールさん。モンスター退治及び銀髪の女性との戦闘の後出会った彼女は何でも記憶喪失らしく(まさかの三人目!記憶喪失はブームなのかな?)、家も分からないみたいだったから記憶が戻るまで私達に同行する事になった。

 

「別に何も思い出せないわ。そういう貴女の方はどうなの?」

「いやー、わたしもさっぱりなんだ。じゃあイリゼは?」

「うーん…やっぱ私も二人と同じで全くもって思い出せない…」

 

ラステイションもプラネテューヌも私の記憶を刺激してはくれなかった。ほんとに私はどこ出身なんだろう…。

 

「そうだ!試しに三人で一緒に何かに頭をぶつけてみようよ!わたしは豆腐の角で、ノワールはタンスの角、イリゼは笑う門ね!」

「嫌よ!なんで貴女が豆腐で私がタンスなのよ!」

「私に至ってはことわざだし同音異義語じゃん…」

「ほら、わたしの頭はとってもデリケートな感じでしょ?それに比べてノワールは石頭っぽいし、イリゼは…こういう類いでのネタ枠だから?」

「…なら、私が貴女の頭をカチンコチンに凍った豆腐の角で殴ってあげましょうか?」

「ねぷっ!?や、やだなぁノワール…ただの冗談なのに目がマジだよ…?」

 

見事にノワールさんの怒りを買ったネプテューヌがタジタジとしながら私に目で救いを求めてくる。もう、仕方ないなぁ…。

 

「ノワールさん、やる時は言って下さい。私がネプテューヌを捕まえておきます」

「裏切られた!?」

「あら、助かるわイリゼ。じゃあネプテューヌ、絹ごしと木綿のどっちがいいかしら?最後位貴女の好きな方を選ばせてあげるわよ?」

「いやいや冗談だし食べ物を鈍器にしちゃ駄目だってば!黙ってないであいちゃんとこんぱも助けてよー!」

 

今度はコンパとアイエフに助けを求めるネプテューヌ。変わり身が早いと言うかなんと言うか…。

 

「二人共早速ノワールさんと仲良しですね」

「それにしても、豆腐豆腐連呼されるとお腹が減ってくるわね」

「あ、あのー…こんぱもあいちゃんもわたしの言葉聞いてた?特に最後の方…」

「そうです!今夜はお豆腐を使ったお料理でノワールさんの歓迎会をしましょう」

「あ、それいいかも。歓迎会なら鍋にするのも良いわね」

「…うん、この場には味方がいないんだね……」

 

二人の見事なスルーを受けたネプテューヌはなんと言うか…しょげていた。

 

 

 

 

十数分後、パッセ&食堂に戻った私達は依頼者であるシアンさんに達成報告を行っていた。

 

「助かるよ、これで部品不足に悩まされる心配が無くなるってもんだ」

「部品不足…?あ、部品の流通もあの交易路を使ってたんですね」

「ああ、そうさ。…ところで一人増えてる気がするんだがその子は誰なんだ?」

「っと、そういえば紹介がまだだったわね。彼女はノワール、交易路で出会ったんだけどどうも記憶喪失みたいだから連れて来たの」

「そうなのか……って、あれ…?」

 

ノワールの顔を見て、アイエフの説明を聞いたシアンさんは最初こそ普通だったものの、少しずつ様子が変になってくる。…もしかして知り合いとか?

 

「シアンさん、どうしたです?」

「その子、どこかで見た事あるような…あ…あぁ、も、ももももしかして…女神のブラックハート様…!?」

「ギクッ!?」

「へ……!?」

「ノワールさんが、ブラックハート様です!?」

「な、なんだってー!…ありのまま今起こった事を話すぜ。『拾った記憶喪失の女の子が実は女神様だった。』何を言っているか分からねーと思うが以下略ー!」

 

シアンさんの目を白黒させながら発した言葉に三者三様の驚きを見せる私達(ネプテューヌだけは反応のベクトルが違うけど…)。確かにどことなく違和感のある子だとは思っていたけど…まさか女神だったなんて…!

当然こんな展開となれば私達全員の視線がノワールさんに集まり、それに対してノワールさんは慌てて言葉を発した。

 

「そ、そんな訳無いでしょ!私のこれは…そ、その…コスプレが趣味で、それで…ブラックハート様が好きだから、その……」

『…………』

(とっさとは言え、流石に記憶喪失でこれは無理があるわよね…)

 

ノワールさんの言葉に閉口する私とアイエフ。いくら何でもそれは…って私は思ったけど、ネプテューヌ達三人は私とは別意見らしく…

 

「あ、何だ。それでブラックハート様そっくりの格好をしてたんだな。あまりにもそっくりだったからてっきり本人だと思ったよ」

「残念ですぅ。ノワールさんが女神さんならシアンさんのお願いを聞いてもらえたかもしれないのに…」

「全く、ノワールったら人騒がせなんだからー」

 

その後、多少のやり取りがあったものの結局ノワールさんは女神様ではなく女神様に激似のコスプレイヤー、と言う結論に落ち着いた。…うーん……。

 

「けど普段から女神様のコスプレをしてるなんて、ノワールって意外と痛い趣味なんだね」

「ぶーっ!?い、痛いって言うな!これにはそれなりの事情があるんだからしょうがないでしょ!」

「…コスプレをしなきゃいけない事情…?」

「うっ…そうよ、これには深い事情があるのよ…」

「まあまあ、こんな所で騒ぐのは止めましょ。シアン、私達はもう帰るけど、他に用はないわね?」

「もう帰るのか?なら、飯でも食ってけよ。お礼にご馳走してやるよ」

 

話をまとめの方向に持っていくアイエフ。それに対しシアンさんは意外な提案をしてきた。

 

「え、良いんですか?」

「勿論さ、何せお前等のお陰で交易路がまた使える様になったんだからな」

「じゃあさじゃあさ、ここで歓迎会兼ねた鍋やらない?シアン、お鍋とお豆腐ある?」

「あるぞ、ここはれっきとした食堂だからな」

「じゃあ、せっかくだしお言葉に甘えるとしましょうか」

 

…と、言う訳でノワールさん歓迎会は急遽食堂で執り行う事になった。これは所謂…貸し切り鍋パーティー?

 

 

 

 

「はむはむはむ…おいしー!やっぱり鍋は具材に味が染み込むから良いよね!」

「はふぅ…身体の芯から暖まって美味しいです」

 

様々な具材を入れ、湯気を立てる鍋を私達は囲んでいた。シアンさんのお母さんが作ってくれた鍋はコンセプト(?)を意識しているのかやけに豆腐が多かったけどそれで味が偏る様な事はなく、二人の言う通り凄く美味しかった。

 

「凄く豪華な料理だけど、私までご馳走になって良いのかしら?」

「そんな細かい事気にしないで食ってくれよ。飯は皆で食った方が上手いんだからさ」

「そうよ、これは貴女の歓迎会なんだから遠慮しないで」

「…ありがと…じゃあ、ポン酢取ってもらって良い?」

 

ノワールさんはちょっと引け目を感じてたみたいだけど二人の言葉で食べる気になれた様子だった。そしてポン酢は私の近くだったので渡してあげる。

 

「あ…はい。ポン酢だけでいいですか?」

「…ええ、取り敢えずポン酢だけでいいけど…」

「…どうかしました?」

 

何故かポン酢を受け取ったノワールさんは考え込む様な表情をしていた。私はちゃんとポン酢渡したよね…?

 

「…イリゼ、貴女どういう意図で敬語使ってるの?」

「え?…単に出会って日の浅い人にタメ口で話すのは相手に悪いかと思ってですけど…」

「ふぅん…別にそれは貴女の勝手だけど、コンパみたいなタイプならともかく貴女の敬語は何か無理して使ってる感あるわよ?」

「あ、それはわたしも思ったな。何ていうか、必要以上に他人行儀と言うか…」

「そ、そうだったんですか…」

 

私としては相手を不快にさせない様にと思っての敬語だったけど、むしろ逆効果だったの…?

予想外の事実に困惑した私はネプテューヌ達に相談をかける。

 

「…敬語止めた方がいいのかな」

「無理に使う必要はないんじゃない?現にわたし達には使ってないしさ」

「相手が目上の人とかならともかくノワールやシアンに対しては普通に話した方が好印象かもね」

「わたしもそう思うです。…って言ってもわたしは常に敬語ですけどね」

「…そっか…じゃあ、これからは気を付ける事にするよ、ノワール、シアン」

「分かったわ」

「ああ、そうしてくれ」

 

…二人との間が少し縮んだ。そう感じた私だった。

 

 

 

 

「うげぇぇー…誰!?この料理にナス入れたの!万死に値するよ!」

 

鍋以外にも何種類か料理を用意して貰ったけど…それはわたしへのトラップだった!正にトラップカード、発動!って感じにわたしは嵌められたね。

 

「ねぷねぷ、もしかしてナスが嫌い何ですか?」

「嫌いってレベルじゃないよ!こんぱこそよくこんなにグニョグニョしたの食べれるね…そうだ!何か思い出すかもしれないしこのナスノワールにあげるー!先輩から後輩へのプレゼントだよ!」

 

咄嗟に思いついたアイデアを即実行するわたし。こういうのは勢いが大事だよね。

 

「え…いや要らないわよ」

「ねぷ子、子供じゃないんだし好き嫌い言わず全部食べなさい」

「いいからいいから、遠慮は無用だよっ!」

 

ナスをノワールの口に押し付けるわたし。ノワールはわたしの腕を掴んで抵抗してきた。むむむ…!

 

「ナスを拒否なんてどうしちゃったのさノワール…!」

「どうしたもこうしたもネプテューヌが押し付けてきただけでしょうが…!」

「このこのっ!」

「くっ…いいわ、ならこっちもやってやろうじゃない!」

 

ひらりとわたしのナスを回避したノワールはわたしのお皿を取り、ナスを手にしていた…って、まさか…!?

 

「カチンコチンの豆腐じゃなくてナスだけど…ネプテューヌにはこっちの方が効果的の様ね」

「ねぷっ!?ちょ、何する気!?」

「それは勿論…こうする気よ!」

 

ノワールがナスを押し付けてくる。じょ、冗談じゃないよ!ノワールはわたしを殺す気なの!?

 

「待ちなさいネプテューヌ!」

「わわわっ!イリゼー!ノワールが虐めてくるよー!」

 

イリゼの背に隠れる私。こういう時イリゼは助けてくれる筈だよね、うん。

 

「まあまあ取り敢えず落ち着いてネプテューヌ」

「イリゼ、ノワールが酷い事してくるの、助けてくれるよね…?」

「うん、勿論助けるよ」

「イリゼ……」

「……ノワールをね」

 

イリゼが私に手を回してくる…!そ、そんな…!

 

「ノワール、約束は果たすよ」

「ふふ、助かるわ…さあ年貢の納め時よネプテューヌ!」

「ぐぬぬ…!…分かったよ…」

「やっと観念したのね」

 

イリゼに捕まえられて逃げられないわたし。もうすぐ近くにまで迫っているノワール。確かに逃げるのは困難…でも、わたしは諦めないよ!思いついた最後の手段に掛ける…!

 

「ノワール、一旦お皿置いたら?ネプテューヌが暴れて落とすかもしれないし」

「それもそうね…」

「……ッ!隙有りぃぃぃぃぃぃ!」

「んな……っ!?」

「のわぁぁぁぁ!?」

 

二人が油断した一瞬にイリゼを押して二人を同時に転ばせる、これぞ逆転の一手!

わたしの狙い通り倒れる二人。いざわたしは逃走…と思ったけどイリゼに掴まれてたせいでわたしまで巻き込まれる。そして……

 

「痛た…って痛がってる場合じゃないや、早く逃げないと……」

「あぅっ…!」

「ひゃん…!」

「……へ…?」

 

下から聞こえる女の子らしい声。両手には柔らかく温かな感触。ゆっくりと下を見てみるとそこには…

 

わたしに押し倒され胸を揉まれる様な形となったノワールとイリゼがいた。

えーと…うん、多分これがラノベとかノベルゲーとかなら男の子歓喜の挿絵orCGが出てきてたんじゃないかな…。

 

「…何してくれてんのよネプテューヌ…!」

「取り敢えずどいてくれないかなぁ…?」

 

うん、二人見るからにご立腹だね!わたしこのままだとヤバいね!こ、こんな時こそ主人公らしい台詞言って乗り切らないと…こんな時は…!

 

「ゆ、豊かな胸をお持ちですね…?」

「……っ!」

 

わたしの台詞で顔を赤らめる二人。これは成功…な訳ないよね!って言うかこれじゃわたしセクハラじゃん!

もっと違う…シンプルに二人の気を鎮める言葉…思い付くのはこれしかない!ええいままよ!

 

「…ご馳走様でした」

『何が…ご馳走様なのよぉぉぉぉぉぉ!』

 

涙目の二人に左右からビンタされ、吹っ飛ばされるわたし。

…女の子のビンタって、痛いんだね……。

 




今回のパロディ解説

・ラステイションよ!わたしは帰ってきたどー!
機動戦士ガンダム0083 STARDUSTMEMORYでのジオンのエース、アナベル・ガドーの代表的な台詞のパロディ。別にネプテューヌは核を撃ち込んでなどはいません。

・ありのまま〜〜以下略ー!
ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズのジャン=ピエール・ポルナレフの台詞。パロディとして割とポピュラーな類いなので知っている方も多いと思います。
・万死に値するよ!
機動戦士ガンダムOOのガンダムマイスター、ティエリア・アーデのパロディ。上のパロディと言いこれと言い今回のネプテューヌは何故か物騒な台詞が多いですね。

・トラップカード
遊戯王におけるカードの種類の一つで文字通り主に罠として使用するカード。一体誰がいつどんな考えのもと料理をトラップカードとするのでしょうか…?

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