超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第十話 プリンが繋ぐ女神の絆

二振りの刃が戦場を疾駆する。

一振りは大太刀。常人では満足に振り回す事すら困難であろうそれは卓越した技術を持つ使い手により鋭くも繊細な軌道を描きながら敵を斬り裂いていく。

一振りは細剣寄りの片手剣。単発の威力や範囲こそ前者に劣るものの、軽さと取り回しの良さを最大限引き出した使い手により軽快に敵へ斬撃を繰り返す。

 

…つまり、何が言いたいかと言うと……

 

『はぁぁぁぁっ!』

 

女神化したネプテューヌとノワールがプリンと自尊心をかけてモンスター討伐勝負をしてるって事である。…滅茶苦茶やる気入ってるよ二人共…。

 

「二人共凄いですぅ」

「だね、しかしネプテューヌは当然としてノワールもあれだけ動けるとは…」

「伊達にネプテューヌと張り合ってた訳じゃなかった、って事ね」

 

二人が率先して…って言うか闘争心全開で討伐対象のモンスターと戦ってくれてるおかげで私達三人はゆっくり出来る。…五人で戦えばもっと安全かつ手早いんだろうけど二人の勝負の邪魔になりそうだから、ね。

 

「…ねぇイリゼ、ノワールの事どう思う?」

「え…どう思うって?」

「記憶喪失についてよ」

 

戦っている二人とコンパから少し離れた所に私を呼びつつアイエフは私に問いかけてきた。

記憶喪失。ノワールは私達に会った時そう言っていたし私達に同行している理由もそれに起因している事だった。…少なくとも、本人曰くは。

 

「…何か違和感ある、って言ったら変?」

「全然。変どころか私も同意見よ」

 

そう、ノワールの記憶喪失にはどうも違和感があった。具体的に言えば記憶喪失らしくない、記憶がない様には見えないという事。…勿論、私の主観だけど。

 

「ネプテューヌレベルの楽観さがある訳でもなければイリゼみたいに悩んでたり記憶を取り戻そうとしてる訳でもない。私は専門家じゃないからあくまでももしかしたら、だけど…」

 

アイエフは最後までは言わなかったけど、後に続く言葉は分かる。それを言わなかったのは既に私に伝わってると思ったのか、或いは…言いたくなかったのか。

 

「…じゃ、アイエフはどうする気?問い詰める?」

「どうもしないわ、聞く事でノワールを傷付けるかもしれないし…何より仲間を疑うのは良い気分がしないわ」

「へぇ、優しいじゃんアイエフ」

「うっさい…」

 

疑問もそれに対する選択も私とアイエフは同じだった。…と、その時ネプテューヌとノワールも佳境に入ったのかモンスターから距離を取った後、勢いをつけて突進する。

そして……

 

「ガルル…ウゥ……」

 

断末魔を上げながら消滅するモンスター。二人揃って剣を振り払うネプテューヌとノワール。クエスト達成である。

 

「ふぅ…思っていたより楽勝だったわね。ノワールも意外と強いじゃない」

「ま、当然よ。でも貴女も中々だったと思うわ」

 

互いに賞賛をし合う二人。このままならば仲の良い二人に見えただろうけど…

 

『まあでも、勝負は(わたし・私)の勝ちね』

 

…そうはいかないのが二人だった。もう見事なハモりである。

 

「…わたしの勝ちよ?」

「何言ってるのよ、とどめは私の方が早かったわ」

「いいえ、わたしの方がコンマ二桁早かったわ」

「はいはいストーップ。二人同時だったわ。だからこの勝負は引き分け、良い?」

 

互いに自分の方が先だと主張するネプテューヌとノワール。アイエフが仲裁に入るも二人の言い争いは止まらない。

 

「そんな筈ないわ!」

「そうよ!私がネプテューヌと互角な訳ないわ!」

「イリゼちゃん、イリゼちゃんはどっちが早かったか分かるです?」

「ううん、正直私も同時だったと思う。二人共同じ位置からとどめの攻撃をした訳じゃないから互角、ではないと思うけどね」

 

贔屓目無しに二人は同時に見えた。でもそれでは満足しないらしくどんどんヒートアップしていくネプテューヌとノワール。そしてアイエフは…キレた。

 

「あーもう!二人共しつこい!」

『ひぃ!?』

 

突然のアイエフの怒号に驚き、言い争いを止める二人。そこへすかさずコンパも声を発する。

 

「審判さんが引き分けって言ったら引き分けです」

「…コンパ、この勝負ってアイエフが審判だったの?」

「今それは重要じゃないです」

「あ…うん…」

「こほん、ちゃんと審判さんの言う事聞かないと二人のプリンを没収するですよ?」

『それだけは止めて!』

 

コンパの言葉に慌てて引き分けだと認める二人。

…何度もハモってる事と言い昨日の事と言いほんと仲良いなぁ二人は…。

 

 

 

 

「たっだいまー!シアン、武器のテスト終わったよー」

 

パッセに戻った私達は使用者であるネプテューヌを中心に試作刀アルマッスの感想をシアンに話した。当然ながら私達は専門のテスターじゃないから言えたのは批評ではなくただの感想だったけど、それでもシアンは満足そうだった。

 

「テストありがとな。それで…アヴニールの方はどうだった?」

「その話なんだけど、今回分かったのは新しい工場を建てようとしている事だけだったわ」

「あいつらまた工場を作るのか!?」

 

ノワールの言葉に過剰にも思える反応を見せるシアン。確かに大企業の工場が増えるのはシアン達中小企業にとってはありがたくないとは思うけど…。

 

「…そこまで驚く?…あれ?もしや企業が工場を新設するのって普通じゃない事なの?」

「いいえ、しょっちゅうはしないでしょうけど別に珍しい事でもないと思うわ」

「じゃあ、どういう事なの?」

「今ラステイションはアヴニールが次々と工場を建てるせいで自然破壊が深刻なんだ…あいつらのせいで一体いくつの森が伐採された事か…!」

「このままじゃラステイションが住みにくくなってしまうです…」

 

市場の独占に環境破壊…アヴニールは利益至上主義もいい所だった。企業が利益を追求するのは当然ではあるけど…。

 

「…どんな理由があってもアヴニールのやってる事は正しくないよね」

「…イリゼ?」

「ゲイムギョウ界で企業は国無しじゃやっていけない。ううん、企業だけじゃなくて色んな事がね。だから一部がそれを忘れて利己に走り過ぎちゃ駄目だし国はそれをちゃんと止めなきゃ駄目な筈だよ」

『…………』

「…って、あれ…?」

 

私の口から出た言葉は半ば無意識のうちのものだった。それを聞いた皆が目を丸くしている。

 

「え、えと…私何かおかしな事言った?」

「いや、おかしくは無いけど…何ていうか…」

「ちょっと女神様みたいだったです」

「へ?そ、そう?」

 

今度は私が目を丸くする番だった。私が女神様みたいだった?いやいや、偶然だよね。女神なら自分の大陸にいる筈だし。

…と、思った所でどことなく懐疑的な視線を感じた。視線の主は…

 

「……ノワール?どうかしたの?」

「…何でもないわ、ちょっと考え事をしていただけよ」

「そっか、じゃあ気のせいかな…」

「とにかく現状はあまり芳しくないし、もう一度アヴニールの仕事を受けてみましょ」

 

もう一度受けてみれば今度こそ出展する物が分かるかもしれない、という事でアイエフの言葉には全員が賛成だった。

 

「次こそ情報を得られると良いわね」

「でもってー、隙あらば秘密工作しちゃうもんねー」

「おいおい、あんまり過激なのはよしてくれよ?」

 

方針が決まった事もあり、その後暫く私達は他愛のない雑談に花を咲かせていた…ガールズトークだよガールズトーク。

 

 

 

 

「大分ラステイションの状況が分かってきたわね…」

 

ホテルの一室で私は今日の事について色々考えていた。ネプテューヌの事、仲間の事、そしてアヴニールの事…どれも私一人だったら分からなかったと思う。

 

「…解せないわね。国の発展の為に企業が力を付けるのは問題無いし、むしろ私が推奨したい位。…でも、いくら科学が発展してもそれによって自然破壊が過激になって人が住み辛くなってしまったら元も子もないわ」

 

政治も経営も知らない奴ならともかく、仮にもラステイションの経済を独占する程の大企業がそれを分からない筈が無い。そんな人間がトップじゃ大企業になんてなれないもの。

 

「…アヴニールはこのまま国を乗っ取って何をしようとしているのかしら…こんな状況じゃ守護女神戦争(ハード戦争)なんてやってる場合じゃないわね、それに…ちょっとむかつくけどネプテューヌもそんなに悪い奴じゃ無さそうだし…」

 

守護女神戦争(ハード戦争)の事と同時にネプテューヌ、そしてイリゼの事が頭に浮かぶ。

 

「…あの時私が戦ったのは四人。ネプテューヌ達も四人。ネプテューヌ含めて三人は同一人物なんだからあの長剣使いがイリゼである可能性は高い、けど…」

 

一目見れば分かる。あの時私が戦った女神は『二人』だった。でも、私はイリゼなんて言う女神は知らないしそもそも大陸が四つな以上女神の人数も四人でなきゃおかしいわ。

 

「…イリゼ、貴女は一体何も--------」

「ノワール!今度こそ一緒にプリン食べよー!」

「のわあぁぁぁぁぁ!?」

 

いきなり開かれる扉、部屋に響く声。もう完全にデジャビュだった。

 

「あれあれ?またまた驚かせちゃった?ごっめーん」

「もう、貴女って人は!どうしてノックしないのよ!?」

「最初からクライマックスだから?」

「何がどうしたらここでクライマックスになるのよ!」

 

お気楽さ全開のネプテューヌが入ってきた事で私の思考は吹き飛ばされてしまった。もう、ネプテューヌがいるといつもこうだわ…

 

「…って、いつもって言う程一緒にいた覚えは無いわよ!」

「え、何が?わたし以外に誰かいるの?」

「…こっちの事だから気にしないで…それで、今日は何の用よ?」

「うん、美味しそうなプリン買ったからノワールと一緒に食べようと思って」

 

思えば昨日は私が散歩に出たりシアンの言葉に感化されて戻ったりした結果一緒には食べていなかった。ネプテューヌはそれを気にしてたのかしら…。

 

「…ごめんなさい、今はちょっとそんな気分じゃないのよ」

「えぇぇー!?ノワールも!?」

「…も?」

「あいちゃんとこんぱに断られ、イリゼはお風呂、そしてノワールにも断られたわたしは一体誰とプリンを食べれば良いの!?」

「一人で食べれば良いじゃない」

 

昨日言ったのと同じ言葉をネプテューヌに述べる。まあこれ位で引き下がってはくれないわよね…と思っていたら案の定引き下がってはくれなかった。

 

「分かってないなーノワールは。プリンって言うのはね、一人で食べるより誰かと一緒に食べた方がずーーっと美味しいんだよ!」

「だとしても寝る前に甘いモノなんて嫌よ、太るもの。それにもう眠いし」

「そっかぁ…それなら仕方ないよね…」

 

しゅんとした表情になるネプテューヌ。別に私は意地悪で言った訳じゃないけど、それでもそんな態度をされると罪悪感を感じてしまう。

 

「はぁ…ノワールと一緒にプリン、食べたかったなぁ…」

「…………けど」

「ねぷ?」

「貴女がどうしても、って言うなら一緒に食べてあげてもいいけど?」

「ほんと!?」

「ええ、貴女がどうしても、って言うならね」

 

別に他意があった訳じゃない。あまりにもネプテューヌが残念そうな顔をしていたから仕方なく譲歩しただけ…ほんとなんだからね!

 

「うわーい!ノワール大好きー!ノワールならきっと一緒に食べてくれるって信じてたよ!」

「ちょっとネプテューヌ!?いきなり抱きつかないで!」

「ごめんごめん、つい嬉しくてさ」

 

私の元に飛び込んで来るネプテューヌに慌てふためく私。私は昨日の事を思い出して嫌な汗をかきながらネプテューヌを引き剥がした後…何故か二人で外へ向かった。

 

 

 

 

「……綺麗な夜空ね」

「でしょー。昨日あの後一人で食べた時に偶然気付いたんだ」

 

一緒に外に出たわたしとノワールは、夜空のよく見える場所でプリンを食べ始めていた。んー、やっぱり美味しー。

 

「あ……その、この間はせっかく誘ってくれたのに断って、その…ごめんなさい」

「気にしないでよ、わたしが強引に誘ったのも悪いんだしさ。それに、今日こうやってノワールと一緒に食べられたから」

「全く、貴女って人は…」

 

ノワールはいつもの様にちょっと呆れた顔をする…けど、いつもよりちょっと温かい感じがあった。なんでかな?

 

「……ねぇ、ネプテューヌ。一つ聞いても良いかしら?」

「何?預金残高以外なら何でも良いよ?」

「それは聞かないわよ…もし、もしも貴女が女神だったとして、今のラステイションを見たらどう思う?大陸と守護女神戦争(ハード戦争)。貴女ならどっちを取る?」

 

ノワールの質問はある意味預金残高以上に以外な質問だった。何でそんな事聞くのかな…うーん…。

 

「わたし難しい事はよく分かんないけど…困ってる人がいたらまずは助けてあげたいかな?それで、えっと…ハード戦争だっけ?それが駄目だったとしてもわたしが女神様なら助けた人の笑顔があればそれはそれで満足だもん。あ、後おやつのプリンね」

「ネプテューヌ……貴女…」

「…って言うか、ノワールも同じでしょ?」

「え……?」

 

スプーンを持つ手が止まるノワール。今はわたしボケてないよね?珍しく真面目に言ってるよ?

 

「ノワールだって困ってる人を助けたいって思ったからわたし達やシアンを手伝ってくれてるんでしょ?違うの?」

「……っ!…ありがと…ネプテューヌ…」

「へ?なんか言った?」

「…何でもないわ。それはそうと貴女の卵プリンも美味しそうね。一口くれないかしら?」

「良いよ。じゃあノワールのチョコレートプリンも一口頂戴」

 

 

 

 

夜空の下で互いに顔を近付け、口に『それ』を受け入れた後幸せそうな顔をするネプテューヌとノワール。二人の間には隔てる壁など無く、ただその魅惑的な時間を享受し…

 

……二人を尾行していた私に思いっきり衝撃を与えていた。

 

(ど、どゆこと!?ネプテューヌはともかくノワールまでどうしちゃった訳!?)

「ね、ノワールもう一口頂戴」

「もう、仕方ないわね…はい、あーん」

「あむ!んー!ほんのりビターなチョコの絶妙な味わいがまさにまいうー!」

「ほら、私にももう一口頂戴。あーん」

「はーい、あーん」

「はむ。んー!こっちも甘くて美味しいわ」

(だから…どういう事なのぉぉぉぉぉぉ!?)

 

肩を寄せ合いながら笑顔でプリンを食べる二人に対し、私はどんどん混乱していく。まずい、一旦冷静にならないと…。

 

「すぅ…はぁ…。状況整理をすればどういう事か分かる筈。ええと…」

 

・ネプテューヌとノワールは仲良くプリンを食べてる。

・昨日も二人は外へ出かけていた。

・二人は結構息が合っている。

・しかも、二人は記憶喪失仲間。

・昨日ネプテューヌはノワール(と私)に過剰なスキンシップを行った。

…ふむふむ、ここから導き出される答えは…

 

(二人は桜でTrickな関係になっていた!)

 

……って、いやいやいやいやそんな訳ないよね…。はぁ、いくら何でもそんな事が…

 

「……あ」

「どったの?ノワール」

「いや、その……」

「……?どうしたのさ?嫌な事思い出したとか?」

「そ、そうじゃなくて…これ、間接キス…よね…」

「……あ」

「…………」

「…………」

 

頬をほんのり染めながら気まずそうに目を逸らす二人を見た私は、自分の阿呆な発想があながち間違ってないんじゃないか…と思う様になった。

 




今回のパロディ解説

・最初からクライマックス
仮面ライダー 電王のイマジン、モモタロスの代表的な台詞。本作とは状況こそ違いますが原作でも同じくネプテューヌがこのパロディネタを使っていましたね。

・まいうー
お笑いコンビ、ホンジャマカの石塚英彦さんと言えばこれ、と言える程の代表的台詞。元祖!でぶやという番組が大元ではなくそれよりも前の段階からあったらしいです。

・桜でTrick
百合要素の強めな日常系作品、桜Trickの事。イリゼは混乱気味だったので桜Trickを連想した、だけであり決してネプテューヌとノワールがキスしていた訳ではありません。
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