超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第十一話 思惑は裏目となり、疑惑は混乱を呼ぶ

「おぉー!これが試作刀アルマッス…!」

「いや、これはアルマッス『改』なんだが…」

「知ってるよ、ちょっと読者の皆さんに『あれ?間違って九話開いちゃった?』…って言う体験をプレゼントしようと思ってさ」

「読者の皆さんをしょうもない罠にかけようとするの止めようよ…」

 

一夜明けた朝。今日もアヴニールのクエストを受けよう、と思って私達が外に出たのとほぼ同タイミングでシアンがやってきた。

 

「いきなりで悪いが、またお前らに武器のテストを頼まれて欲しいんだ」

「って事はパワーアップが終わったって事!?」

「昨日の今日なのに随分と早いわね」

「あぁ、お前らからのフィードバックを受けたら興奮しちまって、気付いたら朝だったんだ」

「朝だったって…夜通しで強化してたの?」

 

ちょっと照れながら説明をするシアンの目元にはうっすらながらクマが出来ていた。興奮、って言ってるし本人的には楽しかったんだろうけど…

 

「身体壊しかねないし徹夜は止めておいた方が良いと思うよ?」

「それは気を付けるよ…で、引き受けてくれるか?」

「ええ、良いわよ」

 

最初から私達はシアンに協力する気だったのですぐに新しい武器『試作刀アルマッス改』を受け取りギルドに向かう。

 

「ネプテューヌ、貴女がメインのテスターなんだから頑張りなさいよ?」

「勿論だよ、ノワールもサポート頼むね」

「えぇ、任せなさい」

「ノワールさんとねぷねぷ、何だかとっても仲良しです」

「…………」

「…イリゼ?どうしたの?」

 

仲が良い事は良い事。それは分かる、当然だもん。…『普通に』、仲が良いなら…。

 

「ねーイリゼ、どったの?」

「…ネプテューヌ、ノワール、世の中節度は大事だよ?」

『……?』

 

私の言いたい事が伝わらなかったのかきょとんとする二人。ふ、二人は常識ある筈だし大丈夫だよね…!

 

 

 

 

ラステイションの一角、廃工場。そこへ私達五人は依頼者、ガナッシュさんと共に向かった。

 

「…で、こんな廃工場で私達にどうしろって言うのよ?」

「はい、この施設は見ての通り廃工場ですが見た目以上に年数が経ってまして、もう廃棄されているんです」

 

まあそれはそうだよねと思う私。壁は錆びて茶色、所々穴すら空いているこんな工事がまだ使われている訳がない。どんなに貧乏な企業でも建て替えるか廃棄するかを選ぶ、そんなレベルの廃工場だった。

 

「それで、その要らなくなった施設で何をすれば良い訳?」

「実は施設を引き上げる際に一部の資材が取り残されたままになっているんです」

「じゃあその資材を取ってくれば良いの?今回は簡単そうだね」

「いえ、困った事にいつの間にかモンスターが住み着いてしまい回収が困難になってしまったんです」

「成る程、だからそこで私達の様な人材が必要になった訳ね」

 

人が寄り付かず、様々な物が置いてある廃工場はモンスターを含む野生生物には絶好の住処になってしまった、と言う話らしい。まあ…経営能力や開発能力と戦闘能力は別だもんね。

 

「…で、その回収しなきゃいけない資材って何なの?随分と重要な様だけど」

「とある鉱石、我が社では『ラステライト』と呼んでいる鉱石です」

 

何でもラステライトは1グラムでゲームを一万年も動かせる、常軌を逸した貴重な鉱石らしい。…え、それもうアヴニールどころかゲイムギョウ界全体のエネルギー問題解決出来るレベルなんじゃ…?

 

「…ねぇ、ラステイションにそんな鉱石あったかしら?そんな凄い鉱石なら知ってる筈だけど…」

「私も初耳よ、ラステライトなんて…」

「それは当然です、その鉱石は我が社がここ数年で発見し、独占の為公にはしていませんから」

「独占……」

 

私とアイエフ、それにノワールが目を合わせる。他国に秘匿にするならともかく自国にすらなんてほんとアヴニールは何を考えているんだろう…。

 

「さて、ではそろそろ始めて頂けますか?」

「あ、はい。取り敢えず中に入ろっか」

 

こんな廃工場前でいつまでも話していてもしょうがない、という事で正面から入る私達。

 

「わっ、中も相当ボロボロだね…」

「そうね、早いとこ終わらせて……」

 

全員が入り中を見回していたその時、後ろで鈍くも大きな音がする。何事かと振り向いた私達の目の前にあったのは…完全に閉じられた、廃工場の扉。

 

「な…っ!?なんでいきなり入口が閉じちゃうのよ!ちょっとガナッシュ、変な冗談は止めてくれる!?」

「いやぁすいません。手違いで閉まっちゃいました…と言うのではなく、こちらの都合で閉めさせてもらいました。貴女達にはこの中でモンスターの餌食になって貰います」

『……ッ!』

 

ガナッシュさんのいっそ慇懃無礼にも思える言葉を聞いて私達は瞬時に事態を察知する。

 

「騙したわね!貴方目的は何!?」

「ガナッシュ!図ったねガナッシュ!」

『今はパロディしてる場合じゃないでしょうが!』

「貴女達がパッセとか言う町工場の協力者である事は分かっています。大概、我が社の仕事を受けると見せかけ探りと妨害を入れる事が目的だったのでしょう?」

「あいちゃん全部バレバレだよ!?」

「まさか、ここまでバレているなんて…」

 

恐るべしアヴニール、恐るべしガナッシュ…なんて感心している場合じゃなかった。こっちの狙いがバレてる上にモンスターの住処と化した廃工場に閉じ込められるなんて…!

 

「我が社の勝利は間違いありませんが、何があるか分かりませんからね。障害の芽は早いうちに摘み取っておきたいのですよ、では時間が惜しいので私はここで」

「待ちなさい、ガナッシュ!…っく!」

 

アイエフが扉を叩いてみるも当然効果は無く、ガナッシュの足音も次第に聞こえなくなる。…冗談ではなく、本当に私達は閉じ込められてしまった。

 

「……ごめんなさい、こうなったのは私のせいだわ…私がアヴニールの仕事を受けようなんて言わなければこんな事には…」

「ノワール……」

 

勿論ノワールを責める気はないし、ノワールだけが悪いとも思わない。だけど、状況は私達に重くのしかかり、口を重くさせる。

…でも、彼女は…ネプテューヌは違った。

 

「もー!何皆で辛気臭い空気出してるのさ!そんなのわたし達らしくないよ?」

「ねぷねぷ…でも…」

「まだ出られないって決まった訳じゃないでしょ?諦めないで皆で出口を探そうよ」

「ネプテューヌ、貴女…」

 

能天気で楽観的、普段は明るいどころか軽くアホの子にも思える少女、ネプテューヌ。でも、そんなネプテューヌだからこそ私達が諦めそうになった時でも希望を捨てず、その明るい笑顔と声で私達を元気付けてくれる。それがネプテューヌだった。

 

「…そうね、ねぷ子の言う通りだわ。こんな広い工場なんだしきっとどこかに別の出口がある筈よ」

「ええ、誰があいつの思惑通り大人しく餌になってあげるもんですか」

 

ネプテューヌの言葉に士気を取り戻した私達は出口を探す為廃工場の奥へと進む。そう、私達はこんな所でやられる訳にはいかないんだから…!

 

 

 

 

「ここも閉まってる…というか鍵が壊れてて開けようがなさそうだよ」

「そう…そっちはどう?」

「こっちにも出口は見つからないです…」

 

閉じ込められてから数十分後、私達はちょくちょく襲ってくるモンスターを返り討ちにしながら出口を探していた。でも、見つかったか否かと聞かれたら…

 

「もー全然見つからないじゃん!どういう事さ!」

「どうもこうも罠なんだから当然でしょ、ほらごねてないで探すわよ」

 

元アヴニールの工場なだけあって中も広く、出口を見つけるのには相当時間がかかりそうだった。

 

(…って言うか何も出口を見つける必要は無いよね…ここは発想の転換をして……)

 

ふと、私の頭に案が浮かぶ。その案について意見を訊こうとアイエフに近付いた時…何故かアイエフは車両状の機械を見ながら考え事をしていた。

 

「…アイエフ?ちょっと聞いて欲しい事が--------」

「…頭を上げなさい、エクウス!」

「それエクウスだったの!?」

 

あまりにも意外な台詞に驚く私。アイエフの方も聞かれるとは思ってなかったのかビクッと肩を震わせる。

 

「ちょ、な、何聞いてるのよ!?」

「いや何ってアイエフが急に言いだしたじゃん!っていうかそれエクウスなの!?」

「うっ…い、言ってみたかっただけよ。悪い?」

「悪くは無いけど……」

 

…自己紹介の時からずっと気になっていたけど…もしかしてアイエフって厨二的な一面があるのかな…?

なんて思っていたら私達の大きめの声が気になったのか皆が集まってくる。

 

「あいちゃん、イリゼちゃん、どうかしたです?」

「どうもしてないから気にしないで…で、私に何の用だったの?」

「あ、うん…あのさ、扉を探すじゃなくて壁をぶち破るじゃ駄目?壁も老朽化してる筈だし変身した私とネプテューヌの二人がかりならいけないかな?」

「それ良いんじゃない?よーしじゃあ早速壊れそうな壁を…」

「それは止めておいた方が良いと思うわ」

 

提案した私と乗り気だったネプテューヌをノワールが制止し、隣のアイエフも頷いている。私達パーティーのクール担当は私の案に反対みたいだった。

 

「そうなの?というか私が変身出来る事教えてあったっけ?」

「そ、それは…そんな気がしただけよ。それで反対の理由としては壊れ過ぎる可能性があるからよ」

「壊れ過ぎる?」

「老朽化してるのは壁だけじゃ無いって事よ。周りの壁や支える力の減った天井まで一緒に壊れたら…」

「生き埋めになっちゃうね…」

 

残念ながら私の案はリスクが大き過ぎだった。…勝手にやらなくて良かった……。

 

「それに理由はもう一つあるわよ?」

「もう一つ?」

「ええ、そんな事したらモンスターが寄ってきちゃうでしょ?だって貴女とアイエフの会話ですら寄って来るんだもの」

「あー…って、へ…?」

 

振り向く私。ノワールの言う通り、私達の元へ工場らしく機械やデータ系っぽい複数のモンスターが近付いてきていた。

 

「もーあいちゃんもイリゼもモンスター呼び寄せないでよ」

『ごめんなさい…』

「あのモンスターさん達とは戦うです?」

「その方が良いと思うわ。逃げた先で別のモンスターに会って挟み討ちになるのは避けたいし」

 

言うが早いか片手剣を抜刀するノワール。後に続く様に私達も各々の武器を構えてモンスターとの戦闘に入った。

 

 

 

 

「はうぅ…モンスターさんが多過ぎますぅ…」

 

更にあれから数十分後、寄って来たモンスターを倒した私達はまだ出口を探していた。時間経過と多数のモンスターのせいで私達は疲労を余儀なくされていた…。

 

「アヴニールが私達を始末する為に用意した場所だし当然と言えば当然だけど…確かに異常よね…」

「でもどうやってこれだけの数を…こんなにたくさん用意するなんて一日二日じゃ無理よね?」

「それもそうね…」

 

一体一体は問題無くても私達の体力が無限じゃない以上、いつかはやられてしまう可能性がある。…体力と同じ様にモンスターも有限であってほしいよ…。

 

「あいちゃんあいちゃん、もしかしてこれのせいじゃない?」

「これって…エネミーディスクじゃない!何処にあったの!?」

「あっちの部屋で見つけたんだ、もしかしてお手柄ってやつ?なら褒めてくれても良いんだよ!」

「調子に乗らないの、でも良くやったわねぷ子」

 

ネプテューヌが手にしていたのは確かにエネミーディスクだった。それを見た私達はすぐさまここのモンスターの量の原因が分かったけど、ノワールだけは釈然としない表情を浮かべている。

 

「ねぇ、そのディスクがどうかしたの?」

「あ、これはエネミーディスク…仮称だけど…って言って、モンスター大量発生の原因になってるものなの」

「それって本当なの!?」

 

エネミーディスクについて分かっている事と何故知っているかをかいつまんで説明するとノワールは酷く驚いていた。まあ、私も初めて見た時は驚いたし当然だよね。

一方、ネプテューヌ達はエネミーディスクをどうするかについて話している。

 

「やっぱ前みたいにパリーンと割っちゃう?」

「そうね、どうせこのままじゃモンスターが出てきそうだしさっさと壊しましょ」

「うん!…………」

「ねぷねぷ?急に構えてどうしたです?」

「え、だって今のはモンスター出てくるフラグでしょ?」

「言われてみると確かに…なら期せずしてフラグブレイク成功ね」

 

アイエフの手によってパキリ、と折られるエネミーディスク。それはここのモンスターは打ち止めになった事を意味していた。

 

「ふぅ…エネミーディスクについて知ってて助かったね」

「あ…そう言えばエネミーディスクがここにあったなら鍵の欠片もここにあるんじゃない?ノワールこんなの知らない?」

「鍵の欠片?…知らないわね、なんなのよそれ」

「そっかぁ…鍵の欠片はいーすんの封印を解くのに必要なアイテムで、わたしは世界の為にそれを集めてるんだよね!」

「いーすん…?」

 

次々と知らない単語を耳にしたノワールは何時ぞやの私の様にきょとんとした顔をしている。…シンパシー感じるよね、記憶喪失仲間でもあるし。

 

「…いーすんさん、か…女神の私でも知らなかった事を知ってるなんて何者かしら…」

「ん?ノワールどうしたの?この状況にビビりすぎて精神崩壊とかしちゃったの?」

「そんな訳ないでしょ!そういう変な心配は止めてくれる!?」

「あははっ、ごめんごめん」

「うふふ、ノワールさんもすっかりねぷねぷと仲良しさんですねー」

 

いやあれを仲良いって言う?…と突っ込みたい所だったけど、昨日のアレを見てしまった私にはコンパと同じかそれ以上に仲良く見えてしまう。

 

「なぁっ!?私がネプテューヌと仲良しなんて変な冗談言わないでよ!?」

「ガーン!…うぅ、わたし的にはもうノワールとはお友達を超えて親友だと思ってたのに…あ!まさかそれ以上?」

「だ、だからそんな訳…」

「ノワールがそんな人だったなんて…気持ちは嬉しいけど、出会ったばかりだし世間体とかもあるし…でも、ノワールがどうしてもって言うならわたしはオールオッケーだよ!」

『ぶ……ッ!?』

 

ネプテューヌのトンデモネタに吹き出すノワール…と、私。これにはネプテューヌも予想外だったのか『え?』って顔をする…けど、そんな事を気にしている余裕は私にはない。

 

「ね、ネプテューヌ!早まっちゃ駄目だよ!出会ったばかりだし世間体もって自分で言ってるんだから簡単にそういう関係になっちゃ駄目っ!」

「え、いや、ちょ…冗談のつもりだったんだけど…」

「冗談?…遊び感覚でそんな関係になる気だったの!?」

「そっちじゃないよ!?イリゼどうしたの!?」

「はいはい、何だかよく分からないけど早く出口と鍵の欠片見つけましょ、そしたらホテルで好きにしていいから」

『ほ、ホテっ…(アイエフ、あいちゃん)…!?』

「……?何よ急に…って……ち、違うわよ!?変な意味じゃないからね!?」

 

場を収めるどころか新たな燃料を投下したアイエフ。これにはネプテューヌも軽くテンパりほんとに収集が付かなくなる。そして…

 

「……?」

 

そっち方面に疎いコンパだけがきょとんとしていた…。

 




今回のパロディ解説

・「ガナッシュ!図ったねガナッシュ!」
機動戦士ガンダムの登場キャラ、ガルマ・ザビの代表的な台詞。元ネタ的には死亡フラグとも取れますが、別にそんなつもりは毛頭無いので安心して下さい。

・「頭を上げなさい!エクウス!」
コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜に登場するマシン(奇X)、エクウスとその操縦者の人吉爾郎の台詞。キャラ的にアイエフが言いそう…な気のする台詞です。

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