超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第十二話 女神の想い、二人の絆

廃工場に金属音が響く。だが、それは製品の加工音でも錬磨音でも無い。振り抜かれた刃が装甲とせめぎ合い、放たれた光芒が射線上の物質を吹き飛ばす。

既に廃棄された工場では少女達と重機の身体を持つモンスターとの戦闘が繰り広げられ、激しい音を奏でていた。

 

「ちっ…やっぱり硬いわね…!」

「ならまず戦闘能力奪うのが先決ね、イリゼ!」

「分かってる!」

 

左右に分かれて突撃する私とネプテューヌ。モンスターは対応して両腕に相当するアームからビームを放つ…が、変身した私達を撃つには挙動が遅過ぎた。

ネプテューヌの一撃を受け一瞬動きが鈍るモンスター。そこへ立て続けに放った私の横薙ぎが滑り込みモンスターの頭部とカメラアイを破壊する。

 

「■■ーー!?」

「たかがメインカメラじゃなかったみたいね」

「ちくっとするですよー!」

「喰らいなさいッ!」

 

見るからに動きの悪くなったモンスターに対し肉薄するコンパとアイエフ。いくら硬い装甲を持とうとも機動力を確保する為には関節部を開けなければならない。二人はその関節部へ注射針とカタールを叩き込んだ。

 

「貰ったわ!はぁぁぁぁっ!」

 

二人が狙ったのは脚部の関節。そこを破壊されたモンスターは移動もままならなくなり…ノワールの跳躍からの刺突を頭部欠損により露出した内部へ受け、完全に停止した。

 

「所詮はモンスター、全員でかかれば敵じゃないわ」

「今日もねぷねぷはかっこよかったですよ」

「ありがとうコンパ、でもコンパも結構良い動きしていたと思うわよ?」

 

モンスターを片付けた事で緊張を解く私達。でもまだ油断は出来ない、何故なら…

 

「まさか、もう一枚エネミーディスクがあるとはね」

「通りでモンスターが減らなかった訳だわ。ほら、ねぷ子割ってみたいんでしょ?」

「…いや、いいわ。変身したらテンションが下がって拘りも冷めちゃったもの」

「あ、そう…」

 

ネプテューヌは変身すると性格がガラリと変わる。元気一杯の快活少女から冷静沈着の女性へ、それは最早別人レベルだった(私の場合は多少テンション上がるだけ…だよね?)。

 

「じゃ、さっさと割っておきましょ」

「これで出口探し再開ですね」

「ネプテューヌ、私達も元の姿に戻る?」

「そうね、何時までもこの姿じゃ疲れるし」

 

ノワールがディスクを割り、改めて出口を探し始める私達。

…と思ったけど、何故か変身解除したネプテューヌは残念そうにしていた。

 

「…ネプテューヌどうかしたの?」

「いや、うん…ディスク割りたかったなぁ〜って…」

「はぁ!?」

 

さっきと言っている事が180度違うネプテューヌだった。気持ちは分からないでもないけど…えぇー……。

 

「あのねぇ…」

「だって変身前後で気分変わるんだからしょうがないじゃん。ノワールもそこ気を効かせてくれれば良かったのになー」

「知らないわよそんなの!誰がそんな気を効かせられるっていうのよ!」

「それが出来たらノワールはぼっちじゃなくなるかもよ?」

「誰がぼっちよ!?別に友達位沢山いるんだからね!」

 

今日何度目なのか分からない二人のやり取り。初見ならば喧嘩なのかと疑いたくなるそれも…

 

「ほんと仲良いわね貴女達」

「微笑ましいですぅ」

「これで出会って数日の関係なんだから凄いよね…」

 

二人の人となりを知っている私達からすれば日常的なものだった。

 

 

 

 

「久し振りの外だー!」

「やっぱりおひさまの下は暖かくて気持ち良いですねー」

 

またまたあれから数十分後、恐らく入ってから数時間だった末にやっと私達は出口を見つけて外に出る事が出来た。

 

「しかしまさかほんとに出口があるとはね…なんであそこだけ他の出口みたいに使用不能になってなかったのかな?」

「元々錆びてて開き辛かったから細工する必要が無いと判断されたんじゃない?」

「そういう事か…錆びててくれて助かったね」

「んー……」

 

ネプテューヌとコンパが雑談を、私とノワールが扉の事を話している間アイエフは妙に静かだった。

 

「…アイエフ、さっきからどうしたの?」

「うん、今更ながらちょっとガナッシュの狙いが気になって」

「狙いって邪魔になり兼ねない私達を始末する事なんじゃないの?」

「えぇ、それも勿論あると思うけど…エネミーディスクの件といい、何か他にも狙いがある気がするのよ」

「他の狙い、か…(私の正体に気付いている様な素振りだったし、きっと本当の狙いは私…後でネプテューヌ達にはラステイションのゴタゴタに巻き込んでしまった事を謝らなくっちゃ…)」

 

言われてみると確かにそうだった。どう考えてもエネミーディスクが市販されてる訳ないし、大企業とはいえそう簡単に入手出来るとも思えない…。

そうして私、アイエフ、ノワール(彼女だけは少し思考の方向性が違う様にも見えた)の三人が考えを巡らせている時、ずっと聞いていたネプテューヌが口を開いた。

 

「皆心配性だなー。皆深読みし過ぎだよ」

「そりゃ深読みなだけならありがたいけど…」

「無事出られたんだからそれで良いじゃん!今日はこの位にしてシアンの所でご飯にしちゃおーよー!」

「……っ!マズいわ、シアンも危ない!」

『……!』

 

ネプテューヌの口からシアンの名前が出てきた瞬間アイエフが反応し、一瞬遅れる形で私とノワールもそれに気付く。

 

「…どういう事です?」

「あいつが私達を閉じ込めた時に言っていた事を思い出して」

「ガナッシュさんがです?えーっと…」

「思い出せない人は第十一話を読んでね」

「ネプテューヌ、読者さんには優しいけど雰囲気的には最悪な台詞ありがと…」

「あいつは私達がシアンの協力者である事を知っていたのよ。ならシアンも私達同様に狙われる可能性があるわ」

「そ、それは大変です!」

「それじゃ急いで戻らないと!」

 

アイエフの説明でまだ危険が去った訳ではないと分かり、慌てる二人。そして私達が急いでパッセに行こうとした時…

 

「…ノワール、どしたの?早く行かないと…」

「……博覧会の為に私達だけじゃなく一般人のシアンも狙うなんてどういう神経してんのよあいつは!」

「の、ノワール…?」

「もうこればっかりは頭にきたわ…!ガナッシュもアヴニールも絶対許さない!私が修正してやるわ!」

「…ノワールがここにきてめちゃくちゃ怒ってる件」

「ノワールさん怖いですぅ…」

「そこ、ごちゃごちゃ言ってない!急いでシアンを助けに行くわよ!」

『はひぃっ!?』

 

怒号を飛ばし、我先にと走り出すノワール。私達はノワールの豹変ぶりに一瞬ぽかーんとしていたが、すぐに状況を思い出して後を追う。…いや、うん…勿論現状もアレだけどそれ以上にノワールが変貌し過ぎて反応に困るよ…。

 

 

 

 

一言で言えば、滅茶苦茶だった。家が、道路が、工場が破壊され、至る所で煙が上がっている。ラステイションの街へと戻ってきた私達が目にしたのはそんな光景だった。

 

「ガナッシュの奴、絶対に許さないんだから…!」

「ノワール、気持ちは分かるけど一旦落ち着いて…」

「お、お前ら来てくれたのか!?」

「シアン!?無事だったの!?」

 

私達と前に現れたのはシアンだった。無事だった事に私達は安堵したけど…当のシアンの顔は明るくない。

 

「何とかな…それよりここは危険だ、わたしは教会に行って女神様に助けを求めてくる。だから早く逃げろ!」

「…残念だけどそれは出来ないわ」

「だね、私達も初めて来た旅行者とかじゃないし」

「そうそう、わたし達はガナッシュに海よりも、コントローラーのモールドよりも深ーーい恨みがあるんだから」

 

それだけ伝えて再び走る私達。そう、私達はもう部外者じゃない。部外者じゃないなら…アヴニールを止める権利だってある!

 

 

 

 

「あーっはっはっは!いいぞキラーマシン!もっと壊せ!」

 

やっと発見したガナッシュ。彼は機動兵器らしき機体が街を蹂躙するのを見て満足そうに笑っていた。

 

「さあ、更に出力を上げるぞ。お前の性能を見せてやれ!」

「これ以上、貴方の好きにはさせないわ!」

 

声を上げる私。それを耳にしたガナッシュは振り向き、キラーマシンと呼ばれた機動兵器を破壊行動を一旦止めた。

 

「……おや?これはこれは懐かしい顔が…どうやら無事に抜け出せた様ですね」

「あんな雑魚モンスターで私達を倒せるとでも?随分お花畑な頭をしてるのね」

「まさか、あの程度で始末出来るとは思っていませんよ。けど、目的の足止めはできた様でなりよりです。お陰で新兵器のデモンストレーションを行えたのですから」

 

両手を広げ、さも誇らしげに破壊された街を見せるガナッシュ。そんな姿を見せられた私はより一層の怒りがこみ上げてくる。

 

「…絶対に許さないわ」

「ほぅ、では今の貴女に何が出来ると言うのです?かつての権威はアヴニールに奪われ、力も殆どない。それは御自身でも分かっている筈では?」

「……っ…」

「不在が長過ぎた御自身が悪いのですよ。結果この大陸で貴女を信仰している人はほぼいません。まぁこちらとしてはそのお陰で乗っ取れたので感謝はしていますがね」

 

…悔しいし、認めたくは無いけどガナッシュの言う事は事実だった。…けど、『全ての』事実、なんかじゃない。

 

「…で、だからなんなの?」

「何……?」

「権威や力が無い。それは事実よ?でもただ貴方への仕返しの為にここに立っていると思ったら大間違いね」

「なら、何のためだと言うんです?」

「私はね!こんな私でも、私を信じてくれている人達の為にここにいるのよ!」

 

ガナッシュへ啖呵を切りながら後ろを見る私。そこには私を信じていてくれる、私の友達が……

 

「ねぇ、そろそろ喋っていいかな?わたしシリアスで真面目な空気って苦手でさー」

「空気を読んでもう少しだけ静かにしてなさい」

「えー、もう限界だよー!わたしって喋ってないと死んじゃうタイプなのにー!」

「ねぷねぷ。静かにしないとおやつのプリン抜きですよ?」

「それは困る!うぅ、プリンの為に死んでも頑張らないと…」

「あ、あはは…緊張感無くてごめんね…」

 

……私の中で何かがキレる。

 

「何静かにする相談で騒いでるのよ!それじゃ元も子もないでしょうが!折角良い雰囲気だったのに…!」

「ねぷねぷ、プリンぼっしゅーとですぅ!」

「あぁ!?ぼっしゅーとされたー…」

 

…あれ?これってギャグパートだっけ?…って思う位グダグダな雰囲気だった。何で貴女達はそんなテンションしてるのよ…!

 

「いい加減にして!今CHAPTER:2で一番のクライマックスなのよ!」

「お友達とのお話はもう宜しいですか?これでも忙しい身でしてね」

「だったらすぐにそのガラクタをスクラップにしてあげるわ、覚悟しなさい」

「ねぷねぷ、イリゼちゃん、変身です」

「刮目せよー!」

「ガナッシュさん、貴方とアヴニールの悪行もここまでです!」

 

前に出て変身するネプテューヌとイリゼ。それを見たガナッシュは想定外とでも言いたげな顔をする。

 

「なっ!?その姿…何故こんな所に!?…貴女と言う人は、何故敵である筈のあの人と共にいるんです!?」

「言ったでしょ?信じてくれる人達の為にここにいるって。その為なら手段は選ばない……はぁぁぁぁっ!アクセス!」

 

高らかに声を上げ、変身を…『女神化』をする私。案の定私が女神化した事にネプテューヌ達は驚愕する。

 

「ノワール!?貴女、その姿は…!?

「細かい話は後!今はあの機動兵器を止めるのが先よ!」

 

言い放つと同時に地を蹴り宙へ舞う私。イリゼは勿論、ネプテューヌも変身した事で頭の回転が良くなったお陰か追求を後に回して私に続いてくれる。

さあアヴニール、女神の逆鱗に触れた事を後悔させてあげるわ!

 

 

 

 

戦いと言うものは往々にして荒々しくなるものだが、達人がそれを行なった場合、荒々しさよりも美しさや華麗さが勝るらしい。勿論絶対的な事では無いけど…少なくとも、私の目の前で舞う二人の少女は文字通り『華麗』だった。

 

「援護して頂戴ネプテューヌ!」

「ええ、突っ込みなさいノワール!」

 

短いやり取りだけで完璧な意思疎通を図り、キラーマシンと呼ばれた機動兵器を攻め立てるネプテューヌとノワール。キラーマシンの迎撃も相当なものだったが…その攻撃を悉くかい潜り、逆に次々と刃を叩き込む二人には通用していなかった。

 

「くっ…大誤算だ、何故ここにあの方が…!」

 

歯嚙みをしながらうめくガナッシュさん。彼は忌々しそうにしながら懐へと手を入れ、ディスクを取り出す。

ディスクが輝き、マシン型のモンスターが次々と出現。そのマシンモンスター群がキラーマシンに専念しているネプテューヌとノワールの背後を襲う様な動きを見せ、それを見たガナッシュさんが安堵と共に笑みを浮かべ…

 

…最前列のマシンモンスターが横一文字に両断された。

 

「な……っ!?」

「ディスクを置いて直ちに投降して下さい。さもなくば…」

 

私が獲物を、モンスターを一撃の元両断した長剣をガナッシュさんへ向ける。彼は再び忌々しげな表情を浮かべながら目標を私へ変更。モンスターが次々と襲いかかってくる。

 

(…ネプテューヌ、ノワール、貴女達の邪魔になるものは私に任せて頂戴。だから二人は…そいつを倒して!)

 

二人の連携に私は不要どころかむしろ邪魔にすらなる。直感的にそれを感じた私は二人の援護よりも別の障害を排除する事を優先する。

何故二人があんな連携が出来るのか、とかノワールの正体、とかは全く気にならなかった。

 

(仲間を…友達を信じて戦う。それが今の私に出来る最善の事だよね)

 

そして、二人とは違う場所で、違う目標を相手にしながらも二人と同じ意思を持つもう一人の少女が、刃を踊らせた。

 

 

 

 

わたしへ振るわれた大斧はわたしとキラーマシンの間に滑り込んだノワールの大剣により弾かれ、胴の空いたキラーマシンにわたしが一撃を与える。

わたしの突進を察知し防御態勢を取ったキラーマシンはわたしの突進と同時に側面に回ったノワールに対応出来ず、一撃を与えられる。

自分でも驚く程の連携を見せたわたし達はキラーマシンを圧倒していた。

 

「■■■■ーー!?」

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

「やぁぁぁぁぁぁっ!」

 

絶え間なく続くわたし達の攻撃に対し、次第に無茶苦茶な動きを始めるキラーマシン。武器が折れ、装甲がひしゃげ、AIが悲鳴を上げるキラーマシンにはどう見ても勝ち目

など無かった。

 

「ノワール、まだバテてないでしょうね?」

「当然よ、ネプテューヌこそまだいけるかしら?」

「勿論、なら…そろそろ決めるわよ」

「ええ、遅れるんじゃないわよ!」

 

互いに笑みを浮かべ、同時に飛翔するわたしとノワール。合図も無しに背中合わせになったわたし達は所謂ローリング・シザースの様な軌道を描きながらキラーマシンへ肉薄する。

 

「■■■■!!」

『遅いッ!』

 

真正面から突貫をかけたわたし達にビームを放つキラーマシン。そのビームが着弾する寸前に左右に分かれたわたし達は、ビーム照射中故に無防備となったキラーマシンへ一閃。キラーマシンの両腕部が肩口から斬り飛ばされる。

 

「これが、私達の…」

「信頼で結ばれた仲間の…」

 

無論わたし達の攻撃はまだ終わらない。ノワールはそこからバレルロールをかける事で自身と大剣を上方へ移動させ、頭部を叩き斬る。わたしは逆に大きくブレーキングをすると同時に身体を捻って身体の向きを調整し、キラーマシンのテール部分を斬り裂く。

最初は敵として出会った。喧嘩らしき事もした。時間の上で言えばたった数日の関係。…それでも、わたしは確信している。ノワールは--------

 

『----絆の力よッ!』

 

刹那程の時間差すらない、完全に同じタイミングでわたしは後方から、ノワールは前方から袈裟懸けをかける。

腕部、頭部、尾部を失い最早達磨状態だったキラーマシンは防御も回避もする事が出来ず、前後からX字に斬られて地へ沈む。

キラーマシンの停止を見届けた後、ゆっくりと近付き、どちらからともなく上げた手と手でハイタッチを行うわたしとノワール。そしてわたしは先程思った気持ちを改めて確信する。

 

--------ノワールは、わたしの大切な友達よ。




今回のパロディ解説

・「たかがメインカメラじゃなかったみたいね」
機動戦士ガンダムの主人公、アムロ・レイの名台詞の一つ。当たり前ですがたかがメインカメラと言えるのは彼の様なトップエースだけで普通はたかがではありません。

・修正してやるわ
機動戦士ガンダムZの主人公、カミーユ・ビダンの台詞の一部。激情型…と言う意味ではノワールとカミーユはちょっと似てますが、当然やる事は大分違いますね。

・モールド
型に樹脂や金属を流し込んで作った製品の総称…らしいです、無学な作者をお許し下さいませ。正直な所今まで以上にこれはパロディではない様な気がします。

・キラーマシン
ドラゴンクエストシリーズに登場するモンスターの事。ただネプテューヌシリーズのキラーマシンは原作キラーマシンを色々混ぜた見た目なので多分特殊なパロディです。

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