超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第十九話 復活・合流、二人の女神

「こちらよ」

「は、はい……」

 

付き人さんに連れ出されて出た私は誘導に従って廊下を歩いていた。…因みに、鍵はイヴォワールさんが持ってるらしく手枷はそのままである。…正直結構辛い……。

 

「…あの…女神様はどうして私を?…あ、いやそれよりネプテューヌ達はどうなったんですか?無事何ですか!?」

「取り敢えず落ち着いて貰えるかしら?アタクシに一度に全部答えろと言うの?」

「あ…すいません、じゃあまず皆の事を…」

「貴女の同行者は牢に連れて行かれていたけどお姉…こほん、グリーンハート様が助け出してくれたわ」

「……っ!ほんとですか!?」

「疑わしいのならグリーンハート様のお部屋で待てばいいわ。元々そこへ案内するつもりだし」

 

ネプテューヌ達が無事で、助け出された。その言葉を聞けただけで私は優しい安堵感に包まれた。勿論またも嘘…という可能性もあったけど、確かめる方法を開示してる以上それは無い様に思えた。

 

「…良かった…皆無事なんですね……」

「無事、と言うといささか語弊があるわね」

「え…ど、どういう事ですか…?」

「貴女はパーティー会場での事を忘れたの?」

「あ……」

 

次々と事態が移り変わるせいで半ば忘れていたけど…ネプテューヌは毒を飲まされてたんだった…。じゃあ、このまま皆と落ち合って脱出するだけじゃ駄目なんだよね……。

 

「…容態はどうなんですか?」

「それは自分の目で見るのが一番早いわ、ここよ」

 

そう言って付き人さんが扉を開く(私は手枷のせいでそもそも開けられなかった)。そうして開かれた、やけに趣味色の強い部屋の中には……

 

「…あぅ…っ……」

 

…疲れを知らない子供の様ないつもの様子は欠片も無く、ベットで苦しそうに喘ぐ…ネプテューヌの姿があった。

 

「……ッ!ネプテューヌっ!」

「…っ…イリ…ゼ…げ、元気…?」

「それはこっちの台詞だよ!こんな弱々しくなって…」

 

体温が下がり冷たくなったネプテューヌの手を握る。勿論これで解毒になる訳なんか無いけど…握らずにはいられなかった。友達が苦しそうなのに無関心でいられる訳が無いよ。

 

「…解毒剤は無いんですか?」

「それを今グリーンハート様と貴女の仲間が取りに行っているわ、ええと…失礼しますわ」

 

私の問いに答えつつ彼女はPCを操作する。多分ネットで調べていたんだろうと推測した私はネプテューヌの手を握りながら首を回して液晶画面を見る。

…と、そこには……

 

『悲報、知人が猛毒に犯される』

『1.…という訳で毒について教えて下さいまし』

『2.またざっくりしたスレが建っているンゴねぇ』

『5.後半の犯されるという単語だけでこのスレを開いてしまったのは俺だけじゃない筈…』

『8.(・ω・`)らんらん毒の事知ってるよ〜』

『10. ≫8.の様な方を待っていましたわ!』

『15. ≫8. ファッ!?原住民ちゃんかと思ったら全然違う奴やんけ!』

 

「…ええっと…あの、その……」

「何か文句でも?」

「いや別に文句は無いですけど…」

 

会った事のないグリーンハート様のキャラがどんどん変な方向に進化していく。……ねらーさんなのかな…。

ただ問題の毒についてはきちんと説明してくれていたので私も一通りの理解が出来た。

 

「…そんな昔の毒薬をイヴォワールさんが……」

「昔だからこそ容易に解毒出来ないと思って選んだんでしょうね。……ほんとはアタクシがお姉様と行きたかったのに…」

「え、何か言いました?」

「何でもないわ」

 

…どういう訳だか『小声で言われたせいで何を言っているのか理解出来なかった』という主人公あるあるを経験してしまった。…これはネプテューヌの担当だよね…。

 

「…主人公さん、頑張って」

「…ところで貴女、それはどうする気?」

「それって…手枷ですか?…腕力だけで壊すのは流石に無理が…近くに岩か何かありませんか?」

「ある訳ないでしょう…」

「ですよね…どうしよう……」

 

正直この状態でも女神化して奇襲をかければ鍵を持っているイヴォワールさんを脅す位は出来ると思う。でも両手が使えない以上不慮の事態が起きたら対処出来ないし、何よりそんな事をしたらほんとに邪の者扱いされてしまう。皆の事もあるからそれは選べない選択肢だった。

 

「…まあ、追々何とかします」

「そう、くれぐれもグリーンハート様の邪魔になる様な事はしない様に。…特にグリーンハート様のハートをキャッチする様な事は…!」

「え、あ…はい……」

 

物凄い剣幕で私に釘を刺してくる付き人さん。…これが、この人も私達同様ちょっと変わってるんだと理解した瞬間だった。

 

 

 

 

--------重症の病人を見ているのは辛い。刻々と進行していく病、時間を追う毎に悪くなっていく表情、このまま下がり続けてしまうんじゃないかと思える体温。

…ネプテューヌは、今まさにその重症の病人の様子だった。

 

「…ネプテューヌ…きっともうすぐ皆が解毒薬持って来てくれるから…もう少し頑張って……」

 

握ったネプテューヌの手を見つめながら言う私。こんな時に思うのは場違いかもしれないけど、ネプテューヌの手はすべすべぷにぷにで触っていたくなる手だった。無邪気で、元気で、明るいネプテューヌを現した様な彼女の手。…そんなネプテューヌを失うのかもしれないと思うと、私はとてもじゃないけど耐えられなかった。

 

(コンパ…アイエフ…グリーンハート様。お願い、早く戻ってきて……)

 

私は祈る様に目を瞑り、心の中で願う。

勿論、これで何とかなるとは思ってない。…でも、これが功を奏したのか、或いは偶然か、はてまた…女神であるネプテューヌの手を握りながら祈ったからなのか…とにかく、私の願いは--------すぐに形となった。

 

『(ねぷねぷ・ねぷ子)、大丈夫(です)!?』

『……!コンパ!アイエフ!』

 

勢い良く扉が開かれ、コンパとアイエフが姿を現す。そしてその二人を追う形で部屋に入る金髪蒼眼の女性。彼女は、私は勿論変身したネプテューヌでも及ばない程の恵まれた体型をしていた。

 

「イリゼ!?…良かった…貴女も無事だったのね…」

「うん、グリーンハート様の付き人さんのおかげでね…それより解毒薬は?」

「素材がここにありますわ」

「なら一安心だよ…ええと、貴女は…?」

 

付き人さんの話を聞く限りコンパとアイエフに同行している人なんて一人しか思い当たらないけど…確証は無いのできちんと聞いてみる。

 

「わたくしはグリーンハートことベールですわ、貴女がイリゼさん…ですの?」

「はい、イリゼです…あ、二人共私の事は…」

「話しちゃったですけど…もしかして話さない方が良かったです?」

「ううん、問題無いよ」

「…ところでイリゼ、貴方何でそんな物付けてるのよ」

「これは…鍵が手に入らなくてね…」

 

部屋に入ってきた三人に奇異の目で見られた私は穴があったら入りたい気分だった。うぅ…ほんと手枷だと羞恥心煽られるから辛いよ……。

 

「…じゃあ、その女性は?」

「この人は私を助けてくれた……あ、そう言えば名前聞いてなかった…」

「えぇー……」

「彼女は先程わたくしが言った付き人ですわ。チカ、自己紹介を」

「はい。アタクシの名前は箱崎チカ、グリーンハート様の付き人であり…アタクシにとってグリーンハート様はお姉様なのですわ!」

『はい!?』

 

今までの若干冷めた様な雰囲気は何処へやら、付き人…チカさんはベールに飛び付いていた。それを困り顔をしながらも受け止めるベールとぽかんとする私達。…ある意味で急展開だった。

 

「お、お姉様って…姉妹なの…?」

「まあそう思いますわよね…姉妹ではありませんわ。単にチカがわたくしを慕ってくれていると言うだけの話ですもの」

「で、ですよね…女神様に妹がいるのかと思って驚きました…」

「ふふっ、心配せずともあいちゃんを放っておいたり何てしませんわ」

「そ、そういう訳では……」

 

ベールの返しに対し頬を染めるアイエフ。そのアイエフの反応は元より…『あいちゃんを放っておいたり何て』?

…二人の間柄は一体……。

 

「…くっ……」

「あら、チカどうかしまして?」

「な、何でもありませんわお姉様。それよりすべき事があったのでは?」

「っと、そうでしたわね。コンパさん、薬の調合をお願い出来まして?」

 

ベールの言葉に部屋の空気が変わる。いくら素材が手に入ったとしてもそれを薬にする事が出来なければ何の意味も無い。全員がそれを認知している為、自然と視線はコンパに集まる。……が、

 

「…あの、わたし薬剤師さんじゃないので調合は出来ないんです…」

「それは困りましたわね…わたくしやあいちゃん、チカは専門外ですし…」

「私も薬の調合はちょっと…仮に薬剤師だったとしても今は記憶喪失中だし…」

「そういう事だからお願い、コンパ。この中で知識があるのは貴女だけなのよ」

「けど……」

 

コンパの顔は曇ったままだった。確かに私達がコンパに任せようとしているのは多少無理のある事かもしれないけど…何か、単純に薬剤師じゃないからというだけで躊躇っている訳では無い様な気がする。

 

「ネプテューヌを救いたいんでしょう?」

「…それは勿論です。ねぷねぷを助けてあげたいです…でも、わたしじゃ無理なんです……」

「…どうして?何か理由があるの?」

「…今まで内緒にしていたんですけど、わたし…クラスでは落ちこぼれだったんです……」

 

そうしてコンパは自分の事を話し始めた。自分が勉強も実習も苦手だった事。何度も失敗して周りに迷惑をかけてしまった事。…だからこそ、調合をした薬をネプテューヌに飲ませる事が怖いという事。話している間のコンパはいつものほんわかした雰囲気が一切無く、正直私は…無理に頼むのは止めた方がいいのかも、と思ってしまった。

…でも、二人は違った。

 

「…なぁんだ、そんな事なの」

「何事かと思いましたけどそんな事でしたのね」

「……へ?」

「そ、そんな事って…二人共コンパの話聞いてたの?コンパにとっては薬の調合なんて凄く大変な--------」

「何もコンパ一人にねぷ子の命を背負わせるつもりは無いわ。そもそも私が招いた事態だし」

「そうですわ。わたくしもチカも可能な限り協力しますわ、良いですわよねチカ?」

「え?…えぇ、お姉様がしたいのであればアタクシも勿論協力しますわ」

「…と、言う事よイリゼ。貴女だって協力してくれるでしょ?」

「それは…そうに決まってるじゃん。ネプテューヌの為なんだから」

「皆……」

 

俯いていたコンパが顔を上げる。きっと今は看護学校での実習なんかと同じじゃないって分かったからだとも思う。

そして私も一つの事を知った。相手に同情し、庇う事だけが優しさじゃないという事を。

 

「だから、コンパは私達に指示とアドバイスを頂戴。…皆でねぷ子を救うわよ」

「……っ!…はいっ!」

 

そうして、私達はネプテューヌを救う為の解毒剤調合を始めたのだった。

 

 

 

 

「出来た、です…!」

 

コンパが手にしたのはTHE・お薬…って位薬っぽい薬。そう、私達は苦心の末に解毒剤を完成させた。

 

「コンパ、早速ネプテューヌに飲ませてあげて」

「はいです。ねぷねぷ、一気に飲むですよー」

「ん…んんっ……」

「…飲むのを嫌がってますわね」

「ま、まぁ相当な臭いですしね…」

 

口元に近付けられた解毒剤を首を振り、口を閉ざして拒否するネプテューヌ。でもここまできて諦める訳にはいかない。その思いはコンパもだったらしく…

 

「好き嫌いは駄目ですねぷねぷ!口を開けないと鼻から飲ませるですよ!」

「いやそれ好き嫌いとかそういうレベルじゃないんじゃ…」

「病人相手にそれはどうかと思うわ…体調崩してる時って大変なのよ?」

「チカはあまり身体強くないですものね」

 

ほんとに鼻に流し込もうとしていたコンパを私とチカさんで止める。…危うくネプテューヌの鼻腔が駄目になる所だったよ…。

 

「…ならば、口移しはどうでして?」

『く、口移し!?』

「えぇ、古来から姫の眠りを解くのは王子のキス。…まあこの場にいるのは女の子だけですがそれでもロマンチックではなくて?」

「ロマンチックですけど、それはちょっと…」

「口移し…お姉様の口移し……」

「…まぁ、かく言うわたくしは王子であっても二次元でなければお断りですけどね」

『…………』

 

何だか凄い下心が露わになったチカさんとさらっとリアルお断り発言をしたベールにドン引きする私達。ラステイションの女神と教祖はそれぞれ特徴的ではあったもののまともだったのに…何があったのリーンボックス……。

 

「さ、さて…真面目にネプテューヌに飲ませる方法考えよっか…」

「わたくしの意見不真面目扱いですの!?」

「うーん…そうです!ねぷねぷの大好きなプリンと一緒ならきっと飲んでくれるです!」

「成る程、プリンシェイクに解毒剤を入れるのね」

「違うです。解毒剤プリンを作るです!」

「それが通用するのは某幼女博士位じゃないかなぁ…」

 

私の突っ込みは意味を為さなかったのかほんとに解毒剤プリンを作り始めるコンパ。その発想に私達は唖然だよ…。

そして、コンパは速攻で作ったプリンとスプーンを手に再びネプテューヌの横に来る。

 

「さあ、ねぷねぷの大好きなプリンですよー。あーんするですー」

「ぅ…あー…ん……」

『口を開けた!?』

「あんなに嫌がってたのにこんなあっさり口を開けるなんて…どんだけプリン好きなのよねぷ子…」

「ヤック・デカルチャーですわ…」

 

一名程とある巨人の言語を使ってしまう位にネプテューヌの反応の変化には驚かされた。…ネプテューヌのプリン脳、恐るべし。

 

「もぐ…もぐ……」

「ねぷねぷ…身体の調子はどうです?早く目を開けるです」

「流石にそこまで即効性は無いでしょ、暫く様子を見ましょ」

「そうそう…あ、じゃあ取り敢えず私は使った道具の片付けを--------」

「ネプテューヌ、ふっかーつ!」

『えぇぇぇぇっ!?早ぁ!?』

 

恐らく食べてから一分経ったかどうかでネプテューヌは復活した。解毒剤プリン超有能、逆に不安になる位の即効性を秘めていた。…いや、ほんと即効性あり過ぎじゃない…?

 

「…ぅあ、ねぷねぷです…いつもの、ねぷねぷですぅ…」

「あー…ごめんねこんぱ、何か心配かけちゃって」

「何?お礼を言うのはコンパだけなの?」

「まっさかぁ、あいちゃんにもイリゼにもありがとうだよ!…皆の想い、伝わってたからね?」

「ネプテューヌ…もう、心配したんだからね…?」

 

いつもの雰囲気でお礼を言ってくれるネプテューヌに私達は心から安堵する。…やっぱ、ネプテューヌはこうでなくっちゃネプテューヌじゃないよね、うん。

 

「さぁ、復活した所だしここは一つ景気良くストーリーを進めるよ!わたしの活躍とくとご覧…あ…れ……?」

『ネプテューヌ!?』

「お、おかしいな…身体に力入んないや……」

「病み上がりにハイテンションで叫んだらそりゃそうなりますわよ貴女…」

 

再び倒れるネプテューヌ。慌てて駆け寄る私とコンパとアイエフ。そして呆れ気味のベールとチカさん。何というか、まあ…私達はいつもの私達に戻っていたのだった。

……いや、これがデフォルトってのもどうかと思うけど、ね。




今回のパロディ解説

・(・ω・`)らんらん、原住民
どちらもネット上での特定の人達を指す、所謂ネットスラング。内容から邪推してはなりません、ベールは別になんJ民では無いのです(あくまで私の主観ですが)。
(らんらんの絵文字は正確には違うのですが打てなかったので右の眉毛は省略させて頂きました)

・某幼女博士
日常、に登場するハカセの事。あの子の場合はプリンの上に粉薬ぶっかけただけの物を食べていましたが…まあ、似た様な物ではないでしょうか。

・ヤック・デカルチャー
マクロスシリーズに登場するゼントラーディ語の一つ。主にカルチャーショックを受けた時に使います。勿論作者はベール=メルトランなどとは考えていません。

また、前回の十八話にて付き人(チカ)の口調を私が間違えていたので彼女の台詞(主に語尾)を訂正させて頂きました。申し訳ありません。

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