超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第二十話 真実は人の想いを動かす

「…いくよ、イリゼ?」

 

ゆっくりと私に近付いて来るネプテューヌ。彼女は根元から少しずつ反り返るソレの感触を確かめた後、私へと向ける。

普通の女の子であれはある筈のないソレを向けられている私は…身体の力を抜き、彼女へ向かいあった。

…勿論、怖くない、と言えば嘘になる。でも私は逃げ出そうとは思わなかった。これは私の為でもある事だし…何より、相手はネプテューヌだから。

だからこそ、私は拒否の言葉の代わりにこの言葉を口にする。

 

「優しくしてね……?」

 

その言葉にネプテューヌはゆっくりと頷いた後、今か今かと待ち構えているソレを持ち上げ……

 

 

私の手枷へと思い切り振り下ろした。振り下ろされた刀は手枷に刺さり、止まる。

 

「あーやっぱ駄目だったかぁ…」

「……あのさ、ネプテューヌ…ちょっと良い?」

「何?もっかいやってみる?」

「逆だよ!?見てよこれ!私の手首の上辺りに刃きてるじゃん!私手首と手首の間に振り下ろしてって言ったよね!?」

 

ネプテューヌが復活してから数十分後。ネプテューヌが少し休んだ事で体力が戻った(やはり常人より回復力が超高いね…)事で話は私の手枷の事となり、試しに破壊を試みた所であった。

 

「だから言ったじゃない、ネプテューヌに任せるのは不味いって」

「うん…破壊目的だったけど手枷破壊されなくて良かったと思ってるよ…」

「むー、失礼だなぁ…。あ、むしろこれを機に武器をヘヴィボウガンに変えて『隻腕のイリゼ』って名乗ってみるのは?」

「いやそれ自称するものじゃないし隻腕にする前提で話すのは止めてくれない…?」

「ふふっ、でも今度こそいつものねぷねぷです」

 

確かにネプテューヌはいつも通りに戻り、私達パーティーも元通りとなった。…だからって片腕斬り落とされちゃったらたまったもんじゃないけどね。

 

「そうね…でも、悪かったわねねぷ子。私が気を付けていれば守ってあげられたのに…」

「もう良いってあいちゃん。悪いのはあいちゃんじゃないし…普段のあいちゃんに戻ってくれなきゃ突っ込み手が足りなくなっちゃうでしょ?」

「突っ込み手って…」

「…すぐ調子に乗るんだから…でも、ありがと」

「…あ、それとベールとチカもありがとね」

「お気になさらなくで。あいちゃんの為ですもの。……ですが、女神としてもう少し気を付けるべきだとおもいますわよ?」

『……!』

 

ベールが付け加えた言葉によって、私達に衝撃が走る。理由は簡単、誰も話してない(と聞いた)情報『ネプテューヌ=女神』という事を知っていたからだ。

 

「…ベール様、どうしてそれを?」

「どうしても何も、最近まで刃を交えていた相手を知らない筈がありまして?」

『……っ!』

「……え?何この空気?…あ、もしや守護女神戦争(ハード戦争)でわたしとベールが対立してるから?」

「…もう少し雰囲気考えた発言してほしいですねぷねぷ…」

「そうは言ってもわたしって性格上どうしてもシリアス合わなくってさー…あ、必要なら女神化するよ?」

「ふふっ、噂通り…いえ、噂以上に面白い方なのですのね」

 

ネプテューヌの緊張感ゼロの発言とベールの笑みによってシリアスな雰囲気は崩れ去った。…ベールの顔にネプテューヌと一戦交えよう、と言った様子は見られない。

 

「安心して下さいな皆さん。わたくしにそんなつもりはありませんわ。…と言うか、元々わたくしは守護女神戦争(ハード戦争)に興味はありませんの」

「え…お姉様、そうだったんですか…?」

「えぇ、わたくし…いいえ、わたくし達はゲイムギョウ界の覇権の為の戦いを先代の女神達から引き継ぐ形で戦っていたのですが…わたくしは女神としての力をサブカルさえあれば覇権なんて興味はありませんわ」

 

ベールの語る言葉…特に先代の女神については凄く興味があったけど、それ以上に私達は共通してある感想を抱いた。それは勿論……

 

『…何(です)この凄いけど残念な人……』

「うつ…ま、まあ今のはそういう反応が来ると予想してましたわ…こほん、その点ネプテューヌはどうなんですの?」

 

どうなんですの?…とはつまり、ネプテューヌは戦うつもりがあるのか…と言う問いである。…まあ、ネプテューヌの現状を知らなきゃそれ聞くよね。

 

「んー…どうって言われてもよく分かんないんだよね、記憶喪失だし」

「…そうなんですの?」

「うん、名前しか分かんなかったし女神である事もノワールから教えてもらって初めて知ったんだ」

「ノワール…もしやラステイションのノワールですの?…という事は…」

「はい、最初はねぷねぷを嫌っていたみたいですが、今ではすっかり仲良しさんです」

「貴女、よくあの堅物のノワールと…」

 

そういうベールの顔は本当に驚いている様だった。そんなベールの様子を見る限り、ノワールがラステイションの非常事態故に気が立っていたとかネプテューヌを元々特に嫌ってたとかじゃなく、元からああいう性格だったのだと分かる。

 

「…あの、ベール。ネプテューヌの事を知ってたって事で一つ聞きたいんだけど…良い?」

「えぇ、わたくしも皆さんに話したい事がありますもの。…ですが、もう今日は遅いですし明日、また訪ねて下さります?」

「あ、けど私達教会にはユニミテスの使いとして…」

「そんな事ならお気になさらず。イリゼさんの手枷の事も含めてわたくしにお任せですわ」

 

ベールの言葉に私達は困惑していたが、ベールは任せろの一点張りなので釈然としないながらも教会を後にする。勿論向かうのはチェックイン済みのホテル。…手枷もユニミテスの件も何とかなればいいけど……。

 

 

 

 

「先日は本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁっ!」

 

…開口一番土下座をされた。夜が明け、ベールを信じて教会へと再び足を踏み入れた私達に対してのイヴォワールさんの反応がこれ。…え、えぇぇ……。

 

「いやいや…教会に入って早々これは流石のわたしもびっくりだよ…」

「…ご高齢の方がいきなり土下座するのって…もしや常識…?」

「そんな訳ないでしょ…これは一体……」

「あら、皆さん。お待ちしておりましたわ」

 

教会の奥から現れたのはベール。相変わらず土下座の体勢のままのイヴォワールさんに事情説明をして貰うのはなんかアレなので私達は変な汗をかきながらベールに説明を求める。

 

「えと、あの…これは…誤解が解けたって事で良いんですよね…?」

「ええ、これで安心して下さいな」

「今後この様な事は二度と起こさないとグリーンハート様に誓います!どうかご許しを!」

「べ、ベールさん…イヴォワールさんに何をしたです…?」

「あー…いや、これは… わたくし別に何もしていないというか、誤解を解いた時点でこうなったというか…」

 

頬をかきつつ説明するベールに私達は目を瞬かせる。誤解を解いただけでこの反応?…正直、意味が分からない。

 

「い、いやあのイヴォワールさん…?昨日貴方に何が…」

「…ワシは教会に勤める者となって以来--------」

「せ、説明の前に取り敢えず頭上げて貰えます…?…良いよね皆?」

「え、えぇ…構わないわ」

「わたしもです…流石にこれはちょっと…」

「ここまで来ると逆にこっちが軽く悪いみたいな気分になるもんね…」

 

被害者一行、満場一致でイヴォワールさんに頭を上げてもらう事に決定。…だって、これは普通にいたたまれないし直視出来ないもん。……あ。

 

「…アイエフ、ここで言うべきだったね」

「何をよ?」

「ほら、ラステイションの廃工場での…」

「いやこの人はロボットでもケンタウロス型でもないでしょ…」

「……話を続けても宜しいでしょうか…?」

「あ、はい余計な事言ってすいません」

 

私がふと思い出した事を言っている内に立ち上がったイヴォワールさん。…因みに私とアイエフの会話の意味が分からない人は第十一話を見てね…って、何ネプテューヌみたいな事考えてるんだろう…。

 

「…ワシは教会に勤める者となって以来、ずっとグリーンハート様とリーンボックスの為に邁進しておりました。それも義務的なものではなく、半ば生き甲斐として…」

「それは知っていますわ。そうでなくては分家とは言え教祖の直接的な家系でない貴方に教祖代行を頼む訳ありませんもの」

「ありがとうございます、グリーンハート様…国民以外信仰を認めなかったのも外部からの災いを少しでも食い止める為。…しかし、ワシも歳をとり考えが凝り固まってしまいましたのだな…。…身元の曖昧な者の言葉を鵜呑みにし、罪無き者を陥れ殺そうとし…あまつさえ、敬愛するグリーンハート様の意向に沿わぬ事を独断でしようとは…」

 

イヴォワールさんの話を私達は黙って聞いていた。それはイヴォワールさんが淀みなく話していたのもあるけど…一番の理由はやはり…肩を震わせ、罪の意識と自己嫌悪に苛まれたイヴォワールさんの言葉はとても真摯なものに聞こえたから。

 

「…申し訳ありません、皆様…。無論、この様な言葉だけで本当に許されるとは思っていませぬ。ですが、このワシの事はどう思おうとも、嫌いになろうとも構いませぬが…グリーンハート様とリーンボックスの事は嫌いにならないで下さい……」

「イヴォワール……」

「…ど、どうする…?」

「どうする、ね…ここはねぷ子とイリゼで決めて頂戴。一番の被害者は貴女達よ」

 

そう言われて私とネプテューヌは顔を見合わせる。流石のネプテューヌも真摯な様子の相手にふざけた事は言わないんだなと一安心しつつ、それぞれの意思を口にする。

 

「うーん…まあイボさんも悪気があった訳じゃないんでしょ?なら良いよ、わたしは心が広い主人公だからね!」

「正直、行為そのものは許したくはありません。でも…そこまでの信仰心と贖罪の念を持っている人であれば…許したいと思います」

「……っ!…ありがとう…ござい、ます…」

「…イヴォワール。やってしまった事はもうどうしようもありませんわ。…大事なのは、その後をいかにして過ごすかではなくて?」

「…はい……!」

 

絞り出す様に返答したイヴォワールさんは教会の奥へと歩いて行った。きっと、教祖代行としての仕事を…信用を取り戻す為の行動をするんだと思う。

 

「…お二人の…いいえ、皆さんの優しさに感謝しますわ」

「いいって別に、これが私達の本心だもん」

「そう言ってくれるとありがたいですわ。…さて、昨日言った通りお話ししたい事がありますの、わたくしの部屋に来て下さる?」

「あ、その前に手枷を…」

「あら、何の事でして?」

「えぇ!?ちょ…忘れられてた!?」

「ふふっ、冗談ですわ」

 

そう言いながらベールは鍵を取り出し、私の手枷を外してくれる。…ふぅ、やっと両手が自由に使えるよ…良かった。

その後、私達は言われた通りベールの部屋へ向かう。そして全員が部屋に入った後、ベールは真剣な表情で話を切り出した。

 

「…単刀直入に申しますと、わたくしの奪われてしまった女神の力を取り戻すのに協力して欲しいのですわ」

「女神の力を…?…それってどういう事ですか?」

「…あれはとあるゲームイベントの帰りでしたわ。会場で買ったグッズで両手が塞がり、一日中歩いた後で疲弊した状態を狙われたわたくしはなす術もなく、つぎにめを覚ました時には女神の力が無くなっていたんですの…」

「イベント帰りって足が棒みたいになって凄く眠いんだよね。そこを狙われちゃいくら女神でも太刀打ち出来ないよ」

 

ベールの言葉にうんうんと頷くネプテューヌ。私は『何て情けない奪われ方を…』と突っ込みたい所だったけど…合わない気がして突っ込みを飲み込んだ。

 

「女神の力を奪われるとどうなるです?」

「普通に歳をとったり、女神化が出来なくなったり…簡単に言えば普通の人間の様になってしまうのですわ」

「あ、だからベール様は今まで女神化しなかったんですね」

「えぇ、なのでわたくしが歳をとってこの美貌が衰える前に…そして余生を全うする事で後に発売されるゲームが遊べなくなる事を阻止する為に女神の力を取り戻さなくてはならないんですのよ!」

「…コンパ、イリゼ…これはどう突っ込めば良いのかしら…?」

『さ、さぁ……』

 

常々ネプテューヌを女神らしくないと言うアイエフも、そんな所が良いというコンパも、まぁまぁ記憶喪失だし…と擁護する私も今のベールの言葉には『ネプテューヌとどっこいどっこいじゃ…』と思わざるを得なかった…。

 

「そういう訳ですから、わたくしが永遠にゲームで遊ぶ為にもあいちゃん達にはその犯人を捕まえるのを手伝って欲しいんですの」

「分かりました、ねぷ子とイリゼを助けてくれた恩返しを含めて協力させて下さい」

「教会や国民の皆さんを不安がらせる訳には行かず、流石に話す事は出来なかったので助かりますわ…さて、確かイリゼさんもお話があるんでしたよね?」

「あ、うん。これは話すより見てもらった方が早いかな」

 

そう言って私は一歩下がり、女神化をする。…その瞬間、ベールが今までの穏やかな様子から一転、剣呑な雰囲気を放ち出す。

 

「……何者ですの、貴女…」

「お、落ち着いてベール。私に敵意は無いから…」

「そうだとしてもですわ。…まさか、それはわたくしから奪った力ではないでしょうね…?」

「ち、違うよ!?そもそも私記憶喪失だし…ええと、取り敢えず聞いて貰える…?」

 

ベールの反応からベールが私を知らなかった事が分かってしまったけど、何とかそれを表に出さない様にしつつ女神化を解除し、説明を…コンパとアイエフが話していなかった私の力について話す。その話をベールは興味深げに聞いていた。

 

「…にわかには信じがたい話、ですわね…」

「だよね…でも記憶喪失な以上こうとしか言えないから…信じてもらえる…?」

「まあ…あいちゃんが信じている相手ならば信じるに値しますわ。それに、騙している様には見えませんし」

「そっか…ありがとう、ベール」

「いえいえ、わたくしとしても女神の力奪還の為に力強い味方がいるのはありがたいですわ」

 

ベールが取り敢えず信じてくれた事で私はほっとする。

…と、同時に何かの鳴る音がする。これは……

 

「…電話?」

「だね、あいちゃん?」

「ううん、これはわたしの電話じゃないわ」

「あら、わたくしの様ですわね…はい、わたくしですわ」

 

そう言って電話に出るベール。誰からだろうと私達が小声で話をしていると、ベールの顔が再び真剣なものとなっていった。

 

「今から急いでそちらに参りますわ。貴女は足止めをお願いしますわね…ふぅ、正にナイスタイミングですわね…」

「ねぇねぇ、今の電話って何?大佐から?」

「わたくしはスネークではありません…チカからですわ。わたくしの力を奪った犯人が罠にかかったそうよ。詳しい話は道中お話しますわ…急いで向かいましょう」

 

言うが早いか部屋を出るベール。勿論私達も後に続く。その犯人ってのは只者じゃないと思うし…今回の件は私もきちんと恩返ししたいから、ね。

 

「この流れは…読者の皆ー!次回は戦闘会っぽいよー!」

「この状況でもボケるの!?そういうネタバレしなくて良いからね!?」

 




今回のパロディ解説

・ヘヴィボウガン、隻腕のイリゼ
モンスターハンターシリーズの武器及びそのノベライズ『魂を継ぐ者』の登場キャラ、クルトアイズの異名。…上段から腕斬られたらボウガンも持てないでしょうね。

・「このワシの事は〜嫌いにならないで下さい」
AKBの卒業生、前田敦子さんの総選挙時の台詞。個人的にこのシーンでパロディネタを使うのはどうかとも思いましたが…そういう所もネプテューヌシリーズですよね。

・大佐、スネーク
メタルギアシリーズの主人公の一人ソリッド・スネークとその上司、ロイ・キャンベルの事。ベールとチカとは関係性を始めとして共通点を見つける方が大変でしょう。

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