超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第二十三話 女神の在り方

--------一騒動済んだ翌日。私達は何だかんだで訪れる事の出来ていなかった喫茶店へと来ていた。勿論、ベールも一緒にね。

 

「んー、このスコーン噂通り美味しいね」

「うんうん、あいちゃんの情報網様々だね」

「こういう時の為の情報網じゃないけど…まあ、自分なりの情報網作っておいて損は無いわよ」

 

得てして女の子はお茶会が好きだったりする。それはダンジョンへと入り、武器を振り回し、モンスターを倒すという普通の女の子の域を大分逸脱している私達も例外じゃない。…まあ、私達が行ってるのがお茶会と呼べるかどうかは微妙だけど…。

 

「それにしても、良い眺めですねぇ」

「こういうの景観が良い、って言うんだっけ?リーンボックスはこういう所に力入れてるの?」

「えぇ、元々リーンボックスは他国より自然が豊かでしたの。なので人の文明を発達させつつも環境を保全し、尚且つ食と観光の面で活かしているのですわ」

「へー、やっぱ女神なだけあってちゃんと考えてるんだね」

「ネプテューヌ…貴女も女神でしてよ…?」

 

嘆息するベール。あっけらかんとするネプテューヌ。当然ながらこの場にはコンパとアイエフというそれぞれの信仰者がいる訳だけど…二人がそれを気にしているのかどうかは読者の皆さんなら分かるよね。

 

「…あ、そうそう女神と言えばちょっと聞きたいんだけどさ、女神ってそんなほいほいと出かけて良いの?わたし的にはそっちの方が楽で良いけどさ」

「流石に音信不通になるのは駄目だと思いますが、普通に生活する分には良いと思いますわよ?第一護衛がいては何かあった時むしろ邪魔になりかねませんし」

「あぁ…女神化の為の一瞬さえあれば基本私達護衛要らずだもんね…じゃあ、仕事の方は?少ないって事はないでしょ?」

 

丁度良いタイミングだったので私は前々からの疑問を口にする。ベールは勿論、訳ありとは言え女神の座にいる事に変わりなかったノワールもそこまで仕事に追われてた様子がなかったのはどうも引っかかってたんだよね。

 

「ふふっ…イリゼ、良い質問ですわ」

「え?あ、うん…何かありがと…」

「女神の仕事は多岐に渡るので細かい説明は省きますが…結論から言うと仕事の量は調整出来るんですの」

「一番偉い人だからです?」

「えぇ、厳密にはもう一方のトップとして教祖がいますので全てを即決出来る訳ではありませんのですけどね」

 

ベール曰く、女神と教祖の関係は国によって違うらしい。幸いにも私達は既に二組の女神と教祖を見てきたのでここはすんなりと納得する事が出来た。

 

「…はっ!という事はまさか…上手く教祖さんを言いくるめれば仕事無しでも良いって事!?」

「ねぷ子あんた…ベール様、きっちりねぷ子に教えてあげて下さい」

「いえ、やろうと思えば出来ますのよ?」

「え……!?」

「まぁ、全く仕事もせずにシェア…つまりは支持率を維持出来るのであれば、ですけどね」

 

女神はシェアが無ければ女神でいられない(らしい)ので、結局は仕事ゼロにするのは厳しいという事らしい。それを聞いたネプテューヌは本当に残念そうにしていた。…ネプテューヌ……。

 

「ねぷ子、この際ベール様に女神について徹底的に教えてもらったら?」

「えー、せっかくのガールズトークなのに?」

「ねぷ子の口からガールズトークなんて言葉を聞くとは…」

「ねぷねぷも女の子ですからね」

 

そこから暫く私達は他愛ない、それこそ普通の女の子らしい時間を過ごした。過半数が女神だったり、短期間に複数の国を回ってたりと中々に特殊な私達でもこういう時間は過ごせるんだなぁ…と、ちょっとしみじみに感じてた私だけど…ムード&トラブルメーカーネプテューヌが今回もやらかしてくれた。

 

「お待たせしました〜」

「あ、はーい…って、え……?」

 

店員さんが運んで来たのは白いクリームと柔らかなスポンジ、それに赤くみずみずしい苺の乗った美味しそうなケーキ……の、ワンホール。しかも結構でっかい…。

 

「これ…誰が注文したの…?」

「わたしだよ?すっごく美味しそうでしょ?」

「いや、それには同意だけどさ…明らかに今いる人数分以上の量だよねこれ…」

「でもほら言うじゃん、デザートは別腹だって」

『えぇー……』

 

当たり前だけどデザートは別腹っていうのは例えだとか精神的なものであって、ほんとにデザート専用のお腹がある訳じゃない。…まあ、食べるけど。

 

「ふわふわで美味しいですぅ」

「こんぱのプリンも良いけどこのケーキも中々だよね」

「コンパさんのプリンですか…機会があればわたくしにも下さいな」

「勿論です。欲しい時は言って下さいね」

 

ホール状態のままフォークをぶっ刺して食べる訳にはいかないので五人分に切り分けて食べ始める私達。お店のメニューなだけあって味は満足いくものであり、そのおかげで最初こそ景気良く減っていったものの…

 

「……多くない…?」

『これ頼んだの(ネプテューヌ・ねぷ子)でしょうが!』

「ですよねー…美味しいのにお腹が要らないって言ってるよ…」

「こういう時は殿方がいてほしくなりますわね…」

 

何だか微妙にアレな気分となっていく私達。幸い少食な面子ではなかったのでゆっくりとだけど何とか量を減らしていき、やっとの思いで最終的には完食に成功した。…した、んだけどさ…

 

(ウエストが…来る前より明らかにキツい……)

 

喫茶店からの帰り道は女性全体の死活問題に悩まされる事となってしまった私達だった……。

 

 

 

 

『第二回、今後のねぷねぷ一行の活動方針を考えよう会inべるべるの家』

 

教会に戻って数十分後、ベールの部屋にはなんだか見覚えのある看板が吊るされていた。

 

「…まさかラステイションからずっと持ってたの?」

「まっさかー、前のはノワールにプレゼントという形で置いてきたよ?」

「嫌なプレゼントねそれ…」

 

ラステイションでの会を知らないベールはきょとんとしていたけど、他四人は一度経験しているので前回よりもすんなりと会議(?)が始まった。

 

「ま、取り敢えずはプラネテューヌに戻りましょ。今のままルウィーに行くのは賢明じゃないし」

「え、そうなの?」

「ルウィーは所謂雪国、気温がリーンボックスとは全然違いますものね」

 

アイエフとベール曰く、ルウィーは殆ど一年中雪が積もっているらしい。そんな雪国であるルウィーに何の準備も無しに行くのは普通に避けたいという事で一旦プラネテューヌへ戻るという事に決定した。

 

「速攻で決まったですね」

「話が早いと楽だよね」

「そうね」

「ですわね」

「…………」

「…………」

「……え?」

 

あろう事かなまじすんなりと会議が進んでしまったばっかりに話が途切れてしまった。…ロクに脱線しないのも考えものだよね…。

そして、こういう時必ずボケてくれるネプテューヌと言えば……

 

「雪国かぁ…雪合戦と雪だるま作りのどっちかはやろっかなぁ…あ、かまくら作りもいいかも…」

 

宙を見ながらルウィーでやりたい事を口に出していた。その姿たるや、私達が一瞬揃ってほっこりしちゃう位ほんわかしていた…。

 

「え、ええっと…取り敢えず会議の方はどうする…?」

「簡単にだけど方針は決まったし閉会で良いんじゃない?…あ、ベール様は今後どうするんですか?」

「そうですわね…国内の魔王崇拝やエネミーディスクの取り締まりをしなければなりませんし、お仕事も溜まっているのであまり自由には動けない事は分かってますわ」

「じゃあベール様もノワールさんと一緒でついてくる事は出来ないですか?」

「今すぐプラネテューヌに行く、という事でしたら残念ながらそうですわね…」

 

先程ベールは仕事の量は調整出来るとは言っていたけど…今回はその調整で何とかなるレベルじゃなかったらしい。まあ、事態から考えたら当然だよね…。

 

「そうですか…その、お仕事頑張って下さいね…」

「ふふっ、心配せずともすぐに終わらせてあいちゃん達に合流しますわよ?」

「あ、い、いやそのそういう訳ではなくてですね?…勿論そっちの方が嬉しいですけど…」

「二人共仲良しさんですね〜」

 

いつの間にか脱線をしていた会議。ただ最低限決めるべき事は決めていたからかそのまま会議入るからなぁなぁで終わってしまった……うん、ある意味私達らしいよね…。

 

 

 

 

「さて、と…皆、支度は大丈夫?」

「大丈夫ですよ」

「モチのロンだよ!」

「これで良しっと…私も出来たよ」

 

ぐたぐた会議を行った翌日の昼下がり、私達は荷物を持ってリーンボックス教会を後にした。ほんとはもう少しリーンボックスの観光したりまったりしたかったけど…

 

「まさかこの数日でマジェコンヌが鍵の欠片手に入れてたりはしないよね?」

「流石にそれは無いでしょ。あのサイズじゃ目立たないしダンジョンだっていくつもあるもの」

「でもあんまりゆっくりしてたら取られちゃっていーすんさんとねぷねぷ達の記憶の復活が出来なくなっちゃうです」

 

ダンジョンでのマジェコンヌとイストワールさんの言葉が私達にゆっくりする事を(あんまり←これ重要だよ)許してくれなかった。まあ、大変と言えば大変だけど記憶を取り戻す為なら仕方ないよね。

 

「でもさー、そう考えるとわたし達が集めるのも凄い大変だよね。キーブレードで代用出来ないかな?」

「キーブレードを手に入れるのは鍵の欠片集める以上に難しい気がするんだけど…」

「ま、地道に探すしかないわよ。ヒントも何もないんだから」

 

そう言って歩みを進める私達。時に雑談をしながら、時にふらふらとお店に入ろうとするネプテューヌを引き止めながら歩いて行き、段々とリーンボックスの中心街から離れていく。

 

「また来たくなる場所だったですね」

「そうね、今度は旅の一環じゃなくて私用としてベール様に会いに行きたいわ…」

「そう言ってもらえると女神としても一個人としても嬉しいですわ」

「だってさ。ベールも喜んでるしまた……って…」

『えぇっ!?』

「あら、どうしたんですの?」

 

違和感なく会話に入ってきたのはまさかのベール。仕事、特に取り締まり関係の事が溜まっていると言っていた筈のベールだった。

 

「どうしたもこうしたも…昨日と言っている事違くない!?」

「そうでしたっけ?」

「え?だってベールすぐにプラネテューヌに行くのは無理だって…」

「あぁ、その事ですの…オタクの徹夜能力を舐めてもらっては困りますわ」

『え、えぇー……』

 

なんていうか、その…ベールは規格外だった…。良い意味でも、悪い意味でも……。

 

「まあ、国外で出来る仕事やチカやイヴォワールに任せられる仕事はやってませんので一日で全て片付けた訳ではありませんの」

「いやそれでも色々と無茶苦茶だよ…どうしてまたそんな急いで…」

「そんなの…あいちゃんと一緒に居たいからに決まってますわ!」

「ふぇぇ!?」

 

満面の笑みを浮かべながらアイエフを抱き締めるベール。ベールの背が高かった事と不意に抱き締められた事…そして何より、ベールが豊かな胸を持っていた事によりアイエフの顔はベールの胸に埋まっていた…あ、あんなの現実にあるんだ…。

 

「うわ、何あれ…ぱふぱふ……?」

「何だか凄いですぅ…」

「……ねぇネプテューヌ、何か私今すっごい劣等感感じてるんだけど…」

「あー、うん…その気持ち分かるよ…」

 

ベールの胸元を見て、その後視線を下に向ける。もう一度ベールを見て、また視線を下げる。……うぅ、女の子は胸が全てじゃないんだからねっ!

…と、私が圧倒的戦力差を目の当たりにしていた時、遠くから何やら声が聞こえてきた。

 

「……?この声…聞き覚えが…」

「誰かを呼んでる様な感じです」

「…わたくしでして?」

 

確かに耳を澄ませてみるとベールの名前を呼んでいる様に聞こえた。…と、同時に二人の人影が見えてくる。その姿は…

 

「…チカ?それにイヴォワールも…」

「はぁ、はぁ…やっと…追いつきましたな…」

「お、お姉様…何、を……!?」

「ただのスキンシップですわよ?…で、どうしたんですの?」

 

ただ見送りに来た訳じゃないと察したベールはアイエフを放し二人の方を向く。それに対して二人は息を整える為に数分休んだ後…単刀直入に切り出してきた。

 

「…ベール様。誠に勝手でございますが…本日を持って私イヴォワールは教祖代行を辞任させて頂きます」

「……!?…どういう…事、ですの…?」

「今回の件ではっきりと分かりました。私は既に教祖としての任を全うするだけの技量は無いと」

「な…っ!そ、そんな事急に言われましても…教祖の後任はどうする気ですの!?これではわたくしがあいちゃん達についていけないではありませんの!」

 

突然の事態に驚く私達。おおよそシリアスさの感じられない会話をしていた私達にとってイヴォワールさんの辞任宣言は正に急転直下の出来事だった。特に関係の深いベールにとっては衝撃だったらしく、見るからに動揺していた(若干しょうもない事も言っていた気もするけど…)。

 

「安心して下さい。きちんと後任は決めております」

「安心出来る訳ありませんわ!教祖という重要な任を任せるなど--------」

「…後任は、教祖の本家であり先代教祖の娘であるチカに任せようと思っています」

「チカに…?……なら安心出来ますわね」

「や、やっぱりそうですよね…まだ未熟なアタクシ程度では……へ?」

「何を驚いた顔をしてるんですの?」

 

今まで動揺しっぱなしだったものの、後任をチカさんが行うと聞いた瞬間落ち着きを取り戻したベール。そのあまりの急変ぶりに今度は逆にチカさんが動揺してしまっていた。

 

「え、だ、だって…アタクシはまだお姉様に迷惑ばかりかけている身で…」

「イヴォワールが勧めるのなら問題ありませんわ。それに貴女は付き人としてわたくしを見てきたでしょう?」

「そ、それは…本当に良いんですの…?」

 

動揺しながら、どこか不安そうにベールを見つめるチカさん。そんなチカさんに対しベールは…姉の様な、優しい笑みを浮かべながら言った。

 

「…チカ、わたくしがチカを付き人としたのは教祖の娘だからではなく、貴女を一番信用していたからですわ。貴女ならきっと教祖としてやっていけると信じていますわ。…わたくしの言葉は信じられませんの?」

「…ありがとうございます、お姉様……アタクシ…アタクシ箱崎チカは…教祖として、精一杯…頑張らせて頂きますわ…っ!」

「えぇ、期待していますわ。イヴォワールもチカのサポート、頼みましたわよ?」

「勿論です、リーンボックスはお任せ下さい」

 

感極まったのか、上擦った声を上げながらベールに抱き付くチカさん。そんなチカさんをベールは受け止め、頭を撫でながら二人にリーンボックスを任せると言った。

 

「…凄いね、ベールもリーンボックスも…」

「うん、わたしも女神として仕事するならあんな人達に手伝ってもらいたいな」

「…さて、お待たせしましたわね皆さん。行きましょうか」

「え…もう良いんですかベール様…」

「大丈夫ですわ、二人共信用に足る人物ですもの」

 

そう言って再び歩き出すベール。彼女は駄目人間みたいな部分もあって、おっとりしている様な雰囲気もあったけど…その後ろ姿は、その在り方は…紛れもなく、女神だった。




今回のパロディ解説

・良い質問ですわ
学べるニュースでお馴染みのジャーナリスト、池上彰さんの代名詞『良い質問ですね』の事。…実際にあの場に池上彰さんがいたら良い質問ですね、と言うのでしょうか…?

・キーブレード
KHシリーズの重要な要素の一つであり武器。作中で判断出来る様な描写は無いので断言は出来ませんが…キーブレードはまあまず粉々の欠片に出来る物ではないでしょう。

・ぱふぱふ
ドラクエことドラゴンクエストシリーズのネタ(?)の一つ。ベールなら普通に出来そうな感じではありますが…女の子に対してやるのはどうなんでしょうね…。

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