超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第二十四話 束の間の休憩、再度の騒動

「あ、プリンはっけーん!」

「子供じゃないんだから関係無い物買おうとしないの」

 

プラネテューヌに戻って二日後。お日様が丁度一番高い位置に登った位の時間に、私とネプテューヌはスーパーに来ていた。因みに私は左手に買い物メモ、右手に買い物カゴというお使いスタイルである。

 

「えー、でもこんぱなら許してくれると思うよ?」

「ネプテューヌ、親しき中にも礼儀ありって知ってる?」

「下敷き長いな例によって?」

「そのボケは無理があるから…」

 

それなりに買う物の数があったからネプテューヌに着いてきて貰ったんだけど…これじゃむしろ余計大変そうかも……。

 

「むむ…何だかんだわたしに甘いイリゼならプリンも見逃してくれると思ったのに…」

「いやそりゃお使いのお金で関係無い物買おうとするのは見逃せないから…」

「ちぇっ…まあ良いや、買わずともこんぱが美味しいプリン作ってくれるし」

「ほんとコンパって優しいよね…さてと、頼まれた物はカゴに入れたしレジ行こっか」

「え、ロック?アイス?スチル?それともギガス?」

「誰も古代のポケモン捕まえに行くとは言ってないから…」

 

ネプテューヌのボケを適宜捌きつつレジへ向かう私。私もネプテューヌも記憶喪失と言う稀有なコンビだったけど勿論レジをスルーして帰ったりはしない。記憶は失っても常識は覚えてる自分の頭にちょっとだけ感心する。

 

「はいネプテューヌ、半分持って」

「はいはーい、よいしょっと」

 

レジを通って(当然お金も払って)買った物を袋に入れた後スーパーを出る私達。…しかし、そこである問題に対面する。

 

「…あれ、ここ右だっけ?」

「え?もう一つ先を右じゃなかった?」

「…………」

「…………」

『……これは困ったね…』

 

買い物に関する知識はあっても記憶に無い土地の道筋はある訳がない。そして、このプラネテューヌという国はなまじ発展してるだけあって大変道が分かり辛かった…。

 

「と、取り敢えず一ヶ所回ってみる?」

「それで迷っちゃったら一番不味いじゃん。こういう時はこんぱかあいちゃんに連絡を…」

「連絡手段無いから…うぅん、高層ビルが多くて目印になるものもないし…」

「もー!こんな国にしたのは誰なのさ!」

 

よほど余裕が無くなっていたのか、或いは自分が女神だとまだイマイチ実感してないからなのか、とにかくネプテューヌは思い切りブーメラン発言をしていた。

 

「まさか数少ない記憶で困らされる事になるなんて…」

「…あ、なら思い出せそうな事すれば良いんじゃない?」

「…と、言うと?」

「うーん…『思い…出した!』って言うとか記憶のロジックカードを探すとか?」

「……アーウン、ソーダネー…」

「わわっ、ごめん!ボケたのは謝るからもうこの子に相談するのは止めようみたいな顔しないで!イリゼにその反応されるのは流石にちょっとダメージでかいから!」

 

ネプテューヌの明るさに私は何度も助けられてるし、この性格こそがネプテューヌの長所でもあると思う。…でも、長所は同時に短所でもあるよね…。…って、え?

 

「…何その言い方。私だと特にダメージでかいの?」

「あー…えっとね、イリゼってわたしと同じ様に記憶喪失でしょ?それに同じ力も持ってるし、こんぱやあいちゃんとはまた別の形で優しいじゃん?だからわたし的にイリゼはわたしの理解者かなー…とか思ってたんだけど…違った?」

「……もう、この子は全く…大丈夫、その認識で間違ってないよ」

 

そんな言い方をされてしまったら怒る気も起きないし、しょうがないなぁ…って気持ちになる。いつでもどこでも打算なんてない、素直でまっすぐなネプテューヌだからこそ深みの出る言葉。記憶が無くてもネプテューヌは女神なんだなぁ…と、思った瞬間だった。

…因みに、この後五分足らずで道を思い出して何事も無く帰った私達だったりする。

 

 

 

 

「皆、いるかしら?」

 

皆でレースゲームをしていた時、唯一出かけていたアイエフが帰ってきた。帰ってきて早々に言ったその台詞と様子から、何かしらあったのだろうという事は推測出来る。

 

「あいちゃんどったの?」

「コンベルサシオンがルウィーに、しかも教会に入っていったらしいって言う情報を掴んだわ」

「少し出かけただけでそこまで情報を集めるとは…流石あいちゃんですわ」

「ありがとうございますベール様。でもこれはルウィーにいる私の仲間からの情報なだけですよ」

 

何でもアイエフは旅をする中で様々な人と関係を持ち、四ヶ国の全てから情報を仕入れる事が出来るらしい。リーンボックスの喫茶店の事といい今回の事といい、情報に関してアイエフはパーティーの要となっている。

 

「そうなると早速行った方が良いよね…皆、準備は?」

「リーンボックスから戻った後必要な物は予め用意しておいたから大丈夫です」

「わたくしもですわ。旅の準備は勿論、正体を隠す準備も…ほら、この通り」

 

そう言ってベールが身に付けたのは…赤い眼鏡。まるでキーアイテムかの様に眼鏡を取り出したベールに対し、私達は一瞬ぽかーんとなる。

 

「えっと、ベール様…それは…?」

「変装用の眼鏡ですわ。ルウィーで何があるかは分かりませんし、念には念を入れておくべきでしょう?」

「いやいや、眼鏡だけで正体を隠すのは難しいんじゃないかなぁ…」

「そんな事ありませんわ。ほら、よく見て下さいまし。眼鏡をかける事で普段とは印象が全然違う筈ですわ」

 

眼鏡をかけた状態で表情を変えたりウインクしたり眼鏡をくいっと上げたりするベール。正直、似合っているかどうかの二択なら迷わず似合っていると答えるところだけど…。

 

「…言われてみれば、普段のおっとりとした印象からちょっとインテリっぽく…違うベール様になった気が…」

「そう?わたしには同じに見えるんだけど」

「雰囲気はともかくベールはベールなんじゃ…」

「流石あいちゃん、違いがわかってますわね。ネプテューヌやイリゼとはわたくしへの愛が違いますわ」

『いやそこを比べられても…』

 

愛が違うとベールの姿も違って見えるらしかった。相変わらずあそこの二人の間は私達には辿り着けない気がする…。

 

「さて、眼鏡もいいですけどそろそろルウィーへと行きましょうか」

「そうですね、皆カイロとか持った?」

「うん、雪国なら必要不可欠だよね」

「ねーねーあいちゃん、ホットドリンクでも良い?」

「…実際に夜の砂漠や雪山等でも効果あるやつなら良いんじゃない…?」

 

半ば呆れつつも了承をするアイエフ。その後もボケたり妙な雰囲気になったりしながらも、やっと私達はコンパのアパートを出てルウィーへと向かうのだった。

 

 

 

 

見渡す限りの一面に広がる銀世界とそれを彩る独特の建造物。風景と雰囲気を一度に表すとすれば正しく『夢見る白』。

そんな大陸、ルウィーに足を踏み入れた私達、特によく知らなかった三人は…

 

「あ、あいぢゃん”…ざ、ざぶいですぅ…」

「わーい!雪だー!凄いよ皆、息が白くなるよ!」

「これが雪、なんだ…」

 

三者三様の反応をしていた。既に何度かルウィーに来た事があるらしいアイエフとベールはそんな私達を苦笑しながら見ていたけど…その時の私は雪をずっと見てたからそれに気づかなかった。

 

「はいはい。ほらコンパ、カイロよ」

「はふぅ…暖かいです…」

「ねぷ子は…必要無さそうね、イリゼは?」

「……へ?な、何か言った?」

「…もしかして貴女も遊びたいの?」

「え、それは…えと…うん…。…記憶を失う前はどうか分からないけど、今の私にとって雪は初めてのものだから…」

「あ、そっか…少し位なら待っててあげるわよ?」

「……!ありがとアイエフ!」

 

雪だるまを作り始めているネプテューヌの元に走って行って雪だるま作りに参加する私。それを残りの三人に温かい目で見られていた気がするけど…今の私には気にならない。

 

「ネプテューヌ、頭出来たよ!」

「よーしじゃあ胴体とくっ付けよー!」

「ふふっ、微笑ましい光景ですわね」

「あ、あのベール様…恥ずかしいんですけど…」

 

ここはルウィー郊外。そこには雪にはしゃぐ私とネプテューヌ、カイロの温かさにほっこりするコンパ、アイエフをカイロ代わりに抱き締めるベール、恥ずかしいと言いつつも離れようとはしないアイエフという何だか物凄いパーティーの姿があった。そして、それは日が暮れそうになって私達が慌て始めるまで続いたのだった。

 

 

 

 

「こんにちはー。ホワイトハート様居ますかー?」

 

ルウィー郊外から移動をして数刻後。遂に日が半分程地平線に沈んでしまった辺りで私達はルウィーの教会へと足を踏み入れた。

 

「…いきなりルウィーの教会に来て良かったのかしら」

「どうして?どこかに寄りたかったの?」

「コンベルサシオンがルウィー教会の者なら、ある意味ここは敵の本陣ですわ。そんな所にのこのこ入っても捕まったりしないのかしら…」

「…そう言われると今までのノリで教会に来たけど今は凄い逃げ出したい気分です…」

 

アイエフと同じく、私も途端に逃げ出したい気分となった。短期間に二度もリーンボックス教会での様な出来事には会いたくない。

そう思って私が一度出るかどうかを皆に聞こうとした時、以外と肝が座ってるのかコンパが口を開いた。

 

「けど、もう入ってしまったからにはしょうがないです。取り敢えずホワイトハート様に会って鍵の欠片とコンドルさんの事を聞くです」

「虎穴に入らずんば虎子を得ず、か…。後コンパ、コンドルじゃなくてコンベルだからね」

「せめてラステイションみたいに冷淡な対応とかなだけなら良いけど----」

「ルウィー教会へようこそ。ホワイトハート様との面会をご希望ですか?」

 

私達が話をしていた所に声がかけられる。声の主は飴色の髪と茶色の瞳を持つ、メイド服っぽい服装の少女。…この人が教会の職員さん…?

 

「あ、はいです。ホワイトハート様に聞きたい事がたくさんあるです」

「そうなのですか。わたしはホワイトハート様の侍従をさせて頂いているフィナンシェと申します。外は寒かったですよね、お待ちの間に温かい物を用意しますよ」

「温かい物…湯たんぽとかですか?」

「…お茶のつもりでしたが…湯たんぽも持ってきますか…?」

「い、いやいいです、勘違いしてすいません…」

 

そしてお茶を貰ってから十数分後、私達はフィナンシェさんに誘導されて広い部屋へと入った。

 

「初めまして、ホワイトハート様。わたしネプテューヌ!で、こっちのが…」

「自己紹介はいいわ。貴女達の事ならよく知っているもの」

「あれ?もしかしてわたし達って有名人?」

「えぇ、そうよ……ユニミテスの使いとして、だけどね」

『……!?』

 

ホワイトハート様の声を合図に扉から部屋に突入してくる教会職員さんと武装した兵士。完全に悪い予想が的中、悪夢再びだった。

 

「こいつらがユニミテスの使い…?女子供じゃないか」

「見た目に騙されるな、ブラン様だってあの見た目であのギャップだからな…きっとこいつらも似た様なもんだろ」

「なら、容赦はいらないな…」

「…あの人達微妙にホワイトハート様貶してない…?」

 

あっという間に部屋に入り私達を包囲しようとする職員さんと兵士。…と、そこで一人の人物が一歩前に出る。ホワイトハート様と同じ女神、ベールだ。

 

「ブラン…貴女、正気ですの?」

「正気よ、この機会に貴女も始末してあげるわ」

「あらあら、せっかくの変装が見破られてしまいましたわね」

 

状況が状況だけにベールの変装について突っ込む余裕も無く、背を預け合う形を取る私達。投降するか、戦闘するか…選択に迫られる私達。

 

「流石にここで戦うのは得策じゃないわね…」

「でも後ろのドアにも人がいっぱいだよ!?」

「でしたら強行突破しかありませんわね。あいちゃん、わたくしに遠慮無さらず先陣を!」

「分かりました。皆、着いてきて!」

 

そう言って走り出すアイエフ。彼女が選んだのは投降でも戦闘でも無く、第三の選択肢…逃走。しかし、その逃走の為に走った先は…ステンドガラス。

 

「あいちゃん、そっちはステンドガラスですよ!?」

「あ、あいちゃん…まさか、まさかなの!?」

「そのまさかよ!」

『な……っ!?』

 

驚く私達をよそに腕を交差させて跳ぶアイエフ。そしてアイエフはそのまま…アクション映画の主人公さながらにガラスを突き破った。

 

「もうこうなりゃやけくそだー!」

「戦術的撤退やって奴だね…私も覚悟は決めたよ!」

「ま、待って下さいですー!」

「一度でいいからガラスを割って脱走してみたかったんですよね。それっ!」

 

わざわざ全員で別々のガラスを突き破って教会から脱出する私達。ルウィー教会と女神ホワイトハートとのファーストコンタクトは、最悪の形で幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

ブランの命を受け、逃げたイリゼ達を追う職員と兵士(一名彼女等と同様にガラスを突き破り、こっぴどく怒られていた者もいた)。職員と兵士が出て行った後に同じく部屋を後にするブラン。そして……

 

「…さて、わたしも追いかけましょうかね。彼等よりも先に追いつければ良いのですが…」

 

最後に残った一人の少女も小さく呟いた後、他の者とは違う意思と目的を胸に秘めて外へ向かうのだった。




今回のパロディ解説

・ロック、アイス、スチル、ギガス
ポケットモンスターシリーズのルビー、サファイアとダイアモンド、パールで初登場した通称『レジ系』のポケモン。勿論次の台詞のポケモンもこれの事です。

・『思い…出した!』
ライトノベル及びそれを原作としたアニメ、聖剣使いの禁呪詠唱における代名詞的な台詞。元は前世の記憶を思い出した時の台詞であり、記憶喪失は関係しません。

・記憶のロジックカード
アニメ、ラクエンロジックにおいて主人公、剣美親が一期最終決戦で失った物(記憶)。もしネプテューヌやイリゼがオーバートランスしていたのなら可能性はありますね。

・ホットドリンク
モンスターハンターシリーズにおける防寒アイテム。勿論これは現実にあるホットドリンクではありません、現実のやつは飲んでも雪国では防寒具を着るべきですね。

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