超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第二十五話 その雪原を抜けて

雪原を走る五つの影。彼女等が娯楽で来ている訳でも運動の為に走っている訳でもない事は彼女等の慌て様と彼女等の服に付着する細かなステンドグラスの欠片を見れば一目瞭然だった。

 

「はぁ…はぁ…雪国なのに暑いよもー!」

「文句言う…余裕あるって凄いねネプテューヌ…」

「無駄口叩いてないで…出来る限り、距離を稼ぎますわよ…!」

 

当然ながら地面やアスファルトと違って雪原はスピードが出辛い上に体力の損耗も早くなる。更にそれが雪国に慣れない彼女達であれば尚更であり、それ故に暫く走ったにも関わらず安全と呼べる場所へはまだ辿り着いていなかった。

 

「うぅ…そろそろ…限界、ですぅ…」

「コンパ大丈夫?…このまま走ってたら全員体力尽きて動かなくなりそうね…皆、一旦休憩しない?」

 

コンパと今後の事を考慮して休憩を提案してくるアイエフ。それに対し私達は心臓と肺が休む事を真摯に求めていた事もあって即座に賛成し、少しずつスピードを落としていった。

 

「それでアイエフ、逃げるのは良いとしてその後はどうするつもり?」

「そうね…ベール様、この状態でルウィーを満足に動けると思いますか?」

「それは厳しいと思いますわ。この場で仮に逃げ切れたとしても監視を潜り抜け続けるのは至難の技ですもの」

「じゃあ…一度ルウィーから離れるのは?」

「うーん…接岸場に監視をつけていないとは思えないし、その間にマジェコンヌに先を越される可能性があるからあまり得策とは言えないわね」

 

比較的雪の少ない場所に移動し今後の手を話し合う私達。今までも狙われたり襲われたりはしたけど…流石に今回はそうなるまでに早過ぎるよ…。

 

「うーん…リーンボックスの時はベールが協力してくれたから何とかなったけどここの女神様は協力してくれそうにないよね…」

「ならば別の協力者を探すのが良さそうですわね」

「協力者、です?」

「えぇ、女神様は協力してくれなかったとしてもラステイションでのシアンみたいに協力してくれる人がいる可能性はあるわ」

 

無論、都合よく協力者が見つかるとは限らない。更に言えば協力者を探そうとした結果逆に追っ手に探し出される可能性もあり最高の策ではない。…でも、今の私達にとっては少なくとも最善の策である事は確かだった。

 

「そうと決まれば善は急げだね。取り敢えずは街に行って…」

「…残念ですが、そう簡単にはいかないみたいですわ」

『え?』

 

急に表情を引き締めたベールに私達は一瞬戸惑うも…どこからか聞こえてきた声を聞いてその表情の理由を理解する。…予想以上に追っ手の足は速かった。

 

「あぅ、もう見つかっちゃったですぅ…」

「さぁ、神妙にお縄につけ!」

「えぇー…寒いし縄って食い込んで痛そうだからわたし的には遠慮したいかなー。あ、手錠もここだと冷たそうだからそれもNGね」

「手枷は勘弁して下さい、もう手枷経験はしたくないんです…」

「な、何をこいつらは…」

 

ネプテューヌの相変わらずな能天気発言と私の割とマジな拒否反応を目の当たりにしたルウィーの教会職員さんは…若干引いていた。それもあって一瞬妙な雰囲気になっていたが…流石にそのままという訳にはいかず、職員さんが近付いて来る。

 

「何、やるっての?」

「貴様等の相手をするのは我々では無い!行けドラゴン!君に決めた!」

「エネミーディスク!?」

「…って事はエネミーディスクの出処はルウィーだった訳ね…」

「だったらこっちも本気を出すです!ねぷねぷ!」

「ラジャー!」

 

コンパの変身要請を受けたネプテューヌが女神化。リーンボックスと違いルウィーの職員にはネプテューヌの事が伝わってなかったのか女神化後のネプテューヌを見て職員さん達は動揺をする。

…が、ここで私達側にもちょっとした問題が走る。

 

「うずうず……」

「……ベール様…?」

「…じー……」

「…あ、あの…その期待のこもった眼差しは一体…」

「それは勿論あいちゃんが女神化命令をくれるのを待っているのですわ。さぁ、わたくしに指示を…」

「え、いや…今はふざけてる場合じゃ…」

「さぁ、あいちゃん」

「うっ…あー!もうヤケよ!ベール様お願いします!」

「その言葉を待っていましたわ!」

 

最早軽く見慣れたレベルのやりとりの末、アイエフの命に応じる形で女神化するベール。…え、これまさかベールが女神化する度やるとかじゃないよね?毎回これとか流石に尺の無駄っぽくなっちゃうよ?

 

「へ、変身するものが二人もいるなんて聞いていないぞ!?」

「それが二人じゃないんですよね。じゃあ私も……」

「……?イリゼ、どうかしたの?」

「…私に女神化の命くれる人居ない…」

『あ……』

 

ここにきて私のカップリングが成立していない事の弊害が発生した。…いや、別に何も言われずとも女神化出来るしそっちの方が楽だよ?…楽だけどさ……。

 

「あー…その、必要ならわたしが言ってあげても…」

「いいよ別に…えいっ」

「ま、また一人変身を…!」

「というか何なんだこいつらの緊張感の無さは…」

 

物凄くごもっともな事を職員さんに言われる私達。これで私達と職員さんが友好的な間柄なら恐らく謝っていたけれど…モンスターで襲いかかろうとする相手に真摯に謝ろうとは思わない。

 

「私達は貴方達が思っている程弱くはありません…それでも、一戦交えますか?」

「ふっ…相手がどんな強さだろうと関係無い!俺は鍛え抜かれたモンスター達と共に生きてきた、そしてこれからもな!そんな俺達のスーパーパワーを受けてみるがいい!ウーッ!ハーッ!」

「…テンション高過ぎない?」

「ねぷ子、気持ちは分かるけど今は倒すのが先よ」

 

アイエフがそう言うと同時に炎のブレスを吐き出すドラゴン。しかし距離が開いていたが故に私達の元へ辿り着くまでは若干のタイムラグがあり、咄嗟に左右に跳んだ私達を捉える事は出来なかった。

 

「雪に足を取られて動き辛いですわね…!」

「なら飛翔あるのみ!」

 

翼を広げ足の取られる雪原から空中へ飛ぶ三人。それを見たドラゴンは大木の様な腕を振るって私達を叩き落しにかかるも…機動力において巨体のドラゴンと私達では雲泥の差があった。逆に私達が空を切るドラゴンの腕にそれぞれ一撃を与える。

 

「くっ…落ち着けドラゴン!俺達の力を見せるのはこれからだ!」

「悪いですけど力を見せる前に…」

「倒させて貰うわ!」

 

次の攻撃が来る前にドラゴンの背後に回り、流れのままに追撃すると同時に離脱。下から振るわれた尻尾も腕同様に虚しく空を切る。

その後もサイズ差と機動力を活かして翻弄する私達。が、ドラゴンも巨体なだけあって中々倒れる素振りを見せなかった。そこで一旦距離をとる私達。

 

「どうする?ちまちま攻撃してたらまだ結構かかるよ?」

「かといって重い一撃を喰らわせるのも容易にはいきそうにないわね…」

「…ならば、逆に攻撃を誘うのが良さそうですわね」

 

下降し低空飛行でドラゴンへ突っ込むベール。それに対しドラゴンはどっしりと構えて振り抜く様に腕を振るう。

降る雪を蹴散らしながらベールへと迫るドラゴンの腕。それをベールは槍を構え、正面から攻撃を受ける。一瞬止まるドラゴンの腕。しかし、元のパワーと運動エネルギーの乗ったその腕は女神と言えど容易に止める事が出来る筈もなく、バレーボールの様に飛ばされるベール。

…しかし、それがベールの狙いだった。

 

「今…ですわッ!」

「……!不味い、避けろドラゴン!」

「その巨体で俊敏に避けられる訳ないでしょ!」

 

ドラゴンの注意が完全にベールに向かい、ベールへと力の多くを向けたその瞬間にネプテューヌは動いていた。バレルロールを行いながら一気に距離を詰めるネプテューヌにドラゴンは対応しきれず、やっとの思いで前へ掲げた腕はネプテューヌの鋭い斬り上げにより斬り飛ばされ、返す刃を胴体に受けて大きくよろめく。

そして、ドラゴンの真上へと現れる一つの影。

 

「貰ったぁぁぁぁぁぁッ!」

「グゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

「…これぞ秘剣ドラゴン斬り…なんてね」

 

大上段に構えた長剣を自身のスピードに乗せて全力で振り抜く私。脳天から胴体までを一刀両断されたドラゴンは断末魔をあげモンスター特有の光を残しながら消滅する。

 

「何だと…!?お、おい!早く次のモンスターを--------」

「そうはいかないわ、コンパっ!」

「はいです!えいっ!」

 

ドラゴンがやられ、職員さんの一人が慌てた様にエネミーディスクを持つ熱血職員さんに指示を出す。だが完全に油断していた彼等は忍び寄っていたアイエフに気付かず、彼女の放った蹴りがディスクを弾き飛ばす。そしてそのディスクを受け取りすぐさま破壊するコンパ。…これで、職員さん達は戦闘不能同然となった。

 

「こんぱ、あいちゃん、ディスクの破壊助かるわ」

「最善の行動をしただけよ、それより増援が来る前に早く逃げましょ!」

 

体力温存の為女神化を解除し再び逃走する私達。後には取り逃した事を悔しがる多くの職員さんと、意気消沈している熱血職員さんが残っていた。

 

「燃え尽きたぜ…真っ白にな……」

「何をやりきったみたいな顔しているんだお前は…」

 

 

 

 

「…へくちっ」

「イリゼ、大丈夫?」

「う、うん…でもさっきの戦闘でかいた汗が引いて寒くなってきたかも…」

 

追っ手を返り討ちにしてから数十分後、私達は雪の積もる森の中を彷徨っていた。くしゃみをしたのは私一人だったけど…同じ様に動いたネプテューヌやベールも状態としては同じだよね…。

 

「しかし困りましたわね、こんな所に森があるとは…」

「逃げるのを優先し過ぎて適当に逃げたのは不味かったですね…日ももう落ちちゃったし…」

「早く休める場所見つけないと風邪引いちゃうです…」

 

追っ手を振り切れた事で一時は安心していたのが一転、若干の焦りを感じ始める。私達はテントもなければ寝袋も無いのでこんな所で野宿などする訳にはいかない。欲を言ってしまえば女の子だしお風呂に入ってさっぱりしたくもある。

 

「あのさ、飛んで街まで行くのはどうかな?こんぱとあいちゃんの二人なら運べるしさ」

「女神化した瞬間の光で見つかる可能性高いから駄目よ、それに女神化すると疲れるんでしょ?」

「万が一の事を考えると女神化は温存しておいた方が良いですわね…」

「なら、どうしたら……」

 

 

「困ってるみたいだね」

『ーー!?』

 

不意に近くの木の陰からかけられる声。咄嗟に抜剣しながらその木の陰に目を凝らした私達の先には犬の様な耳と尻尾を持った黄髪緑眼の少女がいた。

 

「…貴女は?」

「わたしはサイバーコネクトツー。ある人から君達の道案内を頼まれてきたんだ。だから構えた武器を収めて欲しいな」

「…貴女が追っ手の一人じゃない証拠は?」

「証拠、か…こればっかりは君達に信じてもらうしかないね」

「あいちゃん、ここはサイバーコネクトツーさんを信じるです。悪い人が堂々とわたし達の前に出てくる訳ないですよ」

「私もコンパに同感かな。さっきの戦闘でこんな危険な手を打ってくるとは思えないし…それにこのままじゃジリ貧なのは明白だし」

「うんうん、第一こんなもふもふな尻尾と耳生やしてる人が悪い人な訳ないよ!」

 

私とコンパが真面目に、ネプテューヌがかなり個性的にアイエフを説得しにかかる。勿論追っ手じゃない証拠は無かったけど逆に追っ手である証拠も無かったからかアイエフは私達の言葉に納得した様な顔をしていた。

 

「あははははっ!やっぱりネプテューヌさんは面白いなぁ…でも残念ながらこれは本物じゃないんだ。ごめんね」

「そうなの!?この手触りは本物だと思ったのに…」

「…あれ?ネプテューヌの名前をどうして…あ、もしや貴女は別の世界から…?」

「その言い方だと他の仲間にも会ってるみたいだね、話が早くて助かるよ」

 

私の予想通り、サイバーコネクトツーは別世界の住人らしい。そして私達はそういえば別世界の人とは何かを探してる時によく会うなぁ…なんて思いながら別世界とその住人について知らない様子のベールに説明する。

 

「…なら、貴女は敵じゃない訳ね。疑ってごめんなさい」

「気にしないで、それよりも今は早くこの場を離れないと」

 

そう言って歩き始めるサイバーコネクトツー。そしてそれに続く私達。そして私達が彼女の言うある人の所へ辿り着いたのはそれから数十分後だった…。

 

「ねーねーイリゼ、前から気になってる事があるんだけどさ、この際だし訊いて良い?」

「一体どの際なのかよく分かんないけど…何?」

「ちょくちょくイリゼのモノローグで数十分後とか数時間後とか出るけどアレほんとに時間計ってるの?」

「まさかの私のモノローグについての指摘!?…そういうとこ訊くのは止めようよ…」

 

…結構体力持っていかれてる状況であってもネプテューヌのネタ発言は全く鈍っていなかった。…普通の体力とは別でボケ用の体力をストックしてるのかな……。




今回のパロディ解説

・「〜〜ドラゴン、君に決めた!」「〜〜ウーッ!ハーッ!」
どちらもポケットモンスターシリーズのキャラの台詞の一つ。前者はアニメ版主人公サトシのもので後者はカントーの四天王の一人、シバの例の掛け声です。

・ドラゴン斬り
ドラゴンクエストシリーズでお馴染みの特技の一つ。勿論イリゼが行ったのは単なる大上段からの一撃であり、実際にドラゴン系に効果的だったりはしません。

・「燃え尽きたぜ、真っ白にな……」
有名ボクシング漫画、あしたのジョーの主人公矢吹丈の名台詞の一つ。上記のポケモンパロディといいこれといい随分とネタに走った職員がいたものですね。
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