超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
世の中で力を持つものは何か。その曖昧な問いに適する回答は複数あるけれど…その中の一つは『情報』だと私は思う。どんなに権力や武力、財力があったとしてもそれを上手く運用する為には正確な情報は必要になるし、逆に言えば情報操作一つで他の力を封殺、或いは利用する事も出来てしまうから。
…私は、そんな事をここまでの旅の中で知った。そして、その情報の恐ろしさに直面している真っ最中であった。
「おおよそ現状と今に至るまでの経緯は分かりましたわ。ルウィーも中々不味い事態になっていたのですわね」
「そういう貴女達も大分ぶっ飛んだパーティーになっていると思うわ」
ブランとフィナンシェさん達からはルウィーで起こっている事を、私達はルウィーに来るまでの事とコンベルサシオンの正体について説明した。互いに俄かには信じがたい話だったけど…信じがたい経験も互いにしていたおかげかどちらもすんなりと飲み込む事が出来ていた。
「ぶっ飛んだ?やー照れるなぁ」
「褒めてないわ…しかし、貴女が記憶喪失とはね…」
「あの時ネプテューヌは天界から落ちてましたしあり得ない話では無いですわ」
「記憶喪失で済んでるのもそれはそれでおかしいんですけどね」
当然ながらベールとネプテューヌが正体を明かした時には少なからず衝撃が走った。…けど、おっとりした雰囲気のベールと天真爛漫なネプテューヌからは全く戦闘意思を感じられなかったからかブランは二人の言葉をそのまま信じ、女神同士の戦闘は避けられた。
「どうです、ブラン様?これ以上にない助っ人ですよね?」
「…確かに貴女の言う通りこれ以上ない助っ人ね」
「でしょ?いやーこれでもラステイションとリーンボックスでは色々活躍して----」
「けど、これはルウィーの問題よ。他国の女神に協力してもらうつもりはないわ」
帰って来たのは突き放す様な返答。様子と言葉から察するに私達を過小評価してる訳でも信用していない訳でもなく…言葉通り、自分とルウィー国民だけで解決したいみたいだった。
「…その、気を悪くさせるかもしれない質問だけど…私達の協力無しで解決出来るの?」
「出来る出来ない以前にルウィーの問題を他国の協力で解決するんじゃそれこそ…ルウィーの女神としての名折れよ」
「国の事より女神としての名が大切と言うんですの?」
「国の事を考えているからこそ女神の名を大切にしているつもりよ」
私の心配とベールの懸案にもブランは意を介さず、彼女の意見は変わらないままだった。
確かにブランの意見は間違っていない。でもそれがこの状況において最善の選択かと言えば……
--------そんな時だった。外…つまり街の方から瓦解音が響いたのは。
慌てて外へ出た私達を迎えたのは本物と寸分の違いも無い偽物のブランと護衛のルウィーの兵、そして…ラステイションで一度相見えた奴と同系統と思われる大型機。瓦解音を放ったのはその大型機と崩れ去った周囲の建物だという事は明白だった。
「とうとう姿を現したわね、偽物が…」
「その言葉、そっくりそのまま貴女に返すわ」
「相変わらず強がりだけは一人前ね」
対峙する本物と偽物。見た目は勿論言動も瓜二つ(言葉の内容は流石に違うけどね)であり、端から見ればまるで鏡に向かって話をしているようだった。
「…わたし達に背を向けてる方が本物のブランだよね?」
「そ、そうじゃない?…一瞬の内に入れ替わってたりしなければだけど…」
「他国の、しかもユニミテスの使いと手を組む時点で貴女が偽物なのは明白の事よ」
「それはこの人達がユニミテスの使いだという前提が正しい場合に成り立つ事柄ね」
「そうね…なら、力尽くで証明してあげるわ。行くのよキラーマシンMK-Ⅱ、見せしめにこの街もろとも皆殺しにしなさい」
キラーマシン。それはガナッシュさんがラステイションで操っていた機体と密接な関わりがある事を示していた。その事について私が口を開こうとした時…ブランの雰囲気が変わった。
「…街もろとも皆殺し、だと……?」
「ねぷ?ブラン…?」
「気を静めて会話してやりゃ調子に乗りやがって…わたしだけじゃ飽き足らず街も皆も皆殺しにするだと?ふざけんじゃねぇこのクズがッ!」
『ええぇぇぇぇぇぇっ!?』
突然のブランの変化…どころか豹変に対し目を見張る私達。いきなりキレる事はノワールも一度あったけど…いくら何でもこれは予想外過ぎた。最早別人レベルだもん…。
「な、何!?もしやブラン女神化したの!?」
「で、でも見た目は変わってないですぅ…」
「も、もしかするとブランは普段は大人しいけど一度キレると爆発する人だったり…?」
「はい、それはもう鬼神の如く…」
「おい外野!ごちゃごちゃ五月蝿いんだよ!」
「…と、いった感じです…」
百聞は一見に如かずをこれでもかと言う位示していた瞬間だった。ほんとはブランにもフィナンシェさんにも色々と追求したい所だけど…そんな事してたらキラーマシンMK-Ⅱより先に木っ端微塵にされそうなので黙っておく私。
「こうも気性が激しい貴女のどこが本物なのかしらね…キラーマシンMK-Ⅱ、後は任せたわ」
「てめぇ逃げんのか!待ちやがれッ!」
「■■■■ーー!」
「…ふん、てめぇが代わりにやろうってのか。望むところだ!」
女神化する本物のブラン。そして対照的に涼しい顔をしてその場を去る偽物のブラン。そして行く手を阻む様にブランの前へ躍り出るキラーマシンMK-Ⅱ。ブランは勿論キラーマシンMK-Ⅱの方も臨戦態勢に入っている様子だった。
「あわや一触即発…って感じだね、どうする?」
「そんなの決まってるです、ねぷねぷ!」
「ベール様、お願いします!」
「あいあいさー!」
「任せて下さいな」
コンパとアイエフの命を受けて女神化するネプテューヌとベール。それはつまり私達がブランの…レジスタンス側の加勢に入るという事だった。そして……
「…また私には誰も言ってくれない……いいもん、言われなくって自発的にするもん…」
「おぉ!今までは反応に困る微妙な胸囲の女性だと思っていたが…まさか貴女も豊かな御方であったとは…」
「イリゼさん、だったね?その名前キチンと胸に刻み込もうか兄者」
「…ほんと手の平返し得意ですね貴方達……」
女神化前も後もモチベーションが下がる様な展開に直面して一人げんなりする私。…今日厄日だったのかな……。
「…何てめぇ等まで女神化してんだ、ルウィーの問題だって言っただろうが」
「えぇそうね、でも街の人達の安全もかかってるのよ?」
「自国他国に関わらず女神として危険に晒されている人々を見捨てるつもりはありませんわ」
「もっと言っちゃうと私達自身の危険でもあるからね、加勢しない理由は無いよ?」
「……ちっ、好きにしろ」
舌打ちをしながらも今までとは違い協力を断らないブラン。女神の力の基盤である国を奪われている状態で戦うのは不安があったのか、それとも単に私達を協力させない様にするのが困難だと思ったのか…どちらにせよ一歩前進したのは事実だった。
各々の武器を構え、キラーマシンMK-Ⅱに視線を向ける私達。対するキラーマシンは四対一である事を考慮しているのかその場に留まっていた。
「へっ、来ねぇんならこっちから…」
「待ちなさいなブラン」
「…何だよ」
「連携も取らずに四人で突っ込んではむしろ互いに邪魔をしかねませんわ。わたくし達はともかく貴女はわたくしとしか連携をとった事がないでしょう?」
「…確かにな、それにお前との連携も質が低かった覚えがある」
「同感ですわ。という訳で今回は二組に分かれる事を提案しますわ」
「二組、ね…了解っ!」
ベールの提案を了承した私達は二組…つまり、私とネプテューヌ、ベールとブランに分かれて左右からキラーマシンMK-Ⅱに迫る。それに対応する様に両腕の武器を振るうキラーマシン。
「遅いのよッ!」
「スクラップにしてやるぜッ!」
内側寄りの軌道を描いて接近した私とベールがキラーマシンMK-Ⅱの武器を弾き、ガラ空きとなった胴体にネプテューヌとブランが武器を叩きつける。しかしキラーマシンMK-Ⅱの装甲はその攻撃を受け止め弾き返す。それを見た私達は即座に距離を取る。
「流石にモンスターに比べると固ぇか…」
「攻撃を与え続ければ内部フレームを破壊出来るかもしれませんけど…時間がかかりそうですわね」
「あいつ…というかああいうタイプには関節部の破壊が有効よ」
「実際ラステイションではそうだったもんね」
軽く言葉を交わして再度突撃を仕掛ける私達。今度は四人という数の差と機動力を生かしキラーマシンMK-Ⅱの周りを飛び回る。そんな私達を何とか叩き落そうとするキラーマシンMK-Ⅱだったが…それに捕まる私達じゃない。
そして、機械ながら埒があかない事に耐えかねたのか大振りで武器を振るうキラーマシンMK-Ⅱ。当然ガードは甘くなり…私達には絶好のチャンスだった。
『貰った……ッ!』
「■■■■ーー!!」
『な……ッ!?』
鋭いターンで攻撃をすり抜け四人同時に頭部と腕部の接続部へ一撃を放つ私達。
……が、キラーマシンMK-Ⅱに届く直前に展開された淡い色のエネルギーの壁が私達の攻撃を防ぐ。
「これは…ピンポイントバリア…!?」
「いやピンポイントじゃないよね!?てかボケてる場合じゃないよネプテューヌ!」
エネルギーの壁の裏側から胸部装甲を開き、ラステイションのキラーマシンが装備していた物と同じタイプと思われる砲身が姿を現す。
瞬時にそれを見て離脱する私達。次の瞬間エネルギーの壁が消滅し、射線上を文字通り灼く必殺の光芒が放たれる。
「中々どうして侮れませんわね…」
「でもバリアもビームもそう易々とは使えないんじゃない?ほいほい使えるならもっと出してくる筈だし」
「なら今の攻め方はあいつにはされたくねぇ戦法だって事になるな、ビームが街に甚大な被害出す前にぶっ潰すぞ!」
その後もヒットアンドアウェイを繰り返す私達。けど、極力ビームを放たせない様に戦わなければいけない以上どうしても攻め手が甘くなり、決め手となる一撃を繰り出せない。
「じれったいわね…このッ!」
「■■■■!」
「またバリアかよ…!いい加減に…しやがれッ!」
「■■ーー!?」
またもエネルギーの壁を展開して刃を防ぐキラーマシンMK-Ⅱ。それにしびれを切らしたブランはそれを無視して戦斧を叩きつける。
果たしてその攻撃は…私達の予想を裏切り、キラーマシンMK-Ⅱの背部装甲へ直撃。戦斧と装甲のぶつかり合いで散る火花。
「ブラン…今貴女どうやって突破したんですの…?」
「いや、わたしは何もしてねぇ…だが一つ良い事が分かったぜ、あのバリアは後ろまでは覆えねぇタイプらしい」
「頭隠して尻隠さず、とはね…なら私達がバリア発動させるから二人は後ろを!」
アイコンタクトを交わし、一直線にキラーマシンMK-Ⅱへ向かう私とネプテューヌ。何度も攻防を繰り返す中でキラーマシンMK-Ⅱの行動にはある程度のパターンがある事が分かっていた。勿論、その中にはどの様な時にバリアを展開するかも入っている。
「ネプテューヌ!」
「任せてッ!」
下段の構えから長剣を振るい武器をかち上げる私。その瞬間に懐へと飛び込み刺突を繰り出すネプテューヌ。対するキラーマシンMK-Ⅱは想定通りバリアを展開する。そんなキラーマシンMK-Ⅱに忍び寄る緑と白の女神。
「まずはその頭…」
「潰させてもらうぜッ!」
頭部と胴体の接続部を穿つベールの刺突。傾いた頭部をしたたかに打つブランの横薙ぎ。そんな強力無比な連撃を受けたキラーマシンMK-Ⅱは当然耐えられる理由も無く、頭部はボールの様に吹き飛んでいく。
…そこからは一方的だった。
『はぁぁぁぁぁぁッ!』
「■■!?ーー!!」
頭部を失ったキラーマシンMK-Ⅱは格段に動きが悪くなり、私達への攻撃はおろか防御すらままならなくなる。そしてそのキラーマシンMK-Ⅱへと次々と繰り出される私達の攻撃。みるみるうちにキラーマシンはパーツを失い原型の分からない姿へと変貌していく。
「これで…ラストッ!ブラン!」
「くたばりやがれぇぇぇぇぇぇッ!」
半開きとなった胸部装甲を刎ね飛ばす私の一撃。内部が完全に露呈したキラーマシンMK-Ⅱはよろよろと後退を行うが…もう遅い。上段に構えたブランが最短距離でキラーマシンMK-Ⅱへ肉薄し、両断するかの様に戦斧を振り抜く。
内部を抉り取る戦斧。スパークを起こしながら崩れ落ち、完全に停止するキラーマシンMK-Ⅱ。決着は、着いた。
「はっ、ラステイション製だか何だか知らねぇがわたしの敵じゃ無かったな」
「わたし達の、の間違いじゃないかしら?」
「……わたし達の敵じゃ無かったな…」
ネプテューヌに指摘され、若干の間の後言い直すブラン。それを見て苦笑いする私とベール。私達の…街の危険が去った事で私達の間に穏やかな雰囲気が戻り始める。
「お疲れ様です、皆」
「うん、今日も良い仕事したよねー」
「フィナンシェ、貴女は引き続き教会内の動向…特に輸入兵器を探って頂戴」
「輸入兵器…バリアもだけど動きそのものもラステイションの時より良くなってたよね?」
「あ、イリゼも思った?名前的にも絶対強化されてるよね」
ラステイションで同型機と戦った事のある私達だからこそ分かるキラーマシンの変化。それと同時に今ラステイションで奮闘している筈のノワールの事が思い出される。
「……ノワールは大丈夫かな?」
「んー…大丈夫だよ、何たってノワールだからね」
「…妙に自信ありげね、ねぷ子」
「そう?まあ親友だもんね」
アイエフの言う通りネプテューヌは本当に自信ありげだった。そこまで思われてるノワールは幸せ者だよね、本人は否定するかもしれないけど。
「ノワール…貴女達ラステイションの女神とも交友があるのね」
「ブラン様…やはりわたしはこの方々に協力して貰った方が良いと思います。…どうですか?」
「……そうね、一考の余地はあると思うわ」
あの頑なだったブランは今の共闘が功を奏したのかやっと
前向きな意見を口にしてくれる。私達はそんなブランの反応に少しばかりホッとしながら元いた建物へ戻るのだった。
「…というか何話連続で夜パート続くんだろうね。宿屋泊まんなきゃ駄目なパターンだったりするのかな?」
「しーっ!読者の皆様が気付いちゃうからそういう事は口にしちゃ駄目っ!」
「その言葉は隠すどころか露呈に拍車をかけていると思うわ…」
今回のパロディ解説
・ピンポイントバリア
マクロスシリーズに登場する防御システムの一つ。作中でも指摘されてる通り本来は機体の一部を覆うバリアであり、作中のはむしろ全方位バリアの方が近いですね。
・宿屋
ドラゴンクエストシリーズや牧場物語シリーズなど様々な作品で採用されている泊まる(寝る)事で日が変わるシステム。…はい、我ながら大雑把なパロディだと思ってます。