超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
物量と戦闘規模は比例する。それは同じ座標に複数の物質が両立することは不可能だから、という物理的な理由は勿論、数が増える事によって戦術や連携の範囲は広がり、一人一人の負担が減る事で個々人のポテンシャルを引き出し易くなるからだ。
--------故に、物量が一定以上を超えると戦闘は、戦争へと変貌する。
「マジェコンヌ!てめぇうちの国を軍事国家にして何する気だったんだよッ!」
「戦争をする目的以外で軍事国家を作るとでも思うか?」
「やっぱりかよ…戦争したきゃ一人でモンスターとやってやがれ!」
怒りを露わにしながら戦斧を振るうブラン。その気性とは裏腹に鋭く無駄の無い斧捌きをこれまた鋭い槍捌きでいなすマジェコンヌ。単純な能力だけならばマジェコンヌの方が一枚上手の様だったけど…ブランは降り積もった雪を時には目眩しに、時には障害物とする事で互角の勝負に持ち込んでいた。
勿論、私達もそれをただ傍観している訳ではない。
「ちっ、タンクタイプまでアヴニールは量産してたのね…」
「ですがこれは好都合。古来から中途半端に人型を意識したタンクなど取るに足らない存在ですわ」
「とはいえ…こうも数が多いと厄介ね、ほんとはこっち側についてくれた兵の人達の援護に回りたい所だけど…」
「急いては事を仕損ずる、だよネプテューヌ。今は目の前の敵を片付けないと」
マジェコンヌの護衛と予備兵力と思われる機動兵器を相手する私達。キラーマシン系と違ってバリアや範囲の広い近接格闘こそ行って来ないものの装甲強度は劣っておらず、何より数が多い。そして、ラステイションでの長時間戦闘以降休んでいない事も少なからずパフォーマンスに影響を与えていた。
「MAGES.!貴女の魔法で一掃するとか出来ない?」
「こやつらを一掃するとなると…かなり準備に時間がかかる上にルウィーの民への悪影響も馬鹿にならないだろうな」
「なら駄目ね…やっぱり時間かかってもタイマンで倒すしか…」
「……皆、だったら私に任せて」
長剣を下段に構え、兵器群へと突進をかける私。対する敵マシンは私の方へと両腕部を向け、大型機お得意のビームを私に照射……しようとする直前に私は逆袈裟懸けの要領で長剣を振るう。長剣とそれによる風に掬われる形で舞い上がる雪の束。
「イリゼ、何を……?」
「女神三人がかりなら力技で押し切れるでしょ?だから私が他の機体を撹乱するよ!コンパ達はネプテューヌ達の後詰めをお願い!」
「撹乱って…貴女一人でする気!?無茶よ!」
「逃げ回るだけなら大丈夫!」
ノワールの制止に手早く答えつつマシンの間を疾駆する。時に飛び上がり、時に振り切り、時に肉薄。機動力と運動性を活かした高機動戦という今までの対マシン戦で確立した戦法を駆使しで翻弄し続けた。
「一人でかっこいい事して…ノワール!ベール!イリゼが撹乱してくれてるうちにやるわよ!」
「言われなくても…ッ!」
「そのつもり、ですわッ!」
イリゼを追う機体の中で最も近い一機に急接近をかけるわたし達三人。それに気付いたタンクマシンは機体を反転、わたし達へ攻撃を仕掛けようとする…けど、甘い。
『はぁぁぁぁぁぁッ!』
「まずは一撃ッ!」
マシンの迎撃より速く肉薄し、両腕部を弾くノワールの逆袈裟。攻撃を遮られたばかりでなく衝撃で体勢を崩したマシンへとベールが追い打ちの一撃。機体上部と下部を繋ぐ腰椎部を刺突されたマシンがスパークを起こす。
「■■ーー!」
「撃たせる訳…無いでしょッ!」
「こんぱ、あいちゃん、MAGES.!」
機体上部の可動を大きく制限されたタンクマシンは後退し、ビームでわたし達を薙ぎ払おうとするも、逆にその隙を突いたノワールの回転斬りによりカメラアイをしたたかに斬り裂かれ、必殺のビームも明後日の方向へと飛んでいく。
それを見たわたし達は即座に離れ、次の一機を狙う。理由は簡単。まだ撃破した訳じゃなかったけど、あれだけ損傷させればこんぱ達が確実に片付けてくれる筈だから。
戦闘能力を削ぐわたし達三人と、戦闘能力の落ちたマシンを完全に戦闘不能にするこんぱ達三人。イリゼの撹乱によって可能となった連携により、わたし達は着実に敵の数を減らしていった。
「はぁ…はぁ…まだまだ……ッ!」
私が撹乱の為に動き出してからおよそ十数分。ネプテューヌ達の連携攻撃によってマシンはかなりの数を減らしていったけど…それと同調するかの様に私の体力も削られていった。既にルウィーには入った時の寒さは消え、額には汗をかき始めている。
「■■■■!」
「当たらなければどうという事はない…けど、私の体力はどうという事あるよッ!」
少しでも気を抜けば手痛い一撃を喰らいかねない緊張感と疲労による余裕の消滅で私は精神的にかなり磨耗していたのか、自分でもよく分からない事を口走り始める私。対するタンクマシンは当然突っ込みをしてくれなどせず、淡々と私を狙う。
…そして、残りの機体数が三となった時、私の撹乱も突然を終わりを告げる。
「後三機なら…私も攻げ--------……ッ!?」
マシンの数を確認する為後ろを向いた一瞬。常人であれば一瞬で進める距離なんてたかが知れてるけど…今の私は女神化状態で且つ全力飛行中。故に一瞬でかなりの距離を進んでしまい…その一瞬が命取りとなる。
私の目の前に現れたのは鉄の塊。ネプテューヌ達が倒したと思われる…タンクマシンの残骸。咄嗟に長剣をそれに叩きつける事で激突は回避出来るも、力の反作用で私の身体はほぼ停止。そんな私を狙う残存タンクマシン。
「■■■■ーー!」
(不味い…やられる……っ!)
回避はおろか防御すら間に合わないと悟った私は絶体絶命の危機を前に目を瞑る。そして、マシンの無慈悲なビームが私の身体を……
「--------待たせたわね、イリゼ」
聞こえてきたのは私を貫くビームの発射音ではなく、雪へ重い物が落ちる様な音と凜とした声。目を開けた先にいたのは片腕を失ったタンクを追い立てるノワールとベール、そして私を守る様に大太刀を構えるネプテューヌ。
気付けば、タンクの数は二へ…そして一へとなっていた。
激突する戦斧と槍。ブランとマジェコンヌの戦闘は他の戦闘に比べれば規模は小さいものの、激しさは全くもって劣っていなかった。
そんな戦闘の最中に、私達は増援として介入する。
「少々手間取ったけど…貴女の護衛は全部倒させてもらったわ」
「…その様だな、所詮は機械か…」
悔しがる訳でもなく、不遜な態度をとる訳でもなく、ただ事実を確認するかの様にマジェコンヌは言った。その態度が逆に得体の知れない余裕を感じさせる。
「随分と冷静じゃねぇか、観念する気にでもなったか?」
「観念などするものか、まだ私には手があると言うだけさ!」
マジェコンヌが取り出したのはエネミーディスク。そう、彼女はどういう経緯なのかは謎だがエネミーディスクを有しており、それはつまりモンスターを呼び出せるという事だった。
私達が破壊するのを待つ筈もなく、輝きと同時にモンスターが出現し始める。
「あれは…!?な、何で…えーっと、マジザンス?…が持ってんのよ!?」
「モンスターが出てきてるだと…!?」
「誰がマジザンスだ!…そうか、リーンボックスではいなかった面子もちらほらといるのだったな」
私達程情報を有してなかったノワールとブランは少なからず驚きを見せるが、流石は守護女神か構えを崩す事はなく、きっちりとマジェコンヌとモンスターを見据えている。
「説明は後でしてもらうとして…再び二手に分かれた方が良さげだな」
「そうね、ねぷ子達はマジェコンヌをお願い。モンスターの方は私達で片付けるわ」
「モンスター位ならわたしだって倒せるです!」
「えぇ、なら任せるわ。それと…イリゼ、貴女もモンスター退治の方へ回って頂戴」
「うん……って、え?」
マジェコンヌと相対する気だった私はネプテューヌを一瞬理解出来ず、聞き返す。無論不満がある訳ではないけど…理由が分からない。
「貴女はさっきのでわたし達より疲労してるでしょ?だから無理しない方が良いわ」
「そ、そりゃ確かに疲労はしてるけど…大丈夫なの?」
「大丈夫も何もこっちはこっちで女神四人もいるのよ?それに大丈夫か、何で聞いたら二名程怒るんじゃない?」
『それは(私・わたし)の事(かしら・かよ)?』
「…確かにその通りだね…分かった、気遣いありがと」
ネプテューヌと頷き合い、それぞれの目標へと武器を構える私達。
…信頼出来る仲間がいるって、良いよね。
特性の違う武器を持ちながらも卓越した連携でマジェコンヌを圧倒する私達。この戦力差でも持ち堪えているマジェコンヌも大したものではあったけど…わたし達の優勢は揺るがなかった。
「ふん、せっかくの切り札もこれじゃ台無しだったわね!」
「てめぇに勝ち目はねぇ、さっさと観念しやがれッ!」
「ちぃっ!」
ノワールとブランによる同時攻撃を跳躍する事で回避するマジェコンヌ。そしてそこから反撃の電撃を放とうとするけど…そこへわたしが割り込み、更に下からベールが強襲する。
「ぐっ…流石は女神、このままでは勝てぬという事か…」
「あら、もしかしてほんとに観念する気?」
「あぁ、観念しよう…この力を上回る事が出来るものならな!」
『な……ッ!?』
一瞬淡く輝くマジェコンヌ。その光が収まった時には彼女の姿は無く…代わりに、女神化したブラン…ホワイトハートの姿をした女性が姿を現した。
「まさかとは思っていましたが…やはりブランの力も使える様になっていたんですのね…!」
「残念ながらこれは奴だけではなく…お前の力も合わさったものだッ!」
戦斧を構え、一気にベールに肉薄するマジェコンヌ。先程までとは段違いとなった速度にベールは辛うじて反応し防御するも、衝撃までは殺しきれず体勢を崩す。
「ちっ…勝手に人の姿も力もパクりやがって!」
「ノワール!ブラン!今のマジェコンヌはかなり強くなってる筈よ、油断しないで!」
「そんなの見れば分かるわよ!」
奪ったのがベールの力だけだった時もわたしには到底敵わない強さだった。…でも、前と違って負けるかもという予感はしない。それは前一度勝っているのもあるけれど、何より……
「いくら強い力を持っていても、彼女は一人よ!個々人では劣っているかもしれないけど…皆の力を合わせればきっと勝てるわ!」
「…皆の力、ですか…少々気恥ずかしい響きですけど、嫌いじゃありませんわ」
「そうね、そ、それに…私達は友だ--------」
「友達、だからな」
「私が言いかけてたんだから途中で奪うんじゃないわよ!」
「あぁ?ちょっと躊躇ってたノワールが悪いんだよ」
「…言った側から喧嘩しないでよ…やるわよ、皆」
若干のゴタゴタを宥めつつ、改めてマジェコンヌの方を向くわたし達。対するマジェコンヌは不愉快そうな顔を浮かべ、再度の攻撃を仕掛けてくる。
「何が友達だ!群れなければ私には敵わぬ者が生意気なッ!」
「ええ、そうよ。わたし達は一人じゃ敵わない…でも、友達と力を合わせるのも、合わせる事が出来るのも力よ!」
「ごちゃごちゃと屁理屈を…ッ!」
先陣を切って斬り込むわたし。わたしの攻撃はマジェコンヌに弾かれるも、わたしのすぐ後ろに着いてきたノワールが瞬時に攻撃。そこへベールとブランも滑り込んでマジェコンヌの退路を塞ぐ。
「……っ!邪魔…だぁぁぁぁぁぁッ!」
『……ッ!』
「ガードが…ガラ空きなのよッ!」
三方向から来るノワール達にマジェコンヌは力任せの回転攻撃。重量のある戦斧の一撃は三人を同時に弾く事が出来ていたけど…同時に防御不能な状態へと陥っていた。
そこへわたしの横薙ぎが飛ぶ。
「ぐぁぁッ!貴様…よくもッ!」
「わたし一人に意識を向けていて大丈夫なのかしら?」
「何……!?」
三人の中では一番マジェコンヌから距離があったおかげかブランはすぐに体勢を立て直し、後方から上段斬りを仕掛ける。それに直前で気付いたマジェコンヌは戦斧の柄を挟ませる事で防御。二人が競り合う形となる。
「ブラン、援護しますわ!」
「いいや、必要ねぇ!」
「必要無いだと?舐めてくれるじゃないか!」
「舐めてんのは…てめぇの方だろうがッ!」
互いに一度距離を取り、再度激突する二人。一人での力はマジェコンヌの方が上な以上、一対一はやるべきではない戦法の筈。そう思ってわたし達は援護をしようとするが…予想に反して、力で負けている筈のブランがマジェコンヌを圧倒する。
「ば、馬鹿なッ!何故だ、何故私の方がおされているんだ!?」
「何故って?簡単な話だろ…力任せで振ってるてめぇと長年戦斧使ってるわたしじゃ技量が違うってんだよッ!」
「ぐぅぅぅぅッ!」
戦斧の柄を短く持ったコンパクトな一撃。振った直後に遠心力を利用して即座に追撃。この二連撃によりマジェコンヌの構えを完全に崩し、更に遠心力を使って回し蹴りを行うブラン。そこには、力だけしかない者と本来の使い手との明確な差が現れていた。
そして、回し蹴りで吹き飛ばされた先には動きを察知したわたし達の姿。
「ま、まだだ…!まだこの程度では…ッ!」
「いいえ、貴女の終わりですわッ!」
『沈…めぇぇぇぇぇぇッ!』
わたし達の姿を視認し、何とか構えようとするマジェコンヌ。しかしその手の戦斧はベールの放った槍により弾かれる。唖然とするマジェコンヌ、そこへ一気に肉薄し、同時に刺突を叩き込むわたしとノワール。
わたし達二人の攻撃は無防備なマジェコンヌへと突き刺さり、彼女は雪原へと沈む。
それと時を同じくする様に、今まで聞こえていたモンスターの声が聞こえなくなり、完全に勝敗が決した。
「何故だ…何故勝てんのだ!女神二人の力を有した、この私がッ!」
モンスターを殲滅し、マジェコンヌの用意したエネミーディスクを破壊した時、そんな声が聞こえた。声の主はマジェコンヌ、その姿は既に元のものへと戻っていた。
「流石にタフね。あの攻撃を受けてまだ立っているなんて」
「なら奴が泣くまで…もとい、倒れるまで殴るのを止めなきゃいいだけの話だ。奪ったもん、全部返してもらうまでな!」
女神四人に囲まれるマジェコンヌ。思えば、魔窟で初めて戦ってから暫く経つけど、ここまでマジェコンヌを追い詰められたのは今回が初めてだった。
「返してもらう、だと?…いいだろう、この国は返してやる!だが、この力だけは貴様等に奪わせはせん!奪われてなるものかッ!」
「……!そいつまだ何かする気だよッ!皆トドメを--------」
「もう遅い!」
『きゃっ……!?』
強烈な閃光を放つマジェコンヌ。ラステイションでの一件のデジャヴとも思えるその光が収まった時にはマジェコンヌの姿はどこにも無かった。
「……目眩し…?」
「ちっ、マジェコンヌは逃げた様ね…」
「なら、私達の勝ちという事か」
「わたし達、勝てたんです…?」
「その様ですわ。ルウィーの兵の皆さんと戦っていたキラーマシンもあらかたやられたみたいですもの」
あまりにもあっけなく、そして大団円とは言えない終わり方に半ば拍子抜けとする私達。勿論味方にも多数の被害が…みたいな展開よりはよっぽど良いけど、何か釈然としないのも事実だった。
「くそっ、後一歩だったってのに…」
「けど、ルウィーからマジェコンヌを追い出す事は出来たわ。今はそれを喜びましょう」
「そう、だな…」
「…じゃ、もう女神化解除して良いよね?…ふぇぇ疲れた…」
長距離移動と連戦、そして十分以上の高機動で疲労がピークに達した私はいち早く女神化を解除。皆もそれに続く。
「イリゼ、大丈夫?」
「うん、結果的には正解だったけど…我ながら無茶な作戦だったよ…」
「ふふっ、イリゼさんはキャラに似合わず割と脳筋なんですわね」
「脳筋って言うか変に単純なんじゃない?」
「ちょ…ひ、酷くない……?」
疲れてる私にはあんまりにも酷い評価だった。しかもそんな私の反論に対し、皆は日曜夜の国民的番組のワンシーンの様に皆で笑っていた。その笑いは嘲笑などではなく、とても暖かいものではあったけど…うぅ、ほんとにあんまりだよこんなの……。
今回のパロディ解説
・中途半端に人型を意識したタンク
ガンダムシリーズに登場するガンタンクやザウート等のタンク系MSの事。しかし皆様勘違いしないで下さい、これらのMSも使い方次第で十分に活躍出来るのです。
・「当たらなければどうという事はない〜〜」
機動戦士ガンダムの主人公の宿敵、シャア・アズナブルの名台詞の一つ。言うのは簡単ですが、よく考えると回避し続けるという難しい事を言ってると分かりますね。
・「なら奴が泣くまで…もとい、奴が倒れるまで殴るのを止めなきゃいいだけの話だ。〜〜」
ジョジョの奇妙な冒険第一部の主人公、ジョナサン・ジョースターの台詞の一つ。泣くまでにしても倒れるまでにしても中々恐ろしい事を言っていますね、これは。
・日曜夜の国民的番組
これはちびまる子ちゃん、又はサザエさんの事を指したパロディです。細かい部分は色々と違いますが、家族を中心とした日常系という意味では同軸の二作だと思います。