超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
「おー!豪勢な料理と豪奢な部屋…何これ最後の晩餐?」
『初っ端から縁起悪っ!?』
マジェコンヌを追い出し、ルウィーの奪還に成功してからおよそ数時間後、私達は教会の皆さんがご好意でご飯を用意してくれたので遅めの夕食をとる事とした。
「しかしねぷ子が最後の晩餐なんて知ってるなんてね、ちょっと意外だったわ」
「だよね、多分元ネタ…というか作品の方は知らないんじゃない?」
「む…あいちゃんもイリゼも酷いなぁ、こんぱ何か言ってやってよ」
「二人共、ねぷねぷは頭が悪いんじゃなくておかしいだけだからそういう勝手な評価は駄目ですよ?」
「そうそうわたしは頭がおかしいだけ…ってそれが一番酷いよこんぱ!?」
私達パーティーのお約束芸の一つ、コンパのフォロー風追撃(本人は自覚無し)が炸裂、賑やかな笑いが部屋の中に溢れる。これが何よりも事件の収拾がついた事を示していた。
「貴女達は相変わらずね」
「まーね、ノワールも相変わらずツンデレぼっちなの?」
「相変わらずも何もツンデレでもぼっちでもないわよ!」
「実際の所不明なぼっちはともかくツンデレは確定ではなくて?」
「ツンツンじゃなくてツンデレ、だもんね」
「ええっと、あの…皆さん、お食事が冷めてしまうのですが……」
ご飯を前に冗談を言い合っていた私達にそう言ったのは教祖であり、今回の件の立役者の一人であるミナさん。この人はビジネスライク感の強かったケイさんやベール至上主義のチカさんに比べるとかなりまともな人だった。
「っとそうね…じゃあ頂くとしましょ」
「いや待て、せっかく一騒動済んだ後の夕食なのだ。ここは一つこの国の女神であるブランに音頭を取ってもらおうではないか」
「え、音頭を…?」
「良いんじゃない?私達女神全員が同じ食卓…食卓というには広過ぎだけども…を囲むのなんて初めてだし、何も言わずに食べ始めるのも芸がないと思うわ」
「同感ですわ、中々良い提案をするじゃありませんのMAGES.」
次々と賛成意見が並び、この場はブランが音頭を取る雰囲気へと移行。ブラン自身も別に嫌ではなかったらしく、自ら前に出て話し始める。
「こほん…この度は四ヶ国間での友好条約締結記念会にお集まり誠にありがとうございます」
『いやそれTHE ANIMATIONの話じゃない!?次元違う(よ・わよね)!?』
私達は予想の斜め上をいくパロディに思わず立ち上がる私達。こんな感じのネタをネプテューヌやベールは勿論、ノワールやブランすらたまにやるもんだから女神は困ったものだよ…。
「…イリゼ、今心の中でブーメラン投げてなかった?」
「……ナ.ナンノコトカナ-?」
『…………』
「うっ…ほ、ほらブラン続けて続けて!」
「…ルウィーの奪還までは長かったわ。それこそわたし一人じゃ今もまだマジェコンヌの手の中だったと断定出来る位にはね」
気遣いなのか単に真面目に話したかったのか、とにかくブランが続けてくれたので私への追求は潰えて皆がブランの話を聞く。……セーフ…。
「だから、わたしは皆に感謝しているわ。わたしに着いて来てくれたレジスタンスの皆、マジェコンヌから離反してくれた教会の皆、わたしの命と言うだけで何度も危険を冒してくれたフィナンシェとミナ…こんな良い人達に信仰されている事はわたしの誇りよ」
「当然ですよブラン様。わたしはブラン様が、ブラン様が統治してくれるルウィーが大好きなんですから」
「教祖として、長年ブラン様と共にいた身としてブラン様と国の危機を見過ごす訳にはいきませんよ」
ブランの言葉に真摯に返すフィナンシェさんとミナさん。ケイさんやチカさん、イヴォワールさんとはまた女神との関係性がどこか違う気はしたけど…互いに互いを信頼している事がとても伝わってきた。
「そして、ここにいる皆…わたしとは全く関係無い他国民だったり、或いはわたしと今まで戦ってきた敵だったり…そんなわたしを助ける義理も何もない筈なのにわたしと国の為に全力で戦ってくれて…わたしを友達だと言ってくれた皆…本当に、本当にありがとう…」
「お礼なんか良いよ、だってわたし達は友達だもん。でしょ?」
私達を代表するかの様に言葉を返したネプテューヌに続き、私達全員が頷く。全員が同じ思想を持っている訳ではない私達。でも、仲間を…友達を大事にしたいという思いは確認するまでもなく全員共通だよね。
「…そう、ね…じゃあ、音頭はこの位にしておくわ。皆、存分に食べて頂戴」
ブランの許可(?)が出た事で食べ始める私達。それは立食パーティーが似合いそうな場所には似つかわしくない賑やかな食事だったけど…主催者と客という堅苦しい関係性じゃない私達は、こっちの方が良いよね。
「ネプテューヌ…ちょっと良いかしら?」
食後の満腹感に包まれてちょっとうとうとしていたわたしに声をかけてきたのはノワールだった。ノワールからわたしに話しかけてくるなんて珍しいなぁ。
「なーに?フレンドリーに話せるご飯の時間が終わって寂しくなっちゃった?」
「だから私をぼっち扱いするの止めなさいよ!…今時間良いわよね?うとうとしてた位だし」
「時間?まあ別に大丈夫だけど…何?」
「何って…ほら、アレよアレ」
アレ、と何故か答えをはぐらかすノワール。うーん…真面目に考えても多分当たんないだろうしここは…
「うーん…あ、どうぶつの森の通信?確かにノワールだと相手見つけるの大変そうだもんね」
「違うわよ!っていうかオンライン通信すれば簡単に見つかるし!…約束覚えてない訳?」
「約束?…十年後の八月にまた会えるってやつ?」
「誰もそんな約束してないわよ!…覚えてないならしてあげないわよ?」
…と、ノワールが言ったので今度は真面目に考えるわたし。うぅん、ノワールと約束なんかしたかなぁ。ゲームの事とかプリンの事とかなら覚えてるのに…ん?プリン…?
「……あ!わたしがまた一緒にプリン食べたいって言ったらノワールがプリン作ってくれるって言ってたアレ?」
「そうに決まってるでしょ、もう…」
呆れた様な声を出すノワール。確かにわたしは最初にラステイションを訪れた時最後にそんな約束をしていた。…でもまさかわたしじゃなくてノワールが切り出してくるなんて…。
「もしかして…作ってくれるの?」
「作る気無いのにこの話すると思う?」
「って事はデザートとしてノワールのお手製プリン食べられるの?やったぁ!」
思いがけないプリンチャンスに喜びを露わにするわたし(活字だと伝わり辛いよね)。そんなわたしにその場にいた皆は奇異の視線を送るけど…そんなのを気にするわたしじゃない。
「ふふっ、ほんとプリンの事となると目の色が変わるわよね」
「わたしにとってプリンは親友の中の親友みたいなものだからね!」
「親友の中の親友を食べるのね貴女…」
「あはは…それでどこで作ってくれるの?」
「ここの厨房よ、利用許可はもう取ったわ」
流石ノワール仕事が早いね。…と、いう訳で厨房に移動するわたしとノワール。
厨房に着くとノワールは腕まくりする様な仕草をした後手を洗って冷蔵庫を開ける。
「さてと…うん、さっき確認した通り材料は一通りあるわね。ネプテューヌ、何プリンが良い?」
「んー…じゃあ、焼きプリンが良いなー」
「焼きプリンね、分かったわ」
牛乳や卵、ボウルやカップ等の必要な材料と道具を調理台に出していくノワール。そしてそれを見たわたしは勿論…
「〜〜♪」
「手伝う気は無いのね…まぁ良いわ、ネプテューヌだとむしろ失敗しそうだし」
「む、失礼だなぁ。ノワールを立てて敢えて何もしてないんだよ?」
「はいはい、そういう事にしておいてあげるわ」
そう言ってプリン作りを始めるノワール。適宜材料を混ぜ合わせ、器に入れてレンジやオーブンに入れていく姿を見ていたわたしは一つ気になる事が出来たからそれを口に出す。
「手際良いねノワール。もしかして練習したの?」
「当たり前よ、貴女に喜んで貰う為に何度も練習を…」
「へ?」
「あ…し、してないわよ!?してる訳無いじゃない!か、勘違いしてるんじゃないわよ!」
「へぇー、わたしに喜んで貰う為に何度も練習してくれたんだ、へぇー」
「五月蝿い五月蝿い!してないったらしてないのよッ!」
自分って言っておいて物凄く否定してくるノワール。正直ちょっと見てて面白くはあるけど…そんなに顔真っ赤にして怒る事かなぁ。
「別に隠さなくったって良いのに、わたしは練習してた事馬鹿にするつもりないし…むしろわたしの為に練習してくれたならわたしはすっごく嬉しいよ?」
「……っ!…うっさい、馬鹿……」
今度は打って変わってしおらしくなるノワール。…変なの、ノワールはわたし程単純じゃないのかな?…ってわたしも別に単純じゃないよ!
何だか話しかけ辛くなっちゃった事もあって暫く無言になるわたし。ノワールの方も同じみたいで厨房に静かな時間が訪れる。そうして十数分後…
「…凄いわね、ネプテューヌ」
「え?何が?」
オーブンで焼く作業に入り、手の空いたノワールが口を開く。流石にさっきまでのしおらしい様子は無くなってたけど…今度は真面目そうな雰囲気を纏っていた。
「ベールとブランの事よ。勿論ネプテューヌ一人の力じゃないと思うけど…私達守護女神四人が一緒に食事が出来る様になったのも貴女のおかげでしょ?」
「わたしとしてはそんなつもりは無かったんだけどね。困ってたから、力になってあげたかったから協力してあげただけだもん」
「そういう所が凄いのよ。女神だって嫌いな事や嫌な事はあるし、打算や確執だってあるわ。なのにネプテューヌはそういうものを踏み越えて…単に気付いていないだけかもしれないけど…私達全員と仲良くなったんだもの」
ノワールの言葉にどう反応すれば良いか困ったわたしは頬をかく。自分で頑張った自覚のある事を褒められたなら嬉しいけど…当然だと思ったからしただけの事を褒められてもなんて返せば良いか分かんないもん。
「…やっぱそれは記憶喪失のおかげじゃない?そのおかげでわたしは皆と初対面みたいに会えた訳だしさ」
「ううん、多分私が記憶喪失になってもここまでいい関係には出来なかったと思うわ。…だから、感謝してるのよネプテューヌ」
「や、やだなぁ。わたし達友達なんだから感謝なんて…」
「
ノワールの言葉を邪魔する様にピーッ、とオーブンが鳴る。いつの間にかそれなりに時間が経っていたのかオーブンのタイマーは0となっていた。
「あ……ほ、ほらノワール取り出して冷ますんでしょ?」
「そ、そうね…」
わたしにとっては良いタイミングで、ノワールにとっては悪いタイミングでオーブンが鳴ってくれたおかげで話が途切れ、そのままこの話はお流れになる。…グット、オーブン。
そして……
「わぁぁ…!」
「ふふん、私が作ったんだからこの位同然よ」
冷蔵庫で冷やされた焼きプリンは艶々とした姿になり、お腹いっぱいだった筈のわたしの食欲を唆る。やっぱデザートは別腹だよね。
「相変わらずのノワールの高飛車具合なんかどうでも良い位美味しそうだよ!凄いよノワール!」
「…それ褒めてるの?貶してるの?」
「勿論褒めてるんだよ!ね、食べて良い?」
「えぇ、 緩くならないうちに食べて頂戴」
「うん!頂きまーす!」
スプーンを持って早速食べ始めるわたし。口の中に広がる冷んやりとした甘さと滑らかさにわたしの頬は自然と緩む。
「んー!焼きプリン頼んで正解だったね!これはこんぱの作ってくれるプリンとは別の美味しさだよ」
「ありがと、そこまで喜んでくれたのなら私も作った甲斐があるわ」
「もーこれはあれだね、ノワールは良いお嫁さんになるよ?」
「ぶっ!?お、お嫁さん!?」
予想だにしてなかったのか目を白黒させるノワール。でも今度はボケだって事をすぐ理解出来たのか自分の焼きプリンを食べ始める。
「んっ、我ながら上手く出来たわね」
「でしょ?あ、ノワール一口食べる?」
「いや、これ両方焼きプリンなんだからどっち食べても変わらないでしょ…」
「そうだけどさ、前みたいに食べるのも楽しいじゃん。ほら、あーん」
「もう、仕方ないわね…あーん」
あーんしてくれたノワールに一口分食べさせてあげるとノワールは嬉しそうに笑みを溢す。やっぱりノワールもやりたかったんじゃん。
「ほらほら、今度はわたしの番だよ。あーん」
「分かってるわよ、あーん」
何だか本格的に楽しくなってきたわたし達は、互いに自分の焼きプリンを相手に食べさせ続けるというよく考えたらとても妙な食べ方を焼きプリンが無くなるまで続けてしまった。…でも、楽しかったから良いよね。
「ふぅ…ご馳走様。美味しかったよ」
「お粗末様、私も約束を果たせて良かったわ」
「やーご飯は美味しかったしデザートも食べられたし、おまけにノワールといちゃいちゃ出来たからわたしは満足だよ」
「い、いちゃいちゃって…そんなに私をからかいたい訳?」
「楽しかったのは事実でしょ?」
「それは、まあ…そうね、楽しかったわ」
笑顔を見せ合うわたしとノワール。そして気付けばもう遅い時間。楽しい時間は早く過ぎてしまう事、早く過ぎてしまうと思える程にノワールとの時間は楽しかったんだと改めて実感するわたしだった。
……また、ノワールと一緒に楽しくプリンを食べて、楽しく遊べたら良いな。
「さて、食べ終わったし片付けするわよ。手伝ってくれるわよね?」
「えー…やんなきゃ駄目?」
「やらなかったらもう作ってあげないわよ?」
「うっ、それは困る…」
ノワールに言われ、渋々片付けを手伝う私。…ノワールはプリン程は甘く無かったよ…なんて、ね。
今回のパロディ解説
・THE ANIMATION
原作のメディアミックスの一つ、所謂アニメ版の事。このパロディに対する突っ込みで次元違う、と言っていましたが別に今後本作と絡む事の伏線ではないですよ?…多分。
・どうぶつの森
どうぶつとのスローライフを楽しめるどうぶつの森シリーズの事。ノワールがどうぶつの森をやるかどうかはさておき、オフラインで通信するのってちょっと大変ですよね。
・「〜〜十年後の八月にまた会えるって奴?」
secret base 〜君がくれたもの〜、のワンフレーズのパロディ。この歌はしんみりとしつつも暖かさを感じる作品ですが…本作で使ってみたら大分雰囲気変わりました。