超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第三十四話 そしてまた次の目的へ

『第三回、今後のねぷねぷ一行の活動方針を考えよう会inぶらぶらの家』

 

事態収束から翌々日。案の定というか何というか…やはりルウィーでもこの看板を見る事となった。…毎回いつ誰が作ってるんだろうアレ……。

 

「これうち以外でもやってたのね」

「なんかうちのパーティーのお約束みたいだよ?三回目でお約束って言えるのかどうかは謎だけどね」

「そこ!私語は謹みなさーい!」

「私語も何も私的な場でしょこれは…」

 

よく分からない仕切りをするネプテューヌと半眼で突っ込みを返すノワール。一見いつも通りに見える二人だけど私の乙女部分が告げてる…この二人多分何かあったよ!何かは分かんないけどね!

 

「…で、これってつまりは文字通り活動方針を考えるってことで良いの?」

「うん、最低限決めとかないとうちのパーティーはずーっとネタ方面に走りきりになりかねないからね」

「それには同意ですがそうなる原因の筆頭は貴女ではなくて…?」

「ベール様も人の事は言えませんけどね…」

 

ノワールの言った通り形の上では会議だけど完全に私的な場なので自然と真面目な会話より世間話や冗談の方が多くなる考えよう会。更に今回は前回までと一つ大きな違いがあった。

 

「はいはいちゅーもーく!今後どうするかだけどさ…もう四大陸回っちゃったよね、どうしよう?」

「それを考える為に会を開いてるんじゃないの?」

「そうだけどさ、今までは次の大陸行こうって目的があって、そこから考えてたでしょ?」

「骨子となる部分が抜けている、という事だな」

「そうそうそれ、誰か何か良い案ない?」

 

ほぼ丸投げだった。あんまりにもふわっとした質問を出されるとその質問内容に関係無くとある現状が起こる。それは……

 

『…………』

「え…まさかの無言……?」

 

常にボケ狙いのネプテューヌと違って私達は適宜ボケるか真面目な事言うかを選択する(個人差はあるけどね)主義な以上、こうも質問がざっくりしてると反応に困ってしまう。

とはいえずっと無言だとほんとに話が進まないので私が口を開く。

 

「えーっと…取り敢えず確認なんだけど、ゲイムギョウ界って四大陸四ヶ国なんだよね?」

「えぇ、わたし達の統治する四ヶ国以外に国は存在しないわ」

「一応私達の庇護下に入ってない地域や人も居るには居るけどね、あくまで例外的なものだけど」

「じゃあ次行くとしたら一度行った国になるね」

 

正直今の私の質問と返答から出した答えは方針決定には殆ど役に立ちそうには無かったけど…話を動かす事には成功し、建設的な会話が後に続く。

 

「…あ、そう言えば鍵の欠片探しはどうするです?」

「鍵の欠片…ルウィーではまだ見つかってないとはいえ、手がかり無しで探してたらキリがないわね」

「リーンボックスみたいにマジェコンヌが先を越してる可能性が高いんじゃない?一時的とはいえ国を乗っ取る位の余裕があった訳だしさ」

「ではマジェコンヌを…と言いたいところですけどそちらもそちらで手がかりがありませんのよね…」

 

既に何度かマジェコンヌと相見えた私達だけど、そのどれもが偶然か別の件を追って行った先での遭遇かのどちらかであり、言ってしまえばこちらから動いて出会えた事は無かった。…何というか、歯がゆい。

 

「手がかり、か…ユニミテス教とやらを追ってゆけば良いのではないか?」

「と思って私もちょっと調べてみたんだけど…イマイチ組織の体をなしてないって言うかそれぞれがバラバラって言うか…とにかく有益な情報が手に入る前に途絶えちゃうのよ」

「じゃあ他にマジェコンヌと関わりがある人ってなると…」

「……あ、アヴニールは?」

『それ(だ・よ・です・ですわ)!』

 

皆が一斉に反応するもんだからちょっとビビる私。こう、何だろう…「異議あり!」とか「それは違うよ!」みたいな事言われた気分になっちゃったよ…。

 

「失念していたわ、ブランに扮したマジェコンヌが取引してたアヴニールが関係無い訳ないじゃない…」

「えっと、じゃあまたラステイションに行くです?」

「そうなるわね。ノワール、貴女もそれで良い?」

「勿論、ラステイションへの愛が無いとはいえうちの国所属の企業がこれ以上悪事に加担するのを見過ごす訳にはいかないわ」

「よーし、じゃあ次はラステイションに決定だね!」

 

序盤のグダグダ感や無言とは裏腹にてきぱきと話が進んでいった第三回考えよう会。…もしかして今回の会のMVPって私だったり?

 

 

 

 

「え…ブラン来ないの!?」

 

予想だにしなかった、という心情をそのまま声に乗せたかの様に驚くネプテューヌ。他の面子も多かれ少なかれ同様な表情をしていた。

活動方針を決めた翌日。自分でも驚く程にその事を言うのを躊躇っていたわたしがやっと口にしたのは皆が出発を決めた日だった。

 

「ごめんなさい…言おうとは思ってたけど、中々言い出せなくて…」

「それは別に怒ってないけど…どうして一緒に来ないの?どっかの死神様みたいに街から離れられないとかなの?」

「いやそれは無いでしょ、ブラン一回ラステイションに来てたじゃん…」

 

真面目に話そうとしている時にさらっとボケを入れてくるネプテューヌ、そんな彼女を少し前のわたしならば怒っていただろうけど…今はそんな事は無い(無論延々とボケを重ねてきた場合は別よ)。何故ならネプテューヌは恩人であり、友達だから…。

 

「事後処理、というやつよ。ノワールやベールなら分かってくれるんじゃないかしら?」

「そういう事ね…分かるわ、私もその為に一時はこのパーティー離れてた訳だし」

「わたくしはわたくし以外でも出来るものを全て任せて来ましたけど…それは強要するべきではありませんわよね」

 

国の守護者である女神は当然戦士としての側面もあるけど…同時に統治者でもある以上ただ戦って敵を倒していれば良い訳ではない。勿論それが嫌だという訳では無いけど…今のわたしにとっては枷となっているのも事実だった。

 

「それなら仕方ないね、国をほっぽり出す訳にはいかないと思うし…ネプテューヌも駄々こねちゃ駄目だよ?」

「いや駄々こねたりはしないから…ブランがどっかに行っちゃうと困る人だって居るって事位わたしだって分かってるよ?…来てくれないのは残念だけどさ……」

 

意外にも駄々こねると思っていたネプテューヌが素直に受け入れてくれた事に少しばかりわたしは驚く。…何も考えていない子だと思っていたけど、事情次第ではそれなりに考えるのね…。

 

「…ブラン、今ちょっと失礼な事考えていなかった?」

「……考えていないわ」

「その間は何さ…」

「とにかく、そういう事だから申し訳無いけどわたしは一緒に行けないわ。でもやるべき事が済んだら合流するからそれまで頑張って--------」

「ブラン様、それで良いんですか?」

 

不意にかけられた言葉がわたしの言葉を遮る。その声の主は…フィナンシェだった。そして、その隣に立つのはミナ。わたしが教会の中でも特に信頼する二人だった。

 

「二人共…どういう事?」

「そのままの意味ですよ、ついて行かなくても良いんですか?」

 

不可解な事を言う二人にわたしは首を傾げる。わたしの侍女であるフィナンシェも教祖であるミナも今のルウィーの状況を分かっていない筈がない。だからわたしが行こうとしたのを止める事はあってもその逆は無い筈なのにどうして…?

 

「ブラン様、本当は一緒に行きたいのでは?」

「それは…そうだとしてもわたしにはやらなきゃいけない仕事が…」

「それ位ならば私やフィナンシェさん、それに職員達で何とかなります。幸いマジェコンヌはブラン様の姿で乗っ取っていたおかげで女神不在という事態には陥っていませんでしたからね」

「でも…貴女達に丸投げする訳には…」

「ブラン様ならわたし達には出来ない事も出来ます。だからブラン様、ルウィーはわたし達に任せてゲイムギョウ界全体の為に行って下さい」

「ミナ…フィナンシェ……」

 

嗚呼、わたしは何と良い侍女と教祖を持ったものか。わたしの心情を慮り、その上で事後処理を引き受けてくれて且つゲイムギョウ界の為というわたしに行く口実を作ってくれた二人。この二人にはスパイという難度の高い役目もしてもらっていた。そんな二人が更にわたしの為を思ってくれてると思うと目頭が熱くなるのを感じる。

----女神としての務めの為残るか、二人の…そして職員の気持ちに応えて行くか。…そんなの、迷うまでもない。

 

「…前言撤回よ、わたしも一緒に行くわ」

「ブラン、良いの?」

『ブラン様…』

「自身を信仰してくれる人の思いを汲むのも女神の務めよ。…でも、何かあったらすぐに連絡する事だけは約束して、良い?」

「勿論です、ここはブラン様の国であり私達はブラン様の信者ですから」

 

そうして、わたし達は二人に見送られる形でルウィーを出る。

ありがとう、皆…わたしは女神として、皆の思いを受ける者として、ゲイムギョウ界の為に全力を尽くすと誓うわ。

 

 

 

 

「…随分大所帯になったものだよね」

 

前回と違って急を要する訳ではないという事で一度旅の拠点(?)としているコンパのアパートへと戻った私達。旅の始まりの時点では四人、最初期は二人だったらしいこのパーティーも今は八人。全員で同じ部屋にいると明らかに前よりも窮屈だった。

 

「このままだとパーティーではなくレイドになるかもしれませんわね」

「そこまでなったら一話の間でその場にいるのに一度も喋られない人とか出てくるかもね」

「メタい上に恐ろしい事言うんじゃないわよネプテューヌ…」

 

当然だけど人数が多くなるとその分一人一人にスポットが当たり辛くなる。それは確かに仕方のない事だけど…気を付けてますから!頑張って出来るだけ均等に当たる様にしてますから!…って、私は何考えてるんだろう…。

 

「こ、この話は止めにしよっか、ね?」

「そ、そうだね…えーっと、それでコンパのアパートに来たけど何かするの?」

「何か、って言うとまあ…特には無いわね。強いて言えば…」

「これ、ですね」

 

コンパが見せたのはルウィーのお土産。ルウィーだけに関わらず各国に行く度つい色々と買ってしまう私達は余ってしまった分のお土産をコンパのアパートに預けていた。まあ…来る度それも食べてるんだけどね。

 

「お土産と言えば、土産話という訳ではありませんがちょっとした話があるんですわよ?」

「話、ですか?」

「えぇ、あの兄弟がうちの国に移住する事を決定したらしいですわ」

『あー……』

 

何というか、とても納得の出来る話だった。ルウィーでの大規模戦の時は即座に状況を読んで自然に時間を稼ぐという地味に凄い事を行い、更に芯のある所を見せた二人だったけど…やっぱり、あの兄弟はあの兄弟だった。

 

「でも、ベールがいないのにリーンボックス行ってどうする気何だろう…」

「『ベール様の統治する国にいられるだけで我々は幸せそのもの!』とか言っていましたし満喫してるかと思いますわ」

「…欲求不満でチカに手を出してたりして…」

「あぁ、その心配はありませんわ。きっちりと二人には言い聞かせておきましたもの、チカに手を出したら…肉片一つ残しませんわよ、と」

 

笑顔で脅迫の言葉を言うベール。おっとりとした笑顔に穏やかな声…なのに何故か感じる本能的な恐怖に私達は凍りつく。ベール…貴女ほんとアイエフとチカさんの事となると人が変わるね……。

 

「そ、それはともかく…ラステイションに入る前に幾つか言っておきたい事があるんだけどいいかしら?」

「言っておきたい事、です?」

「前も言ったけどまだラステイションはアヴニールが幅を利かせているわ。勿論私や教会が見過ごしてる訳じゃないから前程老若無人には振る舞ってないけど…それでもたかが一企業と舐めてかかったりはしないで頂戴」

 

ノワールの言葉に頷く私達。ラステイションでは勿論、ルウィーでの騒動にも一枚噛んで厄介な敵となったアヴニールを軽んじようとは最初から思っていない。油断して足元をすくわれるのは嫌だからね。

 

「それともう一つ。もうすぐラステイションでは各工場、各企業が自社の製品を発表しあう総合博覧会があるから開発に集中してる工場が多いわ。だからふらっとどっか行って騒動起こさないように、良いわね?」

『はーい』

 

こちらも特に異論は無かったので全員で返事をする私達。工場と言えば…シアンもそれの為に開発してたんだよね、元気かなぁ…。

 

「ノワールよ、他に注意すべき点はあるのか?」

「いや、取り敢えずはこんな所よ。約一名を除いて最低限の常識はあるでしょうからね」

「え、約一名って誰?やっぱ記憶喪失のイリゼ?」

『…………』

「うっ…突っ込みの代わりに皆でだんまりってそれはないよ……」

 

ボケる人にとって一番辛いのは何も返されない事。そんな事をネプテューヌに実感させつつ接岸場へと向かう私達だった。

 

 

 

 

彼方にぼんやりと見えるラステイションの大陸、その間に広がる広大な空間。それが示す事は一つ。

 

「まさか次の接岸まで一時間以上あるだなんて…」

 

私達が接岸の時間を確認しなかったのが悪い、と言えばその通りだけど…接岸場に着いてからそんな事言われたってどうしようもない。仕方ないから街に戻って時間を潰すかどうかの話をしていた、そんな時にネプテューヌがとある提案をした。

 

「ねーねー、わたし達は飛べるんだしさ、こんぱ達を連れて飛んでいかない?」

「それは中々妙案ですわね、その場合あいちゃんはわたくしが優しく抱いていきますわ」

「相変わらず貴女は惚気てばっかりね…」

 

ベールの惚気はさておき、確かにそれは妙案だった。結構な距離を飛ぶ事になるからそれなりに疲れるとは思うけどここで一時間以上待つよりはよっぽど良い。皆もそう考えたらしくネプテューヌの案は即可決となった。

 

「…で、ネプテューヌがコンパを、ノワールがMAGES.を空輸…で良いのかな?…する事になったんだね」

「こんぱ、ムラサキねぷ子の航空便ことねぷねぷ航空を楽しんでよね!」

「はいです、憧れの空の旅ですぅ!」

「頼むぞ、助手よ」

「誰が助手よ誰が!」

「そして前言通りわたくしはあいちゃんを…さぁあいちゃん、わたくしに抱き付いて下さいまし」

「だ、抱き着くんですか!?」

 

三者三様…じゃなくて三組三様の様子を見せるネプテューヌ達。私とブランは担当する相手がいないから楽といえば楽なんだけど……。

 

「…ほんの少し残念ね」

「うん、同感だよ……」

 

まあ、残念がっていてても人が増える訳ではないのですぐに気を取り直し、女神化する私とブラン。ネプテューヌ達もそれに続く様に女神化し、飛べない三人を掴んだり抱っこしたりして空へ舞い上がる。

そうして元々奇妙だった私達パーティーはより一層奇妙に見える事をしながらラステイションへ向かうのだった。

 

 

「…あ、そう言えば第四話でもラステイションへ向かう形で終わったわね」

「キリが良いんだからそういうメタ視点での指摘はしなくて良いの!」




今回のパロディ解説

・異議あり!
逆転裁判シリーズの初代主人公、成歩堂龍一の代名詞とも言える台詞の事。その直後のパロディもそうですがここぞというタイミングで言われたら確かに驚きそうですね。

・それは違うよ!
ダンガンロンパシリーズの初代主人公、苗木誠の代名詞とも言える台詞の事。その直前のパロディと同様の形で使えそうですが…タイミングを計るのは大変そうですね。

・どっかの死神様
ソウルイーターに登場する、鬼神を封印している為デスシティから出られない死神様の事。女神と死神、どちらも神という意味では近いですが…共通点なんてそれ位ですね。


・ムラサキねぷ子の航空便
クロネコヤマトの宅急便のパロディ。クロネコヤマトさんと違ってムラサキねぷ子は個人経営(経営してませんが)なので色々と大変そうですね、単なるパロディネタですが。

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