超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第三十六話 当日に出来る事、当日までに出来る事

洞窟には浪漫がある…らしい。らしい、と言うのは女の子故か、それとも私個人の問題か…まあとにかく浪漫があると風の噂に聞いた事があった。

まあ…分からない事はない。お宝だとか、新たな発見だとかそういう要素と洞窟とは切っても切れない縁だからね。

……なーんて事を私が何故思い出したかと言うと…

 

『……台座?』

 

シアンの依頼で訪れた洞窟で発見した、明らかに自然に出来た物とは思えない構造物。見た目は皆が言う通り、台座の様な形をしていた。

 

「えぇ、私もそう思うわ。…でも変よね、まさかとは思うけどラステイションには台座型の岩ってあるの?」

「当然無いわ、と言うかどう見ても人工物よね」

「こんな洞窟に人工物…目的が気になるわね…」

「……うーん…」

 

私含めた皆が台座を観察しながら思考を巡らす中、コンパが唸り声を上げる。状況的には私達と同じくこの人工物が何故ここにあるのか、を考えているのだと判断しそうになるけど、コンパの唸り声は考えているというよりも…

 

「…もしかして、コンパはこれ見た事あるの?」

「見た事ある様な気がするです…ええっと、確かねぷねぷと一緒にいる時で、えっと…」

「ふむ、ネプテューヌは覚えていないのか?」

「全然全くちっとも覚えてないよ!」

「何を堂々と言ってるのよ…これじゃそのイストワールって人に記憶直して貰っても意味無いんじゃ--------」

「そ、それです!」

 

自信満々に情けない事を言うネプテューヌとそれに呆れながら返すノワールといういつもの光景に強い反応を示すコンパ。その顔は今までとは違う表情を宿していた。

 

「それ、って?」

「いーすんさんの事です!ねぷねぷと二人で見つけた最初の鍵の欠片が置いてあった物とこの台座とが似てるんです!」

「鍵の欠片の台座…?…って事は…」

 

もしやと思って台座を改めて観察する私達。観察対象は同じでも情報があるのと無いのとでは得られる結果も大きく変わる。その結果…

 

「…不自然な窪みがあるな」

「この形って…ネプテューヌ、ちょっと鍵の欠片貸して」

「うん、はいどうぞ」

「ありがと。……うん、やっぱりこの窪みは鍵の欠片がはまってた場所みたいだよ」

 

窪みに鍵の欠片を当ててみた私はそう述べる。正確な事を言うと窪みにすっぽりはまった訳じゃなかったけど、窪みの大きさや周りの模様が鍵の欠片にかなり近いものだったから私の見立ては間違ってない筈。

 

「…という事はここには鍵の欠片が『あった』様ですわね」

「けど、今はそれが無い。…やはりマジェコンヌが持ち去ったのかしら…」

「あいちゃん、いつ位に持ってかれたか分かる?」

「流石にそこまでは分からないわ。パッと見た感じ最近ではなさそうだけど…」

「そっかぁ…最近だったらマジェコンヌが来てる証拠になると思ったんだけどなー」

 

残念そうな声を上げるネプテューヌ。マジェコンヌのアジトや手がかりと言った情報を持たない私達にとってはマジェコンヌに繋がる要素はそれこそ喉から手が出る程欲しいものであったから気持ちは分かる。…けど、そこまで悲観する程でもない。

 

「いや、マジェコンヌがここに来てたってだけで有益な情報でしょ?ここに来てたって事はつまりマジェコンヌは四大陸全てに手を伸ばしてるって事なんだから」

「…あんまり嬉しくない情報ね。うちの国には来てないって情報ならありがたかったんだけど…」

「まあとにかく今は先を急ぎましょ。今回の目的はシアンに頼まれた素材の入手なんだし」

 

アイエフの言う通り、鍵の欠片とマジェコンヌについての情報は謂わば棚からぼた餅であり、本来の目的ではない。なので過ぎた事は仕方ない、の考えの元私達は先へ進むのだった。

 

 

 

 

洞窟の最奥で動く複数の影。…が、影という表現はあまり相応しくない様に思わざるを得ない。何故ならば…

 

「……結晶型モンスター…?」

 

身体に結晶の生えたモンスター、或いは体内で結晶を精製するモンスターなのだろうと思っていた私は目的のモンスターがほんのりと輝く結晶そのものだった事に少なからず驚きを覚える。横を見ると皆も私と似た様な顔をしている。どうやら皆も同じ事を思っていたらしい。

 

「あれが例のモンスターね…そう言えばルウィーでも似たタイプのモンスターがいた気がするわ」

「どうみても硬そうですわね…」

「相手が硬くたって数はこっちが上よ。まとめてかかればどうって事ないわ」

「そう言われると、まるで悪役の様でちょっと気が引けますわね…」

 

今まで基本フルメンバーで戦ってきたのに何を今更…って気はしなくもなかったけど、口に出されると確かに気が引けた。…ノワールって女神の中じゃかなりまともな方だけどたまに女神化する前から苛烈な事言うよね…。

 

「なら後は貴女に任せるわ」

「そういう事ならわたしもパース」

「ねぷねぷがパスするならわたしもパスです」

「え、ちょっと貴女達…?」

 

次々とパスの意思表明をしだすパーティーメンバー。ここから更にアイエフ、ベール、MAGES.とパス宣言をし、最後に私が残る。

分かってるよね?…という視線を送る皆とそんな事しないわよね?…という視線を送るノワール。…え、えぇー…。

 

「…あーうん…ノワールなら一人でも倒せるよ、大丈夫」

「そんな評価要らないわよ!まさか皆戦わない気!?」

「…とまぁ冗談はさておき、正直長引くのも面倒だから皆で一気にいくよー!」

『おー!』

「な、何なのよ貴女達は!?」

 

突っ込みに忙しそうなノワールを置いてモンスターへと駆ける私達。ちゃっちゃと片付ける為私含めた女神の面子は女神化(ノワールもワンテンポ遅れて女神化)し、先行して五人で強襲をかける。

 

「先手必勝!」

「すぐに終わらせるわ!」

「散りなさいッ!」

「貫いて差し上げますわ!」

「喰らいやがれッ!」

 

大型モンスターならばいざ知らず、ただ硬いだけのモンスターが女神五人の同時攻撃を受け止めきれる筈もなく、ゴムボールの様に吹っ飛んでいく。

そして、その先へ回り込むコンパ、アイエフ、MAGES.。

 

「えいですっ!」

「貰った!」

「闇の炎に抱かれて消えよッ!」

 

針と刃と炎の三重奏に自ら突っ込む形となったモンスター。最早オーバーキル気味だったが、倒す以上はわざわざ手加減をする必要はない。そして当然、八人がかりの攻撃を受けたモンスターと言えば…

 

『…………』

 

モンスターではなく単なる残骸と化していた。そしてモンスターが消滅した後に残ったのは多数の結晶。これこそ正にシアンに頼まれていた鉱物だった。

 

「やっぱノワールの言う通り皆でボコると楽勝だね」

「ちょっと、私そこまで酷く言ってないんだけど…」

「あれ、そうだっけ?でもノワールなら言いそうじゃん?」

「貴女ねぇ…前から思ってたけど私をちょっと舐めてない?あんまり馬鹿にすると生茄子を貴女の口にねじ込むわよ?」

「いやいやいやそれ冗談にならないから!馬鹿にしてないから止めて!」

 

妙に怖い笑顔を浮かべながらネプテューヌを追い詰めるノワールとあからさまにテンパるネプテューヌ。最早お約束を超えて日常の光景と化した二人のやり取りを、女神化を解除した私達は苦笑しながら眺める。

 

「ほんと相変わらずね、あの二人は…コンパ、鉱石は取れた?」

「はいです。この位あればきっとシアンさんも喜んでくれる筈です」

「なら依頼達成だな。モンスターが寄ってくる前に戻るとしようじゃないか」

 

回収した鉱石を分担して持ち、洞窟の出入り口へと向かう。途中何度かモンスターと遭遇したけど、やはり私達の敵ではなく、然程くろうすることもなく出入り口へと向かう事が出来た。

 

「ここまで来ればもうモンスターと会う事は無さそうだね。ふぅ、今日も疲れたなぁ」

「もう疲れたの?イリゼ体力無いんじゃない?」

「前までスタミナ考えず走った結果、息切れしちゃってたネプテューヌには言われたくないんだけど…」

 

 

 

 

「おおっ!これこれ!これを待っていたんだよ!」

 

パッセに戻り、回収してきた鉱石をシアンに見せると、私達が依頼を受けると言った時同様に彼女は目を輝かせて喜んだ。…生粋の技術者なんだね、シアンは。

 

「取り敢えずあるだけ持ってきたけど、これだけあれば十分かしら?」

「勿論さ、悪いが早速武器の改修に取り掛からせてもらうよ。今は時間が惜しいからな」

 

そう言って鉱石を手に工場の奥へと姿を消すシアン。…と、言う事はつまり私達は慣れない工場の中に残される訳で、武器開発や博覧会の事をそれなりに知ってて且つ私達が気軽に声をかけられる相手であるノワールに注目が集まる。

 

「そういえば、博覧会って何時なんです?」

「三日後よ」

「そうですか、三日後ですか…」

『…って、三日後!?』

 

予想以上に短かったタイムリミットに驚く私達。三日って…それじゃカップ麺位しか作れないじゃん!…って、それは三分だった……。

 

「三日後とは…改修は間に合うのだろうか…」

「それは大丈夫だと思うわ、シアンの技術者としての能力は本物だもの。…むしろ問題はアヴニールね」

「アヴニール…アヴニールも博覧会に参加するって事?」

「えぇ。…私の勘が正しければきっとアヴニールは博覧会で何かする筈よ」

 

腕を組み思考を巡らすノワール。アヴニールの裏の顔を知っている私達からすれば、それは絵空事ではなく十分に可能性を感じられる言葉だった。

 

「そうね…実際アヴニールはわたしに扮したマジェコンヌに兵器を譲渡していたんだもの。あり得ない話じゃないわ」

「成る程…となると、マジェコンヌも博覧会に現れるかもしれないという訳ですわね」

 

ネプテューヌを除く守護女神三人の推理によってアヴニールの策略とマジェコンヌの影が見えてくる。これもやはり推測の域を出ないけれど…確実な情報や証拠が無い以上、推測を立てて動くしかない。

 

「じゃあまたアヴニールの仕事受けてみる?」

「それは無理でしょ、私達はとっくにマークされてるでしょうし」

「なら博覧会の運営側に働きかけてみるとか?」

「いや、それはシアン達出展側が喜ばないと思うわ。理由があるとは言っても運営に干渉したんじゃ真っ当な博覧会とは言えなくなるもの」

 

博覧会は産業国家であるラステイションにとって重要なイベントであり、零細企業から大企業まで多種多様な企業がこのイベントの為に全力を尽くしているのだとノワールは言った。そうなると、確かにあまり強行な手は使えない。

 

「じゃあ、どうしたら良いです?」

「当日まで待つしかないと思うわ。アヴニールだって博覧会に出られなくなったら痛手でしょうし当日までは妨害工作なんかより開発に専念する筈よ」

「そっか…じゃ、各々当日に動けなくなる様な事せず数日間過ごすしかないね」

 

待つだけ、というのはかなり歯がゆいものだったけど、下手に動いてアヴニールに有利な状態にしちゃったら元も子もない。そう自分に言い聞かせて私達は数日を過ごす事とした。

 

 

 

 

広い会場に飾られている多種多様な武器と兵器。量産を想定していそうなシンプルな物からワンオフ、或いは少数生産しか考えていそうにない複雑な物、果ては何を考えてるの!?…と突っ込みたくなる様なトンデモ作品まで正に目白押しの博覧会に私達は圧倒される。

 

「ふふん、どうよラステイションの科学博覧会は。この規模にこの出展数、そしてこの技術力!ラステイションの科学力は世界一よ!」

「うわ、ノワールがすっごいハイテンションになってる…」

「まあ、女神として鼻高々なのだと思いますわ」

「テンションはさておき、気持ちは分からないでもないわ」

 

上機嫌なノワールにそれぞれの感想を抱きながら会場を歩く私達。まだ会の始まりまでは時間があるらしく、観客は勿論出展者も余裕のある表情を浮かべている。

 

「シアン、アルマッスの改修は間に合ったの?」

「あぁ、お前等の協力のおかげでわたしの出来る最高傑作を完成させる事が出来たぜ」

「シアンさん、頑張るのは良いですけどちゃんと寝なきゃ身体壊しちゃうですよ?」

「はは…博覧会が終わったらゆっくりと寝る事にするよ。さて、わたしは準備があるからまた後でな」

 

自分のブースへと向かうシアン。どんなに良い作品に仕上がっていたとしてもそれを飾り、人の目に触れる様に出来なければ何の意味も無いという事を分かっているシアンはまだまだ気の抜けない様子だった。

 

「…まるでコミケのサークル参加者ですわね」

「あ…どこかで見た事あったと思ったらそれね…」

「貴女達…そういう事じゃなくてもっと出展品に興味を示しなさいよ」

「助手よ、私は興味を示しているぞ」

「助手ゆーな!…でもやっぱり貴女は分かってくれるのね」

 

興味深げに出展品を見るMAGES.。あ、そう言えばMAGES.の魔術は科学技術との融合って言ってたしこういう事も守備範囲内なのかな。

 

「次は私も神次元…いや、超次元ガジェットで出展するのも良さそうだな」

「超次元ガジェット…?何よそれ?」

「ふふ、超次元ガジェットというのは私が作り出した発明品の事だ」

「へぇ、発明まで出来るなんて凄いじゃない。どんなのがあるの?」

 

今度はMAGES.の言葉にノワールが興味を示す。口ぶりから察するにシアンよりも更に小規模、完全な個人開発らしい。

 

「そうだな…入れた物を食べ物だろうが人間だろうが何でもゲル状にしてしまう電子レンジや室内マイクロウェーブ照射装置などなどだ」

「お願いだからそんな物騒な物出展しないで」

「なんだ、つまらん。アヴニールよりは平和的だと思うのだがな」

「だとしても普通に生活する上では物騒なの!」

「いや…普通に生活する上でだったら今回の出展品の九割が物騒なんじゃ…武器と兵器の博覧会だし……」

 

ラステイションの女神でありながら博覧会の根本を否定しかねないノワールの発言につい突っ込む私。

…と、その時会場の照明が暗くなる。

 

「な、何です?」

「これはまさか怪盗出現パターン!?」

「な訳ないでしょ…静かになさい、セレモニーが始まるわ」

 

ノワールに指示され黙り込む私達。周りもこれがセレモニー開始の合図である事を理解しているのか一斉に静かになり、会場が静寂に包まれる。

そして、完全に静かになった時、会場正面のステージに司会が現れ、私達とアヴニール、マジェコンヌの思惑…そして、出展したラステイションの技術者と企業の全員の努力と誇りをかけた博覧会が、始まる--------。




今回のパロディ解説

・「闇の炎に抱かれて消えよッ!」
中二病でも恋がしたい、の主人公富樫勇太の中二病時の台詞。…まあ、MAGES.は実際に炎出してるんですから中二病でも何でもない、単なる掛け声になるんですけどね。

・「〜〜ラステイションの科学力は世界一よ!」
ジョジョの奇妙な冒険第二部のキャラ、ルドル・フォン・シュトロハイム(少佐・大佐)の台詞のパロディ。自信家、という意味ではちょっとノワールも近いかもですね。

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