超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第三十八話 交錯する武器と兵器

戦闘はただ勝てば良い訳では無い。味方の被害を減らす、防衛対象をきちんと守り抜く、捕縛対象を逃さない、次の戦闘に繋がる戦力配備をする……それらの様々な要素が戦闘に関係する理由は一つ。戦闘は『目的』を果たす為の『手段』だからである。

そしてそれは武器の披露でも同じである。無傷で勝っても、それが圧勝だったとしても、その勝利に武器が関係してると思えなければ…つまり、その戦いの中で武器の強さを『魅せる』事が出来なければ意味が無い。

だから……

 

「エキシビションマッチ開始は十分後です。両者準備をお願いします」

 

そんな難しい戦いであるエキシビションマッチを任されてしまった私は正直かなり気が滅入っていた…。

とはいえ、引き受けてしまった以上やるしかないのでしっかりと使う事となった武器『アルマッス』の開発者、シアンの言葉を聞く。

 

「--------とまあ、こんな感じだ。くれぐれも最大出力モードは短時間使用にしてくれよ?」

「分かってる。それより問題は私一人で戦わなきゃいけない事なんだよね…」

 

アルマッスが一本しかなく、アヴニールが出す兵器も一機のみという話である以上こちらが複数人でかかる訳にはいかない。…女の子一人ででっかいマシンと戦うなんてどうかしてるよ…どうかしてる出来事は今までにもかなりあったけどさ……。

 

「お手当ならわたしがしてあげるから大丈夫です」

「お手当の間時間稼いでくれる人いないじゃん……」

「ならば私が時間稼ぎに最適な指揮をとろうではないか」

「だから時間稼ぎする人がいないんだって!ちょっ、私真面目に困ってるんだからね!?」

 

とんちんかんな申し出に突っ込みを入れつつ肩を落とす私。多分好意で言ってくれたんだろうけど状況に合っていないんじゃ意味がない。

 

「はぁ…せめて女神化出来れば良かったのに……」

「……女神化、しても大丈夫なんじゃないかしら?」

「え……?」

「わたし達守護女神は女神化状態を見られたら色々厄介だけど、幸い貴女は世間一般には知られてないわ。だから女神化する瞬間さえ見られなければ問題ない筈よ」

「う、うん…確かにその事実は嬉しいけど同時に悲しみが私の中を走ってったよ……」

 

私だけが女神化しても大丈夫な理由、それは私の知名度がほぼゼロだから!…こんな悲しい理由があるだろうか。

まあでも女神化出来るのはほんとにありがたい為、そこにちょっとホッとしつつアルマッスを手にする。

 

「かなり不安は残るけど…やれるだけの事はやってみるよ」

「えぇ、審査員の立場上一方的な応援は出来ないけど期待してるわ」

「頼むぞ、イリゼ」

「どーんとやってきちゃってよ!」

 

皆の声援を受けながらステージ裏へと周り、人が見ていない事を確認してから女神化する私。

手にするアルマッスは普段の長刀より短く、味方もいない不利な状況。……でも、この勝敗はパッセとアヴニール、そしてラステイションに大きく影響する以上尻込みなんてしていられないよね。

そう自分に言い聞かせ、私はステージへと向かった。

 

 

 

 

「ふむ…まさか女神の姿で現れるとは。彼女がイレギュラーな存在だという事を失念していました」

「何だそれは…勝てるんだろうな?」

「えぇ。キラーマシンタイプではないとは言えパンツァーも相当な性能ですし、何より中小企業の作った武器程度にやられる兵器など生産してませんからね」

 

ステージ裏、イリゼ達パッセサイドの面子がいる側とは逆側にあるアヴニールサイドには重役であるガナッシュ、社長であるサンジュ…そして、言葉巧みにアヴニールと協力体制を結んだマジェコンヌの姿があった。

彼等の目的は一つ。目の上のたんこぶであるパッセを公の場で叩き潰し、同時に博覧会で最優秀賞を受賞する事によって再度ラステイションの覇権を握る事だった。

…勿論、ガナッシュは実在しない仮想のホワイトハートの為に、マジェコンヌは女神を倒し更なる力を得る為にという独自の目的もあるのだが。

 

「…ところで、私が渡したシステムを積んだ機体はどうした。まさか用意してないんじゃないだろうな?」

「まだあれはテスト運用もしていない。技術者としてあれを運用するのは勧めんぞ」

「それに我々の想定では女神状態で出るとは思っていませんでしたからね。それは貴女も同じでは?」

「…ふん。ならそのパンツァーとやらできちんと勝つんだな」

 

彼等の間には友情も、信頼も、気遣いすらない。だがそれは利害の一致、利益の為の協力関係に過ぎない彼等にとっては仕方のない事だった……。

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

「■■ーー!」

 

ぶつかり合う刃とアーム。その度に沸き立つ観客の声援。エキシビションマッチという建前がある事も手伝って戦闘は完全に見世物となっていた。

 

「流石に博覧会に出てくる機体だけあって一筋縄じゃいかないか…」

『■■■■!」

「……っ…会話に応じてくれる味方も敵もいないってのは案外悲しい…ねッ!」

 

敵であるマシン…通称『パンツァー』が接近しアームを振るう。その一撃を後ろへ跳躍する事で回避し、着地と同時に構え直す。

パンツァー…というかアヴニールもこれがただの戦闘ではなく、観客のいる会場で行うエキシビションマッチである事を十分に理解している(というかアヴニールから言い出した訳だしね)為か、周りへの被害が著しいビーム砲は使ってこない為攻撃への対応は普段より幾分か楽になっている。

……勿論、制約があるのは私もだけど。

 

(大型マシンは関節とかメインカメラとか狙うのが定石だけど…そんな戦法じゃパンツァーの欠点は見せる事が出来てもアルマッスの強さを見せる事は出来ない…)

「■ーー!」

「……だったら…取れる手は一つ…!」

 

距離があるのを確認した後、深呼吸をし心を落ち着ける。そして、アルマッスを握り直して走りつつ呟く。

 

「……『天舞弍式・椿』」

 

アーム、胴体、脚部に一撃ずつ流れる様に剣戟を放つ。当然それがパンツァーの装甲を破る事は無く、高い金属音を立てるだけに留まる。

…それで良い。反撃とばかりに体当たりをかけてくるパンツァーの攻撃を前方斜めに跳ぶ事で、すれ違う様に回避しながら更に一撃。今度はパンツァーの胴体側面装甲にうっすらと傷跡を残すも、やはりほぼ無意味に終わる。

私の攻撃にパンツァーのAIは不可解さを覚えたのか、距離を取ろうとする。--------それこそが、私の狙いだった。

 

「相手が生物なら今までの行程でダメージを蓄積出来たんだけどねッ!」

「ーー!?」

 

アルマッスの出力を上げ、ステージの床を蹴って一気に肉薄する私。先程よりも素早く、力を込めた剣戟を次々と放ち、パンツァーが反撃をする前に立ち位置を変えて次の連撃を叩き込む。アルマッスの高い性能も手伝ってみるみるうちにパンツァーの装甲に傷跡が増えていく。

 

「■■ーー!?」

「悪いけどッ!このままッ!決めさせてもらうよッ!」

 

床を踏みしめ、パンツァーの隙を突き、意識をパンツァーだけに集中させる。

背部装甲に逆袈裟を打ち込み、そのまま真上へ跳躍。全身の装甲に傷を受けたパンツァーは私が空中に跳んだ事を最大のチャンスだと判断しアームを掲げる。

--------それが、パンツァーの最後にして最大のミスだった。今まで余計な騒動を起こさぬ為に使わなかった翼を一瞬のみ展開し、全速力で下降。その勢いのまま装甲をしたたかに斬りつける。

 

「いっ……けぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

アルマッスの出力を最大まで上げ、下降時の一撃で出来た大きな傷へ全力でアルマッスを振るう。ビームを纏った刃と装甲の激突により激しいスパークが舞い上がる中、私はただ装甲を斬り裂く事だけに意識をつぎ込み、持てる力のままに振り抜く。

そして……

 

「はぁ…はぁ……」

「■■…■…………」

 

装甲ごと胴体を半ばまで斬り落とされ、バチバチと音を立てながらステージへと沈むパンツァー。アヴニール社製の新兵器を打ち倒した私…そして、その装甲を正面から斬り裂いたアルマッスは会場からの大きな拍手に包まれていた。

 

 

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

ステージに沈むパンツァーの姿を見て絶句するアヴニールサイドの三人。だがそれも無理からぬ事だった。元々計画では完封する予定だったのだから。

 

「おい…これはどういう事だ!?中小企業の作った武器程度にやられる兵器など生産していないと言ったではないか!」

「まさかあれだけの出力を持っているとは…使い手武器共に流石ですね…」

「何を呑気に絶賛しているんだ貴様は!?」

「そう耳元で怒鳴らないで下さい。自慢の兵器がやられたのです、悔しいのは私も一緒ですよ」

 

確かにガナッシュの顔には苦渋を飲まされたかの様な表情が浮かんでいた。だが、別にマジェコンヌは悔しさを共有したかった訳でも同情してほしかった訳でもない。

圧倒的な勝利。彼女が望んでいたのはただそれだけだった。

 

「……ええぃ!ならばアレを出せ!用意はしてあるんだろう?」

「ですからあれはまだテスト運用すら…」

「完成してあるなら十分だ!いいから出せ!」

「もしもの事があったらどうするつもりなのですか!」

「……いや、出すんだガナッシュ」

 

ガナッシュとマジェコンヌの言い争いに介入する第三の声。勿論それはここにいるもう一人の人物、サンジュのものだった。

サンジュの言葉を聞いたガナッシュは怪訝な様子で彼を見る。彼は今でこそ社長という立場にあるが元々は技術者であり、開発への熱意はガナッシュもよく知る所だった。そんなサンジュが技術者としてはあるまじき選択を勧めている。それがガナッシュにとって不可解だった。

 

「な、何を言っているのですか社長…」

「我が社の機械が人間に劣るなどあってはならん。それにこのままでは我が社がせっかく築き上げてきた評判や地位も落ちてしまう。教会が我々の手から離れてしまった以上、評判と地位まで失えばどうなるかは分かっているだろう」

「……っく!ならどうなっても知りませんよ!」

 

ヤケクソ気味に社長とクライアントの指示を遂行するガナッシュ。敬愛する女神様の為とはいえ、こんなギャンブルまがいの手を打つ事に納得をするなど彼には出来なかった…。

 

 

 

 

ステージ裏で女神化を解き、パーティーメンバーの元へ戻った私を待っていたのは温かな…そして、ちょっと乱暴な皆の歓迎だった。

 

「やったねイリゼ!これはもうネビュラ勲章ものだよ!」

「良くやったわ!これでアヴニールのシェアはガタ落ちよ!」

「やっとあの忌々しいアヴニールに痛手を負わせられたぜ!」

「うん、ってちょ…あの、痛いから皆で背中叩くの止めて…」

 

バシバシと叩かれて前かがみになる私。歓迎されるのは嬉しいけどこの体育会系のノリをされるのは正直ちょっと辛い。だって結構大変な戦いだったんだもん…。

 

「……本当にありがとなイリゼ。これならパッセの今後は明るいよ」

「シアン…ううん、私達だってアヴニールに一泡吹かせる良い機会だったしお礼はいいよ」

「いや、でもお前が勝ってくれなきゃむしろ大ピンチだった訳だし…」

「イリゼの言う通りよ。それに今後は技術者としてじゃなく、経営者として忙しくなるんでしょ?」

「……!…そうだ、そうだったな…」

 

アルマッスはパッセの開発した『商品』であってシアンの趣味でも自由研究でもない。それはつまり今後パッセには様々な依頼が来るという事であり、ノワールはそれを指していた。

 

「中小企業だからって気を抜いちゃ駄目よ?開発の依頼者はそういう事情を気にしてくれるとは限らないんだから」

「まあまあノワール。気持ちは分かりますが今は勝利を喜ぶのも良いじゃありませんの」

「ベール様の言う通りよ、第一まだ博覧会は終わってないんだし」

「…それは…確かにそうね」

 

ベールとアイエフに言われて佇まいを戻すノワール。それを見てノワールってほんと真面目だよねぇ…とネプテューヌと顔を見合わせる私。勝った後だからこその余裕が、その時私達を包んでいた。

 

「でもさ、何か思ってたよりあっさりしてて拍子抜けだよね」

「それつまり私がもっと苦戦するって思ってたって事?」

「あーいやそういう事じゃないんだけどさ…何ていうか、んー…」

「何度かリセットするつもりでボス戦に突入したら一度目で勝てちゃった、的な感じではなくて?」

「そーそれ!さっすがベール分かってるぅ!アイフルっ!」

「何で保険会社出てくるのよ…」

 

……上手い事ボケではぐらかした様子のネプテューヌだったけど、やっぱり彼女的には私は苦戦、或いは負けるんじゃないかと思ってたらしかった。何か悔しい。

 

「とにかくイリゼちゃんも無事で、シアンさんの武器も活躍して、アヴニールさんの兵器も倒せて大団円ですね」

「残念ながらこんぱ、こういう展開の時にはそう都合良くはいかないんだなー」

「え、そうなんですか?」

 

私の事を心配してくれてたらしいコンパ(ほんと良い娘だよ、うん)の言葉に茶々を入れるネプテューヌ。その言葉を間に受けてコンパが聞き返した時--------ステージ奥の壁が崩壊した。

 

『……ーー!?』

「ねぷぅ!?な、何事!?」

「わわっ!?ほんとにねぷねぷの言う通りになったです!?」

「え…まさかわたしのせい!?フラグ成立しちゃった!?」

 

突然の事態に動揺する私達。特にネプテューヌは自分が言った事がすぐに実現した為特に驚いていた。

同然ながら動揺したのは私達だけではなく、会場の観客や出展者も事態に慌てふためき、会場内が騒然とする。……が、それに気付いた私が何かしなくては、と思った時には既に動き出していた人達がいた。

 

「ケイ!避難の指示を全体に出して頂戴!」

「分かってる!避難誘導は頼んだ!」

「ノワール、わたしも手伝うわ」

「わたくしも協力致しますわ」

 

避難経路を伝え、混雑しない様全体に指示を出すケイさん。ノワールを中心に観客と出展者を落ち着かせながらも避難誘導をする三人の女神。国のリーダーである女神と教祖はこの緊急事態にあっても最優先すべき事を即座に判断し動いていた。

 

「凄い…流石女神と教祖……」

「イリゼよ、彼女等にほおけている場合ではないぞ」

「そうよ、この人数を三人で捌ける訳ないし私達も行くわよ!」

「う、うん!ほらネプテューヌとコンパも急いで……」

 

 

「ハーッハッハッハッハ!避難誘導も結構だがこいつの相手もしてもらおうか!」

 

忘れもしないその高笑い。もしかしたらいるかもしれないと推測していた人物の声が会場へと響き渡る。

そして、壁が崩壊した事で舞い上がった煙が収まった時、ステージにはその声の主である人物、マジェコンヌとキラーマシンらしくありながらも何か禍々しさを感じるマシンの姿があった。




今回のパロディ解説

・ネビュラ勲章
機動戦士ガンダムSEEDシリーズに登場するザフトの勲章の一つ。設定上二階級特進レベルの章らしいので、ネプテューヌの台詞は言い過ぎですね。…イリゼ死んでませんよ?

・「〜〜分かってるぅ!アイフルっ!」
株式会社アイフルのCMの一つのパロディ。流石にCMのワンフレーズを細かく解説出来る程私の頭は宜しくないので、すみませんが気になった方は自力で調べて下さい。
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