超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第四十六話 記録者の解放

疲労困憊、九死に一生、命からがら…とにかく、ギリギリの所で命拾いした私達が向かった先は勿論パーティーの拠点であるコンパのアパート。そこへ辿り着いた時、私達は既に限界を超えていた疲労と緊張の糸が切れた事により、半ば倒れこむ様に一斉に入ろうとするという少々滑稽な集団と化していた。…人間限界突破すると色々気にならなくなるんだね…。

 

「やっと着いたぁ…冷たいプリン…」

「プリンって…水じゃないのかよ……」

「わたしも、もう一歩も動けないですぅ…」

 

一番最初に口を開いたのはネプテューヌ。途中まで私が抱えていたとはいえ、女神の力を奪われた上に騙されたという精神的負担、そして逃走劇という形で私達同様に疲労していた。彼女の言葉に突っ込むアイエフも同意するコンパもその声には気力が感じられない。

 

「流石の私も、もう駄目だと思ったわ…」

「ほんと、今回はマベちゃんの奇策とMAGES.の支援に助けられましたわ…」

「貴女、いつもあんなの持っているの…?」

「忍としてどんな事が起きても対応出来る様にはしてるんです。…まぁ、今回は大きな隙が出来たからこそ成功したんですけどね」

 

マベちゃんの言葉により皆の視線が私に集まる。彼女の言った大きな隙とは即ち、私の女神の力をコピーしようとしたマジェコンヌが吹き飛ばされた事だった。私は何かした覚えはなく、マジェコンヌがわざと吹っ飛んだなんて事もあり得ない。だからこそあの瞬間の出来事は不可解だった。

 

「…あの、分かってると思うけどあれの説明求められても応えられないからね?」

「やはりか…まあ、あれが私達にとっての追い風であった以上、急を要する案件でもないだろう」

「それよりも問題はねぷ子の力が奪われた事と魔王の事ね」

 

全員が発していたぐでーっとした空気はアイエフの言葉で霧散…とまでは言わないものの、ある程度薄れる。今までも正面からやり合うのは危険だったマジェコンヌが更に力を付け、尚且つ魔王という強大な戦力を得た事は正にゲイムギョウ界の危機と言って差し支えないレベルとなっていた。

 

「まさかネプテューヌもイリゼもあそこまで聞き分けのない子だったなんて…」

「結果的にコピーされなかったとはいえ、イリゼの力までマジェコンヌが得ていたら本当に一貫の終わりでしたわね」

「二人揃って駄女神ね…」

「うぅ、何この言われよう…」

「女神の皆さんは厳しいね…」

 

三人の辛口コメントに揃ってしょぼーんとする私とネプテューヌ。ただ、コメントの割に三人共声音が刺々しくなかったのは私達なりの想いを理解してくれているから……だと、思いたい。

と、そこで喋る本…もとい、封印状態のイストワールさんが口を開く。

 

「あの…お疲れの所申し訳ありませんが、事が事なので一刻も早く私の封印を解いて欲しいのですが……」

「あ、そうそういーすんもいるんだった。忘れててごめんね」

「そうです!こっちにはいーすんさんがいるです!いーすんさんなら何とかしてくれる筈です!」

「…あまり過度な期待はしないで下さいね?勿論打てる手は全て打つつもりですが…」

「えー、じゃあ某三姉妹作品位の期待をしておくね」

 

姿形は見えないものの、コンパの畳み掛ける様な期待に若干困った様な様子を見せる(声音から判断してるから聞こえさせる、の方が良いかな?)イストワールさん。ネプテューヌの発言はともかく、期待されないのは複雑だけど期待され過ぎるのもそれはそれで辛いよね…。

 

「それじゃ早速…っていーすん、封印てどうやって解くの?」

「ユダシステム、リリース!…とか言えば良いんじゃない?」

「精神を不安定にさせて霊力を逆流させれば良いのでは?」

「コマンド種族のクリーチャーを出せば良い筈よ」

『…………』

 

三連続でボケを言い放つ女神三人に私達は辟易とする。ネプテューヌが普通の事を言ったタイミングでこうもボケるって…やっぱ女神は定期的にボケないといけないルールでもあるのかな…。

 

「…こほん、封印を解く方法ですが…」

「あ、ボケ無視するんですね…」

「当たり前です。…ネプテューヌさん、鍵の欠片は持っていますか?」

「うん、全部持ってるよ」

「では、その鍵の欠片を組み合わせてみて下さい。鍵の欠片を組み合わせる事で一つの鍵になる筈です」

 

鍵の欠片…というからには鍵に関係してるんだろうなぁ…とは思っていたけど、関係するどころか完全に文字通りの物だった事に若干驚く私。けど、持ち主のネプテューヌはそこまで意外ではなかったらしく早速鍵の欠片を取り出す。

 

「って事はその組み合わせた鍵を本に付いてる鍵穴に入れて外せば良いんだね!」

「立体パズルみたいです」

「えーと…これがこうで…こっちがこうでしょ?んと…あー…」

 

四つの鍵の欠片をテーブルに並べ、組み合わせ始めるネプテューヌ。しかし鍵の欠片は案外複雑且つ上下表裏が不明だった為か中々一つにならず、嵌めてみては外し、外しては組み直す、という作業を唸りながら繰り返している。

 

「…えっと、これはこっちではないか?」

「あ、じゃあこのパーツはこっちじゃない?」

「じゃあ、このパーツは?」

「向きを逆さにすれば、ここに入る筈」

 

中々進展しないネプテューヌの作業にしびれを切らした様にMAGES.、マベちゃん、ノワール、ブランが次々と手を出し、ネプテューヌの代わりに鍵を組み合わせていく。三人寄れば文殊の知恵なんて言葉がある事からも分かる通り、人数が増えた事で進展速度は格段に上昇していた。

 

「段々鍵らしい形になってきたね、残りは後一つ?」

「えぇ、これが最後のパーツよ」

「ではあいちゃん、最後は二人の共同作業ですわ」

「べ、べべべベール様と共同作業ぉ!?」

「あら、何を照れていますの?相変わらずあいちゃんは可愛らしいですわね。…はい、完成ですわ」

 

顔を真っ赤にするアイエフと共にわざわざ二人で最後のパーツを嵌めるベール。…もうこの二人は入籍しちゃえば良いんじゃないかな、チカさんと一悶着ありそうだけど。

 

「うぅ…わたしが作ろうと思ってたのにー…むー…」

「ごめんなさい、じれったくてつい…」

「じゃあ、ねぷねぷはいーすんさんを解放する係です。はい、鍵ですよ」

「ありがとうこんぱ!やっぱり持つべきものはこんぱだよね!」

『…ちょろい(わ)ねネプテューヌ……』

 

ほんわか笑顔で鍵を渡してくるコンパにころっと態度を変えるネプテューヌ。それを見て皆で苦笑する中私とノワールだけは突っ込みを入れた。…そういえばノワールとは偶に気が合うなぁ…。

 

「それじゃ、開けるよいーすん!」

「はい、お願いします」

 

無駄に振り上げる行程を挟んだ後、本の鍵穴に完成した鍵を差し込み回すネプテューヌ。その鍵が約180度程回った辺りでかちゃり、と音が鳴り、次の瞬間には本を閉じた状態にしていた留め具が外れる。

そして……

 

「…お初にお目にかかります。わたしがいーすんこと…イストワールですヽ(^ー° )v」

「…って、なんか期待してたのと違ーーう!!」

 

真のイストワールさんとのファーストコンタクトは、ネプテューヌの突っ込みで幕を開けたのだった。

 

 

 

 

「ふぅ…やっぱり自由に動けるのは気分が良いですね(^-^)」

「何か前より軽くなってるし台詞に顔文字付けてキャラ付けしてるしやっぱなんか違う…」

 

イストワールさん解放から数分後、凝った身体をほぐすかの様にストレッチらしき運動をしているイストワールさんに対し、ネプテューヌはまだぶつぶつと突っ込みを入れていた。…けど、まあ気持ちは分からないでもない。何故なら本から解放された、クリーム色の髪に薄い青の瞳を持つイストワールさんはまるで、妖精の様な小さく幼い見た目をしていたのだから。

 

「いーすんさん、ちっちゃくて可愛いですぅ!」

「イストワール、復活してすぐで悪いんだけど、マジェコンヌとあの魔王ユニミテスをどうにかしてくれない?ついでにねぷ子の女神の力も」

「…あれ?聞き違いかな…今、わたしがついでだった様な…」

 

珍しく順応が遅いネプテューヌを差し置いて本題に入る私達。あの高慢なマジェコンヌに封印され、解放の為の鍵も隠蔽される程の存在であるイストワールさんならば一発で全て解決、とはいかずとも何とかしてくれるかもしれない…と私達が思うのもある意味当然だった。…だが、

 

「申し訳ありませんが、わたしにそのお願いを叶える事は出来ませんm(_ _)m」

「困るわ、わたし達は貴女の力が頼りで復活させたのだから」

「マジェコンヌに封印されていた以上、全く何も出来ないという訳ではないのではなくて?」

「そう、ですね…。では、お話しましょう。わたしには、貴女達に話さなければいけない事がたくさんあるんです( ̄^ ̄)」

 

佇まいを正し、真剣な表情を浮かべるイストワールさん。それを見て私達も各々座り、しっかりと話を聞ける様にする。何を話すかは分からないものの、彼女の話は重要なものだろうというのを自然に感じられる事が出来ていた。

 

「…とはいえ、全て話すと物凄い時間がかかりますし正直わたしが知っている事全てが教えなければいけない事柄、という事もないと思います。…どこから話せばいいんでしょう?(・・?)」

「え、いやそれを聞かれても…ならこっちから質問する形にする?」

「はい!じゃあわたしが質問するです!いーすんさんは何者なんですか?」

「いきなり直球な質問ね…」

 

律儀に手を挙げた後に質問を投げかけるコンパ。ブランはそれを直球、と言っていたけどイストワールさんはある程度その質問を予測していたのか頷いた後話し始める。

 

「はい。…皆さん、マジェコンヌが魔王を顕現させた時、わたしの何を利用すると言っていたか覚えていますか?(・◇・)」

「えーっと…確かいーすんの記憶をじゃないっけ?」

「え?違うよネプテューヌ、記憶じゃなくて記録…あれ、記録?」

「記録で合っていますよイリゼさん。わたしは元々、大昔にとある人物に補佐と世界の記録者としての役目を与えられて生まれた、人工的な生命体なんです(・ω・)」

『人工的な…生命体…?』

 

イストワールさんの言葉を訊き返す私とネプテューヌ。これまでの経緯や見た目から女神同様普通に生まれた存在ではないだろう、と思ってはいたけどこれは正直意外だった。

…が、どういう訳だか不思議そうな顔を見せたのは私達二人だけで、他の皆は何故か「あー」…みたいな表情をしていた。

 

「…あれ?何この反応…人工的な生命体って普通にいるんだっけ?」

「いるっていうか…あ、イリゼは記憶喪失だから分からなくても当然か」

「わたしも分からないよー!」

「はいはい…私達女神も人工的な生命体なのよ。もっと正確に言えば『人々に望まれた事で誕生した』存在だけどね」

「へぇ…じゃあわたしもなの!?」

 

イストワールさんの出生を聞く流れで女神誕生の秘密まで知ってしまった私達。ネプテューヌはあからさまに驚いていたけど私はぐっと堪える。…だってここで驚いたら今のネプテューヌ同様に微妙に温かい目で見られちゃうじゃん…。

 

「…えと、お話を続けても良いですか?(^_^;)」

「あ、どうぞお願いしますイストワールさん」

「こほん…わたしはその方が表舞台から姿を消しても記録者としての役目、そして時代が移り変わる中で新たに得た仕事をこなしながら長い時を過ごしてきました。そして、今から少し前にマジェコンヌに封印されてしまったという事です(u_u)」

「そうだったんですのね…では次に、マジェコンヌが何者なのか教えて頂けまして?」

 

イストワールさんの話が一区切りついた所で今度はベールが質問をする。私的には大昔、がいつなのかとかその人物は誰なのかとか気になる点はあったけど、マジェコンヌの事に比べれば些細な事なので口をつぐむ。

 

「マジェコンヌが何者なのかは結構濃い話になるので心して聞いて下さいね

(・ω・)ゞ」

「濃い話なの?」

「はい、何せマジェコンヌが今の様な存在になってしまった事は守護女神戦争(ハード戦争)勃発と同じ原因ですから(´・_・`)」

『……ーー!?』

 

その言葉に全員が息を飲む。四女神が互いに互いを敵視し、争い合う事となった原因がマジェコンヌの事と関係しているという事実は誰も予想しておらず、正に青天の霹靂そのものだった。

 

守護女神戦争(ハード戦争)と原因が同じってどういう事よ!?守護女神戦争(ハード戦争)はゲイムギョウ界統一の為に女神が争っていた事を言うのよ?それのどこにマジェコンヌとの関係が…」

「そう思うのも無理はありません。…ですが、変に感じた事はありませんでしたか?ノワールさん達はいつから守護女神戦争(ハード戦争)が始まったか知っていますよね?(・・?)」

「えぇ、確か先代の女神達が統治していた時代の末期だった筈よ」

「そうです。では、そこで一つ妙な事が…もっと言えば矛盾があると思いませんか?{(-_-)}」

「矛盾……あっ!言われてみれば確かに変よ、だって先代がそんなに仲悪かったならイストワールがいたあのダンジョンで揃って修行なんてしない筈だもの」

 

ノワールの発見に私達もはっとする。彼女の言う通り仲が悪いなら同じ場所で修行する訳がない。修行の場なら事故で攻撃してしまった、という言い訳も立つし更に言えば不意をついて致命傷を与えられる可能性も十分にある。…私ならそんな場で修行したくはないね。

 

「じゃあもしかして先代の女神様達が修行したダンジョン、って言うのはガセネタなの?」

「いえ、戦争勃発時期もダンジョンが修行の場として使われていたという伝承も正しいものですよ(・ω・)」

「でもそれじゃ矛盾したままじゃないの?」

 

マベちゃんの疑問もアイエフの指摘も至極当然なものだった。勿論、仲が悪いけど同じ場所で修行したのだ、と結論付けてしまう事も出来なくはないけど現実的ではない。

…けど、矛盾させずに両方を成り立たせる事が出来ない訳ではない。例えば……

 

「…元々先代の人達は一緒に修行する位には仲が良くて、でも何かがあって仲が悪くなり守護女神戦争(ハード戦争)に至ったとかはない?」

「ご明察ですイリゼさん。先代の…というかここ数代の四女神は今のネプテューヌさん達の様に仲が良く、ゲイムギョウ界の覇権争いなど元々考えてはいませんでした

(・Д・)」

「では、その先代の時代に関係性が壊れる出来事があったという事か?」

 

段々と話が核心に近付いている様な感じがする。それは皆も同じなのか今まで以上に真剣な様子を見せ、イストワールさんの次の言葉を待つ。

そしてイストワールさんは告げた。

 

「--------犯罪神とギョウカイ墓場。守護女神戦争(ハード戦争)勃発原因とマジェコンヌが堕ちた原因は共にそれです(-_-)」

 

瞬間、その二つの単語の意味を知る皆が凍りついたのを私は感じた。




今回のパロディ解説

・某三姉妹作品
日常系作品、みなみけの事。過度な期待はしないで下さい、とは言いますが旅の目的の一つであり謎の人物だったイストワールに期待するなというのも無理な話です。

・ユダシステム、リリース
マクロスFの登場キャラ、ルカ・アンジェロー二が三機のゴーストのリミッターを解除する時に放った台詞の一部。このネタは前にも出てきています、何話か分かりますか?

・「精神を不安定にさせて霊力を逆流〜〜」
デート・ア・ライブにおける、封印状態の精霊の力を解放する手段の事。…ですが、主人公サイドは封印が目的なのでこの手段を取る事自体が基本あり得なかったりします。

・コマンド種族、クリーチャー
TCGの一つ、デュエルマスターズにおけるとある種族の総称とカードの種類の事。無論イストワールさんは裏面を見せたカードを重ねて封印されている訳ではありません。

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