超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第五十五話 敵も味方も増えてゆく

灼熱の溶岩に照らされるいくつもの影。その影が響かせる音は……正しく、戦闘のそれであった。

 

「やぁぁぁぁぁぁッ!」

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

「…………」

 

左右から偽者のわたしを狙うわたしと颯爽と登場した少女、ファルコム。対して偽者のわたしは真っ直ぐ前に跳ぶ事でわたしとファルコムの攻撃から逃れる。……が、

 

「そう来ると思ったわ!コンパ!」

「任せるです!」

 

跳んだ先へ走り込んで強襲、偽者のわたしと斬り結ぶあいちゃん。更にそこへこんぱが横から飛び込んで注射器で刺突、偽者のわたしは身体を捻りつつ大きく跳んでわたし達から距離を取る。

 

「あー惜しい、後一歩だよこんぱ!」

「相手は偽者何だし思いっきりやっちゃっても大丈夫よ?」

「それわたしの台詞!わたし以外が言うべき事じゃないからね!?」

「あはは、やっぱりネプテューヌさんのパーティーは良い意味で緊張感が薄いよね」

 

わたしとファルコムが積極的に接近しての攻防…所謂前衛を行い、こんぱとあいちゃんが二段構えの遊撃を行う。数秒で考えたインスタント作戦だけど…案外上手くいくもんだね。

 

「このままなら何とか勝てそうですね」

「うん、定番RPG宜しくちょっとずつ削っていこー!」

「それはあんまりお勧め出来ないかなぁ…」

「え?どして?」

「二人がかりとはいえ貴女達は偽ねぷ子と正面から打ち合ってるのよ?負担は結構なものでしょうが」

「それに遊撃の二人も早い上に飛べる奴が相手じゃかなり集中力がいるからね、長期戦になったらこっちが先にバテちゃうと思うよ」

 

真剣そのものの表情を浮かべているあいちゃんとファルコム。…そう言われると確かにそうかも。さっきはそのまま回避してくれたけど、偽者のわたしと斬り結ぶと結構衝撃あるしこんぱとあいちゃんは偽者のわたし含めた三人の動きを見て素早く動かなきゃだもんね。やっぱ慎重キャラとか経験豊富キャラいると助かるなぁ。

 

「じゃあ短期決戦の方が…おわっ!?…良いの…ッ!?」

「可能なら、ねッ!」

 

いつの間にか距離を詰めていた偽者のわたし。その攻撃を慌ててわたしが防御して、ファルコムが反撃を仕掛ける…けど、偽者のわたしは人間離れした(偽者とはいえ女神だから当然何だけどね)力でわたしを押しきって反撃に対応。その後も深追いしないヒットアンドアウェイを続ける。

 

「な、中々攻撃が入らないですぅ…」

「むむ、せーせーどーどー勝負しろー!」

「いやそれ言ったら四人で一人にかかってる私達の方が全然正々堂々としてないから…」

「正々堂々、ね…」

「……?ファルコム?」

 

いつもの様に敵を前にしながらボケと突っ込みの混じる会話をするわたし達。…と、思いきや新メンバーであるファルコムが何やら思案中みたいな様子を見せる。これは…もしや突破口発見しちゃったパターンかな?

 

「ファルコム、貴女何か良いアイデアでも思い付いたの?」

「アイデアって言うか何ていうか…ネプテューヌさん、ネプテューヌさんにはフィニッシャーになってもらってあたし一人で前衛やりたいんだけど良いかな?」

「え?そりゃわたしは良いけど…一人で大丈夫?わたしの偽者なだけあって強いよ?」

「分かってる、けど多分このまま続けても『優勢だけど手詰まり』って状態からは抜けられない気がするんだ」

 

ファルコムの言う事は頭脳労働担当じゃないわたしでも分かる。今は誰も怪我してないし何度も惜しい所まではいってるけど、ダメージを与えられてる訳じゃないし、さっきあいちゃんとファルコムが言った通り長期戦になったらわたし達が不利になっちゃうもんね。

偽者のわたしが仕掛けてこない様、散発的に牽制を行いつつ会話が進む。

 

「理由は分かったわ、それで具体的な方針は?」

「あたしが偽ネプテューヌさんとやり合って何とか隙を作るからコンパさんとアイエフさんはその隙を広げてほしい。ネプテューヌさんなら一度のチャンスで致命傷を与えられる攻撃が出来る筈だから、それが出来る位の隙にね」

「隙を広げる、ですか…分かったです」

「因みに何で貴女じゃなくてねぷ子がフィニッシャーなのよ?貴女もそれなりに腕が立つ様に見えたけど?」

「えっと…それはその、同じ刀剣類を使う者としてサシの勝負がしてみたくて……」

 

ちょっと照れつつ頬をかくファルコムにわたし達は苦笑する。まぁ、見るからにアクティブな娘って感じだもんねファルコムは。

 

「よーし、それじゃ決まった事だし早速作戦決行だよ!」

「えぇ、あんたがフィニッシャーなんだから変な所で出しゃ張るんじゃないわよ?」

「ねぷねぷの出番は作ってあげるですから待ってて下さいです」

「うん、期待してるよ。ふぁいとー!」

 

わたしの声援に反応する様に偽者のわたしに走り込む三人。対する偽者のわたしは姿勢を低くして突進をかけたけど…それを正面からファルコムが受け止め、斬り結ぶ。

 

「…………」

「……っ…心構えはしてたけど…やっぱり攻撃が重いね…これは受け方に気を付けないと…」

 

力による押し合いになる前にバックステップで下がり、仕切り直すファルコム。偽者のわたしは大太刀のリーチを活かして即座に追撃するけど…ファルコムは剣を斜めに掲げて大太刀を滑らせ、更にそこから攻撃に転じる。…あれって擦り上げ技って奴?

 

「…って、ゆっくり観戦してる場合じゃないんだっけ…」

 

太刀を握り直すわたし。その間にもファルコムと偽者のわたしの攻防が続く。

斬り結び、受け流し、振り払う。そんな一進一退の均衡を崩したのは…偽者のわたしだった。

 

「くっ…思ったより反応が速い…ッ!」

「……っ!」

「な……ッ!?」

 

互いに刃を打ち合った事でファルコムと偽者のわたしが同時に仰け反る形となる。ファルコムはそこで何とか踏ん張って再度の攻撃にかかろうとするけど…それよりも偽者のわたしは早かった。バランスが崩れている事を逆に利用しファルコムにサマーソルトキックを叩き込む。

 

「あぐ……ッ!」

『ファルコム(さん)!?』

「……ッ!もう見てられな--------」

「…もらったよ、偽ネプテューヌさん」

 

大太刀を上段に構えてファルコムを両断しようとする偽者のわたし。わたし達は咄嗟に駆け寄ろうとするけど…そこで聞こえたのは、ファルコムの笑みを含んでいるかの様な声。

一閃。ファルコムの手元から剣戟が放たれ、偽者のわたしの腹部を裂く。決してその一撃は致命傷ではなく、偽者のわたしからすれば十分継戦可能な程度の被害。…でも、『隙』としては十分どころか十二分のものだった。

 

「皆!スイッチ!」

「ねぷねぷ、覚悟ですッ!」

「日頃の鬱憤、晴らさせてもらうわッ!」

 

わたし的に何だか物凄く納得のいかない声を発しながら追撃をかけるこんぱとあいちゃん。偽者のわたしは迎撃やまともな回避が間に合わないと悟ったのかひっくり返るかの様に後転。岩の地面に身体をぶつけつつ下がるという無理矢理な事をしてでも、確実にダメージとなる二人の攻撃を避けようという思惑があったんだと思う。流石わたし、判断力もあるね!…だけど、やっぱり偽者より本物のわたしの方が強いかな。だって…

 

「そう来ると思ってわたしが走り込んでたんだもんね!」

「……っ…!?」

「わたしは各次元に一人で十分だよ!『クリティカルエッジ』ッ!」

 

目を見開く偽者のわたし。そこへわたしから放たれる怒涛の四連撃。斬り裂き斬り上げ斬り落とすその連打は確実に偽者のわたしを捉え、最後の一太刀が振り抜かれた瞬間、偽者のわたしは地面に仰向けに倒れて…モンスター同様に消滅した。

 

 

 

 

「ふぅ、何とか倒せたね…」

 

偽者のわたしが消滅し、モンスターが寄ってきていない事を確認した後やっとわたし達は一息つく事が出来た。うぅ、戦闘中は気付かなかったけど物凄く汗かいてるじゃん…ベタベタして気持ち悪い……。

 

「偽者とはいえやっぱり自分と戦うって変な気分ー」

「そう?わたしは戦いやすかったけど?」

「あいちゃん活き活きしてたですね…」

「さっきも鬱憤晴らすとか言ってたよね…あいちゃんの鬼!悪魔!冥界住人!」

「あ、こんな所にねぷ子の偽者発見!」

「ねぷっ!?ちょ、あいちゃん止めて!武器の先っちょでツンツンするの地味に痛いんだってば!」

 

カタールを刺してくる(勿論軽くだよ?ブスッとやられたら突っ込みじゃ済まないし)あいちゃんと逃げるわたし。いや…今回はわたし悪くないよね?割と正当性あるよね?

とか思っていたらファルコムが笑い出す。

 

「あははははっ!ほんとネプテューヌさんは相変わらずだなー」

「痛た…って事は別次元のわたしもこんな感じなの?」

「うん、そうだよ。多分どの次元でもそうなんじゃないかな?」

「しかし…先行った二人はどうしたのかしら…」

「ここに来るまで一度も会わなかったですね…」

 

二人、というのはMAGES.とマベちゃんの事。二人共他のゲーム会社の擬人化キャラだしうちと仲悪くならない様悪い扱いはされないと思うんだけ…げふんげふん、これ以上これ掘り下げたら二次創作でもお偉いさんに怒られそうだから止めとこーっと。

 

「…嫌な予感がするね、先を急ごうよ」

「そうね、じゃあ早速…」

「待つです、その前にやる事があるです」

 

先を進もうとする二人を止めるこんぱ。普段周りに合わせるタイプのこんぱがこんな事を言うのは珍しい為、何だろう…とわたし達がこんぱに注目。するとこんぱはファルコムに近付き……

 

「むむむ……」

「えっと…な、何?」

 

ジロジロとファルコムを眺め始めた。…え、どゆ事?これどういう状況?

 

「ど、どしたのこんぱ?何かあった?」

「やっぱりさっき偽ねぷねぷに蹴られた所が痣になってるです」

「え?あ…大丈夫だよ、これ位時々あるし」

「駄目です。今は何ともなくても後で悪くなってくる事もあるです」

「うっ…じゃ、じゃあこのダンジョンから出たら見てくれる?」

「分かりましたです」

 

一体何事かと思ったら、単なる問診だった。拍子抜けっていうかある意味予想外っていうか…まぁそりゃナースさんからすれば結構大切な事かもしれないけどさ。…そう言えば今までボス級を倒した後に続けて探索するって事あんまり無かったし、だからこそこんぱも心配したのかなぁ。

 

「えーと…じゃ、改めて進む?」

「そうだね。…あ、そう言えば職員のおにーさんは?案内担当置いてっちゃって大丈夫かな?」

「大丈夫じゃない?安全地帯に連れてった後ここから先は任せて、って言ったし帰ってる筈よ」

「そっか、じゃあここからは自力で進むしかないね」

 

行き止まりとかモンスターハウスとかに入っちゃったら面倒だけど…だからって職員のおにーさんをまた危険な目に合わせるのも気が進まないもんね。それに自力で道探るのも主人公パーティーっぽいし、MAGES.とマベちゃんの為にもここは一つ頑張っちゃうよー!

 

 

 

 

「……とか思ってたけどやっぱこれ無理無理無理無理ぃぃぃぃっ!」

 

偽者のわたしを倒してから十数分後、先に行った筈の二人を探して奥へと進んだわたし達は全力疾走していた。え、何故って?そりゃ勿論……

 

「何人もの偽者のわたしに追いかけられてるからだよぉぉぉぉぉぉっ!」

「誰に言ってんのよ誰にッ!」

「読んでくれてる画面の前の皆にだよ!…あ、アイテムはっけーん!何かなぁ…」

「アイテム回収してる場合でもないよネプテューヌさん!?」

 

一人ならともかく何人も偽者のわたしがいたら流石にどうしようもない。さっき倒した偽者のわたしに比べると弱いっぽいけど…それを数で補ってるんじゃ難度変わらないじゃん!もっと言えば補って余りある状態じゃん!…ジェリーの気持ちがちょっと分かったよ……。

と、そこで岩で反響してるっぽい声が聞こえてくる。

 

「……にこの数を相手にするのはそろそろ限界かな…」

「だが、何が何でもこの先に進ませる訳にはいかん」

「分かってるって、その為にここに来たんだから」

「頼もしいな。お前とならこの状況を乗り越えられる気がするよ」

「うん、わたしも」

 

明らかに聞き覚えがある声。その声は今わたし達の走っている場所の先から来ているのか少しずつはっきり聞こえる様になってくる。会話内容的に向こうも戦闘中っぽいけど…この状況じゃ合流する他ないよね!

 

「MAGES.ぅぅぅぅ!マベちゃぁぁぁぁん!ヘルプミーッ!」

「えぇぇ!?ね、ネプちゃん…と皆!?」

「味方が増えた事を喜ぶべきか、敵が増えた事に嘆くべきか…」

 

走り抜けた先にいたのは予想通りMAGES.とマベちゃん、偽者のわたし達。そして…何だか不用意に触ったらヤバそうな機械だった。…それはともかく、ひとまず合流するわたし達。

 

「はぁ、はぁ…もー!なんで暑いのに全力疾走しなきゃなのさ!」

「そんな事言ってもしょうがないよネプちゃん…あれ、ファルコムちゃん?」

「二人共久しぶり。もしかして…と思っていたけど、やっぱりネプテューヌさん達に協力してたんだね」

「その場の手助けの筈がいつの間にかレギュラーになっていた訳さ。…まぁ、つまりはいつも通りという訳だ」

 

MAGES.の言葉に苦笑するマベちゃんとファルコム。…一緒にいた時もいつの間にかパーティー入りしてたのかな?

 

「悪いけど再開を喜んでる時間はなさそうよ?」

「そうだね…これだけの人数がいるし、取り敢えず一人ずつ倒す?わたし達が二人で戦ってた奴と皆が戦ってた奴が同じタイプなら何とか相手出来る筈だし」

「分かりましたです。……って、あれ?」

「こんぱ、今度はどうしたの?」

「さっきよりねぷねぷの人数が増えてる気がするです…」

『……え?』

 

とんでもない事をこんぱが言い出す。もしそれが本当だったらほんとに冗談にならないけど…さ、流石にそんな事ないでしょ。暑いしちょっと疲れてるから見間違えただけだよ、うん。

 

「…た、確かに増えてる……」

「これは困ったね…」

「あいちゃんとファルコムまで言うの!?ぜ、絶対そんな事ないって!わたし達を追いかけて来たのは六人、MAGES.とマベちゃんが戦ってたのが三人だよ?そして今わたし達の前にいるのは十人!ほら、やっぱり増えて……るぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

増えてた。九人じゃなくて十人になってた。目を擦っても深呼吸しても十人だった。多分セーブ&ロードしても十人だと思う。…で、でもまだ一人増えただけだよね!

 

「……あ、また一人増えたです」

「何で!?まさかの増殖パターンなの!?」

「その様ね、恐らくどれかが本体なんだと思うけど…どれが本体か全く分からないわ…」

「となるとやはり各個撃破するしかないが…今後も増えるとなると骨が折れるどころではないぞ?」

「でもやるしかないね、あたしはただやられるなんて嫌だし」

「それに、わたし達が戦わないとプラントが壊されちゃうからね」

 

やっぱりここにあったのは例の地下プラントだった。という事はつまり、やられたら勿論アウト、逃げるのは困難、でも倒すのも難しいっていう超ハードモードに突入してる訳だね!もうねぷ子さんさっき偽者のわたしを倒したところからやり直したいよ!

 

「はぁ…こうなったら覚悟決めるしかないね、皆帰ったら遊びに行こうね!」

「ネプテューヌよ、それは死亡フラグだ…」

「それに他の大陸にも手助けに行くんだからその余裕はないわよ」

「冗談冗談、ちょっと場を和ませたかっただけだよ」

 

太刀を軽く振って構えるわたし。それを合図にしたかの様にこんぱ達も、偽者のわたし達も各々の武器(偽者のわたしは皆大太刀だけどね)を構え、臨戦態勢に入る。そして、次の瞬間…激突。わたし達と偽者のわたし達による集団戦闘が始まる。

 

 

さてと…イリゼ視点ならここで終わる所だけど、わたし視点だからまだ終わらないんだよね!ふふーん、今回は思い付きで次回予告しちゃうよ!えーっと…

『プラネテューヌでの戦闘も遂に大詰め。ネプテューヌ達は連携で戦力差を補うも、断続的に増える偽ネプテューヌに少しずつ追い詰められていく!そんな時、ネプテューヌ達の元に現れた意外な援軍とは!?次回超次次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative、タイトルは…普段先に公開したりはしてないから秘密!』…という訳で、お楽しみに!




今回のパロディ解説

・スイッチ
ソードアート・オンラインシリーズに登場する劇中ゲームのシステムの一つ。当然ソードスキルのない本作ではスイッチも存在しない為、単なる連続攻撃となっています。

・モンスターハウス
ローグライクゲームや不思議のダンジョン等に登場するモンスターの巣的な場所。原作を知っている方は分かると思いますが、原作にモンスターハウスは存在しません。

・ジェリー
トムとジェリーシリーズの主人公の一人(一匹)、ジェリー・マウスの事。説明は不要でしょう、追われるネプテューヌはよく追われてる彼の事を連想したのです。

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