超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第五十六話 本物の女神

「ファルコム、後ろ後ろ!」

「そういうねぷねぷも危ないです!」

 

四方八方から放たれる剣戟に互いにフォローし合う事で辛うじて対応するわたし達とプラネテューヌ担当パーティー。十人以上に及ぶ偽者のわたし達との開戦からおよそ十数分、もしかしたらそれ以上経っていた。

 

「一向に減らないね、偽者のネプちゃん達…」

「こっちが倒すペースより増えるペースの方が多いからでしょうね…何で増える上に一人一人が雑魚じゃないのよ…」

「そりゃ偽者でもわたしだもん」

「何を誇らしげに…その所為で劣勢なのだぞ…」

「というか、雑談してる余裕はないよ…っ!」

 

あいちゃんの言う通り、偽者のわたしはそこらのモンスターより強いから倒すのに時間がかかるしいつの間にか増えるせいで全く状況が良くならない。むむ、何で戦えば戦う程不利になってるのさ!そんなのバジュラだけで十分だよ!

 

『…………』

「っていうか同じ顔の人が十何人も一斉に襲ってきたら普通にホラーだよ!しかもわたしの顔だし!」

「もうこれストレス解消とか言える次元じゃないわよ…」

「ダンジョン出たらちょっとお話しようかあいちゃん!」

「ねぷねぷがいっぱい過ぎて…ねぷねぷねぷねぷですぅ…」

『ちょっ……(こんぱ・コンパ・コンパさん)!?』

 

うちのパーティーの生命線の一つ、ヒーラーのこんぱが壊れかけてた。…と思ったら割と嬉しそうな顔してた。こんぱ…わたしを好き好んでくれるのはほんとに嬉しいけどこの状況でそれはちょっとアレだよ……。

 

「これは…色んな意味で思ったより不味い戦況だね…」

「忍者としては逃げるという選択肢を推したいけど…プラントあるし無理だよねぇ…」

「…こんな時こそ主人公の特権『ピンチの時に都合良く覚醒』に頼るしかないね……」

「頼るってねぷ子、あんた覚醒なんて出来るの?」

「うん、何せ守護女神のわたしにはネクストフォームという次の段階の力が……」

『それ結構後の作品ですよねぇ!?』

 

真面目な事言ったりボケたり突っ込んだりするわたし達。…活字だから全然分かんないと思うけど、これ偽者のわたしと激戦繰り広げながら言ってるんだからね?わたしとかボケてる最中に鼻先斬られそうになってたし。

スピードに定評のあるあいちゃんとマベちゃんが撹乱して、孤立した偽者のわたしをわたしとファルコムで強襲、こんぱとMAGES.が適宜援護するっていう作戦そのものは多分間違ってないと思うんだけど…さっきも言った通り倒す速度より増える速度の方が早いんだよね。ゲームで言うと『パーティーの出せる総火力<敵の自動回復スキルの一度の回復量』みたいな感じ?…偽者のわたしの人数には多分制限がないから実際にはそれより不利なんだけどさ。

 

「ま、まぁボケは置いといて…誰か逆転する手段思い付かない?」

「残念だが思い付かない、今回は状況も条件も悪過ぎる…」

「い、今更ですけど…話し合いは無理ですか…?」

「いや話し合いも何もずーっとだんまりじゃん偽者のわたし…」

 

無言で無表情の偽者のわたしが話し合い…というかまず話をしてくれるかどうか怪し過ぎる。わたしは勿論出来ないけど心理戦や権謀術数にも反応しそうにないし、本当に厄介な敵だよね…。

…と、ここまではまだ何とか持ち堪えてきたわたし達だったけど、連戦の疲れと数の差で段々と押され始めていく。

 

「わ…わわっ!?」

「こんぱ大丈夫!?…くっ……!」

「いよいよ余裕が無くなってきたわね…これは覚悟しなきゃかも…」

 

コンビネーションを成り立たせるだけの余裕が無くなってしまい、一箇所に固まるわたし達。こうしていれば防御だけは楽だけど…このままじゃ状況は悪くなる一方だよね…。…はぁ、あんまやりたくないけど仕方ないか……。

 

「……皆、わたしが囮になるよ」

「ねぷ子……?」

「わたしの偽者な訳だしこの中じゃわたしが一番狙われ易いと思うんだ。だからわたしが引きつけてる間に皆は勝てる手段を用意して」

「ちょ、ちょっと待ってよネプちゃん、囮って…偽者全員を相手にするつもり?」

「勿論。というか数人だけ引きつける方法なんて思い付かないしね」

 

そういう事を言いたいんじゃない。そんな表情をマベちゃんは浮かべていた。…ううん、マベちゃんだけじゃなくて皆がそんな顔をしてた。…そうだよね、わたしだって皆が同じ様な事言ったら多分同じ顔をするし、わたしの場合自己犠牲の前科…って言っちゃうと悪いみたいだけど…があるもんね。……でも、

 

「…わたし記憶喪失のままだし難しい事も分かんないし、何より責任ある立場なんて面倒くさいけどさ…それでも、こうして旅してきた中でちょっとずつ自分が女神だって自覚を持ち始めたんだ。だから、こういう時はわたしが一番頑張らなきゃ駄目なんだよ」

「む、無理しちゃ駄目ですよねぷねぷ!」

「ネプテューヌさん…ネプテューヌさんはそれで良いの?」

「女神とて人だ。そんな選択をしなければいけない道理はないだろう」

「ありがとね、気にしてくれて。でも大丈夫、女神だからってのも勿論あるけど…一番の理由はわたしがそうしたいからだもん!小難しい理由なんて二の次だよ!」

 

視線を皆から偽者のわたし達へと移す。…啖呵切ったとはいえ、やっぱり一人で囮なんて怖いからね。決心が揺るがないうちに行動に移さないと。

そう思ったわたしは偽者のわたし達へと向かって走り出--------

 

 

「やはり彼女こそ私達の女神、パープルハート様だ!女神様をお守りしろっ!」

 

響き渡る声。偽者のわたし達の後ろから放たれた光芒。全く別の方向からの攻撃に散開する偽者のわたし達。

--------わたし達と偽者のわたし達との激突に新たな風を吹き込ませたのは、紫の目立つ装束を纏った者達。そう、プラネテューヌの教会職員達だった。

 

 

 

 

増援とか援軍ってラノベでも漫画でも現れると大概来た側有利になるよね。そりゃ戦力が増えるんだから当然といえば当然だしより状況が悪くなるならそもそも来ないだろう、って話だけどさ。…けど、この有利になるってのは単に戦力が増えるから、だけじゃなくて味方には安心感が、敵には危機感が芽生えるからというのもあると思うんだ。……なーんて当たり前の事をわたしが思ったのは、勿論それを実感する機会があったからなんだよね。

 

「小型化された……」

「光学兵器……」

 

突然現れた職員の人達はそれぞれの武器で偽者のわたし達を牽制しながらわたし達の元へとやってくる。…因みに今感銘を受けてたのはあいちゃんとMAGES.。ほんとこの二人はこういうの好きだよねぇ…わたしもちょっとだけ分かるけどさ。

 

「お待たせ致しましたパープルハート様!」

「ご無事ですかネプテューヌ様!」

「遅くなって悪いね可愛いろりっ娘…ではなく、遅くなって申し訳ありません女神様!」

「え、あ、ええっと…ちょ、ちょっとタンマ!」

 

わたし達に合流するや否や、わたしを取り囲んで一斉に話しかけてくる職員の人達。確かに教会も総力をあげてどうのこうのって話を聞いた様な気はするけど…こ、これどういう状況?っていうかわたし聖徳太子じゃないからいっぺんに言われても困るよ…。

 

「…………我等もご協力しますパープルハート様!」

「…………貴女には擦り傷一つさせませんよネプテューヌ様!」

「ちょっとタンマって文字通りの意味じゃないよ!?仮にそうだったとしてももうちょっと待とうよ!」

「ねぷねぷが普通の突っ込みしてるです…」

 

こんぱが変な所に食いついてくる。…いやそれはわたしも思ったけどね!自分への理不尽なボケには突っ込む事のあるわたしだけどそうじゃないボケまで突っ込むのはわたしの管轄じゃないし。恐るべしだよ職員の人達。…わたしの国の教会職員って考えると納得出来そうな気もするけど。

 

「話進まないわね…取り敢えず、貴方達は味方と思っていいのかしら?」

「勿論。パープルハート様とそのお仲間であれば我々が味方しない理由ばありませんから」

「それは心強いね。これならあたし達も十分に戦えるし」

 

職員の人達は合計で凡そ二十人、対して偽者のわたしは現在十五人。わたし達も含めれば十人以上こっちが有利になっていた。…そういえば、複数人で一人(一体)と戦ったり数に対して連携で応戦したりは今までよくあったけど、数に数で対応するのは初めてかも…。

 

「では女神様!私達の指揮を!」

「え…し、指揮?って言うかさっきの言い直しといいもしや職員のおにーさん!?」

「あ、気付いてくれました?…女神様が戦っているのに私達教会職員が安全地帯でゆっくり出来る訳ないじゃないですか」

「いやそれより…お前今おにーさんって呼ばれていたか!?ネプテューヌ様におにーさんなどと…何と羨ましい!…じゃなかった、何とおこがましい!」

『そうだそうだ!羨ま…おこがましいぞ!』

「えー…何この状況……」

 

職員のおにーさんが他の職員の人達に責められていた。何か内容的にわたしの呼び方が発端っぽいけど…これは自意識過剰とかじゃなくて普通にわたしの事好き過ぎない…?

 

「ねぷ子、これさっさと指示出さないと余計面倒な状況になると思うわよ」

「だよねぇ…うーん、単純な指示でも良いのかな?」

「良いんじゃないかな?職員な訳だしネプちゃんの考えを察してくれるよ」

「そっか、じゃあ…職員の皆はわたし達の援護をお願い!…これは皆と上手く連携出来るか不安だからだけど、良いかな…?」

『勿論ですとも!』

 

ついさっきまで言い争い(?)をしていた職員の皆が一斉に動き出す。…鶴の一声ってこんな感じの事言うのかなぁ。

 

「ネプテューヌ、我等も動こうではないか」

「っとそうだね、行くよー皆!」

 

援護させといてわたし達が何もしない訳にはいかない…っていうか何もしないんじゃ援護の意味がないから偽者のわたし達へ突撃する。さっきまでとは違って目の前の一人に集中出来る分、格段に戦い易くなっていた。

 

「物量差さえ無ければ偽者のネプテューヌさん程度…!」

「余裕…じゃないけど何とかなるですぅ!」

 

職員の皆の援護を受けながら偽者のわたしへと攻撃をかけるわたし達。偽者のわたし達はそれに最初数人で動く事で対応しようとしてたけど…あいちゃんとMAGES.の魔法、それに職員の皆の使うビーム兵器の飽和攻撃を受けて堪らず分散、そこをわたしを始めとする前衛メンバーに叩かれて次々とダメージを受けていた。そして当然、限界を超えるダメージを受けた偽者のわたしは消滅していく。

…けど、有利なまま終われないんだなーこれが。

 

「残り十人を切った!いけます、いけますよネプテューヌ様!」

「我等の力を見たか偽者…うおっ!?」

「…………」

 

偽者のわたし達の最後方にいた一人が飛翔、職員の皆へと強襲をかける。結構距離があったおかげか職員の皆は一人が武器を斬られた以外の被害は受けなかったけど…その動きはちょくちょく増えてた偽者のわたしのそれじゃなかった。

 

「この動き…ネプテューヌさん、今の偽者はさっきの…!」

「うん、もしかしてあれが親玉だったりするのかな?」

「多分そうね、急いであいつの対応するわよ!」

 

反転して親玉らしき偽者のわたしへと接近するわたし、こんぱ、あいちゃん。他の偽者のわたし達はそれを邪魔しようとするけど、MAGES.、マベちゃん、ファルコムが押し留めてくれる。

 

「す、すいませんパープルハート様…」

「気にしないで!それより皆は援護の続行お願い!皆はわたしが守るから!」

「ねぷねぷ、今の言葉格好良いです!」

「ふふーん、有言実行しちゃうからねー!」

 

追撃をしようとしていた偽者のわたしへわたしが飛び蹴り。これ自体は軽々避けられちゃったけど、追撃の阻止は成功。更にこんぱとあいちゃんが連続攻撃を仕掛けて職員の皆から距離を取らせる。

 

「…………」

「リーダー同士、正面から勝負だよ!」

「いつからあんたがリーダーになったのよ…ま、良いけど」

「ねぷねぷ、ふぁいとです!」

 

わたしと攻撃対象を切り替えた偽者のわたしが斬り結ぶ。そしてその瞬間にわたしの腕にかかった負荷で確信する。やっぱこの偽者のわたしは最初に戦った奴と同じ位強い…!

 

「こういう時ってネプちゃんは女神らしいよね」

「同感だ、普段が普段だけにな」

「あたし達も負けない様にしないと…ねッ!」

 

ちらりと後ろを見るとMAGES.達が偽者のわたし達を食い止めている。さっすが別次元組、安定して強いよね。

前の戦闘で力押しが無理だと分かっているわたしは偽者のわたしの力を利用して後ろへ跳躍、追って攻撃をしてくる偽者のわたしに対し回転斬りで応戦する。単純な力で負けてるなら別の力も合わせれば良い、ってね。

 

「手助けするわよねぷ子!」

「わたしもです!」

 

弾かれたかの様に互いに後ろに跳ぶわたしと偽者のわたし。そこへこんぱとあいちゃんが走って追撃をかける。更に偽者のわたし達へ飛ぶ職員の皆の射撃。

 

「こういう状況だとさ、負ける気がしないよね」

「あら、言うじゃないねぷ子」

「そう?…やっぱ仲間と一緒に戦えるのはほんとに心強いよッ!」

 

代わる代わる攻撃を仕掛けていたこんぱとあいちゃんが横へと跳ぶ。それに合わせてわたしが突進をかける。これには偽者のわたしも対応が遅れて堪らず交代。そこへ連続攻撃をかける事でほんの少しずつだけどダメージを与えていく。

 

(このままなら…きっと……今っ!)

「……っ!?」

「これが本物と偽者との差だよッ!『デュアルアーツ』ッ!」

 

壁際へと追い込んだ所で足を前に出し、踏ん張って攻撃を中断。その突然の行動に偽者のわたしは即座に反応し、わたしに反撃をかけようとする。…けど、それはわたしの予想通りなんだよね。

わたしと偽者のわたしの間へと撃ち込まれる射撃。勿論打ち合わせした訳じゃない。けど、わたしが信じた通り職員の皆は絶好のタイミングで援護射撃をしてくれた。わたしと違ってそんな事を予想なんてしょうがない偽者のわたしは、突然目の前へ放たれた攻撃に歯噛みするかの様な表情を見せて立ち止まる。そこへわたしは斬撃と打撃の連打を叩き込んで怯ませる。

 

「それに今のわたしはここまで偽者をたくさん作られてちょっと怒ってもいるんだ。だから…今のわたしは、阿修羅すらも凌駕する存在なんだよッ!『デュエルエッジ』ッ!」

 

跳躍し、手を伸ばすわたし。その先にあるのは偽者のわたしが手放してしまった大太刀。それを掴み、全力を込めて横一文字に一閃。その一撃は偽者のわたしの胴体をしっかりと捉えて斬り裂く。

…全力の一撃を放ったわたしが着地すると同時に偽者のわたしは倒れ、消滅していく。

 

「ふっ…こちらもこれで終焉としようではないか!『神をも冒涜せし禁断の理論』…!」

「うん、覚悟するんだね偽者のネプちゃん達!『秘伝忍法・乱れ咲き』!」

「この世界はネプテューヌさん達が…あたし達が守る!『ソルブレイカー!』ッ!」

 

親玉がやられたのが原因か全員一斉に狼狽える偽者のわたし達。それを見逃さなかった異次元組の三人は同時に最大の攻撃を放つ。魔力光、炎、そして斬撃。苛烈にして華麗な三重奏をモロに喰らった偽者のわたし達は耐えられる筈もなく、親玉同様に消滅していく。

偽者のわたし達が消滅していく中、静まり返るわたし達。そして、最後の一人が消滅した時--------歓声が、勝利を喜ぶ歓声が上がった。




今回のパロディ解説

・「ファルコム、後ろ後ろ!」
8時だョ!全員集合の中でのネタ…というか観客の野次(?)のパロディ。戦闘中にこのネタいれると妙にシュールな気もしますが、言った本人は真面目なつもりです…多分。

・バジュラ
マクロスFrontierに登場する超時空生命体の事。やられた個体はその情報を群れ全体にフィードバックするのがバジュラなので、作中での状況とは結構違いますね。

・ネクストフォーム
超次元ゲイムネプテューヌVⅡで登場した守護女神四人の新たな力の事。あくまでメタ発言としてネプテューヌが言っただけで、本作中ではネクストフォームは登場しません。

・「〜〜今のわたしは、阿修羅すらも凌駕する存在なんだよッ!〜〜」
機動戦士ガンダムOOの敵メインキャラの一人、グラハム・エーカーの名台詞の一つ。このネタは発見だけでなく、場面自体も少しパロってみました。どうでしょうか?

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