超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
「道を開けい!女神様の凱旋じゃあ!」
プラネテューヌ教会に響き渡る声。その声の主は勿論、プラネテューヌの女神であるわたし。地下プラントの防衛と偽者のわたしの討伐を果たしたわたし達は無事戻ってきたのだった。
…と、ここまでは特に注目する点もないし、この後わたしの台詞について突っ込みが入ったり苦笑いが発生したりすればいつも通りの展開何だけど…今回は違った。
「遂にパープルハート様がお帰りになったぞ!」
「ネプテューヌ様、この度はお疲れ様でした!」
「女神様、まだ帰還を知らぬ者にもお達しを!」
バーン!と扉を開けてわたしが叫んだ直後、初対面の人が着いてくるのは困難だと巷で噂のわたしのテンションに同調する職員の皆。わたし自身はいつものノリで言っただけだし、実際わたし一人がハイテンションで叫んでるだけならボケで済むんだけど…まぁ、れっきとした職員が揃ってこんな事言いだしたら…軽い騒ぎになるよねぇ。
「め、女神様が戻ったって!?」
「あ…た、確かにそう言われるとあの少女には見覚えが!」
「となると地下プラントを破壊しようとしたパープルハート様は一体…」
「……何か面倒な事になっちゃったなぁ」
『その発端がそれ言う(です・か)!?』
パーティーメンバーから総突っ込みを受けるわたし。た、確かにわたしのボケが原因であるけどさ…こんなの予想出来る訳無いじゃん!だってわたし記憶喪失のままだよ!?職員の皆のキャラとかよく知らないよ!
「これはそう簡単に収集つきそうにないね…ネプテューヌさん、号令かけてみたらどう?」
「号令?うーん…遊びの音頭取るのは得意だけどこういう号令かけた事ないしなぁ…」
「でもこのままじゃ色々面倒でしょうが…」
「な、何なんですかこの騒ぎはー!o(`ω´ )o」
「この特徴的な台詞は…いーすん!?」
教会の奥から現れたのは何といーすん。それを見た職員の皆は邪魔にならない様に(浮いて移動してるからそもそもあんま邪魔にならない気もするけどね)移動し、その流れで若干静かになる。おぉ、いーすん凄い…。
「ネプテューヌさん達とプラネテューヌ担当の方々が居るという事は、地下プラント防衛と偽者のネプテューヌさん退治は成功したんですね(^ ^)」
「はいです。職員の皆さんが協力してくれたおかげです」
「そうでしたか。ではやはり腕の立つ者を向かわせて正解でしたね( ̄∀ ̄)」
「いーすんが指示したの?…って、あ…そう言えばいーすんってプラネテューヌの教祖だったね」
いーすんと話しながら職員のおにーさんが避難指示をしに来た時の事を思い出すわたし。いやーわたしが実は女神だったってのも結構インパクトあったけど、いーすんが教祖だったってのも負けず劣らずインパクトあったよね。…って、あれ?何か忘れてる気が……
「…あの、いーすんさん…お留守番はどうなったです…?」
「あ!それだよこんぱ!いーすんまさかお留守番ボイコットしちゃったの!?」
「してませんよ…こんぱさんに渡された鍵できちんと戸締まりしてからここに来たんです(´・ω・)」
「戸締まりって…その身体じゃ大変そうね」
「えぇ、鍵をかけるのは一苦労でした…(;´д`)」
頑張ればポケットに入っちゃいそうな位ちっちゃいいーすんにとって鍵閉めは大変だったらしい。いーすんが鍵相手に奮闘してるシーン見たかったなぁ…。
「まぁそれはともかく、一体何について騒いでいたんですか?(・・?)」
「ちっちっち、騒いでたんじゃなくて讃えてたんだよ。約二十人の眷獣ならぬ眷人を従えるわたしをね!」
「いつからお前は真祖になったのだ…」
「あはは…じゃあわたしが代わりに説明を…」
MAGES.に突っ込まれてるわたしの代わりに説明をしてくれるマベちゃん。その間にこんぱとあいちゃんがいーすんについてファルコムに教えていた。やー皆もう説明には慣れたものだねぇ。
「……で、ネプちゃんのボケに皆さんが乗っちゃってこうなった訳です」
「そういう事ですか…ネプテューヌさんはともかく職員は皆れっきとした大人だというのに…(ーー;)」
「まーまーここは女神のわたしに免じて一つ許してあげてよ」
「騒ぎの原因がそれを言いますか…まぁ今回は大目に見るとします。これはネプテューヌさん…というか信仰している女神様が国を破壊しようとしていると思って内心不安だった事の反動という側面もあると思いますし、今まで不在だったわたしも偉そうに出来る立場ではありませんから( ̄^ ̄)」
仕方ない、って感じの表情を見せるいーすん。いーすんが今言ったけど、今までここは女神どころか教祖もいなかったんだよね。わたしもいーすんも訳ありだったとはいえ、職員の皆には大変な思いさせちゃってたんだろうなぁ…。
「そう言えば、遂にねぷねぷはわたし達以外に女神様だって事を教えたですね」
「教えたって言うかバレちゃった、って感じだけどね」
「しかしほんとよくねぷ子が本物だって分かったわよね。こんなちゃらんぽらんな子なのに」
「それはきっとねぷねぷが女神様らしく職員さんを助けてあげたからですよ」
「何だかんだネプテューヌさんは女神化する前でもある種のカリスマ性みたいなものもってるしね」
「そう言われるとちょっと照れ臭いね…」
こんぱとファルコムも言葉を聞いて頬をかくわたし。カリスマ性なんて言われてもわたしは単に自分の心に忠実なだけだし、職員のおにーさんを助けたのも助けなきゃ、って思っただけだからそうやって狙ってない所を褒められると何かむず痒いんだよね。
「記憶がなくとも女神としての有り様を持ち続けているのは良い事ですよ。…ですが、分かっていますかネプテューヌさん(´-ω-`)」
「分かってるって何を?」
「正体が周りへ知られた、という事はつまり今までとは同じ立ち振る舞いが出来なくなる事もあり得る、という事です(-_-)」
いーすんの言葉を聞いてそう言えば、と思うわたし。前にノワールにはそれっぽい事を注意されてたし、実際女神の皆はたまに『女神として』行動していた事があった。
「うーん…まぁでもこれってもうどうしようもないよね?」
「それはそうだろう。経緯はどうあれ知られてしまった以上それは変わらない事実だ」
「だったらそこ後悔しても意味ないよね。っていうかそもそもあんま後悔してないし」
そう、わたしは別に後悔してなんかいない。自分が女神だとバレたくないからって職員のおにーさんを助けなかったり、囮になろうとしなかったりしたら、そっちの方がわたしは後悔すると思うし。第一、話数的にもそろそろバラしても良い時期かなーとか思ってたもんね。
「なら良いですが…教会や国民の前では女神らしい行動をするんですよ?(^_^;)」
「いーすんさん、ねぷねぷにそれは無理な相談ですよ」
「えぇ、ねぷ子には無理よね」
「二人共わたしの事なんだから勝手に言わないでよ…内容はその通りだけどさ」
「ですよね…まあ、昔のネプテューヌさんも記憶以外はあんまり変わらないので実際にはそれで構わないんですけどね( ̄∇ ̄)」
しれっとちょっとびっくりな事を言ういーすん。…我ながら記憶失う前とあんまり性格が変わらないのはちょっとどうかと思うよ…どんだけわたしの性格は精神に根付いてるのさ…。
「あ、じゃあネプテューヌさん。ネプテューヌさん今から教会の人達に色々説明するの?」
「え、今?」
「うん、だってほら」
ファルコムの言葉に反応して振り返るわたし。するとそこには…
『……!』
「ねぷっ!?なんか思いっきり注目されてる!?」
「あはは…他の国と違ってネプちゃんはずーっと国に戻ってないって思われてたからだろうね…」
「どうせ今後もゆっくりする訳にはいかないんだ、ここできちんと説明した方が良いだろうな」
「んー…じゃ、そうしようかな」
きょろきょろと教会の中を見回してから、皆が見易そうな場所に移動するわたし。わたしがそこへ向かうと同時に…えっと、モーゼの海だっけ?…の様に左右に分かれる職員の皆。これにはわたし達パーティーメンバーも苦笑いだね。
そして、立ち止まった後わたしは反転して教会の皆の方を向く。
「こほん…さぁ皆集まって!ちびねぷ子ちゃんが始まるよー!」
『……は、はい?』
「あ…ご、ごめん今の無しで!って言うか忘れて!」
スベった。完全にスベった。
…うん、流石に今のはボケるタイミングを計り間違えたとしか言い様がないね…。閲覧してる皆もこれには触れないでよ?…いや、うんほんと触れないで下さい……。
「ネプテューヌさん、今回ばかりは真面目に話してみては…?(ーー;)」
「ま、真面目に話したらもうそれわたしじゃないよ!…こうもスベるなら最初の一言位は真面目に言った方が良かったかもってちょっと思ったけどさ…」
「めげちゃ駄目ですよ、ねぷねぷ」
「こんぱ…だよね、じゃあ気を取り直して…さぁ皆さんご静聴!皆大好きネプテューヌの知られざる冒険と今に至るまでの経緯、聞き逃しちゃ駄目だよ!」
やっぱりわたしに真面目な話なんて似合わない。実際MAGES.に
大勢の人の前で話すのって緊張するよね。……え?君は緊張なんて知らない子でしょ、って?そう思った人は今すぐその認識を改めるんだね!なーんかわたしの事勘違いしてる人が多いけどさ、わたしだって物凄く強い敵と戦う時は怖いし何人もの前で話す時は緊張するんだからね?そう感じる気持ちよりやる気とか元々のハイテンションとか関係ない楽しい事とかへの気持ちの方がずっと強いから殆ど気にならないだけだもんね。だからそこんとこ間違えてた人はちゃーんと認識を改めてよね!…勿論本作におけるわたしは、だけどさ。
…なんでこんな話してるんだっけ?ええと…あーそうそう!職員の皆に話する中でちょっと緊張を感じたからだったよ。つい今さっき全部話終わったんだよね。
「あー疲れた…長話って大変だね」
「お疲れ様ねぷ子。結構ちゃんと話せてたわね」
「当たり前じゃん、ボケるとこはボケて締めるとこはたまに締めるのがわたしだもん」
「たまにって…本当にその通りだから逆に突っ込み辛いわね…」
一旦さっきまでいた場所を離れたわたしはパーティーメンバーの所へ行く。注目されっぱなし、話しっぱなしだと結構疲れるんだよね。
…因みに、職員の皆はというと……
「記憶喪失だったなんて…大変でしたね女神様!」
「敵対していた他国の女神様と友達になるなんて流石!」
「パープルハート様を信じて職員を続けていて良かった…」
なんか感銘を受けていた。うーん…ダンジョンにいる時から思ったけど、うちの職員ってかなり多感だよね。別に感動話したつもりはなかったんだけどなぁ…ま、いっか。
「ネプちゃんは大人気だったみたいだね、四女神の中じゃ一番カリスマ的指導者だったのかな?」
「わたしがカリスマ?照れるなぁ…ま、それ程でもあるけどね!」
「…カリスマ的指導者、というより実務能力が欠落しているのを辛うじてカリスマ性で補っていただけかもしれんな」
「た、確かに他の女神様より勢いとノリで大事な事決めちゃいそうだもんね…」
「皆さんネプテューヌさんの事をよく分かってますね…ほんとにその通りでしたよ…( ;´Д`)」
なんか皆が過去のわたしをdisったりそれにうんうんと頷いてる様な感じがするけど気にしなーい、だってわたしはカリスマ的指導者だもんね!
よーし、せっかくの機会だしここは一つ女神らしい事するよー!
「職員の皆ー!今ならわたしが直々に相談とか悩み事とかに乗ってあげるよ、何かある人ー!」
「うちの女神様がいつも注意してるのにまるで聞いてくれないのですが…(¬_¬)」
「……な、何かある人ー」
勢いのまま即興企画を始めたらいきなりいーすんに鋭い一撃を喰らうわたし。い、いーすんって何だかんだ抜かりがないっていうか油断ならないよね…。
いーすんの言った事を真面目に何とかしようとしたら色んな意味で大変だからスルーするわたし。すると今度はわたしの思惑通り、職員の皆から矢継ぎ早に声が上がる。
「はい!最近書類仕事の効率が落ちてしまったのですがどうすれば宜しいでしょうか!」
「書類仕事を最初からやらなきゃ効率なんて関係なくなるよ!次!」
「中々お金を貯蓄出来ないんですが何か良い手はありませんか!」
「そしたらわたしに預ければ良いんだよ!ちゃんと倍にして返してあげるから、ね!はい次!」
「主人公の片割れがちゃんとキャラの立った主人公になってるか不安です!どうしましょう!」
「そんなの知らないよ!自分で考えなさい!後君は職員さんじゃないんだから即刻退場!次々!」
「今後も可愛いろりっ娘って呼んで良いでしょうか!」
「それはわたしより他の職員さんと要相談だね!…ふぅ、流石わたし、良い仕事したなぁ。という訳でこの企画お終い!好評なら第二回もやるから楽しみにしててね!」
『…………』
次々と飛ぶ相談を怪盗ラパン…じゃなくて快刀乱麻を断つ感じに解決していったわたしは袖で額の汗を拭く様な動作をする。なんかこの場にいた全員がげんなりした様な表情見せてたけど…何でだろうね?
「…ねぷ子、少しは実務能力も身につけないといつか後悔するかもしれないわよ…」
「そうなの?」
「やっぱり分かってないわね…それはともかく、あんたこの後はどうするつもり?
「どうするって…そりゃ他の大陸にもお手伝いに……あ」
言っている途中であいちゃんの言いたい事を理解するわたし。今わたしが他国に行くって事はつまり、またわたしが…パープルハートがプラネテューヌから離れる事になる。今までならそもそもわたしが女神だって認識されてなかったから問題なかったけど、皆が知った以上さらっとまた離れる訳にはいかないよね…いーすんが言ってたのって、こういう事かな…。
「…やっぱ、もう少しここに女神として残った方が良いかな?」
「そう、ですね…ネプテューヌさんが不在だった間の分の職務の埋め合わせも必要ですし(´・ω・`)」
「職務かぁ、気が重いなぁ…でも仕方ないか。そういう訳だからごめんね、わたしはお手伝い行けないや」
自分からちゃんと話した以上、『それじゃ後宜しく!じゃねー』とはいかない…っていうか、いくらわたしでも流石にそれはいけないって分かる。それに、ノワール達も女神としての仕事しろって言うだろうからね。
パーティーメンバーの皆もそれは分かっているのか、特に異論もなく頷いてくれる。…けど、意外な所から声が上がった。
「…他国に行ってもらっても構いませんよ、パープルハート様」
「……え、良いの?」
「…と言う事は、やはり本心では行きたかったのですね」
「あ、いやまぁ…それはそうだけどさ、ほんとに良いの?別にわたしに遠慮とかしなくたっていいんだよ?」
声を上げたのは職員の皆。わたしとしてはてっきり残る事に大賛成だと思ったんだけど…。
「遠慮なんかしてませんよ、我々はただネプテューヌ様の思う様に進んでほしいと思ってるだけです」
「そうですよ女神様。というか、ここで他国の手助けにいかないなんてそれこそ女神様らしくありません!」
「今はイストワール様も戻ってきましたし、今までは私達だけで何とか教会を動かしていたんです。パープルハート様が我々の信仰するパープルハート様のままだって分かった今なら、パープルハート様が戻ってくるまで何とかする位余裕ですよ!」
「そ、っか…ありがとね、皆……」
過去のわたしはともかく、今のわたしにとって職員の皆は殆どがちょっと前に会ったばかりの人で、軽んじるつもりはないけど友達とかお世話になった人と同格には考えられない。…でも、それでもわたしを信じてわたしを肯定してくれる人達の言葉って凄く嬉しいものだね…。
「…じゃ、やっぱりわたしはお手伝いに行かせてもらうね。皆、わたしが戻るまでプラネテューヌを頼むよ!」
『はいっ!』
「良い女神じゃない、ねぷ子…それじゃ、早速行くとしましょ。他国の状況が分からない以上ゆっくりする訳にはいかないわ」
「その事なのだが…私達はプラネテューヌに残ろうと思う」
職員の皆との意思疎通も出来て、いざ出発!…と思ったところでMAGES.が残る、と言った。言葉のニュアンス的にマベちゃんとファルコムもっぽいけど…どうしてだろ?
「メーちゃん、何か理由があるですか?」
「念には念を、と言う奴だ」
「ネプちゃんの偽者は一人じゃなかった以上、まだどこかに潜伏してるかもしれないからね」
「あたし達三人なら偽者一人二人位だったら対処出来るし、ネプテューヌさん達は気にせず行って」
「そういう事なんだね…うん、なら三人も気を付けてね」
三人の言う事はごもっともだったから反論する事なく頷くわたし達。それに三人なら任せても安心だからね。
そうしてわたし達三人は別の大陸に、MAGES.達三人はプラネテューヌ防衛の為に別れる。結構疲れたしいつもなら行くのは明日になってからにしたい、って思うわたしだけど…今は職員の皆が、MAGES.達が頑張ろうとしてるし、ノワール達守護女神の皆が、イリゼがそれぞれの場所で頑張ってるんだから、普段みたいにだらだらしようとは思わない。それに、だらだらするなら今じゃなくて、四大陸全部解決してから皆でだらだらしたいからね。
だからわたしはこんぱとあいちゃんと一緒に教会を出る。わたし達の目的はまだまだ完遂してないんだから、ね。
今回のパロディ解説
・眷獣、真相
ストライク・ザ・ブラッドに登場する吸血鬼の王とその吸血鬼の従える魔物の事。吸血鬼ネプテューヌ…原作では絶対にあり得ない展開ですが、悪くない様な気がしますね。
・「〜〜さぁ皆集まって!ちびねぷ子ちゃんが始まるよ!」
国民的アニメ、ちびまる子ちゃんのOPが流れる前に流れる台詞のパロディ。どれだけネプテューヌのキャラを知ってる人達でも、作中の様な事になる事もきっとあります。
・怪盗ラパン
ご注文はうさぎですか?の作中で流れているらしいアニメ及びその主人公の事。怪盗ラパンを断つ…えぇはい、間違えたままだと全く違う意味になってしまいますね。