超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第五十八話 惑いと動揺・百合の花

RPGって一度行った街にはもうストーリー上は行く必要の無くなるパターンと複数回ストーリーに絡むパターンとがあるよね。まぁ中にはストーリーに関係しない街が登場する作品とか、街が一つしか登場しない作品とかもあるからあくまで大分けだけどさ。

別にわたしはどっちの方が良い、なんて話をするつもりはないし、どっちも良い所がある事は分かってるよ?…まぁでも、前者も後者も…というかどの場合においても大切なのは街とイベント云々じゃなくて物語そのものの面白さだよね。…って訳で、手抜きせずやるんだよ作者さん!

 

「これで良し、っと」

「何が良し、何です?」

「地の文だよ地の文。上手い事今回の切り出しをしつつ作者さんが手抜きしない様しつつわたしらしいボケにもするという高等テクニックを見事完遂したんだよ、流石わたし!」

「よく分かんないですけど凄いですねぷねぷ!」

「相変わらず突っ込みどころ満載の会話ね…」

 

よく分かってないのに褒めてくれるこんぱと呆れつつもしっかり突っ込みを入れてくれるあいちゃんと褒められた&突っ込みを貰えた事でちょっと気分が良くなってるわたし。今はプラネテューヌの街中から出て他国へと向かう道中、特に何も起こらないしモンスターが襲ってきたりもしないからわたし達はいつも通りに雑談をしながら歩いていた。…まぁ、何かあっても大概それはそれで雑談してるけどね。

 

「それはともかくさ、幸先良いと思わない?最初の一日でプラネテューヌの問題クリアして次向かってるんだよ?」

「確かにそれはそうね。目的の国への移動の時間が省けた分を差し引いても良いペースだと思うわ」

「この調子ならすぐまた皆で集まれそうですね」

 

こんぱの言葉にうんうんと頷くわたし。そして同時に自分の顔が思っていた以上にほころんでいた事に気付く。…もしやわたしって自分で思ってる以上に皆といるのが好きだったり?だとしたら…ちょっとだけ気恥ずかしいけど悪い気はしないかな。

 

「さ、それじゃその為にも早く次の大陸に行きましょ」

「だね。あいちゃん次は誰を手伝いに行くの?」

「誰って…ねぷ子が決めてたんじゃないの?」

「え?」

「え?」

 

おぉーっと、まさかタイミングでのプチハプニング発生だよ。普通こういうのは出る前に決めるべきなのに…もー!これじゃ幸先悪いじゃん!

 

「もー!こういう事は出る前に決めなきゃ駄目だよあいちゃん!」

「いやねぷ子が決める前に教会出てずんずん進んで行ったからでしょうが!あれ見たら誰だって行き先決めてると思うわよ…」

「うっ…それはほら、女神として率先して進む必要があるかなー、とか…」

「あはは…まぁでもあまり進まない内に気付けて良かったです」

 

と、言う訳で道の真ん中…は誰が来たら邪魔だから道の端っこに集まって急遽会議を始めるわたし達。ラステイションへ行くべきか、リーンボックスへ行くべきか、はてまたルウィーへ行くべきか、それが問題だよ。

 

「この場合どこが一番急いで手助けに行く方が良いか、ってのが基準になるけど…特にキツいっていう情報がない以上何とも言えないわね」

「わたしと違って女神化出来る皆なら偽者の一人や二人位普通に倒せちゃいそうだもんね」

「じゃあどうするです?また前みたいに棒を倒して決めるです?」

「今使えそうな棒は無いかなぁ…」

 

すぐに話が行き詰まってしまうわたし達。うーん…今までは元々行き先や目的が決まってたか、決まってなくても選ぶ決め手となる要素があったりしたからあんまり悩む事なく進めたけど、今回はそういう事が無いから困るんだよねぇ。『誰か何か意見出して下さーい』とか『夕飯何食べたい?』とかと同じで『え、いやそう言われると何でも良いっていうか、逆に提案し辛いっていうか…』みたいな感じのアレだよね、アレ。

 

「そうなると…もうこれは行くべき所、じゃなくて行きたい所を選ぶしかないね」

「そう言われてもそれはそれでちょっと困るです…」

「大丈夫大丈夫、少なくともあいちゃんは行きたい所あるでしょ?」

「な、何でそこで私に降るのよ!」

 

ちょっと頬を赤らめるあいちゃん。まぁつまりはそういう事だけど…ほんとあいちゃんはこの事、というか例の人が絡むと分かり易いなぁ。

 

「何でって…そりゃあ、ねぇ?」

「何がねぇ?よ…ならそういうねぷ子はどうなのよ!ラステイション行きたかったりするんじゃないの?」

「それは、まぁ…行きたいっちゃ行きたいけど、すぐ行くよりちょっと期間開けた方がノワールは良い反応してくれそうじゃん?というかじゃああいちゃんは行きたい所ないの?」

「そ、それは…その……ぐっ…ねぷ子のくせに上手い回避するなんて…」

 

悔しそうな様子のあいちゃん。でもこれは仕方ないんだよ、偽者のわたし関連であいちゃんはわたしのメンタルに多段攻撃を仕掛けてきたんだから…いわば女神の天罰だよね。だからってあんま言い過ぎるのは酷いしこの位にするけど。

 

「まぁまぁあいちゃん、もう変に追求したりしないからさ、ここは一つ観念してよ。どっちにしろどこかへは行かなきゃいけないんだからさ」

「わ、分かったわよ…うぅ、覚えてなさいよ…」

「はいはい。こんぱ、慰めてあげて」

「もうしてるですよ〜」

 

いつの間にかこんぱがあいちゃんの背中をさすってた。ほんとこんぱは気が利くし優しいよねぇ、絶対良いお嫁さんになるよ。…あ、でもお嫁さんに行っちゃったらプリン作ってくれたりしないよね…じゃあこんぱはお嫁さんにあげたりはしません!

 

「ねぷねぷー?表情がころころ変わってるですよー?」

「あー、何でもないよこんぱ。それじゃ今度こそ行こっか」

 

あいちゃんの回復を見計らってわたしは決定した行き先…リーンボックスへと向かう。リーンボックスがどういう状況なのか、ベールは困ってるのかどうか、そういう事は分かんないけど…ま、何も無ければ楽だし、何かあれば頑張るだけだよね。

 

 

 

 

「教会前とうちゃーく!」

 

あれから…えっと、時間見てないから正直分かんないけど、多分一時間以上は経ってるんじゃないかな?

わたし達は大陸を移動してリーンボックスの教会まで来ていた。そういえば、他の大陸は色々あって複数回訪れたけど、リーンボックスは一度しか来てなかったね。

 

「あれ?いつもみたいに扉を勢いよく開けて中に入ったりしないですか?」

「あー…ほら、さっきやった時は結構面倒な事態になっちゃったしまたああなるのはちょっと御免かなぁって…」

「ここにはまだねぷ子が女神だって情報は来てないだろうから大丈夫よ」

「そう?じゃあ改めて…お邪魔しまーす!」

 

壊さない程度に、でもインパクトがある感じに扉を開けるわたし。別に普通に開けたって良いんだけど、やっぱ何度もやってる以上続けたいのが人の性だよね。わたし女神だけど。

 

「お邪魔するわ」

「お邪魔するです〜」

「おや、皆様久しぶりですな」

 

わたしに続いて入ってくるこんぱとあいちゃん。そしてわたし達を迎えてくれたのは前に来た時同様イボ…イボ…ええと、何だっけ…まぁ取り敢えず言ってみよっかな。

 

「久しぶりーイボ治療さん」

「イボ治療!?…何故イボ以降を覚えてくれないんじゃ…というかそもそもイボではなくイヴォなのじゃが…」

「悪いわねイヴォワール。ねぷ子は悪気があるんじゃなくて覚えられないだけだから分かってあげて頂戴」

「それ遠回しにわたしを馬鹿にしてない…?」

「はは…それで、どの様なご用事ですかな?それともやはりグリーンハート様にお会いに?」

 

わたしとあいちゃんのやりとりに苦笑した後話を進めてくれるイヴォ痔…じゃなかった、ええと…まあ良いや。この人の名前は出来るだけ早めに覚えるとして、話に乗って進めるとしようかな。

 

「そうだよ、ベールって今いる?」

「部屋におりますぞ。お呼びしますかな?」

「自分達で行くから大丈夫ですよ」

「では儂はお茶菓子でも用意するとしますぞ」

「今度は毒入れたりしないよね?」

「当たり前じゃよ。敬愛するグリーンハート様の為にももうあの様な事は絶対にせぬ」

 

冗談半分で言ったわたしに対し、思った以上に真剣な様子で返してくれるイヴォ爺(仮)。…うーん、これなら安心出来るしその点についてはありがたいけど、これボケ殺しになってるんだよね…。

そんなこんなでイヴォ爺と別れ、ベールの部屋へ行くわたし達。

 

「えっと、ここを真っ直ぐだっけ?」

「ここは左でその奥よ」

「流石あいちゃん、ベールの事よく分かってるぅ!」

「う、うっさい…」

 

あいちゃんをちょいと弄りつつ進むわたし。あいちゃんの言う通り、左に曲がって真っ直ぐ行ったら他より豪華な扉が見えてくる。

 

「着いたですね。それじゃノックして…」

「駄目だよこんぱ!ノックしたらハプニング発生フラグが折れちゃうじゃん!」

「何でハプニング求めてるのよ…全く、ベール様に迷惑かけるんじゃないの。ベール様、お手伝いに来ました」

 

ハプニング発生フラグをへし折る様にノックをして部屋に入るあいちゃん。こんぱは勿論、わたしも仕方ないので普通に入る。

 

「まぁ、あいちゃん。わたくしの為に来てくれるなんて、とっても嬉しいですわ」

「い、いえ、ベール様の為ならこの位…」

「おーい、わたしとこんぱも居るよー?」

「分かってますわネプテューヌ、コンパさん」

 

部屋へと入ると、丁度ベールがPCを操作している最中だった。やっぱネトゲかなー…と思って液晶画面を覗くと、そこにはたくさんの文字と日付や時間の書かれた列。これは…

 

「…2ちゃんねる?」

「えぇ、先程立てたスレの確認ですわ」

「な、何でスレ立てなんてしてんの…?」

 

ベールのキャラ的に真面目に偽者探しを!…何て事しないのは分かってたけど…スレ立てって…ベールってかなりわたしとどっこいどっこい何じゃ……。

 

「何でも何も、偽者の情報収集に決まってますわ」

「あのー…それなら教会のページとかベール様の個人ブログとかで訊いた方が良いと思うですけど…」

「それならば真面目な職員がもうしていますわ。その上でこの様な場所でも情報を集め、多方向から情報を吟味するんですのよ」

「そういう事ですか…流石ベール様!しっかりしつつも柔軟な対応ですね!」

「単に自分の好きな分野でやりたかっただけだと思うのはわたしだけかなぁ……」

 

わたしの呟きが刺さる筈もなく、自慢気に胸を張るベールとキラキラした目でベールを見つめるあいちゃん。…これはわたしが突っ込み役をしなきゃいけなくなる気がする…うぅ、こうなるならイリゼにも着いて来てもらうべきだったよ…。

 

「じゃあ、成果はあったですか?」

「ちらほらと出て来てはいますけど…現段階ではまだ情報不足と言わざるを得ませんわ。取り敢えず明日までは待つ方が良さそうですわ」

「じゃあその間どうすんの?外出て人に訊く?」

「どうしても、と言うならそれでも良いですけど…今日は休んだらどうですの?」

 

そう言ってベールは窓の外を指差す。そこには暗い空とお星様。…あー…そう言えばリーンボックス着いた時点でもう日が暮れてたんだった…。

割と早めに済んだとはいえ、プラネテューヌで結構消費した事もあってわたし達はベールの言う通り、今日は休む事にした。わたしは別に休むのが嫌いな訳じゃない…というか出来るならば出来る限り休んでいたいのがわたしの本心だから、ここで休むのは別に良い。……別に良いんだけどさぁ…

 

「はふぅ…やはりあいちゃんを抱っこしていると落ち着きますわ」

「わ、私は落ち着けませんよベール様ぁ!」

「良いではありませんの、それとも…あいちゃんはわたくしに抱っこされるのは嫌ですの?」

「そ、そんな事ある訳ないじゃないですか!……あ…」

「ふふっ、ならば相思相愛ですわね。ぎゅー」

 

ベットの上であいちゃんを膝の上に乗っけて、後ろから抱き締めるベール。恥ずかしがりながらも凄く嬉しそうにしているあいちゃん。もう甘々だった。チョコレートに蜂蜜とガムシロップをかけて砂糖をまぶした位甘々だった。

 

「何で毎回毎回二人はそんなに百合百合出来るのさ…」

「それはわたくしとあいちゃんが一億と二千年前から愛し合ってる関係だからですわ」

「…何だろう、今はちょっとパーティーメンバーに男の人が欲しくなったよ……」

「あら、ネプテューヌは思春期なんですの?」

「そういう事じゃないよ!?今の流れからはどう考えてもそうはならないでしょうが!」

 

案の定突っ込み役となってしまったわたし。むむ、こうなればこんぱを頼るしかない!

 

「こんぱ!あの百合百合フィールド何とかして!そうじゃなきゃわたし達多分胸やけしちゃうよ!」

「わ、わたしに言われても…うーん……」

「どう?何か良い案浮かびそう?」

「うぅん……あ!良い事思い付いたです!」

 

ぱぁっ、と顔を輝かせてにっこり笑うこんぱ。これは何かとっても良い案が浮かんだ様子。普段はほんわか発言とかテンパりとかで霞みがちだけど、こんぱは結構常識人だしこういう時は頼りになるよね。うんうん、こんぱを頼って正解だったよ!

と、そう思っているわたしに対し、こんぱは手招きをしてくる。その手招きに応じるわたし。すると…

 

「よいしょっ、と…」

「え?いや、あのこんぱ…どうしてわたしを膝の上に乗せてるのかな…?」

「ぎゅーっ、ですっ」

「こ、こんぱ!?わたしの言葉聞いてる!?」

 

後ろから抱き締められるわたし。お尻にはこんぱのぷにぷにな太ももの、首筋と後頭部にはふわふわむにむにな胸の感触が伝わってくる…ってそうじゃないよ!ど、どういう事!?こんぱは何を考えてるの!?

 

「あらあら、そっちも仲良しですわね」

「な、何してるのよ二人共…」

「ふふっ、目には目を、歯には歯を、百合百合には百合百合を、です♪」

「とんでもない発想に辿り着いてた!?」

 

ベール&あいちゃんと同じ状態になれば良い、というのがこんぱの発想の様だった。うん、確かに向こうと同じ状態になれば気にはならなくなるけど…それはわたしの思ってた解決じゃないよ!…こんぱの天然さ半端ない……。

 

「ねぷねぷはちっちゃくて可愛いですぅ。ちょっと小鳥遊さんの気持ちが分かったです〜」

「そっちの道に目覚めちゃ駄目だよ!?絶対駄目だからね!?」

「絶対、を言ったら逆の事をしろの合図だとか言いますわね」

「押すなよ!?ネタでもないよ!?あーもう!何とかしてよあいちゃん!」

「はきゅうぅぅ…ベール様、暖かいですぅ……」

「あいちゃぁぁぁぁん!あいちゃん頼むから戻ってきてぇぇぇぇぇぇっ!」

 

ベールの部屋にわたしの絶叫がこだまする。嬉しそうにわたしを抱き締めるこんぱ、抱き締められて蕩けている(勿論物理的じゃないよ)あいちゃん、そしていつも通り手のつけられないベール。三人にとっては楽しい時間かもしれないけど、わたしにとっては阿鼻叫喚状態。しかもそれがその後も暫く続くのだった。うぅぅ…誰か、誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!




今回のパロディ解説

・ラステイションに行くべきか〜〜それが問題だよ。
名作、ハムレット内での名台詞の一つ。今まで多種多様なパロディネタをしてきましたが、まさかウィリアム・シェイクスピア氏の作品からするとは自分でも驚きです。

・「〜〜一億と二千年前から愛し合ってる〜〜」
創聖のアクエリオンシリーズ及び同名の主題歌のフレーズのパロディ。勿論ネタであり、アイエフとベールにそんな過去があったりはしないので期待はしないで下さいね。

・小鳥遊さん
WORKING!!の主人公、小鳥遊宗太の事。基本ブランがいるせいであまりスポットが当たる事はありませんが、ネプテューヌも普通にちっちゃくて可愛いロリっ娘ですよね。

・押すなよ!ネタ
ダチョウ倶楽部の鉄板ネタの一つの事。作中で言った通り絶対と言ったらそうしろ、という合図らしいですね。…と、割と知ってそうな豆知識をパロディにしてみました。

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