超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第六十話 槍は敵を、変態は心を穿つ

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

……え、いきなりなんだこれはって?遂にネタが切れて意味の不明な事をし始めたのかって?ノンノン、流石にそんな事はないよ。だってわたし達は単に黙ってるだけだからね。じゃあ、どうして開幕早々黙ってるのかって?んもう、せっかちさんだなぁ。そんなの訊かれなくたって説明するって。えーっとまずだね…

 

「前のお話のおおよそ一時間か二時間後かな。三つ目の目的地に着いたわたし達は偽者のベールを探す為にダンジョン内を…」

『メタ発言してないで黙りなさい(ですわ)』

 

あいちゃんとベールに左右からギロリと睨まれるわたし。うぅ、折角閲覧者の皆に説明しようと思ったのに…。…まぁいっか、必要なら地の文って手段があるし。

それはさておき…今わたし達は木と茂みを隠れ蓑にして、ある場所へ視線を送りながら黙っている。勿論これには理由がある。それは……

 

「さぁベール様、そろそろ行くとしましょうか」

「ご案内は僕達兄弟にお任せあれ」

「執事喫茶、楽シミデスワ」

 

女神化したベールと寸分違わぬ見た目の女性…つまり、偽者のベールがルウィーでの一件以降リーンボックスに移住したらしい例の兄弟にエスコートされている姿を発見したからだった。

 

「ええっと、あの…あそこの二人は一体…」

『変態(だよ・よ・ですわ)』

「そ、そうなんだ…あはは……」

 

わたしとあいちゃんとベールの即答に乾いた笑い声を漏らす鉄拳ちゃん。あの兄弟からすればわたし達の反応は取り付く島もないものだけど…仕方ないよね、自業自得だもん。

 

「それはともかく、どうしてあいつらが偽者のベール様と一緒に…?」

「さしずめ誘蛾灯に誘われた虫の様なものでしょう」

「ベールが遠回しに自分に魅力がある事を自分から言ったのは置いとくとして…ほんと何とかならないのあの二人…」

「えーっと…助けに行かなくて良いんですか…?」

 

優しいこんぱは変態二人の事も心配してあげている。まぁ、こんぱの場合二人の変態さをいまいち理解してないだけの可能性もあるけど…。

勿論、わたしもあいちゃんもベールも二人を見捨てようとは思っていない。流石に死んでしまえと思うレベルで嫌ってる訳じゃないし、仮にそのレベルだとしても見捨てたら女神の、主人公の名折れだからね。じゃあ、何故すぐ助けに行かないのかだけど…それは簡単。だって……

 

「…あれ助ける必要ある……?」

「無いと思いますわ」

「無いでしょうね」

「無さそう、かなぁ…」

「だよねぇ…」

 

あの兄弟滅茶苦茶清々しそうな顔で偽者のベールのエスコートしてるもん!今私達は名誉ある仕事をしているのだ、みたいな雰囲気だもん!…あれって助けなきゃ不味い状況なの…?

 

「やはりベール様は美しい。この麗しさたるや、まさに女神のものと言えよう」

「同感だよ兄さん、僕等の目は狂っていなかったね」

「…………」

「…ベール様?」

「…偽者程度にかどわかされるとは、貴方達もまだまだですわね」

『……え?』

 

一体全体どういうつもりなのか、ベールが自ら姿を現して兄弟と偽者のベールの前に立ちはだかる。…え、まさか…嫉妬!?普段スタイルの関係で褒められる事が多いせいでこういう時抑えが効かないタイプなの!?

 

「なっ……ベール、様…!?」

「な、何故…どうしてベール様が二人も…」

「どうしても何も、そちらが偽者だというだけですわ」

『……!?』

 

目を見開く兄弟。あ、マジで偽者だって気付いてなかったんだ……。

 

「ちょっとベール、何一人で出てってるのさ…」

「流石にあれは見ていられませんでしたわ。まさか偽者に自身の信者が奪われる事がここまで不愉快とは…」

「ま、まぁいずれ出る必要はあったしいい機会になったんじゃないかな…?」

 

もう既に隠れててもしょうがない状態になった為、ぞろぞろと出てくるわたし達。鉄拳ちゃんのいう通りではあるけど…何か釈然としないのは何だろう……。

 

「盗ミ見盗ミ聞キトハ、イイ趣味デスワネ」

「え、そ、そうですか…?」

「いやこんぱ、これ褒められてないからね?」

「そっちこそ、ベール様に化けるなんていい度胸じゃない」

「そうですわ、わたくしに化ける辺りセンスがあるのは認めますが、それは即ちわたくしの怒りを買うという事ですもの」

 

ベール本人とベール大好きなあいちゃんは特にご立腹な様子(なんかベールはちょっと自画自賛してた気もするけど)。対する偽者のベールもこの状況で安全に離脱する事は叶わないと思ったのか、視線を鋭くさせつつ臨戦態勢に……

 

「ど、どういう事だい兄さん。こんな事があり得るというのかい…?」

「分からん、ただ一つ言える事は…どちらも本物のベール様だという事だ…」

「はぁ?何言ってんのよ、だからそっちのベール様は偽者だって…」

『そんな訳があるかッ!』

 

普段テンションの上下が少ない兄弟の突然の怒号、それにわたし達は一瞬呆気にとられる。確かに外見は本物も偽者も全く違いがないから見ただけじゃどっちがどっちなのか分からなくなるのはまだ理解出来るけど…だからといって『両方本物』という結論に辿りつくのは理解出来ない。更に言えばあの兄弟はマジェコンヌが化けた偽者のブランを見た事があるんだからこういう現象を認識出来ないとも思えないし…この二人は何を考えてるの…?

 

「…貴方達、まさかわたくしが二人存在すると思っているんですの?」

「我々も信じられません。ですが、そうとしか思えないのです」

「ど、どうしてそう思うんです…?」

「コンパさんの為なら喜んで説明するよ。…と、言っても説明する程複雑な事でもないけどね」

 

にこやかな様子でこんぱに語りかける兄弟の弟の方。…ほんとこの兄弟はベールが、じゃなくて巨乳なら誰でも好きってのがどうしようもないよね。昨今のハーレム系主人公だってここまで節操ないキャラはあんまりいないよ。…どっかの副会長さんとかポーンの悪魔さんみたいに違う意味で全然節操ない主人公はいるけどさ…。

 

「説明する程複雑な事でもないって事は、すぐに分かる事なの?」

「む、そちらのお嬢さんも中々豊かな胸をお持ちで…後でお名前を聞かせていただけますかな?」

「いいから早く話しなさいな。いい加減怒りますわよ?」

「失礼しましたベール様。僕達がどちらも本物だと思う理由はただ一つ。それは……」

『それは……?』

『どちらのベール様も、本物のベール様と寸分違わぬ胸をお持ちだからです!』

 

 

『……は?』

 

兄弟が謎の気迫と共に言い放った言葉にわたし達が言葉を返せたのはおおよそ十秒位経ってからだった。え、えーっと…どっちも本物のベールと寸分違わぬ胸を持ってる?……うん、ちょっと何言ってるか分かんないっす。

 

「…わたくしとした事がどうやら聞き違いをしたようですわ。お二人共、もう一度言ってくれまして?」

『どちらのベール様も、本物のベール様と寸分違わぬ胸をお持ちだからです!』

「……マジですのね…」

「ほんと胸しか見てないのねあんた達は……」

 

げんなりするわたし達。うん、わたしも聞き違いだと思いたかったよ…普段馬鹿扱いされてるわたしでも分かる位馬鹿過ぎる発言だもんね…。

けど、その発言すら実は序章だった。二人の変態さは、それどころではなかったのだ。

 

「我等にとってそれは褒め言葉さ。サイズは勿論、ハリやツヤ、形状までも網羅している我々にとってはな」

「え、ちょっ…今なんと……」

「それだけじゃないよ。柔らかさや触れた時の弾力、そして暖かさだって分かっているんだからね」

「な、ななな何を言ってるんですの貴方達は!?ま、まさか触れたんですの!?わたくしの知らぬ間に胸に触れたんですの!?」

「まさか…胸の事であれば見れば全て分かる、それが我等なのだッ!」

「ひ……っ!?な、何なんですの貴方達はぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

もう最悪だった。最悪で最悪な最悪だった。わたし達は完全にドン引きだったし、対象となっていたベールは青ざめた顔であいちゃんの背に隠れていた。心なしかだけど偽者のベールすら引いていた気がする。…正直、帰ってここでの出来事は忘れたい……。

 

「…ふむ、一体この雰囲気は何だろうか」

「僕達の言葉に感銘を受けているんじゃないかな?」

「…もう二人は帰って下さいまし…ほんとに、お願いしますわ…」

「…執事喫茶案内ハ今度デイイデスワ……」

「それは残念だ…しかし二人のベール様の命とあれば我々が異を唱える理由はない」

「そういう訳で失礼するねコンパさん。そっちの子も今度はしっかり名前を聞かせてもらうよ」

 

飄々とした様子でこの場を去る兄弟。後に残ったわたし達は皆げんなりを超えて軽くげっそり状態。そこから一番ダメージを受けているベールを立ち直らせ、本来の目的に軌道修正するまで十数分がかかったのだった…。

 

 

 

 

「皆様、ご迷惑をおかけしましたわ…」

 

心が満身創痍状態だったベールを介抱し、何とかいつも通りにまで持ってきたわたし達。因みにその間偽者のベールは逃げる訳でも攻撃をしかける訳でもなく、ただその場で待っていた。…ベールに同情してたのかな、或いは偽者の方も変態の言葉でダメージ受けてたのかな…。

 

「と、とんでもない人達だったね…」

「よく分かんないですけど、なんか恐ろしいものを感じたです…」

「もうこの事には触れないであげましょ、誰も得しないわ…」

「うん、それより偽者のベールだよ偽者のベール」

 

それなりに戦いを重ねてきたおかげか、皆はわたしの言葉一つで意識を戦闘へと切り替える。偽者のベールの方もそんなわたし達の様子を感じ取って手元に槍を顕現させる。

 

「こほん…色々と予定外の事はありましたが、わたくし達の目的をそろそろ完遂させて頂きますわ」

「ナラバ全力ヲ持ッテ抵抗サセテ頂マスワ」

「抵抗?ふふっ、出来るものならやってみ……きゃぁっ!?」

「油断、シナイデ下サイマシ」

 

一瞬。ベールが言い切る前の一瞬で偽者のベールは距離を詰めて仕掛けてきた。辛うじてベールはそれを自身の槍で防いだけど、人間状態でそれを受け止めきる事が出来る筈もなく吹っ飛ばされる。

 

「……ッ!ベール様!」

「ほんと油断しちゃ駄目だよベール!」

 

再度突撃をかけようとする偽者のベールの前にわたしとあいちゃんが躍り出て、同時にこんぱがベールの元へ走る。この偽者のベールが偽者のわたしと同じタイプなら本物よりは弱い筈。流石にわたしとあいちゃんだけで倒せるとは思えないけど、ベールが女神化して復帰するまでの時間が稼げれば十分だからね。

 

「くっ、偽者に先手を取られるとは…ですがもう好きにはさせませんわ…!」

「ソレハ、ドウカシラ?」

『……っ!』

 

わたしとあいちゃんの同時攻撃の瞬間、偽者のベールは薄く笑みを浮かべ…飛翔する事で回避、そのまま一直線にベールへ突貫する。地下プラントは天井があったからこそ偽者のわたしがとってこなかった、飛べる者の常套手段を先に偽者のわたしと戦っていたからこそ失念していた。

槍を掲げ一気にベールへと接近する偽者のベール。そのまま偽者のベールはわたし達の迎撃を一切受ける事なくベールの元まで……

 

「その槍、見切りました…ッ!」

「ナ……ッ!?」

「鉄拳ちゃん!?」

 

偽者のベールの槍が届く直前、両者の間に割って入ったのは鉄拳ちゃん。そしてそのまま鉄拳ちゃんは真剣白刃取りが如く刃の腹を掴み、地面を踏みしめて……留めきる。

 

「ワタクシノ一撃ヲ…受ケ止メタ…!?」

「重い一撃だけど…クマの十連コンボに比べればまだまだ〜」

「助かりましたわ、鉄拳ちゃん!」

 

鉄拳ちゃんが受け止め、偽者のベールが動揺している一瞬の間を見逃すベールじゃない。立ち上がると同時に女神化し、鋭いターンで偽者のベールの背後へと回って槍での一撃を叩き込む。…が、偽者のベールもそれだけでやられる程やわではなく、身体を捻る事でベールの一撃を回避しつつ力任せに槍を振るう事で鉄拳ちゃんの手を離させる。

 

「きゃっ……」

「む、無理しちゃ駄目ですよ鉄拳ちゃん」

「ありがとねコンパさん…」

「これでお互い全力で戦える状態ですわね。貴女が望むのであれば一対一で戦ってあげても宜しくてよ?」

「丁重ニ断ラセテ頂キマスワ。元々全員倒スツモリデスモノ」

 

互いに自身の獲物である槍を構え、相対する本物のベールと偽者のベール。両者一瞬の沈黙を迎えた後、再度激突する。

 

「はぁぁぁぁッ!」

「ヤァァァァッ!」

 

刺突、横薙ぎ、突き上げ、振り下ろし。次々と技が放たれ、その度に槍がぶつかり合い火花を散らす。槍という間合いを開ける事で真価を発揮する武器同士の戦いは刀剣とはまた別の激しさを放っていた。

 

「偽者とはいえ流石はわたくし、中々良い槍さばきですわ」

「貴女コソ、隙ノナイ動キデスワネ」

「ふふっ、でも貴女はわたくしには絶対に勝てませんわ」

「…ワタクシノ力ガ足リナイト言イタインデスノ?」

「確かにそれもありますわ。ですが、それ以上に貴女には…信頼出来る味方と言うものが足りませんのよッ!」

 

言い放つと同時に跳躍するベール。その直後、ベールの背後からあいちゃんが姿を現し、カタールによる刺突をかける。その予想外の動きに偽者のベールは反応が遅れ、槍の柄で正面から受け止めざるを得なくなる。そしてそこへ打ち込まれるベールの上段斬り。あいちゃんの強襲に対応するので手一杯だった偽者のベールにそれを防ぐ術はなく、彼女は肩口に受けて近くの木にまで吹っ飛ばされた。

 

「あいちゃんならわたくしの意図を分かっていてくれていると信じていましたわ」

「期待に応えられて光栄です、ベール様」

「グッ…マダ、デスワ…仲間ナラ、コチラニモ…!」

 

視線を交わすベールとあいちゃん。その二人に吹き飛ばされた偽者のベールは歯噛みをしながらも立ち上がり、手にした物を…エネミーディスクを掲げる。

 

「あれは…エネミーディスクです…!?」

「って事はやっぱり偽者とマジェコンヌとは関係がある訳ね…来るわよ皆!」

 

エネミーディスクが輝き、次の瞬間ぞろぞろとモンスターが湧き出始める。けど、それに怖気付くわたし達じゃない(鉄拳ちゃんだけは驚いてたけど…まぁエネミーディスクの事知らないなら当然だよね)。

 

「数デ不利ナラ、ソノ数ヲ埋メルダケ…!」

「信頼の置けぬ、ただ目的が同じだけの存在でどうにかなるという考えがいけないというのに…皆さん、ここはまずモンスター達を--------」

「仲間っていうのは連携するだけじゃなくて、時には勝利の為に分かれて戦うものでもある。そうでしょベール?」

「…えぇ、ならばモンスターは任せましたわッ!」

 

モンスターが今のわたし達の中で一番強力であるベールを狙おうと広がり出したその時には、もうわたし達がモンスターへと攻撃を始めていた。雑魚の相手をして本命の敵の相手は味方に任せる…ってのは主人公であるわたしの柄じゃないけど…たまにはこういう役回りも悪くないかもね。

 

「ベール様、援護は任せて下さい!」

「勿論、あいちゃんの援護に恥じない活躍を見せてあげますわ!」

「二度モ同ジ手ガ通用スルト思ウナ…!」

「同じ手で攻める訳…ないでしょうが!」

 

ベールが攻め立て、注意がベールに向いたところであいちゃんが仕掛け、注意があいちゃんに向けばベールが、両方に対応しようとすれば二人同時に畳み掛けるという単純ながらも強力な連携でベールとあいちゃんは確実に偽者のベールを追い詰めていった。

無論、わたし達もそれを眺めているだけじゃない。不用意に近づいて来るモンスターはわたしが返り討ちにし、ベール達を狙おうと離れるモンスターは鉄拳ちゃんが粉砕し、モンスターが束になってわたし達を倒そうとすればコンパが注射器とその中の薬品で背後から崩していく。偽者のベール程の力がある訳ではなく、ましてや連携なんてまともにとれやしないモンスターはわたし達にとっては完全に取るに足らない敵だった。

 

「貴女に勝ち目はありませんわ、潔く諦めなさい」

「オ断リデスワ…例エ貴女ニ敵ワズトモ…グゥゥッ…モウ一人ヲ、取リ押サエ…レバッ!」

「……っ!?あいちゃんッ!」

「貰ッタ……ッ!」

 

数度の攻防の末、ベールの下段からの刺突が偽者のベールを捉えて脇腹を裂く。…が、偽者のベールの執念も凄まじく、ダメージを与えた事で一瞬攻撃が止んだ隙に地を蹴ってあいちゃんへと肉薄する。

恐らく、あの時のベールはあいちゃんを捕まえる事で逆転の一手としようとしたんだと思う。確かに実力はあっても人の域を超えていないあいちゃんなら偽者のベールには敵わないし、その手を取られたらわたし達が手を出せなくなるというのも合っている。けど、偽者のベールは一つだけ誤算があった。それは……

 

「ベール様の動きなら…私にはお見通しなのよッ!」

「……ーーッ!?」

 

偽者のベールが放った槍はあいちゃんの身体を貫く事はなく、虚しく宙を穿つ。あいちゃんは、偽者のベールの槍を紙一重で躱していたのだった。そして同時にあいちゃんは蹴り付け、攻撃を外した偽者のベールの態勢を完全に崩す。

偽者のベールが止まった事を確認したあいちゃんは即座に後ろへと跳ぶ。その視線の先には、ベールの…あいちゃんが最も信頼する人の姿。

 

「やはり、貴女はわたくしの最高のパートナーですわあいちゃん。--------『スパイラルブレイク』ッ!」

 

翼を広げ、全力をかけたベールの連撃。それは一撃一撃が必殺の威力を持ち、まさに嵐の様な怒涛の勢いで偽者のベールに叩き込まれる。ベールは正面から、横から、上から、下からと槍を打ち込み、その末に天空へと舞い上がる。そして放たれる槍の投擲。それはベールの力と重力とが相まって流星の如き存在となり、最早防御すらままならない偽者のベールの身体を貫き穿つ。

槍の凄まじい勢いは地面にも大きな衝撃を与え、砂煙を引き起こす。それを見ながらベールはゆっくりと下降、その間砂煙は少しずつ晴れていき、ベールが降り立つと同時に晴れ渡る。砂煙が晴れ、顕となった地面。そこにはひび割れた大地と地面に深々と刺さった槍。ただそれだけが残っていた。

 

「…こちらは、終わりましたわ」

「こちらも、の間違いじゃないかな?」

 

ベールの言葉に、わたしは太刀を振るいながら答える。その先にあったのはエネミーディスク。いかに特殊な力を持っているとしても、所詮はディスクでしかないそれはわたしの太刀の刃によって真っ二つとなり、その効力を失う。それは即ち、モンスターの殲滅も完了したという事だった。

 

「ふぅ…些か厄介でしたが、無事倒せましたわね」

「お疲れ〜、しかしやるじゃん鉄拳ちゃん。まさか偽者のベールのランスチャージ?を受け止めるなんてさ」

「力比べなら得意だからね。それに、全身に負荷がかかったからちょっと気持ち良かったかも…」

「き、気持ち良かったっていうの…?」

「ど、どういう事です…?」

「あ、あはは…もしかして鉄拳ちゃんって…」

 

最後の最後で微妙な雰囲気になるわたし達。しかもその原因である鉄拳ちゃんがきょとんとしていたり、ナースだからかこんぱがそれをわたし達とは違う意味で受け取って心配していたりと、強敵戦終了直後とは思えない状況となっていた。…けどまぁ、これも無事に勝てたからこそ、だよね。

そうしてリーンボックスでの偽者戦は、わたし達の完全勝利で幕を閉じたのだった……。

 

 

……え、数話前と終わり方が似てる?えーっと…うん、まぁ…それは心の中にしまっておこうよ、ね?




今回のパロディ解説

・どっかの副会長さん
生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録シリーズ主人公、杉崎鍵の事。まぁ、彼が節操ないのは当然といえば当然です。何せ最初からハーレム狙いのある意味凄い人ですからね。

・ポーンの悪魔さん
ハイスクールD×Dの主人公、兵藤一誠の事。上記の杉崎鍵同様に、この主人公も最初からハーレム狙いなので節操なくて当然です。節操あるハーレムというのも変ですしね。

・ちょっと何言ってるか分かんないっす
芸人コンビ、サンドウィッチマンのボケ担当、富澤たけしさんの定番ネタのパロディ。コント上では何でだよと返されるネタですが、今作中では真っ当な反応でしょう。

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